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公儀隠密局の病院で目覚めた弐郎に告げられたのは、「放っておけば死ぬまで同化したまま」「すでに失踪者として処理される手筈」という現実。カラスの力を借りて病院を抜け出し、筋を通しに向かった先で待っていたのは──元隠密局員だった祖父・寿正との、本気の殺し合いだった。第2話を振り返る。




目覚めたら、影の公的組織の病院だった
公儀隠密局とは何者か
丸一日半の眠りから目覚めた弐郎を迎えたのは、鬼子母神一華と、その上司の司場涼介。ここは公儀隠密局が管理する病院だ。司場の説明によれば、江戸時代に幕府が抱えた忍びの組織・御庭番衆が、明治維新に伴い新政府に鞍替えしたのが公儀隠密局。表向きには存在しない影の公的組織で、主な仕事は国内外への情報活動や情報操作、そして物ノ怪の監視と排除。もっとも近年の物ノ怪は大人しく、司場の課は閑職──だったのだが、つい先日、局の施設が物ノ怪の集団に襲撃され、そこに封印されていた羅睺が持ち去られたのだという。
「よく分からずに首突っ込んで、あげく物ノ怪を助けるなんて、あんたおかしいんじゃないの」と突っかかる一華に、「その場にいなかったやつが文句言うな」と返す弐郎。初対面から相性は最悪である。一方で、電話越しに課長からきのこ・たけのこ両方の菓子を頼まれる一華など、緩い掛け合いも挟んでくる。
「悪いが君に拒否権はない」
肝心の同化について、司場は容赦がない。「放っておけば君らは死ぬまでそのままだ」。隠密局にも解く方法は分からないが、探す手段は持っている。だから身柄は保護する──ただし、「すでに君は警察の方で失踪者として処理される手筈になっている」。抗議する弐郎に返ってきたのは、「あいにく俺たちは正義の味方じゃないんでね。個人の権利を守る義務はない」「君ももう小さな子供じゃないんだ。やったことの責任くらい跳ね返ってくるさ」という大人の理屈だった。
「筋通しに行くんだよ」カラス大脱走
どっちを向いても味方はいない
「何が護衛だ、見張りの間違いだろ。こんなのただの監禁じゃねえか」と憤る弐郎に、羅睺は冷たい現実を突きつける。「あの若造は保護するとか抜かしてたが、考えてみろ。俺を封印してやがった張本人たちだぞ」「襲ってきた物ノ怪連中にしても、そう簡単に見逃すわけもねえ。どっち向いても味方はいねえ」。
聞き終えた弐郎の結論が彼らしい。「ああもう、切れた。こうなりゃ俺も好きにやってやる。こっから出んぞ、ラゴ」「別に逃げるわけじゃねえ。筋通しに行くんだよ。その後でどうなろうが知ったことか」。勝手に行方不明にされてたまるか、と向かう先は自宅だ。脱出を支えたのは、ノリのいいカラスたちの陽動。「助かったぜ、ありがとなお前ら」「いいってことよ。俺らも面白い体験できたしな」と、報酬は約束の食い物。動物と話せる能力が光る、楽しい脱走劇である。
「わしが元隠密局の人間だからじゃよ」
祖父の正体と、恐るべき宣告
帰宅した弐郎を待っていたのは祖父・寿正。人気のない場所へ孫を連れ出すと、いきなり鉄拳が飛んだ。「自分が何をしたか分かっとるのか」「事情は全て司場から聞いておる。お前が物ノ怪に憑かれたことも、隠密局が動いとることもな」。なぜそんなことを知っている? 「わしが元隠密局の人間だからじゃよ」。
さらに寿正は、羅睺を見据えて言い放つ。「孫の不始末はわしの責任。隠密局や物ノ怪どもに利用させるくらいならば、弐郎、お前もろとも羅睺を滅し、その後わしも自決する」。祖父と孫の、本気の殺し合いが始まってしまった。
我妻家の武は、人も物ノ怪も等しく屠る
「我が我妻家が代々極めてきた体術は、人も物ノ怪も等しく屠る必殺の武。お前に仕込んだのはあくまで基礎」。老体とは思えぬ圧倒的な強さに、羅睺すら「容赦ねえなあのジジー」と唸る。SNSでも「親父さんが強すぎた」「どんな戦場を潜り抜けてきたんだよ爺さんは」と話題をさらった。
だが、その強さの裏の独白が切ない。「ここからは稽古でも子供の喧嘩でもない。目的のために命を奪い合う修羅の道」「決して日の当たらぬ影の領域。それがわしの生きてきた世界。そんな世界に、かわいい孫をやりたくはない」。殺意の正体は、歪なほど深い愛情だった。
木登りの記憶 「半人前は周りの手を借りろ」
力なきゃ無謀、覚悟なきゃ無責任
戦いの最中に挟まれる幼き日の回想が、この話の核だ。降りられなくなった猫を助けようと木に登り、自分も降りられなくなったジロー。ナチの知らせで駆けつけた寿正が抱き止めて曰く、「確かに誰かを助けるのは良いことじゃ。じゃが、それには力と覚悟がいる。力なきゃ無謀、覚悟なきゃ無責任。今のお前はどちらも足りん半人前じゃ」「半人前のうちは、素直に周りの者の手を借りればよい」。それでも助けることを諦めないと言い張る孫に、「ならば強くなれ、ジロー。身も心も強く大きくなれ」。
「だったら、俺はこいつの手を借りる」
現在。ボロボロの弐郎は言い切る。「悪かったとは思ってるよ。考えなしにバカやっちまったって。けど、やったことに後悔はねえ。自分のケツは自分で拭く。それが俺の覚悟だ」。それでも「うぬぼれるなよ、半人前が」と一蹴されて、弐郎は例の教えを持ち出した。「幸か不幸か、俺はもう一人じゃねえ。ジジイ、昔言ったよな。半人前は周りの奴の手を借りろって。だったら、俺はこいつの手を借りる。それなら文句ねえだろ、な?」「は?」「はじゃねえよ、わかんだろ? 合わせろ、そこは」。
この即席コンビを前に、寿正は静かに拳を収める。「ジローにとっては、人も獣も物ノ怪さえも関係なく、全ては対等」「わしの負けじゃ。白旗じゃ。どうやら覚悟が足りなかったのは、わしのほうらしいわい。お前はお前の好きにせい、馬鹿たれ」。理屈と頭の硬さはあの頃のまま──孫の芯を認めた、見事な幕引きだった。
風呂と、「相棒」の成立
「いざってときは俺が力貸してやっから」
傷だらけで浸かる風呂。「さっきは悪かったな。俺のわがままに付き合わせちまって」と珍しく殊勝な弐郎に、羅睺も不器用に返す。「物事には限度ってもんがある。一人で死に急ぐような真似はすんじゃねえ。もしまたてめえが死んだら、それこそ俺は助け損だろうが」「いざってときは俺が力貸してやっから、ありがたく使っとけ。言いたいことはそれだけだ」。
受けて弐郎が締める。「こっからどうなるかなんてわかんねえけど、どのみち俺らは一蓮托生ってわけだ。せいぜい仲良くやってこうぜ。なあ、相棒」。第1話の「関わるな」から、たった1話でここまで来た。この距離の詰め方の気持ちよさが本作の武器だ。
すべては司場の想定内?
ラストは司場から寿正への電話。朝に送迎を寄越すという司場は、「病院を抜けて家に戻ったと聞いたときは、正直ほっとしましたよ」「これからうちで預かるんです。そのくらいの根性と行動力がなくちゃ」と食えない笑みを見せる。脱走すら織り込み済みで、弐郎は明朝から隠密局預かりに。物語はいよいよ組織編へと進んでいく。
反響 「制作陣にむちむちソムリエがいるな?」
一華の「細かい芝居」と気合いの作画
SNSで妙な熱を帯びていたのが、一華が椅子で小さく座り直すカットへの言及だ。「芝居が細かくてという意味でね?」という照れ隠しから直球の歓声まで、前回の太ももに続き完全にファンの心を掴んでいる。一方で絵コンテ・青柳隆平、総作監4名にアクション作監という気合いのクレジットに注目する声、真っ当な少年漫画ぶりを好意的に評する声、シナリオ運びへの辛口まで、反応は幅広い。祖父との殴り合いを経て「主人公に好感が持てた」という感想が多かったのが、この2話の勝利だろう。




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