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隠密局へ護送される弐郎に付いたのは、物ノ怪を毛嫌いする鬼子母神一華だった。道中で襲撃を受けるが、弐郎の手枷には妖気を封じる細工がされており、羅睺ともども戦えない。二体の物ノ怪を相手に一人で戦う一華へ、弐郎が投げたのは「プロなんだろ、お前は」という言葉。切り抜けた先で交わされたのは、名乗りと「お互い様で貸し借りなし」という約束だった。そして対モノノケ特別機動隠密部隊、通称ブラックトーチが動き出す。




手枷をはめられたまま始まった護送
「あんたはもう人間じゃない」
第3話は、荷物をまとめる我妻弐郎と祖父のやり取りから始まる。「下手すりゃここには二度と戻れねえかもしれねえんだぞ」「まあビビっても仕方ねえだろ」。「勝手に死んだら承知せんぞ、クソボズ」「俺がいない間にくたばんなや、クソジジイ」と憎まれ口を叩き合って、弐郎は家を出た。
迎えに来た一華の態度は最初から刺々しい。手枷をかけられて「これじゃまるで囚人じゃねえか」と抗議する弐郎に、返ってきたのは「あんたはもう人間じゃない。物ノ怪と同化した化け物なのよ」という言葉だった。物ノ怪は隠密局にとって取り締まりの対象であり、今の弐郎も例外ではない、という理屈である。
それでも一華は職務に忠実だ。「私はプロとしての任務に誇りと責任を持ってる。任されたのが護衛なら、たとえ対象が何であれ全うするだけよ」。そのうえで、「私が嫌いな二つのものを教えてあげる。物ノ怪と、女だからって舐めてる男よ」と釘を刺す。この台詞が、後で効いてくる。
羅睺の理屈と、弐郎の反論
襲撃は霧とともに来た。羅睺いわく「これは妖気の結界だ」。包まれた場所は一時的に隔離領域となり、外界から隔絶される。「てめえらがいる位相から半歩ずれた世界、物ノ怪の領域だ」という説明どおり、逃げ場はない。運転していた者たちはすでに殺されており、襲撃者の狙いははっきりしていた。「ラゴが憑依した器はできれば生かしてくれって話だからな」——本命は羅睺である。
ところが弐郎は動けない。手枷を外そうとする弐郎に、羅睺はこう告げる。「そいつはただの手枷じゃねえ。妖気を封じる細工がされてやがる。今の俺の力じゃ外せねえよ」。そして、そもそも手を貸す気がないと言い出すのだ。「結局、隠密局も物ノ怪どもも大差ねえ。ただ俺らを自分たちのもんにしたいだけ。文字通り、俺らを物だと思ってやがる」。
これに弐郎が噛みつく。「今そんな話じゃねえだろ」。「たった今すぐそこで、俺らのために戦ってる奴がいるんだ。そんな状況で、てめえは男として黙ってられんのかって話だろうが」。思想の是非ではなく、目の前で誰かが戦っているという一点だけで押し切る。この単純さが弐郎という主人公の芯だ。
★戦えるのは、一華ひとりだった
硬すぎる大物と、二体がかりの相手
つまりこの戦闘、弐郎も羅睺も封じられたまま、一華が単身で受け持つことになる。相手は物ノ怪が二体。「大きい方は動きも思考も鈍いけど、硬すぎて半端な攻撃じゃ通らない」と分析しながら、順に崩していく。
襲撃者の側は完全に舐めていた。「運転手どもは前菜にもならねえカスだし」「護衛が出たと思ったらこんなミソッカスだしよ。隠密局とか、カッコつけといてしょぼすぎねえかおい」。そして例の一言が出る。ふたこと目には女だのメスだの——「もう限界。仏の顔も三度までよ」。ここから一華の戦闘が本格化する。ネットでも一華の描き込みと戦闘描写に反応が集中していた。
★「プロなんだろ、お前は」
ここで挟まれるのが一華の回想だ。母を物ノ怪に奪われ、周囲が「お嬢様が継ぐわけにもいかないでしょうしね」と噂するなか、幼い一華は父にこう告げていた。「岸本の家は一華が継ぎます。これからたくさんお勉強して、たくさんたくさん修行もして、いつか必ず一華も、お父様とお母様のような立派な隠密になります」。彼女の頑なさの出どころが、ここで一息に説明される。
そして弐郎の啖呵。「お前言ったよな。任務に誇りと責任を持ってる、任された仕事は全うするって」「だったら手段なんか選んでんじゃねえよ。プロなんだろ、お前は」。手を借りるのは負けだと突っぱねていた一華が、この言葉で切り替わる。着地が決まらず「やっぱり閉まらねえな」「着地のことまで考えられなかったんだよ」と締まらないのも、この作品らしい。
★名乗り、そして貸し借りなし
「鬼子母神一華。それが私の名前よ」
戦闘後のやり取りが、この回でいちばん気持ちのいい場面だ。「言っとくけど、ありがとうなんて言わないから」と背を向ける一華に、弐郎はこう返す。「別に感謝なんていらねえし、俺も言わねえよ」。
「お前は俺らを守るために、俺らはお前を助けるために戦ったんだ。だから、お互い様で貸し借りなし。それでいいだろ」。貸しを作らない、作らせない。誇りを傷つけない断り方を、弐郎は本能的に選んでいる。
それを受けて、彼女はようやく名乗る。「お前って言うな。イチカ。鬼子母神一華。それが私の名前よ。オイとかお前とか、偉そうに呼ばないで」。直後に「じゃあ一個聞いていいか、イチカ。どうすんだよ、こっから」「歩くわよ」「マジかよ」と落とすのも小気味いい。
BLACK TORCH結成と、桐原零司
「釣り餌は針がついてこそ意味がある」
場面は隠密局の会議へ。特務二課課長・司場涼介が、課長権限で新部隊の設立を申請する。「物ノ怪と同化したものを隠密にするなど」と反発されるが、司場の論はこうだ。「いずれにせよ敵の狙いは羅睺です。幽閉し腐らせるくらいなら、いっそ鼻先にぶら下げるのも手かと」。上からの返しが「だが釣り餌は針がついてこそ意味がある」で、この部隊の危うさが端的に示される。
こうして立ち上がるのが、初期構成員5名の試験部隊。司場、課長補佐の宇佐美花、一華、弐郎、そしてもう一人の新人。対モノノケ特別機動隠密部隊、通称ブラックトーチ——タイトル回収である。拠点は表向き別の施設に偽装されており、「まあ少なくとも、どこもうちよりはまともだな」と司場自身がぼやく窓際ぶりだった。
★「お前ら今から表でケンカしろ。ただし本気でな」
最後に加わる新人が、隠密の名家・桐原家の跡継ぎ、桐原零司。弐郎たちと同じ17歳だ。一華には「まさか、こんなにかわいい人だとは思いませんでしたよ」と歯の浮く挨拶をしておきながら、弐郎には容赦がない。「君のような半端者が同じ部隊にいるということにね」「いっそおとなしく、どこかの施設で匿われていたらどうだ?」。
「ケンカ売ってんのか、クソメガネ」「いくらで買ってくれるんだ、妖怪人間」と一触即発になったところで、司場が乗っかる。「おい、そこのクソメガネと妖怪人間。お前ら今から表でケンカしろ。ただし本気でな」。
これはただの決闘ではない。新部隊の登録にあたって出された条件のひとつが弐郎の有用性の検証であり、隠密としての適性検査を兼ねているのだ。「私、1ヶ月くらいかかったんだけど」という一華の抗議も「とりあえず腕っぷしが分かれば大丈夫だろ」で流され、「はーい、じゃあ録画始めますね」というのんきな一言で幕。次回への引きとしては申し分ない。
それでも王道は王道として
評価が割れているのも事実で、「王道すぎてこの作品ならではの魅力が見えにくい」「既視感が強い」という声も出ている。一方で、この回でメンバーが揃い、部隊名が付き、次回はいきなり身内同士の本気の殴り合いという並べ方は分かりやすい。会話量が多く派手な戦闘が少なかったぶん、ここからどう転がすかが問われる回でもあった。




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