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第3話は都島成香の回。伊月は華厳から「都島家との不要な接触は避けてくれ」と釘を刺されていたが、倒れた成香を保健室へ運んだことで十年ぶりの再会を果たす。実は伊月は十歳の頃、母とともに都島家へ身を寄せ、成香のお世話係をしていた。学院で不良やヤクザと誤解されて友達ができない彼女のため、伊月は歓迎会のお茶会に成香を誘い、誤解を解いていく。一方、頭を撫でる場面を目撃した雛子の対抗心にも火がついた。




接触するなと言われていた相手
学院屈指のクールビューティーと、その噂
第3話は都島成香の紹介から始まる。B組の彼女は雛子ほどではないにせよ有名人で、見ての通りスポーツ万能、学院屈指のクールビューティーと評される。だが一番の特徴として挙げられるのは「正直ちょっと近寄りがたい」という空気の方で、実家がヤクザではないかという噂まで流れていた。
そして伊月には、事前に釘が刺されていた。華厳から「君の家について少し調べさせてもらった。貴皇学院には都島家の令嬢も在籍している。君自身とあの家に確執はないはずだが、念のため不要な接触は避けてくれ」と言われていたのである。つまりこの再会は、そもそも避けるように言われていた相手との再会だった。
十歳の伊月と、都島家のお世話係
ここから過去が語られる。伊月の両親はダメ人間同士で気が合っていたが、一度だけ離婚騒動が起きた。十歳の伊月を連れて家を出た母が訪ねたのが、亡くなった祖母の実家、つまり都島家である。後になって知ったことだが祖母は都島家を勘当されており、それでも母は強引に居座った。
そこで出てきたのが一人娘の成香だった。「私は軟弱者が嫌いだ」「使用人から話は聞いている。お前たちは何もしない、ただ飯ぐらいみたいだな。だから仕事を与えてやる。お前はこれから私のお世話をしろ」。現在の肩書きの原点が、十歳の時点で既にここにあったことになる。
当時の成香は、家の外は危険だと教えられて育ったせいで一人で外出できなかった。「私は都島家の女として強くなりたいのだ。でも勇気がない。もう十歳なのに一人で外に出ることもできないのだ」。そこで伊月が連れ出したのが駄菓子屋である。「いつき、これはなんだ」「うまい棒だな」「うまい棒だからな」というやり取りののち、二人はこっそり家を抜け出しては短い時間だけ外で過ごすようになった。やがてそれが露見し、娘を危険にさらしたとして伊月と母は都島家を追放される。
保健室での再会と、頭を撫でる手
「私はむしろ感謝しているんだ」
現在。倒れていた成香を保健室へ運んだことで、二人は十年ぶりに向き合う。伊月の「悪かったな、子供の時勝手に連れ出して」に対する答えが良い。「何を謝っている。私はむしろ感謝しているんだ。あの時いつきと外へ出ていなければ、きっと私は今でも臆病なままだった」。
とはいえ現在の悩みは別にある。「苦手なんだ、友達を作るのが」。理由も本人の口から説明された。都島家は武道の精神を重んじており、彼女も幼い頃からあらゆる武道を叩き込まれてきた。その家風から都島家は武闘派だと言われ、さらに人前だと緊張で顔がこわばって相手を怖がらせてしまう。気がつけば不良だのヤクザだのと散々に言われていた、というわけである。
「頼むいつき、助けてくれ」という懇願の合間に、静音から「お嬢様との位置情報がずれていたので何事かと思いましたが」と連絡が入るのも可笑しい。人助けも結構ですがお世話係の本分を忘れてはなりませんよ、と釘を刺されている。
雛子が見ていた
「またいなくなったりしないよな」と不安がる成香に、伊月は「大丈夫だ、また会える」と請け合う。そして求められたのが「頭を撫でてくれ」。昔もよくやってくれただろ、という理屈だ。撫でられた本人は「やっぱり安心するな」と満足したが、その場面をそっくり雛子に目撃されてしまう。
雛子は「少し体調が悪くなりましたので授業を抜けてきました」と説明したが、成香が伊月をまた家に呼ぼうとした瞬間に割って入る。「それは無理ですよ。友成くんは今、私の家で働いているので」。秘密にする約束だったのにと抗議する伊月への答えは「本当のことでしょ」「釘刺した方がいいかなって」だった。
成香が去った後、雛子の体調不良が仮病だったことも明かされる。一人だと迷うから体調が悪いと言って途中まで案内してもらった、というのが真相で、伊月は内心で「もしか嫉妬してくれているんだろうか。そんなわけないか」と流している。決定的なのはその後で、雛子が繰り返す「いつきは誰のお世話係?」に「今の俺は雛子のお世話係だ」と答えさせて「ならいい」。そして「一緒に静音に怒られようね」と道連れにしたうえで、自分も「なでて、頭」と要求した。
人生初のお茶会
憧れだったんだ、お茶会
発端は大正の一言だった。「友成の歓迎会、今日の放課後どうだ」「他に誘いたい人がいたら声かけていいぞ」。雛子は「いつきが行くなら私も行く」と即決し、伊月は成香を誘うことにする。
その前に、伊月は自分の立場を説明しておく。簡単に言うと養子になった、今の父親は此花グループの関連会社の社長で、その縁で此花家で行儀見習いをさせてもらっている、という表向きの筋書きだ。「養子というのは何かと脆い立場だからな」と、成香はあっさり呑み込んでくれた。
そしてお茶会へ誘うと、返ってきたのは「是非とも参加させてもらおう」——そして涙だった。「実は憧れだったんだ、お茶会。今まで誰にも誘われたことがなくて」。学院一の美貌と評される人物の実情が、この一行に全部入っている。そこへ天王寺美麗が現れ、「あなたも此花一派でしたのね」と絡んだ流れで彼女も加わることになった。
「噂についても全部嘘です」
集まったのは美麗、大正、旭、雛子、成香、伊月という顔ぶれである。自己紹介で緊張しきっている成香を見て、伊月が動いた。「誤解されているみたいですが、成香はそんなに怖い人ではありませんよ。子供の頃ほとんど家の中で過ごしていたようで、ちょっと会話が苦手なだけです。噂についても全部嘘です」。
そこに乗ったのが美麗だった。「確か都島さんの家はスポーツ用品メーカーでしたわね」「学院で都島家の名前を知らない生徒なんていませんよ。それに噂も少し調べれば真実でないとわかります」。ライバル視している相手の連れであっても、事実は事実として扱う。この人の格が出る場面だ。話題は成香の日課である道場での稽古へ移り、場は自然にほぐれていく。
会話の中身も楽しい。息抜きにお菓子を食べるという雛子が挙げたのはスコーンで、伊月だけが内心で「ポテチだろ」と突っ込んでいる。美麗からは「紅茶を飲むときはカップを口に近づけた方が優雅に見えましたよ」とマナー指導が飛び、普通の高校の風習を聞かれた伊月が三秒ルールを実演して「面白いこと考えるもんだな」「少々はしたないですわね」と評価が割れるのも良い。
「此花さんはずるい!」
肩の力が抜けた一日
解散の際、美麗が雛子にかけた言葉が効いている。「あなたとプライベートでお茶会をするのは初めてでしたが、存外悪くありませんでしたわ」。「ええ、またご一緒しましょう」と返され、伊月には「今日はちゃんと背筋を伸ばしてましたわね。やはりそのほうが魅力的ですわよ」と、ここでも一言添えていく。
車を待つ成香を送りながら、彼女はこう漏らす。「ああ、やっと肩の力が抜けた」。普通に話せていたじゃないかと言う伊月に、「いや、みんなに助けてもらったおかげだ」。そして「伊月がいなければ、私は卒業するまで孤独だった。今日は私の人生を変える一日となるはずだ」、締めが「やはり伊月は私のヒーローだな」である。
だからこそ、ずるい
感謝の直後に爆発するのが、この回の締め方だった。「だからこそずるい」「ずるい! ずるい! 此花さんはずるい!」。せっかく再会できたのに、なんでお前は此花さんの家にいるんだ、と。
「いつ終わるんだ、その行儀見習いは!」「まあ、今のところ未定だが」「も、もし終わったら、私の家に来ないか?」——伊月の返事は「そうだな、行けたらな」。すかさず「社交辞令だ!」と見抜かれるところまでが一続きで、ネットでも三人のヒロインが揃った回として受け止められていた。
なお静音の総括も冷静である。クビにされたらどうしようと怯える伊月に「クビにはしません。話を聞く限りお嬢様にも問題があります」と切り捨て、「都島様がご親戚であることは存じておりましたが、お二人に面識があったとは。我々も少し調査不足でした」と自省もする。この家の有能さが、こういうところで効いてくる。




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