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第21話の副題は「スピカVSアリア」。ダイヤの前で待っていたのは幼馴染で、勝負の条件も二人がその場で決めてしまう。アリアは回想を持ち出して、スピカに負けた記憶を思い出させようとする。ところが同じ回想から出てきた結論が逆だった。思い出したのは負け続けた事実ではなく、悔しさで走り続けた時間のほうだった。悔しいという感情を持たない相手に、悔しさで返す回である。




名を呼ばれて振り向くところから始まる
先に着いていたのはアリアだった
第21話は、前回の引きをそのまま受けて始まる。亀の腹の空洞にたどり着いたスピカが名を呼ばれて振り向くと、そこにいたのは幼馴染だった。第一声が、そのダイヤを手にするのはアリアだけど、である。この宣言に対してスピカは驚かない。先回りされていること自体は、もう織り込み済みなのだ。挨拶がわりにアリアが差し出すのは、宝石をお恵みくださいと泣きついてくるスピカの物真似で、開幕から相手を格下として扱う手つきが徹底している。
「今までの私と思ってたら痛い目見るから」
アリアが持ち出す論拠は実績だけである。今までスピカがアリアに勝ったことがあったか、という一行で足りてしまう。返ってくるのは反論ではなく予告だ。今までの私だと思っていたら痛い目を見る。過去の記録で殴る側と、これからで殴り返す側という配置が最初に決まる。引く気も譲る気もないと言い切ったうえで、だって勝つのは私だもん、と続ける。試験に入ってから積み上げた実感が、そのまま口をついて出ている。
この直接対決そのものは、放送前から大きく取り上げられていた。
賭けているのは宝石ではなく、命綱のほうだった
ルールを決めたのは本人たちである
勝負の形式を提案したのはアリアだ。魔法の打ち合いだけで決める。先にブーディのお助けを二回使ったほうが負け。ブーディは致命傷になると判断したら自動で持ち主を守るので、助けが出た回数がそのまま被弾の記録になる。勝ったほうがダイヤを取る。試験官が定めた条件ではなく、生徒二人がその場で作った条件であることに注意したい。止めに来る大人も、審判もいない。
助けの残り回数は、試験の残り回数でもある
ここで効いてくるのが、ブーディの助けは三回までという最初の取り決めだ。三回に達した時点でその生徒の試験は終わる。つまりこの決闘で助けを呼ぶことは、決闘の得点を失うだけでは済まない。二人は宝石を賭けているつもりで、試験に残る権利のほうを削り合っている。しかも舞台はダイヤの眠る空洞で、そこには海につながる池がある。水辺はアクエリアスマジックが最大限に出る場所なので、条件はきれいに片方へ傾いている。
一本目を取ったのは、差を数えていたほうだった
力の差を認めたうえで勝機を探している
開戦直後の独白が、この回のスピカを一行で言い切っている。アリアのすごさは身に染みているし、誰よりも分かっている。自分とアリアにまだまだ力の差があることも分かっている。そのうえで、そこに勝機がある、と続ける。差を認めない強がりではなく、差を測ったうえで隙間を探す言い方だ。逃げ道は塞いだと言われても慌てず、蔦を巻きつけた筆で自分ごと突破していく。
アリアが漏らしたのは、感心ではなかった
先に助けを使わされたのはアリアだった。舐めてたわ、やるじゃん、と続けたあとに出てくるのが、ムカつくくらいに顔つきが変わった、という言い方である。褒め言葉として差し出されていないところが、この幼馴染らしい。スピカの側もここで舞い上がらない。合格だけではぬるい、アリアに勝て、いつかじゃない、今勝つんだ。第17話で授けられた言葉を思い出しながら、あと一度使わせれば勝ちだと勘定している。
二本目で見せられたのは、努力ではなく吸収の速さだった
読まれていたのは、防御に何を使うかだった
スピカが仕掛けたのは、大量の綿を詰めた実である。水を吸えば吸うほど重く大きくなるので、水を操る相手ほど深く沈む。身動きが取れないだろうと勝ち誇るのだが、返ってきた言葉が痛い。アリアとの戦いは毎日のように想像していた、防御のときにその魔法を使うと思っていた。切り札は、相手の想像の範囲内に最初から置かれていた。追う側の準備は、追われている側にも見えている。
見て、真似してみたんだ
脱出の手段が氷結だった。知ってた、アクエリアスマジックは大気中の水分の温度も操れる。心まで凍りつけ、という宣言とともに周囲がまとめて凍りつく。種明かしは一行だけで、先生が使っているのを見て真似してみたんだ、で終わりである。努力の過程がまるごと省略された形で提示される。これで一対一だね、と告げる声にも力みがない。第17話で下された全項目高いという評価が、ここで具体的な絵になっている。
アリアは回想を、負けた記憶として突きつける
思い出せた、という問いかけ
一回助けを使わせたくらいでのぼせ上がるな、アリアの強さを思い出させてあげる。氷の直後にアリアが置くのがこの一行である。続けて、勝てると夢を見てしまっただろう、けど思い出せた、スピカはアリアに絶対に勝てないんだよ、と畳みかける。攻撃の目的が、勝利ではなく相手の記憶の書き換えになっている。実際スピカは、勝てない、と口にしてしまう。昔からアリアは天才で、私を置いてどんどん先に行く。ここから回想が始まる。
出会いは魔法の授業ではなかった
意外なことに、二人の最初の接点は魔法の腕比べではない。猫の人形を作る家庭科の課題である。初めてやったと言いながら手際よく仕上げるアリアは天才と呼ばれ、何度も針を刺してまだ形にもなっていないスピカは名指しで叱られる。魔法以前に、手先の器用さの段階で差がついていた。小さい頃から不器用で、何をするにも人一倍努力しないと追いつけなかった、という自己紹介が、そのまま画面になっている。
最初の会話でつまずいたのは、悔しいという言葉だった
話しかけてきたのはアリアのほうである
放課後、居残って針を動かしているスピカに声をかけたのはアリアだった。長くて呼びづらいだろうから、アリアでいいよ。友達になりたいのかと期待した直後に、本当に下手だね、と手元をそのまま評される。わざわざ居残るなんて、向いていないなら適当にやればいい。親切のつもりで放たれる言葉が、ことごとく刺さる。いつも全力だけど空回ってない、という一言に、スピカは驚く。この子は私のことをいつも見ていたのか、と。
「その気持ち、アリア分かんないんだよね」
なんでそんなに頑張れるのか、やってて楽しいのか、と重ねられて、スピカが返すのが、楽しくはないけどできないままは悔しいから、である。これに対するアリアの答えが、この回でいちばん重い。悔しいかぁ、その気持ちアリア分かんないんだよね。才能の差ではなく、感情の在庫の差がここで示される。第17話でアリアに夢がないことが明かされていたが、その空白は夢だけの話ではなかったわけだ。
返事は言葉ではなく、一ヶ月で返された
言い返す代わりに手を動かしている
生まれもっての才能が違うのかもしれない、でも。そこで言葉を切ったスピカが選んだのは反論ではなかった。休み時間も食事中も風呂に入っている時間も、すべてを裁縫に費やす。そして一ヶ月後、約束の人形を持って現れる。言い負かすのではなく、期日を切って物で示すという返し方である。指はもう手袋のようになっていて、費やした時間の量だけが証拠として残っている。
アリアが面白がったのは、出来栄えではない
受け取ったアリアの反応が、そこまでしてアリアに勝ちたかったんだ、である。評価されているのは人形ではなく、そこまでやったという事実のほうだ。そして、不器用なのに負けず嫌いなところが面白いね、と続く。公式のキャラクター紹介にある、何をしても不器用なスピカに興味を抱きちょっかいを出しては楽しんでいる、という一行の始まりがここにある。以来アリアは事あるごとに張り合ってきて、スピカは負け続けの日々を過ごすことになる。
思い出したのは、負けた記憶ではなかった
同じ回想が、逆の結論を出す
回想が明けて、スピカが口にするのは、思い出したよ、である。どんなに努力しても圧倒的才能で凌駕してくる。ここまではアリアの筋書き通りだ。ところが続きが違う。でもさ、それが悔しくて必死にアリアの背中を追い続けた、そのおかげで今の私があるんだよ。負けの証拠として持ち出された過去が、そのまま今の自分の材料として読み直される。思い出せと言った側が、思い出させたくなかったほうを掘り当ててしまった。
結論は勝利宣言ではなく、姿勢の宣言である
そのうえでスピカが言い切るのは、勝つ、ではない。どれだけ力の差があっても絶対に引かない、である。勝敗の予測ではなく、態度だけを約束しているのがいかにもこの主人公らしい。悔しいという感情が分からない相手に対して、悔しさで走り続けてきたと返しているわけで、第17話の時点でアリアが持っていなかったものが、そのままスピカの燃料だったという構図がここで完成する。
戦いの合間に長い回想を挟む構成そのものにも、反応が集まっていた。
最後に持ち出したのは、魔法を教えてくれなかった授業だった
植物園の世話で終わっていた時間
終盤にもう一つ、短い回想が挟まる。水はやりすぎないように、鉢から水が出てきたらそれでいい。今日の授業も植物園の世話で終わるのか、あの先生はちっとも魔法を教えてくれない。生徒たちの愚痴が続いたところに、恋人のように花を慈しみ愛を育むこと、それこそが植物魔法の翼となるのだ、という長広舌が返る。役に立たないと思われていた時間が、最後の手札として引き出されるという配置である。
「私も見せてあげる」で切れる
アリアの魔法を破るにはこれに賭けるしかない、とスピカは決める。そして、私も見せてあげる、の一行で第21話は終わる。撃つ前で切られているので、勝敗どころか技の正体すら見えない。見て真似して覚えた氷結に対して、教わらないまま身についていたものをぶつける形になるわけで、才能と努力という言い古された対比が、ここでは覚え方の違いという別の切り口に置き換わっている。
第21話のまとめと、次に見ておきたいところ
回想を持ち出したのは、追い詰めた側だった
この回の作りで感心したのは、回想を呼び込む役がスピカではなくアリアだった点だ。追い詰めるための材料として過去が持ち出され、その材料が持ち出した側に跳ね返る。思い出させる側が損をする構造になっている。しかも掘り起こされたのは魔法の才能の話ではなく、裁縫という魔法とまったく関係のない場面である。苦手をそのままにして別のところで勝つという、この作品が繰り返してきた型がここでも守られている。
次に見たいのはアリアの側である
見届けたいのは、悔しいという感情を持たないまま来た側がどう動くかだ。スピカが引かない理由は、今回の回想でほぼ説明された。説明されていないのは、なぜアリアがこれほど長く張り合い続けているのかである。面白いから、で始まった関係が、どこで別のものに変わったのか。決着そのものよりも、その一点がどう扱われるかを見ておきたい。試験の終了までは残り二時間を切っている。
なお公式アカウントでは、第21話の放送に合わせた台本のプレゼント企画も告知されていた。




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