この記事の作品:
「学園書記長 岩元胡堂殿。とある神社のご利益について追加調査されたし」。指令の先で待っていたのは、書記長選挙で岩元に敗れた前任者・原町海。願いが叶いすぎる「縁切リノ鎌」の調査は、岩元の名を書いた鎌が木に突き立てられたことで一変する。第2話を振り返る。




指令書と、面倒くさい前任者・原町海
「彼とは仲良くしといた方が今後のためにもいいぞよ」
岩元のもとに届いた指令書は簡潔だ。「学園書記長 岩元胡堂殿。とある神社のご利益について追加調査されたし。ご利益については注意を。前任者から詳細をよく聞くこと」。そして追伸に「彼とは仲良くしといた方が今後のためにもいいぞよ」。「前任者がいるのか。珍しいな」と首をひねりながら、岩元は島の学園から本土の町へ渡る。
待っていた前任者が、実に食えない。「取材の一環」と称して聞き込みをし、町の名産の組木細工を「お近づきの印に」と差し出し、こちらの経歴は一方的に把握済み。4・5年生を差し置いて3年生で書記長に推薦された岩元の演説を「その完全なる選民思想は立派の一言」と褒めているのか刺しているのか分からない調子で評し、「まあ僕は票を入れなかったですがね」と付け加える。思わず岩元が「君は思ったことを全部口にする能力なのか」と聞いてしまうのも無理はない。彼こそ陸軍栖鳳中学2年、2年生にして書記長選挙に立候補し岩元に敗れた男・原町海。岩元の内心評は「能力を直接聞くには、いささか面倒くさい奴」である。
路地の隙間にある「縁切リノ鎌」
願いが叶いすぎる神社
案内されたのは、路地の隙間のような場所にひっそりとある神社。「人は出会いを求め往来に集い、やがて煩わしく思い、縁を嫌いだす」──だから縁切りの社は、都市にこそ意味がある。巨木には無数の鎌が刺さり、「煩わしいあの男と縁を切りたい」「凶暴な姉と二度と会いたくない」「雑言を撒き散らす母が早く旅立ってくれますように」と、切実すぎる願いが込められている。
近くの店も昔はここを利用していたが、今は禁止令が出ているという。理由は「願いが叶いすぎる」から。それこそが今回調査すべき超常現象だ。新しい鎌も多く、客足は今も絶えない。ところが肝心の宮司は不在で、管理者も不明。起源が古いということ以外、原町の取材でも情報がないという。
「これは縁切りの能力ですよ。試すのが普通でしょ」
ここで原町が、とんでもない手を打っていたことが判明する。「この神社をいくら調べても被疑者は見当たらず。後任が来てしまったので試してみました。これでまた調査が進みそうだ」。なんと、岩元の名を書いた鎌を縁切りの木に突き立てていたのだ。「これは縁切りの能力ですよ。試すのが普通でしょ」「良かれと思ってね」と悪びれもせず、挙げ句「大丈夫。死んだら僕が書記長を引き継ぎます」。「いらん」と返す岩元の胃が心配になる導入である。
「何かが俺を殺しに来てる」
鳥の巣、看板、そして蛇
直後から、現象が始まる。原町と手を取り合った瞬間、頭上から枝ごと落ちてくる鳥の巣。「縁を切りに来た」のだ。突風に乗って飛んでくる看板。極めつけは、足元に現れる蛇。「ヘビ、苦手なんだよクソ」と毒づく岩元の周囲で、「何かが俺を殺しに来てるのは間違いない」状況が着々と積み上がっていく。
しかも効果は本物だ。少し前、二人の女性が鎌を刺すのを原町が目撃しており、標的にされた一人は事故死、もう一人は錯乱状態になったという。この場から離れていても、縁切りの効果は及ぶ。
「この超常現象も必ず人間なんです」
「どうやら呪われたようだな」と身構える岩元に、原町は言い切る。「人間の仕業ですよ。人間だからこそ、僕らは同志を探す旅に出るのでしょう」「この超常現象も必ず人間なんです。それ以外の何かが能力を持ったことは一度もありません」。怪異ではなく、必ず人間の能力者がいる──この作品世界の根本ルールが、ここで明確に示された。
そして蛇騒動の中、原町は静かに種を明かす。岩元が見抜いた通り、彼自身は能力者ではない。「でも推薦は受けてます。誰も無能だとは言いません。僕自身そう思います。この取材力は僕の力です。この任務も僕がやり遂げる」。
鎌を引き抜く 「せめて我々が弔ってやるべきだ」
御神体の正体は、死してなお利用された能力者
転機は岩元の一手だった。「お前、この鎌を抜いてみたか。功績を焦ってこの木に無遠慮に鎌を突き立てる前に」。「抜く? するわけない。呪いが消えたらどうするんです」と止める原町の前で、岩元は鎌を引き抜く。
そこで明かされる真実が重い。血を流してそれをまじないとする術師というものがいる。この神社の主は、そういう血を持った恐ろしく強力な能力者で、秘密裏に閉じ込められて祀られ、死してなお、この地でいくつもの願いを叶え続けさせられていた。原町の取材にすら伝承が残っていないのは「忌むべき記録だからだ」。「この人は死んでも地獄の中にいた。せめて我々が弔ってやるべきだ」。縁切りの正体は、悲しすぎる置き土産だった。
「いや、引き分けだろう」
「結局また僕の負けというわけですか。さすがですね、岩元さん」と肩をすくめる原町に、岩元は首を振る。「いや、引き分けだろう。お前が鎌を刺さねば、俺は引き抜かなかった」。そして「お前の能力がなければ、この人は未だに地獄の中にいただろう。その能力は伸ばしていけば皆を助けるものとなる。同志として期待しているよ」。原町は「岩元先輩が書記長で今はいいとして、僕が努力と根性ですぐ追い抜いてみせますよ。覚悟してくださいね」と不敵に返した。「自分の価値観を揺さぶってくれたあいつは面白い」──良きライバル関係の幕開けだ。
なお、この顛末は「以上、後世に残された岩元の手記および遺品の記録より抜粋」というナレーションで締められる。物語全体が、岩元の遺した記録という額縁で語られている──この不穏な仕掛けも本作の見逃せない魅力である。
Bパートは通称「隔離施設」の日常、そして不穏な予告
学園の3分隊と、オカルトを嫌う軍
Bパートでは学園側の描写が進む。軍の上層部は「軍の予算を使って訳の分からんオカルトを研究しているな」と橘城学園長の研究に不満を隠さない。エリート軍人の育成という建前の陸軍栖鳳中学には3つの分隊があり、頭脳に優れた者が集う通称「研究棟」、体を張る肉体派の「前線部隊」、そして利用価値不明と言われる能力者たちの通称「隔離施設」。岩元はこの隔離施設の年長者で、分隊は岩元の入学以降にできたばかりだという。
研究棟は能力者に好意的だ。岩元が連れてきた青沼静馬の体を解析して能力の正体──体中を覆う鱗粉状の物質──を突き止め、鱗粉を通さない特殊装衣まで開発している。「超能力者が本当にいるなんて、面白いよね」。
「しかし次の日、前代未聞の事件が起こる」
レポート課題を口実についてきた原町と共に巡る隔離施設は、日本人形を遊ばせる一年生の淡魂瑞火など、「村の道祖神のような存在」が集うのんびりした宿舎だった。「学内で呪い死にが出たら真っ先にこいつを疑おう」と原町が失礼な感想を漏らす、まったく平和な日常。──しかし次の日、前代未聞の事件が起こる。様々な物体を巻き込む蟲の群れが一夜にして現れ、平和をかき乱すのであった。という予告で第2話は幕。次回も穏やかには済みそうにない。




関連作品:










コメント