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第2話「ちゃんと痛いよ」。前話でミミに口づけで治してもらったシーナは、それが忘れられないまま模擬戦の日を迎える。森に放たれる仮想敵、規格外のミミ、そして紛れ込んだ本物の敵。左腕を失ったシーナを救ったのは、フランではなくミミの口づけだった。




忘れられない、初めての口づけ
「おなか痛いの、治った?」——翌朝の、あまりに軽いミミ
第2話は、ミミがシーナに口づけるところから始まる。「おなか痛いの、治った?」と尋ねるミミの目は、驚くほど純粋でまっすぐだ。彼女にとってそれは、魔力を送って痛みを治すためのごく当たり前の行為でしかない。
けれどシーナにとっては違う。「初めてだったのに」と動揺し、逃げるように布団へもぐり込んでしまう。そんなシーナの慌てぶりなどどこ吹く風で、ミミは「おやすみなさーい」とあっさり眠りにつく。この温度差が、まだぎこちない二人の距離を何より雄弁に語っている。
一睡もできないまま、シーナは自分に言い聞かせる。ミミに悪気はないし、キスで魔力をやり取りするのは、この学校ではごく普通のこと。みんなとっくに済ませているはず。それでも、初めての相手がミミだったという事実だけが、どうしても頭から離れない。
授業も上の空、「戸月さん?」と呼ばれて我に返る
翌日の授業のテーマは、この国で禁じられた魔法にまつわる歴史。だがシーナの頭は、昨夜の口づけでいっぱいだった。「思い出しちゃダメ」と念じるほど鮮明に思い出してしまい、どんどんうわの空になっていく。
見かねた教師に「どうかしましたか? 戸月さん」と名前を呼ばれ、ようやく我に返るシーナ。「私のバカ!」と心の中で自分を責める姿が、初々しくもおかしい。
ミミの無邪気さと、シーナの生真面目さ。同じ口づけでも受け取り方がまるで違う二人の対比が、この短い日常の場面だけでくっきりと浮かび上がる。甘くやわらかな導入だが、この「キス=治癒」という設定こそ、この回の結末を貫く伏線になっている。
明日は模擬戦——不安なシーナと、食事の話をするミミ
セイランの励ましと、一度も倒せなかった前回
授業の終わり、教師から明日の実習として模擬戦が行われると告げられる。前回よりも良い成績を、と言われて、シーナの表情は曇る。前回は一体も倒せなかったからだ。「いいよね、弱くて」。そう言ったのは、1話で命を落とした前のルームメイトだった。「いいわけないよ」と返したささやかなやり取りは、もう二度と戻らない。強さがそのまま生死に直結するこの学校で、シーナは自分の弱さと静かに向き合わされている。
そんなシーナを気にかけたのが、生真面目なクラスメイトのセイランだった。「シーナ、大丈夫? 明日はちゃんと倒せるように頑張ろう」と、まっすぐに励ましてくれる。強さで測られるこの学校で、こうして隣から声をかけてくれる存在の温かさが、そっと伝わってくる場面だ。
髪を梳かしながら打ち明ける不安、ミミは「シーナは怖いの?」
自室に戻ったシーナは、ミミの髪を梳かしながら、明日への不安を口にする。模擬戦とは何なのか。先生が魔法で作った仮想敵と戦い、倒した数を競う実習だ。本物を模して作られているせいか、敵は本気で攻撃してくる。「私、いつも何もできないまま」と、シーナは正直な弱音をこぼす。
ところがミミの反応は、どこかずれている。「とにかく、いっぱい倒せばいいんだよね」と事もなげに言い、「怖くないの?」と問うシーナに、逆に「シーナは怖いの?」と聞き返す。そして、まるで不安などないかのように明日の食事の話へと移ってしまう。
何の悩みもなさそうなミミと、明日に怯えるシーナ。同じ部屋で並んでいても、二人が立っている場所はまるで違う。その差が、翌日の森でさらに残酷なかたちで突きつけられることになる。
森の模擬戦と、規格外のミミ
縄が解かれ、100体のターゲットが森に放たれる
模擬戦当日。舞台となるのは、鬱蒼とした森だ。カラスの鳴き声がいつもより不気味に響き、これから始まる実習の不穏さを先取りしている。担任のオミ先生が、ここは先日実際に戦闘が行われた場所だと告げ、実戦だと思って真剣に取り組むよう釘を刺す。
オミ先生が魔法で森の封印の縄を解くと、そこから100体ものターゲットが放たれる。目標は一人3体撃破。号令とともに、生徒たちは吸い込まれるように森へと飛び込んでいく。地を駆ける者、木々の枝を伝う者と、それぞれの得意な動きで森の奥へと散っていった。
セイランとアリの連携でやっと1体、ミミは一撃で薙ぎ払う
セイランとアリのペアは、木陰から敵の出方をうかがう堅実な戦い方を選ぶ。セイランが接近して敵を引きつけ、アリが後方から遠距離攻撃で撃ち抜く作戦だ。セイランが近距離魔法で何度も切りつけ、合図とともにアリが射撃する。息の合った連携でも、精いっぱいの一撃でやっと1体を仕留めるのがやっとだった。
ところが、その堅実さすら霞ませる存在がいた。ミミである。木陰の駆け引きなどお構いなしに、後方から豪快に飛び出し、ピンク色の閃光を軌跡に引きながら敵へ一直線に突っ込んでいく。暗い森の中で、ミミの魔法だけが鮮やかに光り、敵を次々と倒していく。
一機に10体ほど消したという噂に、生徒たちは「ミミがいれば戦争なんて行かなくていいかも」と半ば本気で漏らす。やがて森の空には無数の閃光が飛び交うが、それはすべてミミ一人の仕業。一度の魔法でいくつもの敵を一瞬で薙ぎ払う姿は、もはや生徒の戦いというより、災害に近い。
紛れ込んだ「本物の敵」と、失われた左腕
1体も倒せないシーナと、記録係のハル
華々しいミミとは対照的に、シーナは息も絶え絶えだった。木の幹のふもとで休みながら、まだ1体も狩れていない。「私は私。3体、頑張って倒さなきゃ」と自分を奮い立たせるものの、実力の差はどうしようもなく開いている。
そんなシーナのもとに、記録係のハルがやってくる。生徒たちの撃破数を淡々と記録していく係らしい。10体倒せているのはミミだけで、まだ1体も倒せていない生徒もたくさんいる。その言葉が、シーナの焦りをいっそう深くする。
模擬戦の敵ではなかった——すれ違いざまに左腕を奪う影
その頃、教師たちは森のマップにひとつの不穏な反応を見つけていた。それは、シーナのいる場所だった。シーナ自身も何かの気配を感じ取っているが、姿は見えない。逃げようと木から飛び降りた、その瞬間だった。
彼女に迫ってきたのは、模擬戦のために放たれた仮想敵ではなかった。先日の戦闘の生き残り、本物の敵だったのだ。シーナはすれ違いざまに攻撃を受け、左腕を飛ばされてしまう。そのまま地面へと落下し、意識を失う。
シーナを襲った本物の敵は、駆けつけたミミによってあっけなく始末される。仮想敵に紛れて本物が混じっていた。そのことに、この場の誰もまだ気づいていない。無敵に見えたミミの強さが、初めて「守るための力」として意味を持った瞬間でもあった。
保健室の口づけ——腕を治したのは
見つからない腕、「新しいのを作るしかない」
場面は保健室へ。保健医のフランとセイランが、模擬戦に紛れ込んでいた本物の敵について言葉を交わしている。ベッドには、左腕を失ったシーナが横たわっていた。
そこへミミが入ってくる。「いっぱい探したけど、なかった」。切り落とされたシーナの腕を、ずっと探し回っていたのだ。腕が見つからない以上、フランは「新しいのを作るしかないわね」と静かに告げる。生徒の命が奪われていてもおかしくなかった状況が、彼女たちにとってはあくまで淡々と処理される日常であることに、ぞっとさせられる。
口づけで送る大量の魔力——一瞬で再生する左腕
具体的にどうやって治すのか。セイランの問いに、フランは事もなげに答える。「そりゃキスよ」。一度に大量の魔力を送り込み、修復を促す。それがこの世界の治癒の仕組みだった。冒頭の口づけと、まっすぐにつながる答えである。
眠ったまま目を覚まさないシーナに、ミミがそっと口づける。触れ合った唇の間からミミの魔力が漏れ出すと同時に、シーナの左腕が一瞬で再生していく。薄れゆく意識の中で、シーナは思う。傷つくのも、傷つけるのも、戦争そのものも嫌だ、と。
やがて目を覚ましたシーナの傍らには、ミミが眠っていた。腕はちゃんと生えている。フランが包帯を替えてくれるが、継ぎ目はまだ痛々しい。「先生が治してくれたんだ」。シーナはそう信じて、フランに礼を言う。誰が本当に自分を救ったのか、この時の彼女はまだ知らない。
私たちと同じだった——痛みを分け合う二人
オミ先生の謝罪、「自分の身は自分で守れ」
保健室を出た二人に、オミ先生が心配そうに声をかける。そして、深く頭を下げた。生徒の大切な命が奪われていてもおかしくない状況だった。それに気づかず模擬戦を実施したのは自分のミスだと、率直に謝罪する。
今は戦時だ。いざとなれば、自分の身は自分で守るしかない。その言葉を、常に心にとどめておくように。優しさと厳しさが同居したオミ先生の姿は、この学校が置かれた過酷な現実を、静かに突きつけてくる。
ミミも、痛くて怖い——そして明かされる、治したのは
自室に戻り、クッキーを頬張るミミ。シーナの傷口が見たいと無邪気にせがみ、自分も腕がなくなったことがあると打ち明ける。いつもすぐ敵に突っ込んでいくから、あちこちボロボロになる。でも、ちゃんと治るのだと。
強い魔法が当たると肉が裂け、血がいっぱい出て、目が見えなくなって、ひとりぼっちになっていく感じがする。ミミが語るその感覚は、シーナが左腕を失ったときに味わった痛みと恐怖と、そっくり同じだった。「痛くて、寒くて、このまま死んじゃうのかと思って、怖くて」。決して死なない秘密兵器と噂されるミミもまた、痛いのが嫌いで、怖いものは怖い。「私たちと同じなんだ」と、シーナの中でミミの見え方が変わっていく。
「フラン先生が治してくれなかったら、どうなってたんだろう」。そう漏らしたシーナに、ミミはきょとんと返す。「来たの、ミミだよ」。治したのはフランではなく、ミミだったのだ。あの、冒頭と同じ口づけで。驚くシーナに、ミミはもう一度キスを再現しようと顔を近づけ、「ダメ!」と止められたところで第2話は幕を閉じる。甘い日常で始まり、痛みを分け合う二人で終わる。強さの裏にある痛みを、静かに描いた回だった。




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