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社交界デビューを控えたルシアナに必要なのは、エスコート役の男性。メロディが「友人」として連れてきたのは、まさかの宰相家の貴公子マクスウェル・リクレントスだった。舞台は王城の春の舞踏会へ。妖精姫と呼ばれるルシアナ、天使と見まがう謎の美女「セシリア」、そして怒りの同性カップルダンスまで、見どころ満載の第3話だ




エスコート役は、まさかのリクレントス公爵家
「私の友人なんですけど」の破壊力
社交界デビューする令嬢は、エスコート役の男性を伴わなければならない。そんな決まり事をうっかり忘れていたルシアナが相談すると、メロディは「私の友人なんですけど、さっき偶然会ったんです」と、あっさり相手を見つけてきた。王都に来たばかりのメロディに知り合いは多くないはずなのに、と思いつつも、とにかく嬉しかったルシアナ。ところが屋敷に現れたのは「本日ご息女のエスコートを務めるマクスウェル・リクレントスです」と挨拶する社交界の人気者だった。
「あなたは、リクレントス宰相閣下の……」と絶句するルトルバーグ家の面々。「なんて聞いてない」というルシアナの心の叫びから、第3話は幕を開ける。
数時間前、メロディとマクスウェルの再会
物語は数時間前にさかのぼる。「もしかして、マクスさん?」「え、メロディ?」。二人はメロディがメイドになる前からの知り合いで、マクスウェルはメイドになる夢を後押ししてくれた恩人でもあるらしい(「その節はありがとうございました」)。ルトルバーグ家でメイドをしていると聞いた彼は「貧乏貴族、噂の幽霊屋敷の?」と驚きつつ、困ったことがあれば相談に乗ろうかと気遣いを見せる。
そこでメロディの口から出たのが、お嬢様のエスコート役が決まっていないという悩みだ。「いっそ私が男装して」と大真面目に検討し始めるメロディに、マクスウェルは思わず吹き出してしまう。「今笑うとこありましたっけ?」と首をかしげるメロディへ、笑ってしまったお詫びにと、彼はエスコート役を自ら申し出た。「君の助けになるなら、この右腕くらい、いくらでもお貸しするよ」。
恋ではない。けれど心地よい
マクスウェルは幼い頃から美少年と評判で、言い寄る女性や利用しようとする女性の多さに辟易し、積極的に人と関わらなくなっていた。だがメロディは違った。彼の美貌に頓着せず、貴族と知っても態度を変えない。その関係性が心地よい。「この気持ちは恋? いや、違うな」という内心のモノローグが、この青年の立ち位置を面白くしている。
かくして物語は冒頭に戻り、マクスウェルは「この屋敷のどこが幽霊屋敷だと言うんだ」と内心で突っ込みつつ、ルシアナをエスコートして舞踏会へ。ルトルバーグ伯爵はメロディにも「メロディも今夜は友人とパーティーだったかな。家に来てから一日も休んでないそうじゃないか」と、快く夜の外出を許すのだった。
転生者コンビの誤算。ヒロインがいない
前世の名で呼び合う王太子と悪役令嬢
場面は変わって、アンネマリーとクリストファーのやりとり。実はこの二人、6歳の頃に前世の記憶を取り戻した転生者同士だ。ここが乙女ゲーム『銀の聖女と5つの誓い』の世界であること、クリストファーは攻略対象の王太子、アンネマリーは悪役令嬢という役どころであることも、とうに理解している。「攻略対象の自覚が足りないのよ」「そっちこそ悪役令嬢なんだから王子には優しくしてくれよ」と、互いを前世の名前で呼び合いながら交わす応酬は、王太子と公爵令嬢というより完全に腐れ縁の友人のノリである。
当のマクスウェルに「君たちどうして正式に婚約しないんだい?」と不思議がられる始末だが、ナレーションいわく、ゲームでは婚約者同士の二人が正式に婚約していないのは「本人たちの努力の結果」。二人とも、シナリオ通りの未来を回避することに全力なのだ。
『銀の聖女と5つの誓い』と、不在のセシリア
二人の抱える問題は深刻だ。この世界には遠い昔に封じられた魔王がいて、対抗できるのは聖女の力を受け継ぐヒロインのみ。ゲームなら、学園に入学したヒロインが攻略対象と愛を育み、真の聖女の力を目覚めさせ、魔王は倒されてハッピーエンド……のはずだった。ところが、新入生名簿にヒロインの名前がない。ヒロイン「セシリア・レギンバース」は、学園に入学していないのだ。
そもそも「セシリア」という名は、ゲームではレギンバース伯爵が彼女を引き取った後につけたもの(母親が元メイドで、体裁が悪いからという設定)。つまり伯爵がまだヒロインを見つけていない以上、その名を持つ少女はこの世界のどこにもいない。銀の髪も瑠璃色の瞳もかなり珍しいはずなのに、なぜ見つからないのか。ヒロイン不在のまま、物語はシナリオの外へ滑り出していく。
メイドが舞踏会へ。ポーラのメイクとアルコバレーヌ
見違えるメロディ、赤面するレクト
一方のメロディには、この夜「友人とのパーティー」の約束があった。相手は、レギンバース伯爵に仕える護衛騎士レクティアス(レクト)。待ち合わせの前に、知り合いのメイドであるポーラの手でメイクを施され、メロディは見違えるように美しくなる。実家が女性向け化粧品を扱っていたというポーラの腕前に、メイドマニアのメロディも「本当にすごいわ、ポーラ」と感嘆しきりだ。
そして待ち合わせ場所。着飾ったメロディを前に、レクトは「とても、その、美しいと」としどろもどろ。日頃の生真面目な騎士ぶりとの落差に、思わず頬がゆるむ場面である。
行き先は王城。3日徹夜のドレスに敗北
ところが馬車の行き先を聞いてメロディは仰天する。向かう先は王城、それも王城で開催される「ちょっとした」春の舞踏会だという。主人の出席するパーティーに参加するメイドなんて聞いたこともありません、私は不参加に、と突っぱねるメロディに、レクトは切り札を出す。このドレスは、ポーラが寝る間を惜しんで作ったものなのだが……今日まで3日徹夜していたが、披露する機会はなしか、と。
ドレスのクオリティを見れば、ポーラの努力は理解できてしまう。メイドの鑑たるメロディがこれに勝てるはずもなく、「分かりました、出席します」。最初に言ったらまず間違いなく断られると思って黙っていた、というレクトの確信犯ぶりも含めて、実にうまい搦め手だった。
「あなたの髪と目の色、借りますね」
とはいえ、このままではお嬢様にバレてしまう。化粧でもはや別人だと思うが、と言うレクトに、メロディは「男性の目はごまかせても、女性はごまかせません」と断言する。さらにレクトから、よく考えたら君の黒髪と黒い瞳は珍しいから目立つかもしれない、と指摘されると、メロディは「あなたの髪と目の色、借りますね」と宣言。「万物よ我が身に染まれ、アルコバレーヌ」。魔法で髪と瞳をレクトと同じ色に変え、変装は完成した。
メイクはポーラ、色は魔法で自前調達。変装の仕上げまで完璧にこなすあたり、規格外メイドの面目躍如である。
舞踏会開幕。妖精姫と呼ばれるルシアナ
入場で覆した家名の評判
王城では春の舞踏会が幕を開ける。ヴィクティリウム公爵家のアンネマリーが、王太子クリストファーのエスコートで入場。続いてルシアナの番が来る。「き、緊張する。大丈夫だよね。歩き方もダンスもメロディに合格もらったもん」。会場からは「ルトルバーグ? 舞踏会で着れるドレスなんて用意できるのかね」と侮る声も聞こえてくる。
だが、その姿が披露された瞬間、嘲笑は驚嘆に変わる。貧乏貴族と侮られてきた家名の評判は覆り、ルシアナはのちに「妖精姫」と称されるほどの注目を集めた。そこへ「エスコート役はリクレントス公爵家より、マクスウェル・リクレントス様」のアナウンス。会場のざわめきは最高潮に達する。「ありえない」「マクスウェル様がエスコートですって」。
「ゲームでは一人だったはず」
誰より動揺したのは転生者コンビだ。ゲームのマクスウェルはこの舞踏会に一人で来て、ここで初めてヒロインと出会い、次の舞踏会でエスコート役を自分から申し出るはず。それが、よりによってルシアナのエスコートとして現れた。ヒロイン不在に続き、シナリオとの食い違いがまた一つ増えたことになる。クリストファーの「あいつ、仲のいい子はいないって言ってたくせに。裏切り者」という嘆きが可笑しい。
親友たちの尋問
ダンスが始まってしばらくすると、ルシアナには別の試練が待っていた。友人のベアトリスとミリアリアが詰め寄ってきたのだ。「こればかりはちゃんと説明してもらうわよ」「親友としてこれ以上の隠し事は認めませんよ」「さあさあ吐いちゃえ」。あのマクスウェルを連れてきた経緯を、洗いざらい白状させられる勢いである。
天使が舞い降りた。「セシリア」の名乗り
遅れて入場した謎の美女
そこへ、遅れてメロディとレクトが到着する。その姿は神秘的でどこか近寄りがたく、アンネマリーの持つ妖艶な美しさとも、ルシアナのような初々しい可憐さとも違う。目にした誰もがこう思った。この地に天使が舞い降りたのだ、と。
会場の令嬢たちが「今年の舞踏会はどうなっているのでしょう」「私たち、完全に空気ですね」とぼやくほどの注目ぶり。妖精姫に天使様と、この夜の主役の座は完全にルトルバーグ家の主従が持っていった。
レギンバース伯爵の心を揺らす名前
会場の片隅では、レギンバース伯爵が「もし娘が見つかっていたら、彼女もあの輪に加わっていただろうか」と目を細めていた。そこへ現れたのが、部下のレクトと「彼女」である。「そちらのお嬢さんはどなたかな」と問われたメロディは、とっさに「私はメロ……セシリアです。セシリアと申します」と偽名を名乗った。それを聞いた伯爵の胸中に去来するのは、いつか出会う娘に贈ろうと思っていた名前、という言葉。
アンネマリーたちが探すヒロインの名も「セシリア・レギンバース」。メロディが何気なく選んだ偽名が、探し人の名前とぴったり重なるこの符合は、間違いなく今後の火種だろう。伯爵が彼女に「髪も目の色も違うのに、どうしてそう感じたのだろう」と誰かの面影を見ていたのも意味深である。
夫人たちのからかいと、一発で見抜いたルシアナ
「セシリア」を連れたレクトは、貴族夫人たちの格好の的になる。普段パートナーを連れない男が、知り合ったばかりの女性を同伴してきた。「つまり、そういうことなのかしら」「次回も参加できるようにとなると、相応の立場が必要ですね」「貴族夫人の地位かしら」と、からかいは止まらない。だから同伴者など連れてきたくなかったんだ、とレクトは内心で頭を抱える。
その隣で、当のメロディは笑顔を貼り付けたまま非常に狼狽していた。髪と目の色まで変えた完璧な変装のはずが、ルシアナには「どこをどう見てもメロディじゃない」と一発で見抜かれていたのだ。目の前の夫人たちはごまかせても、毎日そばにいるお嬢様の目だけはごまかせない。「見られてる……睨まれてる……本当に気づかれてる」。
逃げるメロディ、追うルシアナ
「レクトさん!」、マナー違反のダンス
追い打ちをかけるように、夫人の一人が「セシリアさん、よかったら私の娘を紹介……」と言い出す。その娘とは、よりにもよってルシアナのこと。対面すれば正体露見は必至と、メロディは夫人の言葉を大声で遮り、「レクトさん!」とダンスに誘ってしまう。夫人の言葉を遮るのも、女性からダンスに誘うのも、本来は二重のマナー違反。それでも許されてしまうのだから、可愛いは強い。
実はルシアナも同じ頃、この後に控える「特別企画」の存在を友人たちから聞いてひらめき、こちらも作法を破ってマクスウェルをダンスに誘っていた。ナレーションいわく「再び可愛いが勝利した瞬間である」。主従そろって同じ反則技を使っているのが微笑ましい。
意中の女性と踊る護衛騎士
ダンスの最中、体が固いままのレクトに、メロディは「緊張しているんですか?」と無邪気に尋ねる。返ってきたのは、意中の女性からダンスに誘われて緊張しない方がおかしいだろう、という、ほとんど告白のような一言。そして口にした本人が、その言葉でメロディへの想いをはっきり自覚してしまう。当のメロディは「もしかしてダンスが苦手なんですか?」と綺麗に聞き流しているのが、また何とも切ない。踊るうちにレクトの胸中には「もう疑う余地はない。彼女は……」という意味深な独白もよぎる。何を確信したのかは、次回以降のお楽しみだ。
メロディはといえば「レクトさん、全然踊れるじゃないですか」「なんだか楽しくなってきちゃった」とすっかりご機嫌。会場からは「天使様も妖精姫も、どちらも本当に美しいダンスですわ」と、二人の少女を並べて称える声が上がっていた。
同性カップルダンスという罠
その傍らでは、アンネマリーが「みんなダンスに誘いすぎよ。ルシアナちゃんとまだ一言も話せてない」と不満顔。列をなす美少女たちとのダンスが楽しくなかったとは言わない、と白状するクリストファーに「きっしょ」と一撃を入れつつ、彼女自身は「この後のあれ」に狙いを定めている様子だった。
ダンスを終えたメロディは「早く帰らなきゃ」と会場を抜けようとする。だがそこへアナウンスが響いた。「春の舞踏会恒例、同性カップルダンスを始めます」。振り向けばそこには、怒りマークを浮かべたルシアナ。「さあ、私と踊ってくださいな」。逃げ場なし。変装天使メロディの命運やいかに、というところで第3話は幕となった。





















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