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第3話「決断」。柚子が玲夜とともに実家を訪ねたのは、祖父母との養子縁組に必要なサインをもらうためだった。待っていたのは謝罪を強いる父、花梨だけをかばう母、そして「かまってちゃんなの」と言い放つ妹。それでも柚子は自分の口で「この家に私の居場所はない。私はおじいちゃんたちの子になる」と告げる。さらに花梨の一言から柚子の怪我が瑶太の炎によるものだったことが明かされ、玲夜がついに動いた。




養子縁組のサインをもらいに、柚子は実家へ
玄関の内側では、祖父母と両親が言い争っていた
第3話のサブタイトルは「決断」。冒頭、実家へ向かう車中で、玲夜の秘書である荒鬼高道が書類の準備を報告する。「柚子様の養子縁組に必要な書類は全て用意しました。あとは両親と祖父母のサインをもらうだけです」。柚子が結ぼうとしているのは、両親との縁ではなく祖父母との養子縁組だ。
「お父さんお母さんは怒っているだろうか。それとも無関心な反応が返ってくるだろうか」。予測がつかず不安だらけの柚子を前へ進ませたのは、「勇気を出して。私は一人じゃない」という自分への言葉だった。
ところが家では、すでに祖父母と両親が言い争っていた。「柚子は俺の孫でもあるんだぞ」と食い下がる祖父に、母は「あの子は花梨に手を挙げたんですよ」。祖母が「それだけのことを花梨がしたんでしょう。それなのに柚子の話も聞かない。あの子だけを悪者にして」と返しても、花梨は「私はぶたれたのよ。なんでお姉ちゃんをかばうの」と譲らない。
★「抱きしめてくれるのは、お母さんではなくおばあちゃん」
柚子の姿を見つけた祖母は「怖かったわね」と抱きしめ、祖父も「無事でよかった」と表情をゆるめる。その光景に重なる独白が、この家族の形を一息に言い当てていた。
「いつも抱きしめてくれるのは、お母さんではなくおばあちゃん。よかったと安堵の表情を見せるのは、お父さんではなくおじいちゃん」。そして柚子は続ける。「もうとっくの昔に、両親は両親ではなくなっていたんだ」。
対する父の第一声は「柚子、何をしている。花梨に手を挙げたことを、まず謝りなさい」。花梨も「お姉ちゃんのせいで、いつもおばあちゃんたちと喧嘩ばっかり」「騒ぎを起こして家出するなんて、かまってちゃんなの」と畳みかける。誰ひとり柚子の話を聞こうとしない構図は、ここでも一ミリも動かない。
★柚子が、自分の口で告げた決断
「この家に私の居場所はない」
流れを変えたのは玲夜だった。「柚子をないがしろにしてきただろう」と迫られた母は、悪びれもせず「花梨は特別な子だから、優先するのは当たり前で」と返す。玲夜はそれを切って捨てた。「お前たちはそればっかりだ。花嫁だから、それがどうした。それが理由になるとでも思ったか」。
そのうえで玲夜は柚子に問う。「柚子、お前はどう思っているんだ」。ここが第3話の核心である。答えを口にしたのは玲夜ではなく、柚子自身だった。「ここまで育ててくれたことには感謝してる。だけど、この家に私の居場所はない」。
「今までずっと言えなかった、私の本当の気持ち」。そして柚子は言い切る。「私はおじいちゃんたちの子になる。ここにいたら、私は幸せになれないと思うから」。守られる側だった柚子が、初めて自分から選び取った瞬間だ。サブタイトルが「決断」である理由は、玲夜の行動ではなくこの一言にある。
振り上げられた手を止めた玲夜
父の反応は「この親不孝者が」と手を振り上げることだった。その腕を掴んで止めたのが玲夜である。「なんだ貴様は、離せ」と喚く父に続いて、母までもが「わがままもいい加減にしなさい。お母さんたちを困らせて楽しいの」と重ねてくる。
柚子の独白は静かだ。「いつだって悪者は私一人。お父さんもお母さんも、自分たちが悪いなんて微塵も思っていないんだ」。血の繋がった家族を捨てるほど追い詰められた苦渋も、「いつか自分も家族の一員として認めてほしい」と願い続けた時間も、この家の誰にも届いていない。玲夜が「お前たちは柚子にとって害悪にしかならない」と言い切ったのは、その直後だった。
★花梨の一言が暴いた、瑶太のしたこと
「お姉ちゃんみたいに炎で焼いちゃってよ」
ここで場をかき回したのが花梨だ。「誰だか知らないけど、他人がうちのことに口を挟まないでよ」「私は妖狐の狐月瑶太の花嫁よ。この家は私が支えているの」と胸を張り、「どうせお姉ちゃんが同情を引こうと、あることないこと言ったんでしょうけど」と決めつける。
瑶太が「花梨、やめろ」と制しても止まらない。そして飛び出したのが、この回でもっとも重い一言だった。「どうしてよ。こんな失礼な男、お姉ちゃんみたいに炎で焼いちゃってよ」。柚子が負っていた怪我は瑶太の炎によるものだったという事実が、あろうことか加害者の花嫁の口から、ためらいもなく明かされてしまう。
瑶太は玲夜に「どうしてあなた様が、この女の味方をするのです」と問うた。返ってきた答えは短い。「言ったはずだ、花嫁だと」。ネットでも「瑶太も瑶太なんだよ、花梨の言いなりになりすぎ」「ダメなことをダメってはっきり言ってやれよ」と、花梨に流されるばかりの瑶太を惜しむ声が目立った。
「俺の柚子に怪我をさせたから、ちょっとした仕置きだ」
玲夜が瑶太を霊力で焼く。柚子が「初めて見る氷のような顔」と息を呑むほど、その表情は普段と別人だった。同時に高道が「玲夜様、こちらは終わりました。あとはこれだけです」と書類を差し出す。
両親に向けた玲夜の言葉は端的だ。「俺を本気で怒らせる前に、サインした方が身のためだぞ」。サインは、こうして揃った。
後に玲夜はこう説明している。「少し霊力をぶつけたから気絶してるだけだ。狐ほどのあやかしなら、すぐに回復する」。そして「俺の柚子に怪我をさせたから、ちょっとした仕置きだ」。ネットに「スカッとした」という感想が並んだのはこの場面だが、柚子自身は「さっきの炎、怖かった」と正直に漏らしてもいる。
家を出て、新しい家へ
小さな鞄ひとつと、祖父母の願い
荷造りの場面が沁みる。持ち出したいほど思い出のあるものは、小さな鞄ひとつきり。それでも柚子は、「辛い時、悲しい時、あの家族と顔を合わせずに済む逃げ場だった」自分の部屋に「ありがとう」と告げて出ていく。
祖母との会話も忘れがたい。玲夜の炎が怖かったと認めたうえで、祖母はこう続けた。「でもね、あの人は柚子のために本気で怒ってくれてたわよ」。花梨のわがままはひどくなる一方で親たちは言いなり、柚子がつらい思いをしても自分たちには何もできなかった。その悔しさを抱えてきた祖母だからこその言葉であり、「鬼龍院さんが柚子を見る目は、とっても優しいのよ」と背中を押す。
別れ際、祖父は玲夜に頭を下げる。「あの子は優しい子です。そのせいで、何でも自分で抱え込んでしまう」「心配をかけまいと、辛いことも話さないんです」「じいさんなんて無力なもんです。肝心な時にそばにいてやれない」。玲夜の返事は「柚子のことは俺に任せてください」。高道も「花嫁様のご実家になるのですから」と、祖父母への護衛三人の手配を即決した。
★手のひらが返ったのは、柚子が去ったあとだった
柚子は両親にも言葉を残した。「今まで育ててくれたことには感謝しています。お世話になりました」。「もうきっと、この家でただいまは言わない」。向かった先は玲夜の自宅で、「本家の屋敷はここの何倍もあるぞ」という規模の邸宅だ。「柚子は俺の花嫁なんだから、今日からここはお前の家だ」「ようこそ柚子、俺の花嫁」と迎えられ、新しい生活が始まる。
押さえておきたいのは順序である。両親が態度を変えたのは、柚子が出ていったあとだった。目を覚ました瑶太が「あのお方は鬼龍院玲夜様。あやかしの頂点に立つ鬼のあやかしです」と説明し、「花嫁でもない限り、目の前で人が倒れていても道端の石ころのように通り過ぎる方だ」と語ったとたん、母は「柚子をどうにか家に戻せないの?」「今まで柚子を育ててきたのは私たちよ」と言い出し、父も乗ってくる。瑶太の答えは「無理です。あの方は、俺なんかが話せる人ではないんです」だった。
花梨も最後まで折れない。「認めないわよ。花嫁は選ばれた特別な存在。なのに、お姉ちゃんなんかが選ばれるなんて」「お願い瑶太、お姉ちゃんを連れ戻して」。瑶太自身は「手加減されたのは俺のためではなく、狐月や妖狐一族との関係を考えてのこと」と震え上がっているのに、である。実家を出てもこの家の問題は何ひとつ解決していないという引きを残し、玲夜の「たとえ相手が誰であろうと、俺の花嫁を悲しませる男は許せない」で幕を閉じた。




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