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電氣満月を実現し、前を向き始めた喜八。今回は、亡き夫への未練からふさぎ込む西陣織の錦屋の奥様を、電氣の発明で救おうとする新章の幕開けだ。鍵になるのは、亡き母への後悔を抱えた稲子の信じる心と、糸電話よろしく電気で声を届けるという目録の一項。そして最後には、洋輔が「君」と呼びかける清六のような姿が現れて、ネットが騒然となった第4話を振り返る。




動き出す洋輔と、守られた作業場
「本物があるはずだ」
目録が子供の落書きだったと自分の目で確かめたはずの洋輔は、それでも納得できない。小僧が満月を実現したのなら、「あの目録は偽物だったんじゃないか。きっとそうだ、本物があるはずだ」。妄執に取り憑かれた彼は部下を連れて作業場へ乗り込み、「本物を出せ」「あんな落書きで満月が作れるわけはない」と荒らし始める。
だがそこへ、屋台の男たちが立ちはだかる。正体は健吾の元部下だった軍人上がりの面々。仕事がないと聞いた健吾が作業場の周りに紹介していたのだ。「洋輔、お前も満月を見ただろ。様子を見てはどうだろう」という健吾の言葉にも、洋輔は「もういい!」と背を向けるしかなかった。
作業場ではみんなで冷やし飴や羊羹を囲む場面もあり、あんなに怯えていた弥治郎が輪に入ってお菓子を食べているのが嬉しい。電氣満月の一件は、確実に人の輪を広げている。
錦屋の奥様の、深い悲しみ
騒ぎの中で倒れかけていたのは、伝統ある西陣織の店、錦屋の若旦那だった。聞けば、店を切り盛りしていた奥様が商談で出かけている間に旦那様が倒れ、死に目に会えないまま帰らぬ人となってしまったという。それ以来、奥様は部屋にこもって祈り続け、店は傾く一方。そこへ三添商店の支店長が「時代遅れの職人なんか全員やめさせて、うちの蒸気織機を入れませんか? そうすれば借金はチャラ」と付け込んでくる。
食い下がる洋輔に稲子が「喜八さんには才能があります!」と言い返すと、それを聞いた錦屋の人々の目の色が変わる。声と背格好が似ているだけの若旦那ではなく、本当の旦那様に会えたら奥様はきっと元気になる。「旦那様と会わせてやってください! お願いします!」と、喜八は死者との再会という無理難題を頭を下げて頼まれてしまうのだった。
困っている人の願いがそのまま次の発明の題目になる、という新章の型が早速きれいに回り出す。公式の言う「発明☆奇想劇」の開幕にふさわしい導入だ。
信心の娘、稲子
満月のような酒と、信じる心
冒頭の回想は、幼い稲子と母の酒蔵の時間だ。「稲子はいい杜氏になれるわ」と目を細めた母は、こう教える。神様が宿ってくれないと、いいお酒にはならない。「満月のように、飲んだ人の心を明るくするお酒にはね。信じる心が大事。全てを尽くして、努力して、そして最後は神様を信じて祈る。それがいいお酒を作る秘訣よ」。
今週はオープニング映像まで稲子の幼少期、一番幸せだった頃の光景に差し替えられており、ちびっこ稲子の可愛さと合わせてネットの反応も沸いていた。サブタイトル「信心の娘」の名の通り、この回想が本話の全てを貫くことになる。
「お母さんともっと話したかった」
錦屋の奥様に感情移入して泣いていた稲子に、喜八は母のことを尋ねる。酒造りには厳しく、蔵の外では優しく抱きしめてくれた母。その酒は大人気で蔵も賑やかだった。けれど肺炎を患い、その冬に亡くなった。「今でも考えます。お母さんともっと話したかった。お酒造りのこととか、どこに旅行に行きたいとか、いろんな話がしたかった」。だから奥様には元気になって、若旦那たちともっとたくさん話してほしいのだと。
そして稲子は真っ直ぐに言う。「電氣満月だって作れました。喜八さんならきっと、奥様と旦那様を会わせることだってできます。うちは喜八さんを信じてます」。疑り深い喜八と信じる稲子という本作の軸が、ここで最高の形で噛み合った。
嫁入りが決まった身で母の酒造りの記録を探し、父に咎められる場面も挟まれる。彼女の「信じる」は、諦めの反対語なのだと分かる構成だ。
「できない。けど、できる」
九番の失敗と、糸電話の閃き
まず喜八が試したのは、目録の九番にある、お湯に電気を通して体を健康にする発明だった。死者と会うことはできなくても、これなら奥様を元気にできるかもしれない。だが試作品は「まだビリビリする」出来で、戦地を渡った目録はところどころ文字がにじんで読めない。「年寄りに危ないことさせられるかよ!」と、この案はお蔵入りになる。
それでも喜八は答えを出す。「亡くなった人と会うなんて、やっぱり絶対にできない。でも、悲しくなるって分かる未来を、放っとくこともしたくない」。翌日の宣言は「できない。けど、できる」。目録によれば、糸電話よろしく電気を振動に置き換えることで、遠く離れた相手と会話できる。声と背格好が旦那様に似た若旦那にその声を託せば、奥様に「旦那様との会話」を届けられるという作戦だ。
音の振動をどう電気に変えるかで行き詰まり、電気抵抗を変化させることに思い至って完成へ漕ぎ着ける工程も丁寧で、喜八の未来視が「電話」として描かれる演出も含め、発明パートの見応えは今週も抜群だった。
奥様との交信
一方の稲子は、何度断られても奥様のもとへ通い続けていた。「どうしてそんなに私に構うの」と問われて、絞り出した答えが「うちは…うちは、奥様に後悔してほしくないんです」。3年前に母を亡くし、その意味が分かった頃にはもう会えなかった自分の後悔を重ねての言葉に、奥様はついに折れる。「あなたみたいな、しぶとい人、今どきまだいたのね」「いいのよ。おかげで久しぶりに部屋の外に出たわ」。
そして装置の前へ。受話器の向こうから聞こえる声に、奥様は堰を切ったように語りかける。「京都一の店にしましょうって、あなたと約束したから頑張ってきたけど。私一人じゃダメで、くたびれちゃって」。返ってきたのは「無理しなくてもいい。君がいないと、周りの者が悲しむから」。奥様は涙を拭い、「私、やっぱり頑張るわ。この店は、あなたとの大切な思い出だもの」と立ち上がった。翌日には「まったくこの店は、私がいないとダメなんだね」と店を開け、錦屋に活気が戻る。
「信心の娘」まとめと考察
種明かしと、稲子のもうひとつの後悔
「亡き夫の霊と話せた」わけではない。喜八が種を明かす通り、話していたのは若旦那で、装置は離れた場所の声を電気で届ける発明だ。それでも、思わず「うちもお母さんと…」と口にした稲子に「そんなの無理だよ」と返す一連の流れが、この回の切なさの芯になっている。会えない人とはもう会えない。それでも奥様が生きる力を取り戻したのなら、この発明は本物だ。
若旦那からの「母が元気になりました。喜八さんが協力してくれたおかげです」という礼に、稲子の後悔もひとつ昇華された。電氣の才能が他者を救う力へ変わっていく流れに、ネットの反応も「ボロ泣き」の声が並んでいた。
洋輔が「君」と呼ぶ、あの姿
だが幕引きは不穏だ。見張りからの報告は「錦屋に亡き主人の霊現れたり。蓄音機に似たる道具で数分間交信する。本物の目録を持っている」。それを聞いた洋輔は、暗がりの誰かに語りかける。「君の弟が電氣目録をまた実現したんだ。この目録の本当の秘密を知っているのは、僕と君だけのはずだ。そうだろ? また一緒に、夢を追いかけるんだ」。
「君の弟」ということは、その相手は…。画面に映るのはまるで清六のような姿で、ネットの反応も「清六の人形?」「それとも…」と騒然となった。目録の「本当の秘密」という言葉も含め、洋輔の狂気の輪郭が見え始めた次回が待ち切れない。




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