この記事の作品:
空野は新歓コンパで、少し離れた席に冬月小春を見つけた。目が見えないと知った学生たちが席を移り、その一角だけ孤島のようになっていたのだ。後日、早瀬から講義のガイドを頼まれ、講義後の落とし物を拾ったことから、自販機で時間をつぶす仲になっていく。




新歓コンパでの出会いと、それぞれの背景
空野の浮いた存在感と戸惑い
本作は大学の新歓コンパから物語が始まるんだ。主人公の空野かけるは、どうにも周囲に馴染めずにいる。盛り上がる人たちの輪を遠巻きに見つめる姿が印象的で、まるで空気のような存在になっているかのようだ。
母子家庭で親戚の家を転々とするうちに「空気を読んで空気になる」のが処世術になった、と本人の独白で明かされる。そんな空野と対照的に、冬月小春は目が見えないながら「経験したことなかったんです」と新歓コンパに参加してみせる行動派。ただしその席は、彼女の目のことを知った学生たちが離れ、孤島のようになっていた。
ルームメイトの鳴海に引っ張られてその席に加わると、冬月は自分から「私、目が見えなくって」とあっけらかんと明かす。もし自分が視力を失ったら、あんな風に明るく振る舞えるだろうか。空野は冬月のことを「不思議な人」として意識し始めるんだ。
早瀬の登場と協力を求める声
冬月の隣にいたのは、入学式で仲良くなったという早瀬優子。障害のある学生の大学生活を補助する「学生ガイド」というボランティアで活動している行動派だ。そして、空野に冬月のサポートを頼むことになる。
月曜1限の「計算機科学」を空野も取っていると知っての人選で、その授業だけでいいからガイドをお願いできないか、という具体的な頼みだ。空野は「ちょっと考えさせて」と即答を避けるものの、連絡先はしっかり登録されてしまう。内心では「そういうことは苦手だって言いたかったのに」とぼやいているのが、いかにも彼らしい。
この出会いが、空野にとって大きな変化をもたらすきっかけとなるんだ。
ネット上でも「存在が浮いてる男と存在が消されてる女」という表現で2人の関係性が語られているのを見かける。それぞれの背景があるからこそ、興味深い展開になりそうだ。
講義での手助けから始まる交流
早瀬からの頼みと、最初の小さな距離感
新歓コンパの後、すぐに早瀬に声をかけられたんだ。冬月の講義を手伝ってほしい、と。正直、気乗りはしなかった。
自分から誰かに近づくのが苦手だから。返事は保留にしたけれど、気づけば同じ講義室で冬月の姿を探していた。声をかけるでもなく、少し緊張したな。
実際に近くで見る冬月は、想像以上に明るくて活発だった。しおりが落ちた時、咄嗟に拾って渡したんだけど、「拾ってくれたんですか。空野さんはいい人ですね」って、本当に嬉しそうに言ってくれて。
その瞬間、少しだけ冬月との距離が縮まった気がしたんだ。でも、同時に、自分の不器用さも痛感してしまった。どうすれば、冬月に自然に接することができるんだろう?
驚いたのは、冬月が声だけでこちらに気づいたこと。「空野さんってちょっと声が特徴的なんですよね」って、子供の頃からピアノをやっていて音感が鋭いらしいんだ。
落とし物を拾ったことから生まれた、自販機での時間
講義を終えた時のことだった。冬月の持ち物が転がり落ちて、「待って、拾うから」と咄嗟に動けた自分がいた。「鈴でもつけておけばよかったですね」と笑う冬月に、「転がって止まったら音鳴らないじゃん」と返すと、「あっ、そうですね」と屈託がない。ぎこちないやり取りなのに、冬月は全く気にせず明るく話しかけてくれた。
そして、「2限ありますか? ちょっと時間をつぶしませんか」と誘ってくれたんだ。驚いたことに、自分から断る言葉が出なかった。
どこへ行けばいいのか、何を話せばいいのか、あれこれ身構えたんだけど、向かった先は近くの自動販売機。冬月いわく「マイ自販機」だった。
知らない自販機は「ミルクティーが飲みたかったのにおしるこ」というロシアンルーレットになるから、ボタンを覚えた一台を決めておく。スマホはスクリーンリーダーと音声入力で使いこなす。そんな冬月の工夫と明るさに触れて、自分も何かを変えてみようかな、と思っている。
視覚障害という壁と、小春の強さ
閉ざされた心に触れる…小春との時間を通して
小春と過ごす時間は、今の自分にとってかけがえのないものになりつつある。新歓コンパでは、彼女の目が見えないと知った学生たちがすっと席を移っていった。それでも「経験したことなかったんです」と参加してみせる小春。その明るさの裏にある積み重ねを思うと、言葉に詰まるんだ。
「私たち視覚障害者って、案外みんなと一緒のことをしているんです」。「障害者」とやすやすと言い切ってみせる小春に、母子家庭のことを明るく話せない自分が重なって、心が揺さぶられたんだ。
今までずっと、他人を拒絶していた自分自身を見つめ直すきっかけになったよ。小春といると、自然と笑顔になれる。彼女の明るさと前向きな姿勢に触れていると、閉ざされていた心が少しずつ開かれていくような気がするんだ。
早瀬から冬月のサポートを頼まれた時も、正直気乗りはしなかったんだけど… 小春のために何かできることはないか、そう考えるようになったんだ。小春との出会いが、自分の人生を変えようとしているのかもしれない。
日常会話から見えてくる、二人の距離感
ぎこちない出会いと、意外な共通点
空野くんと冬月さんのぎこちなさ。特に新歓コンパでのシーンは、空野くんは盛り上がる周りの目を避けるように俯いてるし、冬月さんは明るく振る舞っているけど、少し寂しそうな表情もちらほら見えて…。
そんな中、早瀬さんが冬月さんの手助けを頼む流れで、2人がお茶をすることになるんだけど、この展開が予想外だったな。でも、ここから2人の関係が動き出すんだと思うと、すごく楽しみになってきたんだよな。原作は読んでないんだけど、この出会いのシーンがどんな意味を持つのか、気になっている。
あと、冬月さんが目が見えないことを知られて人が離れていったっていう話を聞いて、胸が締め付けられた。それでも前向きに生きている彼女の強さに、ものすごく惹かれる自分がいるんだよね。
手探りで見つける、小さな変化
お茶をしながらの会話も、ぎこちないながらも少しずつ距離が縮まっていくのが伝わってくる。空野くんは冬月さんのことを理解しようと努めているし、冬月さんも空野くんに心を開こうとしているように見えるんだよね。
特に印象に残ったのは、コンパ帰りに遠くで花火が上がるシーン。「空野さんの手って暖かいんですね」なんて一言にドキッとさせられたな。それに、冬月さんが「いつか友達と打ち上げ花火してみたい」って言った時の空野くんの反応も忘れられないんだよね。
「見えない世界でどうやって花火をするというのだろう」と戸惑いながらも、「不思議な人だ」と惹かれ始める空野くん。個人的にはこの2人の距離感が好きなんだよな。お互いの世界を少しずつ知っていく姿を見ていると、心が温かくなる。
これから空野くんがどう変化していくのか、すごく気になるし、冬月さんとどんな日々を過ごしていくのか、応援したくなっちゃった。




関連作品:














コメント