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2029年の日本。荒巻が汚職と犯罪の証拠を掴んでも、伊藤次官は亡命という抜け道で国外へ逃れようとしていた。そこへ熱光学迷彩で乱入してきたのが草薙素子である。特殊部隊設立を条件に手を組んだ二人が踏み込んだのは、戦災孤児の福祉施設を装った政府の洗脳施設・聖庶民救済センターだった。相手はゴーストを持たない人形。それでも子供たちに「未来を創れ」と告げる第1話を貫くのは、「そうしろと囁くのよ、私のゴーストが」という一行だ。なお部隊の正式な発足は次回に持ち越される。




2029年の日本と、荒巻が取り逃がした男
国際法の壁と、亡命という抜け道
第1話はいきなり強制捜査から始まる。踏み込んだ荒巻大輔が対峙するのは、極東通商代表部の代表、省務省の伊藤次官、そして組合幹部。狙いははっきりしていた。「やっと貴様を本国に送還できるだけの証拠を手に入れたわけだ」「前首相爆殺の件で、階段場所が漏れたルートについても詳しく供述してもらう」。
ところが相手の返しが上手い。「次官は私と同じ便に乗る。彼は亡命を希望し受託され、宣誓書にもサインしとる」。国際法に基づいて保護し連れ帰る権利がある、と主張されれば、国際テロ防止法に基づく身柄引き渡し要求も「書面が来たら検討する」で流されてしまう。「いいのか次官、暗殺されるぞ」という荒巻の警告も、「我が国は平和主義の文明国だぞ」で終わりだ。
なお本作の舞台となる日本は、首都が福岡、総面積37万7815平方キロメートル、総人口7600万人(2029年)という設定。ニューロチップに始まった電脳技術がマイクロマシンベースへ移行し、2029年の時点でAIやロボットに広く使われている——という積み重ねの上に、この会話が乗っている。
★熱光学迷彩で乱入してきたサイボーグ
膠着を破ったのは、その場にいなかったはずの何者かだった。熱光学迷彩をまとったサイボーグが姿を現し、状況を一瞬でひっくり返す。全天候型熱光学迷彩服は「隠れ蓑」という商品名で流通しているもので、この世界では実在の装備品として扱われている。
それが草薙素子だった。荒巻との関係もすでに取引の段階にある。「貴様が要求してた特殊部隊設立の予算審議会を通したぞ」と告げられ、草薙は「契約書もまだなのに?」と皮肉で応じる。「正式な特殊部隊の設立には公安部の協力が不可欠だわ」——この一言が、第1話全体の動機になっている。
聖庶民救済センターという名の福祉施設
「桜の24時間監視は中止! 出稼ぎだぞ!」
舞台は南新居浜四区、現地指揮所のコードネームは『水仙』。呼び出された部隊は「退屈で死ぬかと思った」と乗り気で、「よし! 桜の24時間監視は中止! 出稼ぎだぞ!」という号令が飛ぶ。電脳への潜入では「枝払いにウィザード電脳技師の攻勢防壁を使う」「チリチリするあたりがゴーストライン。それ以上は潜るな」と、危険な線引きが淡々と語られた。
公安部の説明によれば、聖庶民救済センターは「戦災孤児を引き取って生活、学習、職場を提供する福祉施設」。だが草薙が「じゃあ私らはお呼びじゃないよな」と帰りかけたところで、本題が出てくる。「ゴーストコントローラーがあるんです、少佐殿」。
★ゴーストコントローラーと、洗脳の実態
施設では洗脳を効率化するため新型のゴーストキーの開発まで行われており、公安はハッカーを潜らせて失敗していた。証拠も令状もないまま「大抵の犯人を捕まえ、逮捕することが目的です」と言い張る公安に、草薙は「強引に攻めさせ、法廷で私を叩く気かしら」と警戒を隠さない。
施設の内側も容赦がない。「食った分、寝た分、働かせてもらえる分、働け!」「働くのが嫌なら学習コースへ行け。両方嫌なら市民カードは申請してやらん」。そしてその学習コースの映像だけが存在しない。覗いた隊員が「ただの学習装置じゃねえか! ふざけやがって! 何がゴーストコントローラー!」と激昂するほど、表向きは巧妙に整えられていた。
警備の質も異様だった。「ここの警備員は相当改造した佐川重工の2033式だ。軍の特化隊が特注したやつだぜ」。闇手術の同型サイボーグで、官給品の光神経まで使っている。つまりこの施設は政府のお抱えだと、装備そのものが白状しているわけだ。
★突入、そしてゴーストのない人形たち
排水路から漏れた情報
草薙の腹は決まっていた。「どの道突入はスキャンダルになる。火の粉をかぶるのはどっかの政治家か、我々か、それとも子供らか」。そのうえで「スキャンダル工作に政治家の足の引っ張り合い、子供の洗脳……そういうクソ野郎どもを一掃するためにサルと取引したんだ」と踏み切る。
ところが突入直前、「大至急排水路を封鎖しろ」という敵の指示が飛ぶ。「なんで排水路だって分かったんだよ!」「情報漏れか!」——味方の側から筒抜けになっているという不穏さが、この回にはずっと漂っている。
★「俺が焼いたのは人工知能か?」
交戦のなかで、新米のトグサが撃てなくなる。「もう殺すのは嫌だ!」。だが相手は人ではなかった。「そいつはただのスピーカーだ。公安部が修理するさ」「ゴーストがないお人形が悲しいね。特に赤い血を流すタイプはな」。
バトーの違和感がさらに踏み込む。「妙だ。ゴーストが焼ける時の抵抗感がなかった。俺が焼いたのは人工知能か?」。赤い血を流し、人と同じ形をして、それでもゴーストを持たないもの——第1話はアクションの体裁を取りながら、シリーズの根本命題をこの一行で置いていく。
「そうしろと囁くのよ、私のゴーストが」
未来を創れ
制圧後、草薙は「電脳倫理侵害現行犯で逮捕する」と告げ、外に出してくれたのかと問う子供たちに、施設の正体を明かす。「あれは政府の洗脳施設の一つだ」。
そして投げかけるのが、この回いちばん熱い言葉だ。「悪質メディアに洗脳されながら、義務を果たさず福祉を喰らうか?」と突き放したうえで、「お前にだってゴーストがあるだろ。脳だってついてる。電脳にもアクセスできる。未来を創れ!」。洗脳装置を壊して回るのではなく、洗脳された側に自分で考えろと言い放つ。ここに草薙という人物の輪郭が出る。
取引は、決裂した
締めくくりは政治だ。大臣は「今からの提案にもあった、部隊設立の件だが、今回のようなことがあるとその……難しいなあ」と、設立をちらつかせて草薙を牽制しにかかる。
返答は短い。「公安部の使い走りになるくらいなら転職するわ」「部長? 縁がなかったわね」。つまり第1話の時点で草薙はまだ公安9課の人間ではなく、取引はここで一度壊れている。「そうしろと囁くのよ、私のゴーストが」という決め台詞どおり、彼女は最後まで自分の判断だけで動いた。部隊がどう立ち上がるのかは、第2話に持ち越される。

















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