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パラオ行きのパスポートを、妹の栞に人質に取られた。それを取り返すというだけの帰省が、列車の外国人コスプレイヤー、今村の暴走、園児服、そして睡眠薬で、どこまでも脱線していく。第2話は、奪還作戦がいつのまにか「今夜は兄が守る」という三文芝居に化けるまでの、まる一話まるごとギャグ回である。




妹キャラが欲しい今村と、審査で落ちる千紗
妹愛バンダナと、魔法少女Tシャツ
第2話は、走行する列車の中から始まる。伊織、今村、千紗の三人が、伊織の実家へ向かっている。
今村の格好が、いつにも増して危ない。大きくてかわいい魔法少女がプリントされたTシャツに、「妹愛」と書かれたバンダナ。どうやら旅のあいだ、妹キャラが欲しいらしい。開始数十秒で、この男は通常運転である。
そこで伊織が、従妹の千紗を「妹役」に推してみる。血が繋がっていないので好都合だ。ちなみに伊織と千紗が血縁でないのは、伊織の父が養子だからである。
審査の結果、千紗は却下
ところが、大変言いにくいんだが、と今村が切り出す。お前は条件をクリアできていないそうだ、と。
妹役に、審査があるらしい。そして千紗は落ちた。それ妙に腹立たしいんだけど、と本人が言うのも当然で、推薦された挙げ句に見えない基準で落とされている。
駅弁とビールで一杯やりつつ、千紗が飲み物を買いに席を立つ。ここまでは、平和な帰省の車内だった。
異様な外国人コスプレイヤーと、恋人詐称
ムキムキのピンク魔法少女
近くで外国人同士が言い争っていて、うるさい。伊織が軽く注意しようと振り向く。
その先にいたのが、とんでもない外国人の男二人組だった。片方は、筋骨隆々の体に、ピンクの魔法少女のコスプレ。もう片方は、水色の格闘家。むさい大男が可愛い魔法少女の格好をしている、その一点だけで、もう関わってはいけない見た目をしている。伊織は、注意する気を即座に失う。
そこへ、飲み物を買って戻ってきた千紗が、なぜかコスプレイヤーに跪かれてしまう。どうやら、彼らの琴線に触れる何かがあったらしい。
千紗が伊織を「恋人」と紹介してしまう
面倒を察した伊織は、腹が痛いのでトイレに、と離脱を試みる。ところが、そのタイミングで千紗が、伊織を自分の恋人だと紹介してしまう。逃げ場が消えた。
外国人コスプレイヤーは、これに激高する。お目当ての相手に恋人がいた、という筋書きらしい。矛先が伊織に向く。
この、面倒を自分から呼び込む千紗の立ち回りは、サークルの面々に囲まれて暮らしてきた成果なのかもしれない。誰も得をしていない。
オタクで意気投合、そして酒勝負
言葉は通じないのに、なぜか意気投合
激高するコスプレイヤーの相手を、今村が引き受ける。オタク同士、通じるものがあるのだ。
実際には、何を言っているのか微塵も分からない。それでも今村は、相手と同じリアクションを返し続けることで、見事に意気投合してしまう。言葉が分からんでも通じるだろ、という理屈である。通じてはいけない気もするが、通じている。
日本人は酒が弱い、と煽られて
和んだのも束の間、矛先はまた伊織へ戻る。今度は酒勝負だ。日本人は酒が弱い、と煽られ、伊織は意地で勝負を受ける。
この伊織、スピリタスをビールと間違えて飲み干すレベルの底なしである。煽った側が気の毒になってくる。
そこへ連れの外国人女性が現れ、コスプレイヤーをたしなめて平謝りする。事態はいったん収束する。したはずなのに、なぜかまた言い争いが始まる。この一団、静かになる瞬間が無い。
北原旅館と、パスポートを握る妹・栞
家を継ぐまで、絶対に返しません
場面は変わって、北原旅館。栞の部屋である。
栞は、兄のパスポートを握りしめて、何かを画策している。家を継ぐというまで絶対に返しません、クソ兄貴——。物騒な独り言だが、要するに、兄をパラオへ行かせたくない一心である。伊織はパスポートを忘れたのではない。妹に人質として取られているのだ。
そこへ三人が到着する。自己紹介から、もう荒れる。今村が塩をまかれながら「伊織の本当の兄です」と名乗り、伊織の父は父で「認知はしない」などとゲスなボケを挟んでくる。北原家は、旅館の主人からしてこの調子だ。
継いでほしい妹と、行きたい兄
伊織が本題を切り出す。パスポートを返してほしい、と。だが栞は持っていて、頑として返さない。兄様はここで過ごすんです、これから一生——と、なかなか怖いことを言う。
どうしたら返してくれるのか、と問えば、日々の生活を顧み、精進を怠らず……と、具体性のまるで無い条件が返ってくる。要するに、返す気が無い。
兄を旅館の跡取りとして縛りつけておきたい妹と、どうしてもパラオに行きたい兄。パスポート一枚をめぐる、実にくだらない、しかし本人たちは大真面目な攻防が始まる。
ガツンと言ってきてやる(絵面は土下座)
誠意を込めて、点数を稼ぐ
父母がいなくなり、伊織は千紗と今村に相談する。返してもらうにはどうするか。誠意を込めてお願いするか、いいことをして点数を稼ぐか。要するに、ご機嫌取りだ。
あんなの拗ねてわがまま言ってるだけだろ、と苛立つ伊織は、兄貴としてガツンと言ってきてやる、と勢いよく乗り込んでいく。
言葉はガツン、絵面は土下座
いい加減にしろ、栞。——威勢のいい台詞とは裏腹に、その姿は完全に土下座だった。靴も舐める、とまで言っている。ガツンと言ってきてやったぜ、と戻ってくるが、誰がどう見ても屈服である。
当然、パスポートは戻らない。精神的には手に入れたも同然、と言い張る伊織に、今村が冷静に指摘する。残念ながらパスポートは物質だぞ、と。
そこで伊織は、栞の部屋に忍び込んで盗み出す、という強行手段に踏み切ろうとする。ここから今村の、長い長い作戦計画が始まる。
同じ宿の外国人コスプレイヤーと、園児服
ご機嫌取りのコツは、注意深い観察にある
今村のご機嫌取り理論が、とにかく物騒だった。対象にバレないよう変装し、できるだけ近くで相手の生活すべてを記録し、その記録を分析して趣味嗜好を調べ上げる——。
それはもう、ご機嫌取りではなく、ストーカーである。案の定、栞をつけ狙う変態が出た、という話になり、しかもよく聞くと今村自身のことなので、変態が二人に増える。北原、自首するのか、と伊織にツッコまれる始末だ。
園児服と、一緒に逃げる今村
ところが、なぜか同じ宿に、あの外国人コスプレイヤーがいる。しかも千紗と栞を見るや、園児服を渡し、謎の外国語でほめたたえ始める。
伊織が止めに入ろうとするが、隣で今村が葛藤している。同族なので、魂があの連中を応援してしまっているのだ。妹一人守れなくて何が兄様だ、と言われても、いやお前赤の他人だし、と伊織のツッコミが追いつかない。
伊織がなんとか止めたところで、ちょうど警察が通りかかる。すると外国人コスプレイヤーと、なぜか今村が、一緒に逃げていく。味方が一人、敵側へ走り去った。
カリーナの謝罪と、温泉の救出妄想
見取り図を、なくす
残された伊織のもとへ、列車で平謝りしていた連れの女性が現れる。サークルの友達で、カリーナと名乗る。二人がまた迷惑をかけたことを、丁寧に謝ってくれる。この一団で唯一の常識人である。
ところがその直後、伊織は館内の見取り図を落としてしまう。もし奴らがこれを拾ったら、栞の部屋への案内図になってしまう。自分で危機の種をまいてしまったわけだ。
温泉で、自作自演の救出劇を妄想する
ここから後半は、伊織と今村が温泉に浸かりながら、それぞれの救出妄想を垂れ流す時間になる。
筋書きはこうだ。外国人コスプレイヤーが栞に迫る危機を演出し、そこへ自分が颯爽と現れて、シオリには手を出させんぞ、と助ける。栞は、兄様、ありがとうございます、と感謝する——というのが狙いなんだが、と語ったそばから、いや無理だろ、と相方に却下される。
今村の見立てでは、片言英語の応酬を経て、最後は「リモートは俺が守る」と救出するらしい。だが、その妄想のオチとしてこう突っ込まれる。その前にお前、栞の部屋で何してるんだよ、と。助ける前提として、すでに部屋に侵入している。要するに、危機も救出も自分で用意する、完全なマッチポンプなのだ。
すり替わった着替えと、三文芝居のフィナーレ
着替えが園児服、父も一緒に着る
温泉を出て着替えようとすると、伊織の着替えが園児服にすり替わっている。着てきた服はどこにも見当たらない。ならそれを着るしかないだろ、と言われても、絶対に嫌だ。
そこへ父が現れ、なら父さんも一緒に着るしかないか、と斜め上の連帯を見せる。この親にしてこの家、という光景である。
そうこうするうち、栞に危険が迫っていることを察知し、今村と伊織は栞のもとへ急ぐ。
昏倒した外国人と、「今夜は兄が守る」
駆けつけると、外国人コスプレイヤーが、なぜか昏倒している。通りかかった北原父が、その近くに薬品を染み込ませたハンカチを発見する。かわいい妹の栞が、睡眠薬で先に片をつけていたのだ。物騒な子である。
そして父は、栞と目が合った瞬間、なぜか自分も昏倒する。事情は語られない。この家では、いちいち理由を求めてはいけない。
ここから、今村と伊織の三文芝居が始まる。こういう客がいると危ない、だから今夜はお兄ちゃんがお前を守る——伊織が、いかにも兄らしいことを言う。だが本音は、そう言って栞の部屋に泊まり込み、隙を見てパスポートを奪い返すことだ。
全て計画通り、これでパスポートゲットだぜ、と伊織が息巻く。そこへ今村が一言、逮捕はどうする、と冷静に返す。結局この兄も、栞のことをまるで言えたものではない。第2話は、ここで幕を閉じる。海にはまだ、一度も潜っていない。




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