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空き教室からの脱出でスタートした第2話。だが本題は、綾が美緒を自室に招いて挑む、誰にも見られない夜の格ゲー再戦だった。「好きなことを全力でやれば輝いて見える」。美緒のその一言が忘れられない綾は、白百合さまと呼ばれる彼女を叩き潰さずにはいられない。校則違反の背徳感と、シーツの下でのドキドキ。二人だけの対戦が加速していく回。




脱出の翌日と、緊急集会
窓ガラスの一件と、残された「1年生のリボン」
第2話は、1話ラストの脱出の直後から動き出す。用務員に見つからないよう空き教室の窓ガラスを割って飛び出した綾と美緒。無事に逃げおおせ、美緒は「また明日」と言い残して去っていく。翌日、綾が例の資料室(秘密の対戦場所)を訪れると、扉にはしっかりと鍵がかかっていた。
追い打ちをかけるように、1年生全員へ集会の放送が入る。集会室に集められた面々を前に、寮務委員会会長の藤宮森野が事の次第を告げた。昨日の放課後、特別教室棟1階の窓ガラスが何者かに割られた。現場には、1年生のリボンが一つ残されていた。それは言うまでもなく、綾たちが逃げ出したときの痕跡である。
挙手なき連帯責任、冷静に損得を測る綾
会長が「お心当たりのある方は」と問いかけても、名乗り出る者などいるはずもない。結局、1年生全員の連帯責任として、1ヶ月間、朝の点呼前に寮内を掃除することが言い渡される。周囲のお嬢さまたちは「黒美女子にそんな野蛮な人が」「1時間も早く起きないといけないなんて」とざわめいた。
自室に戻った綾は、自分の置かれた状況を冷静に分析する。他の1年生に迷惑をかけ、一歩間違えば退学。リスクとリターンがまるで釣り合っていない。「悪いね、白百合さま。論理的に考えて、今、格ゲーをやるのはなし」。そう結論づけたはずだった。
ルームメイト・夏目と、胸に引っかかる美緒の言葉
突然の抱きつきと、勉強を教える夜
思考に沈む綾に、ルームメイトの夏目(ナツメ)が突然飛びついてくる。かなり驚いた綾は「密着間合い、やめてくれ」と苦笑い。ナツメに勉強を教えるのが、二人の日課らしい。速度と速さの違い(速度は向きも含むこと)を教えながらも、綾の胸には何かが引っかかっていた。
「そんなにお勉強ができるのは、やっぱりお勉強がお好きだから?」というナツメの問いに、綾は「好きってわけじゃないけど、嫌いじゃない。パズルみたいに無心でずっとやれる」と答える。何気ないやり取り。だがその『好きなことに無心で没頭する』感覚こそ、綾がずっと蓋をしてきたものだった。
「好きなことを全力でやれば輝く」——蘇る感情
翌日、綾は体育の授業中もぼんやりしてしまう。頭を離れないのは、昨日の美緒との会話だった。「どうしてそんなに輝けるの?」と尋ねた綾に、美緒はこともなげに答えたのだ。「自分の好きなことを、ただ全力でやる。そうすれば、自然と輝いて見えるものじゃないですか?」と。
ガラスをぶち割った衝撃で封印が解けたように、綾の中で眠っていた感情が鮮烈さを取り戻す。この先の人生、あの頃のように夢中になれるものなんてないんじゃないか。その不安と恐怖から、あえて格ゲーとは真逆の道を選んだ綾。普段なら笑って流せる浅い一言のはずが、圧倒的な容姿とオーラを持ち、ただ純粋にゲームを楽しむ美緒の口から出たそれは、綾を否応なく突き動かす。格ゲーはやめる。やめるが、その前に、こいつの心を粉々に破壊しておこう。そんな物騒な対抗心が、静かに燃え上がっていた。
今夜だけ、部屋を貸して
廊下で捕まえた美緒と、勘違いする夏目
決意した綾は、廊下で会った美緒をそのまま自室へ連れてくる。そしてナツメに頼み込んだ。理由は聞かないでほしい、今晩だけ白百合さまの部屋で寝てもらえないか、と。ナツメは「というか、お二人は交友が終わりだったの?」と目を丸くしつつも、了承してくれる。
とはいえ、綾が美緒を部屋に連れ込み、ルームメイトを追い出すという状況。ナツメの想像は、盛大に明後日の方向へ転がっていく。「私、お邪魔ですよね!」とばかりに真っ赤な顔で部屋を飛び出していった。この気を利かせすぎるルームメイトの可愛さも、しっかり見どころになっている。
逆恨みの再戦、ゴングが鳴る
「ただの逆恨みだってことを、とりあえず潰す!」。真っ暗な部屋の中、二人だけの格ゲー対戦が幕を開ける。ちなみに本作、ストリートファイターを思わせるゲーム画面がとにかくリアルで、まるで実機の映像を見せられているよう。手元や表情のカットを挟みながらも、進行の主役はあくまでゲーム画面という、格ゲー愛にあふれた演出になっている。
綾の狙いはシンプルだ。あの言葉で乱された心を、勝利で叩き潰す。ただの八つ当たりだと自分でも分かっている。それでも、迷いを抱えたまま進むのは効率が悪すぎる。「迷わないために、明日のために。白百合、お前を否定する!」。綾は自らにそう言い聞かせ、画面へと集中していく。
暗い部屋の対戦と、シーツの下の鼓動
無敵技と置き攻め、息詰まる読み合い
対戦は、息が詰まるほどの猛攻の応酬になる。波動拳を撃つと見せかけてしゃがみ中パンチでパリィを誘う綾に対し、美緒は発生と同時に無敵時間を持つ『無敵技』で強引に切り返す。ガードされれば特大の隙を晒す諸刃の剣を、美緒は平然と振ってくるのだ。
氷のような静けさで盤面を支配したかと思えば、唐突に狂ったように攻め込んでくる。捉えどころのない美緒の戦い方に、綾は一生分振り回される。ワンミスを突いて綾が一本取れば、次は綾の猛攻をしのぎ切って美緒が取り返す。セットカウントは、ついに4対4。「なんでそんなに勝ちたいんだ。あんた、この勝負に何もかかってないでしょ」。綾の問いに、美緒は答えない。
廊下の足音、一枚のシーツの下で
そこへ、廊下から足音が近づいてくる。二人は瞬時にゲームを閉じ、同じベッドで一枚のシーツを被ってやり過ごす。密着した暗がりの中、美緒がぽつりと指摘した。「心臓、すごくドキドキ言ってますけど」。それが対戦の緊張なのか、この距離のせいなのか、綾自身にもよく分からない。
足音が去り、対戦が再開する。そのとき綾は、ふと思い出す。勝つためでも、何かのためでもなく、訳もないのにただ勝ちたかった、あの頃の全力の楽しみ方を。そして迎えた最後の1セット、綾はついに勝利の雄叫びを上げた。ところが美緒はというと、何も言わずに、そのままコテンと眠ってしまう。思い通りにいかないと泣き、明日のことなど考えず、今この瞬間に勝つことがすべて。美緒はまるで小学生のようだ、と綾は悟る。渾身の勝利は、拍子抜けするほど手応えがなかった。
すれ違いと、海の見える公園
目も合わない翌日、去っていった友達の記憶
翌日、廊下で美緒とすれ違っても、互いに目も合わない。もやもやを抱えた綾は、海の見える公園のベンチで一人、物思いにふける。なぜか思い出すのは、昔、ゲームから一人また一人と去っていった友達のことだった。「ゲームもいいけど、今度はサッカーで勝負しようぜ」。そうやって、みんな大人になっていった。対戦は、一人ではできないのに。
かつて夢中になったものが、周りの成長とともに色褪せていく。あの寂しさが、綾を格ゲーから遠ざけた理由の一つだった。だからこそ、いまも純粋にゲームを楽しみ続ける美緒の姿は、綾にとって眩しくもあり、少し腹立たしくもある。
芝生の上の再戦、脳内トレーニングの成果
そこへ、急に美緒が隣に現れる。「なんでいるんだ」と驚く綾に、美緒は当然のように返す。「決まってるでしょ、対戦ですよ」。犬の散歩をする主婦や、ボール遊びをする子供たちが見守る公園の芝生の真ん中で、二人はまたも夢中でストリートファイターに没頭していく。
対戦の途中、綾は美緒が急に強くなっていることに気づく。読み合いの精度が段違いなのだ。いつ練習したのかと問えば、美緒は涼しい顔で言ってのける。「脳内トレーニングです。授業中、どうせ暇なので」。例の教室が使えず、練習する場所も時間もなかったはずなのに、頭の中だけで一日中鍛えていたという。底知れない相手を前に、綾の闘志にあらためて火がつく。「次は、倒す」。
「私の名前は夜絵美緒です」
白百合さま、という呼び名が嫌い
Cパート。対戦の話の流れで、綾が何気なく「白百合さま」と呼ぶと、美緒はぴしゃりと遮った。「その白百合さまとかいう、完全に終わってる呼び方、やめてもらえます?」。お嬢さまたちが、マリア様に捧げる花にちなんで勝手につけたあだ名。百合っぽい世界観が好きなのは自由だが、勝手に名付けてその世界に強制的に引きずり込むのは本当にやめてほしい。美緒は一ミクロンの躊躇もなく毒を吐く。
整った容姿と気品から白百合さまと呼ばれる彼女の、あまりのギャップ。あいつらは謎に声が大きすぎる、せめて自分に聞こえないようにしてほしい、と愚痴は止まらない。お嬢さまの理想像として祭り上げられることへの、これは美緒なりのささやかな反抗でもあった。
ぼっちの高校生活と、差し出された友達
あの調子のせいで高校でも友達作りに失敗して、またぼっちだ。そうこぼす美緒に、綾はさらりと言ってのける。「いいじゃん。私が友達になってあげるからさ」。怪訝な表情を浮かべる美緒。海の見える公園で、二人の間に『友達』という言葉が、ぽつりと転がった。
そして美緒は、静かに名乗る。「夜絵美緒です。私の名前」。白百合さまでも、お嬢さまでもない。ただ全力でゲームを楽しむ一人の少女として、美緒は綾の前に立っていた。過去と訣別したはずの綾を、美緒の純粋さが少しずつ引き戻していく。勝っても手応えのない対戦を重ねながら、二人は勝ち負けの向こう側で、確かに『友達』になっていく。訳もなく勝ちたかったあの頃の熱を、綾はもう一度、取り戻し始めていた。























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