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春の宴では、ローゼマイン考案の教材で子供たちの学力が急上昇し、エーレンフェストは“順位を上げる”戦略へ動き出す。そして本題はハッセ。罰は今年の祈念式の取りやめと10年間の増税、町長は反逆者として処分と決まった。フェルディナンドが“選別の扉”で害意ある者をはじき、闇の神への詠唱で処刑を執行する——その重い場面を、ローゼマインは領主一族として見届けねばならない。疲れ果てた彼女を救ったのは、父ギュンターがそっと掛けたマントだった。




春の宴と、エーレンフェストの新たな戦略
学力を押し上げた、ローゼマインの教材
冬の主を倒し、ようやく一つ目の素材を手に入れたローゼマイン。季節は移り、雪解けを祝う「春をことほぐ宴」が開かれる。宴では貴族院の優秀者の発表と記念品の授与、そして成績発表が行われた。
そこでジルヴェスターが語ったのは、この冬、子供たちの学力が大幅に上がったという成果だ。ビルフリートとローゼマインが子供部屋に加わった影響はもちろん、ローゼマインが考案した教材の効果が大きいと評価される。
カルタと絵本を“武器”に、順位を上げる
この流れを作ったのは、護衛騎士ブリギッテの一言だった。「ローゼマイン様が貴族院に行く頃には、カルタと絵本が大流行するのでは」。他領にはもっと高く売りつけてよい、新しい流行を発信することでエーレンフェストの立場を強められるという進言である。
背景にあるのは順位の問題だ。ユルゲンシュミットの中でエーレンフェストの順位は真ん中あたりだが、それは政変に負けて失脚した領地が順位を落としただけで、エーレンフェスト自体に影響力があるわけではない。順位を上げるにはまず学力を上げる必要があり、当面のあいだ教材は他領に伏せ、貴族院への持ち出しも厳禁と定められた。
ハッセに下る罰と、“聖女”という策
祈念式の取りやめと、10年間の増税
冬の社交が幕を閉じ、話はいよいよハッセの処罰へ移る。祈念式は土地に魔力を満たす儀式で、行わなければ収穫量が落ち、農民にとっては死活問題だ。だが一度きりの取りやめでは罰として軽すぎる。町を取りまとめる者が失敗すれば共同体の責任であり、小神殿への襲撃は重罪なのだ。
ローゼマインはできるだけ多くの民を助けようと処罰の内容を練り直し、養父の許可も得ていた。しかし「なるべく多くの民を助けたいという君にとっての最適解は理解したが、あれでは他に示しがつかない」と告げられる。ハッセへの罰は今年の祈念式の取りやめと10年間の増税、そして町長は反逆者として処分と決まった。
噂で町長派を孤立させ、“聖女の慈悲”を宣伝させる
この裁きには周到な地ならしがあった。冬のあいだに「責任を取る者が必要だ」という噂を流し、ハッセでは町長派が完全に孤立していたのだ。町民たちのあいだでは「新しい神殿長は領主様の娘で、聖女と言われるほど慈悲深い方だ」「神殿長に取りなしを頼むべきだ」という声が広がっていた。
さらにフェルディナンドはローゼマインにこう命じる。「ハッセにはそなたが赴き、罰を公表してくるがよい。聖女の慈悲により罰が軽減されたと宣伝してこい」。自分で自分を慈悲深い聖女だと言わねばならない役回りに、ローゼマインの気は重い。だがこの構図こそ、町のローゼマインへの忠誠心を決定的に強くする策でもあった。
ハッセにて、開かれる“選別の扉”
町長の命乞いと、フェルディナンドの断罪
ハッセに着いたローゼマインは、父に潰さないでほしいと願ったこと、それでも小神殿への攻撃は領主一族への反逆であること、しかし町長に脅され騙された者もいるだろうことを語り、罰の内容を公表する。力が及ばなかったと詫びる彼女に、町民は「町ごと消されなかっただけで十分です」と頭を下げた。
ところが引き出された町長は「私は知らなかったのです」「すべては町を守るためであった」「無知な私にお慈悲を」と命乞いを始める。情に揺れたローゼマインが言葉を挟みかけると、フェルディナンドは「これでは処分しづらくなる」と制し、こう断じた。
「町長という貴族と接する立場にいて、知らぬはずがない。そなたが知らなかったのは、罪を隠し取り繕ってくれるはずの前神殿長が亡くなった、ということだけだ。そなたは知っていて、町の者に小神殿を襲わせた」。ネットでも、後悔の色を見せない町長の妻の“往生際の悪さ”が強く印象に残ったと話題になった。
害意ある者をはじく扉
続いてフェルディナンドが取り出したのが「選別の扉」だ。くぐり抜けさせることで、害意や悪意がある者だけをはじき出すという魔術具である。「罪をかぶるのは町長一人で」と庇おうとする声が上がる一方、町民自らが「いいえ、選別してください」と願い出た。
「危険な人物を排除しなければ、明日はまた窮地に陥る。これ以上、領主様から疑いの目を向けられるわけにはいかない」。扉にはじかれたのは、町長と、小神殿襲撃に加わった町民、そして町長の妻だった。町民たちは「潔白を証明してくださった神官長に感謝しております」と、処分を静かに受け入れる。
処刑の魔術と、父のマント
詠唱するのはフェルディナンド、見届けるのがローゼマイン
ここで運び込まれたのが、ハッセの登録証、つまり平民が洗礼式のときに領民登録するメダルの入った箱だ。本来は城から出さないものだが、処分の規模が読めなかったため持ち込まれた。ユストクスが血判を取り、登録証の選別を進めていく。
そして処刑が執行される。闇の神へ祈りを捧げ、小声で詠唱を唱えるのはフェルディナンドだ。ローゼマインは「領主一族として、この処分を見届けなければならない」と告げられ、目を逸らすことを許されない。処刑の魔術は領主候補生のみが教えられるもので、彼女もいずれ覚えることになるという。
印象的なのは温度差である。未知の魔術を目にして興奮するユストクスと、具合が悪くなるほど嫌悪するローゼマイン。この世界の生死観の隔たりが、静かに突きつけられる。同時に、最も苦しい役を一手に引き受けたフェルディナンドの姿を、神官長なりの優しさと受け取る声も多かった。
「お父さんの匂いだ」
すべてが終わり、ローゼマインの顔色は明らかに悪かった。フェルディナンドは休めるよう整えるよう指示し、締めくくりにこう告げる。「来年の祈念式が行われるか否か、重要なのはハッセの行いです。一年ならばなんとかしよう。償いの心があることを、皆の行いで示してください」。
そんな彼女に、寒そうに見えるからと差し出されたのが父ギュンターのマントだった。「お父さんの匂いだ」。その日ローゼマインは父のマントに頭からすっぽりくるまって眠り、嫌な夢は見なかった。最後は洗浄魔法ヴァッシェンをめぐる軽やかなやり取りで幕が下り、重い回を笑って見終えられたと安堵する声が並んだ。




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