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第15話「行く年来る年」。大晦日、目的もなく会った二人の口から「最初に連絡先を聞いた時、僕も好きだったからね」が飛び出す。そして元日、いとこ一家が来られなくなった谷家に鈴木が招かれた。髪を黒く染め、ロングスカートを履き、菓子折りを抱えて臨んだ訪問はプチ失敗の連続で、とうとう鈴木は泣いてしまう。急に呼んだ理由を尋ねられた谷の答えが「家族と喋ってる時に顔が浮かんで、ここにいたらいいなって思った」。冬休み最終日には、みんなで少し遠い神社まで初詣に出かける。




大晦日、「もう会いたかっただけだから」
一年前は、まだ知り合いですらなかった
第15話は大晦日から始まる。用があって集まったわけではない。「目的なく集まっちゃったけどどうしようかね」に返ってきたのが「もう会いたかっただけだから」で、この一行で二人の一年が要約されてしまう。
話題は自然と振り返りになる。「今年の初めって、私たちまだ知り合いですらなかったって思うと変な感じしない」「席が隣になるまで、あんまり話したこともなかったしね」「私は一方的にチラチラしてたよ」。「ほんと忘れられない年になったな」という鈴木に、谷も「僕も」と頷く。ちなみに「もし私が将来車を買ったら、ナンバープレートを今年の西暦にしちゃうかもな」には「ごめん、それは思ったことない」と即答されている。
「最初に連絡先を聞いた時、僕も好きだったからね」
鈴木が「片思いを成就させたという奇跡のような喜びは、告白した側にしかわからんめえよ」とふざけると、谷は「何その言い方」と受けたうえで「どっちが先に好きになったかなんてわからないでしょ」と返す。そして「言っとくけど、最初に連絡先聞いた時、僕も好きだったからね」。告白した側だけが特別だと思っていた鈴木の前提が、ここで静かに崩される。
勢いで「いつから私のことを好きになったの」と聞いてしまった鈴木への答えが、いかにも谷らしい。「記憶にないんじゃなくて、気持ちを自覚した瞬間と、今思えばもう好きになってたんだろうなって時期にズレがあって、しかもじわじわ気持ちが変わっていったから、明確にいつとは言えない」。誠実に答えようとした結果、聞いた側の心臓に一番悪い形になっている。
初詣の予定を確認すると、谷の家は元旦にいとこ一家が来るのが恒例で、初詣もその流れらしい。対する鈴木の家は「いつも元旦はだらだらして」。別れ際には鈴木の両親からの伝言も届く。「谷くんによろしく言っといて、良いお年を」。「会う時は来年だね」「良いお年を」で大晦日は終わる。
元日、黒染めとロングスカートと潰れた菓子折り
「家族に言いたくなって」から始まった急な招待
年が明けた谷家に、来るはずのいとこ一家から連絡が入る。幼稚園でもらった風邪が家族に順番に回ってしまったという。予定が空いたその場で、谷は家族に切り出した。「あの、付き合ってる人がいるんだけど、家に呼んでもいい?」。付き合っていること自体、それまで話していなかった。
そのまま鈴木に電話がかかる。互いに家でくつろいでいる時間で、いとこが来られなくなったという話の流れのまま「家に来る?」と誘われる。「え、どうしたの急に」に対する答えは「家族に言いたくなって」だった。受けた鈴木の家の方が大騒ぎで、母は「谷くんのご両親に会うの? うちの人間がお会いして大丈夫かしら」と慌てだし、「とりあえず明日、行きがけに菓子折り買って行きなさい」と指示が飛ぶ。「ちょっとでも清楚に見えるようロングスカート履いちゃおう」と本人も走り出した。
プチ失敗の積み重ねと、「つまらぬものになってしまったのですが」
翌日、待ち合わせ場所に現れた鈴木は予告なく黒髪になっていた。ピンクだった髪を自分で染め、ピアスまで外している。前日の電話でも当日の挨拶でも、本人がその理由を口にすることはない。指先に残った染料の跡、慣れないロングスカート、抱えた菓子折りだけが並べられ、何をどれだけ気にしているのかは最後まで説明されないまま画面に置かれている。
そして玄関で本当につまずく。慣れないロングスカートに足をとられ、言いかけた「明けましておめで」も空振りし、「はじめまして、悠介がお世話になってます」に「いえいえ、こちらの方がお世話になっております」と返すまでに、谷が内心で「今の間は何」と引っかかるほどの妙な沈黙が挟まる。
極めつけが菓子折りだった。「これ、つまらぬものになってしまったのですが」。言い間違いのようでいて、道中で潰してしまったので事実を言っているだけである。本人は「変なタイミングで明けましておめでとうって言っちゃった。どうしよう、ものすごく居心地悪そう」と頭を抱えていた。
食卓自体はあたたかい。「お雑煮にお餅何個入れる? たくさんあるから、いっぱい食べてくれると嬉しい」に始まり、「悠ちゃんが作ったお餅だよ」「いや僕は丸めただけ」というやり取りが挟まる。鈴木の「おせち料理が手作りだったり、うちこういう行事適当なんで、すごいなって」に、母は「昔からそうしてるから、何となくでやってるけどね」と笑った。
「ここにいたらいいなって思った」
急にちゃんとした人間になんてなれない
昼食のあと、二人は近所の神社へ初詣に出かける。その道中で谷が切り出した。「あのさ、大丈夫? 僕が来てほしくて呼んだけど、そのせいで気を使わせてたり、無理させてたらごめん」。我慢していた鈴木は、ここで泣いてしまう。
理由は本人の口から説明される。「急にちゃんとした人間になんてなれないのに、もっと日々の積み重ねが大事なのに、自分が情けなくなってしまった」。「どんくさいのも要領悪いのも今に始まったことじゃないのに、朝からプチ失敗が多くて。お菓子潰した時がとどめだったかも」。ここでようやく、慌てて髪を染めたことも、目当てにしていた手土産の店が閉まっていたことも明かされる。一日の失敗そのものより、一日で取り繕えると思った自分に落ち込んでいる。
谷の受け答えが良かった。「それでもいいから、もやもやすることがあるなら言って」と言った直後に、「って、僕が同じこと言った時に言ってた」と付け足す。以前に鈴木からもらった言葉を、そのまま返しているのだ。そのうえで「まず大前提として、うちそんな厳しい家とかじゃないから。ちゃんとしなきゃなんて思わなくていいよ」と土台から否定してみせる。
プロポーズみたいなことを言われた
落ち着いた鈴木が「というかどういう心境の変化? 付き合ってることすら言ってなかったのに」と聞く。谷の答えが「昨日会って家に帰って、家族と喋ってる時に顔が浮かんで、ここにいたらいいなって思った」。鈴木の内心は「プロポーズみたいなこと言われた」で埋まり、本人は「質問? そんな、答えになってるかこれ」と首をかしげている。
「ただいま」「おかえり」と谷家に戻ると、母がアルバムを持ち出し、コーヒーを出し、「この子言葉足らずでしょ。普段失礼なことしてない? 不満や言いたいことあったら今がチャンスよ」と煽り始める。「目の前で悪口言わせないでよ」「陰で言ってどうすんのよ」の応酬に、鈴木は「なんか親子って感じ」と目を丸くした。電車より図鑑派だった、博物館の写真を全部撮っていた、といった話も出てくる。
そして帰り際、谷の親から「写真映り悪い方?」と唐突に聞かれる。種明かしはこうだ。修学旅行の集合写真を先に見せてもらっていたが、最初は同じ子だとわからず変な態度をとってしまった気がした、だから確かめたかった。「実物の方が笑顔が素敵」。冒頭の妙な間の正体がここで回収される。指先の染料にも髪色にも、誰も触れないままだった。
冬休み最終日、みんなで初詣
東のバイト先と、うらやましさの正体
場面は変わって東のバイト先。元旦からフルで入った彼女の願いは「さっさと18になって深夜帯も入れるようになりたい」である。理由は「ここのバイトほとんど大学生とフリーターだから、いつも私だけ早く上がる」。閉店後に無駄話をしたり、バイト終わりにみんなで山へ夜景を見に行ったりする話を聞かされるのが羨ましいらしい。
先輩の返しは「あんなの憧れなくていいよ。好きな時間に好きな場所へ行ける自由さがめっちゃ羨ましい」。そのあと東は、冬休み最終日の初詣の予定を延々と説明して「話長かったっすか?」と我に返る。「ちゃんと楽しそうな学生生活を送ってて安心した」「どう思われてんすか私」で締まるのが、この人らしい。
鳥居に石を投げる文化と、おみくじ
冬休み最終日、集合したメンバーはまず鈴木をいじる。「って鈴木イメチェン?」「いや、すでに結構色落ちてるけど」「ねえ、染めた理由聞いてあげてよ」。事情を知らない面々には、ただのイメチェンにしか見えない。山田は久しぶりに同級生と会って完全にはしゃいでおり、平に話題を振りすぎて「頼む、話題を絞ってくれ」と言われる始末だ。絞った結果が「タイラーって結構服好きな方?」で、「絞る話題それかよ」と返される。
全員すでに一度初詣を済ませているので、今回はかぶらない神社まで足を伸ばす。「初詣何回目? もう初じゃなくね?」には「それが、初詣って何回してもいいらしいよ」。着いた先は「人全然いないね」「もう5日だしな」「日にちじゃなくて立地が原因じゃね」という有様だった。
ここで渡辺が「よし、無事入り口に着いたことだし、鳥居に石投げるか」と言い出す。祖母の家の地域ではみんなやっているらしいが、「この街にその文化ないよ」と即座に否定され、「じゃあ私がこの街に文化を持ってきた人になっちゃうね」と引かない。おみくじでは山田が「争いごと たやすく勝つ」を引き当て、「山田って願い事とかおみくじとか気にするタイプだったっけ」に「俺、結構もともとこういうの信じる方」と答えている。
この神社に詳しいのも渡辺で、山の方には滝や謎の祠、変なオブジェのある怪しい寺院まであるという。「そういうの誰と行ってるの?」「え、一人だけど?」「楽しむ天才じゃん」。そして谷が「今はまだ楽しいこと考えてていいだろ?」を受けて「うん、だから、みんなで悔いなく過ごせたらいいなって思う」と真顔で言い、「谷からそんな熱い言葉を聞く日が来るとは」「男子のリアクションでかすぎて感情出遅れたわ」と場が沸いた。
締めは東のモノローグである。「なんか渡辺いいなー。自由で、自分で自分を楽しませる天才で。憧れるけど、私はそれを人と一緒にしたいタイプなんだろうな」。バイト先で感じた羨ましさの正体が、ここで自分の言葉になる。ネットでは新年早々のサトのツッコミが気持ちよかったという声も上がっていた。




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