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休日のショッピングモールで、闘球部の5人はばらばらに狩られる。仕掛けたのは聖アローズ学院の二階堂平子。父の代からの因縁を、娘の代で勝手に引き継ごうとしている女である。そして校長室で告げられる条件は、聖アローズに勝たなければ部を認めない。第2話は、逃げ道を全部塞がれてから始まる。




ショッピングモールで、弾子だけが浮いている
何も買わないのに、あっち行ったりこっち行ったり
第2話は、一撃弾子・小仏珍子・江袋もち子・スーザン・キャノン・音花羽仁衣の5人で闘球部を立ち上げたところから始まる。
そして休日、5人は球川ショッピングモールへ繰り出す。
ところが弾子は、こういうのが苦手だ。何も買わないのに、あっち行ったりこっち行ったり。暇だ。闘球の練習がしたい。全力でやること以外に、この子はあまり興味がない。
対照的に、休日に仲間と出かけられること自体が嬉しくてたまらないのが羽仁衣である。楽しすぎて震えが止まらない、と言っている。陰キャでコミュ障な初等部4年生にとって、この状況はもう事件なのだ。
喉が渇いた弾子は自動販売機へ向かい、ジュースを買う。そして、みんなとはぐれる。
高いところから、見ている影がある
その一部始終を、高いところから見ている影がある。
僕はダンコ君をやる。二人は残りを頼むよ。仰せのままに。
つまり、はぐれたのは偶然ではない。5人はすでに、狩られる側として数えられている。
ひらがなで呼ぶのはやめて——名前をめぐる攻防
「さんじゃなくて、ハニーちゃんね」
弾子を除く4人は、まだ買い物を続けている。
ここで羽仁衣が勇気を出す。名前で呼んでほしいのだ。珍子に「ちんこさん」と呼ばれたので、さんじゃなくてハニーちゃんね、と訂正する。仲間になれた気がして嬉しい、という気持ちが全身から漏れている。
珍子も応じる。じゃあ私も、ちゃんで呼んでね。
そして、怒られる
羽仁衣は言われたとおりに呼ぶ。ただし、ひらがなで呼んでしまう。
ひらがなで呼ぶのはやめて。あと、恥ずかしそうに言うのもやめて。珍子の抗議はもっともである。小仏珍子という名前は、漢字で書いてある限りにおいて品位を保っている。
怒られた羽仁衣は、トイレへ逃げる。せっかく踏み出した一歩が、名前の読み方ひとつで折れてしまった。
アックスショット。メイド服の刺客、五十嵐柔里
セパレートのメイド服が、投球フォームに入る
残された3人に、声がかかる。そこの三人、行きますわよ。
振り向くと、筋骨隆々の女がいる。しかも、セパレートのメイド服である。そしてすでに、投球フォームに入っている。
3人がかりで受け止めにいくが、まるで足りない。3人はまとめて、すさまじい勢いで壁に叩きつけられる。
私のアックスショット。女はそう名乗る。挨拶も交渉も無い。
「お嬢様をがっかりさせたからよ」
珍子には心当たりがあった。五十嵐柔里。どうやら旧知の間柄らしく、お久しぶりね、お父様はお元気かしら、と世間話まで始まる。壁に叩きつけた直後にである。
なぜこんなことを、と問われた柔里の答えが、これだ。お嬢様をがっかりさせたからよ。
お嬢様が誰なのか、この時点ではまだ分からない。だが、そういう人物がいて、その人物のために闘球部が狩られていることだけは分かる。
聖アローズの「見る者」——羽仁衣に刺さる忠告
蜘蛛型ロボットが、追ってくる
場面は女子トイレへ。逃げ込んだ羽仁衣のもとに、謎の蜘蛛型ロボットが現れる。
その先にいたのは、聖アローズのメンバーだという女の子だった。感心したわ、見事な自動防御システムじゃない。羽仁衣の仕掛けを、そう褒めてみせる。
羽仁衣はドローンやAIを駆使する頭脳派である。その領分に、正面から踏み込んできた相手だ。
「あなたと同じよ」
女の子は名乗る。私は聖アローズの見る者。そして、こう続ける。あなたと同じよ、と。
羽仁衣は、校長に頼まれて闘球部にスパイとして潜入している。その事実を、初対面の相手に正面から突きつけられたことになる。
忠告しておく。出来もしない闘球で仲間ごっこをするのはやめた方がいい。みんなの足を引っ張る前に、さっさとぼっちに戻ることね。
たったいま「名前で呼んで」と勇気を出したばかりの子に、いちばん刺さる言葉を選んで刺している。聖アローズは、ボールを投げる前に人を折りに来る。
二階堂平子——「僕の永遠のライバルだ」
宝塚の男役が、ボールを投げてくる
仲間を探して歩く弾子に、突然ボールが投げられる。弾子はそれを受け止める。
今日は軽くご挨拶の一撃だよ、ダンコ君。投げた主が名乗る。聖アローズ学院闘球部、二階堂平子。
宝塚か、ベルサイユのばらか。男役のような装いと、男役のようなしゃべり方。第2話でいちばん濃いのは、間違いなくこの人物である。
平子という名は、パパの永遠のライバル・ダンペイ様から一字もらったのだという。
弾子は思い当たる。もしかしてお前、父ちゃんの墓を建ててくれたタイガおじさんの娘か。
二階堂大河。一撃弾平の最大のライバルであり、その墓を建てた男。平子は答える。あの時、君は泣いていて、僕に気づいていなかったね。
「僕のライバルにふさわしいプレイヤーでないと困る」
いきなりボールを投げつけて、一体何の用だ。弾子がそう問うと、平子は言う。僕は君の目を覚ましに来たんだよ。
君はダンペイ様の娘なんだよ。僕のライバルにふさわしいプレイヤーでないと困るんだよ。それなのに君と来たら、闘球の練習もせず、街をフラフラと。
完全に一方的である。父たちの因縁を、娘の代で勝手に引き継ぎ、勝手に相手役を割り振っている。しかも、その相手が練習をサボっていることに本気で腹を立てている。
迷惑な話なのだが、不思議と嫌味がない。この人は、心の底から弾子と戦いたいだけなのだ。
怒りの投球と、もち子のトス
「僕の仲間に」
そこへ、傷ついた3人が合流する。その人に気をつけて、と絞り出すように告げる。
そして柔里が現れ、平子を「お嬢様」と呼ぶ。首尾よくいったようだね。平子はそうねぎらう。
3人を壁に叩きつけたのも、この人物の指示だったわけだ。お嬢様の正体が、ここで繋がる。
弾子は、傷ついた仲間を見て、投げる。僕の仲間に。
だが平子は、それを片手でなんなく受け止めてしまう。いいね、これこそダンコ君の弾だ。だが足りない。
スカイショットを、体で受け止める
平子は投げ返す。自分の全力の弾で吹き飛ぶといい。
弾子は全力で受けにいく。全力の弾には全力だ。柔里が嘲笑う。愚か者め、お嬢様の弾を取れるわけがない。
ところが、割って入ったのはもち子だった。ボールの威力を自分の体で受け止め、そのまま仲間へトスする。
馬鹿な、お嬢様のスカイショットを。柔里の悲鳴が、そのまま解説になっている。江袋もち子は超やわらかボディの持ち主で、守りの要なのだ。
この連携に、平子は完全に火がついてしまう。いいよ、いいよ、ダンコ君。僕の永遠のライバルだ。
今日はあくまでご挨拶。一般のお客様方に迷惑をかけるわけにもいかない。次はコートの上で思いっきり戦おう。そう言い残して、平子は去っていく。ショッピングモールを気にする程度の常識は、あるらしい。
校長室で、逃げ道を全部塞がれる
「二階堂家のご令嬢たってのご要望」
翌日、校長室。校長が突きつけた条件は、聖アローズとの試合に勝たなければ、新球川闘球部の設立は認めない、というものだった。
部員を集めてきたのに、と抗議する弾子たちに、こう返ってくる。人数が揃えば認めるなんて、誰が言ったのかしら。
そして種明かし。これは二階堂家のご令嬢、たってのご要望なのです。
二階堂家は聖アローズ学院を設立し、新球川にも多大なサポートをしている名家である。学校としては断れない。
つまり、モールでの襲撃はただの挨拶ではなかった。この試合を成立させるための、外堀を埋める一手だったのだ。平子は先に、逃げ道を全部塞いでいる。
担任・白鳥の煽り
さらに、担任教師の白鳥が校長の隣で煽ってくる。
ひょっとして自信がないのかしら。無理もないわよね、聖アローズ闘球部といえば超強豪校だもの。万に一つも勝てる可能性なんてないわ。尻尾を巻いて逃げ出したって構わないわよ。
でも、そうなったら闘球部の復活は永遠になくなっちゃうけどね。
味方が一人もいない部屋である。だが弾子の答えは早い。やるよ。名家が何だ、超強豪校だって関係ない。僕たちがぶっ飛ばしてやる。
プール、母と祖母、そして「全力」の教え
なぜか、弾子以外がプールで遊んでいる
後半は、なぜか弾子以外がプールで遊んでいるところから始まる。親睦を深めるのも悪くない、せっかくのプールなんだから遊ばなきゃ、という理屈である。弾子だけが、どうしても練習をしたい。
しかも、見慣れない顔が混ざっている。聖アローズとの試合にあたり、頭数を合わせるために来てもらった助っ人たちだ。入部テストでは全然ダメでしたが、と紹介される。ひどい紹介である。
そこへ、弾子の母・一撃みさとと、祖母・一撃はるかが現れる。
この二人が、どう見ても若い。学生と、綺麗なお姉さんにしか見えない。周囲は美魔女だ妖怪だとざわつきはじめる。とくに、まだ現役でスイミングスクールのコーチを務めているという、はるかのほうが。
はるかは、中に重りを詰めたボールを弾子に渡す。嫌ならやらなきゃいいだけさ。でも、やると決めたら全力でやる。ダンペイはそういう子だった。
一度見ただけで、スカイショット
プールで特訓が始まる。高所の飛び込み台から、珍子が弾子めがけて投げる。
それは、ほんの数時間前に一度見たきりの、平子のスカイショットだった。
一度見ただけでスカイショット、と周囲が驚愕する。小仏珍子は、一度見た必殺技を再現できる。設定として聞くと便利な能力だが、目の前でやられると普通に反則である。
受けた弾子は半分意識を飛ばしかける。それでも起き上がって、手ごたえに興奮している。ガッチリキャッチできるまで、何億回だってやってやる。
それでこそ弾平の娘だ、とはるかは笑う。
その傍らで、もち子はこんなことを聞かれている。入部したら100万円という話も全然払えていないのに、どうして付き合ってくれるんですか、と。もち子の答えは、今はもうどうでもよくなっちゃった、闘球部がすっごく楽しいから。
「全力でやれば、どんな結果でもスッキリする」
特訓のあとは、みんなで大浴場へ。
そこではるかが、弾子に問いかける。どうして全力がいいのか、分かるかい。
全力でやれば、どんな結果でもスッキリするからだよ。どんな時でも全力でいれば、後悔しない毎日を送ることができる。
勝てるからでも、強くなれるからでもない。スッキリするから。この作品の芯が、いちばん静かな場面で、いちばん短い言葉で置かれる。
聖アローズスタジアムで対峙し、第2話は終わる
自分の学校の部を、他校に潰させようとしている
場面は聖アローズスタジアムへ。
そこには聖アローズのメンバーがいて、その前に、校長と白鳥が立っている。最強チーム聖アローズの力で存分に叩きのめしてください、身に染みて、危険な闘球部の復活を諦めることですよ。
自分の学校の部活を、他校に潰させようとしている。この二人は、煽っていたのではなく、本気で潰しに来ている。
凛々しい顔で、入場する
そこへ、新球川闘球部が入場する。全員、凛々しい顔をしている。ショッピングモールで壁に叩きつけられた者たちの顔ではない。
やっとお出ましか、ダンコ君。だいぶ特訓したようだね。僕のために、僕と戦うためにね。平子が迎える。
両者が対峙したところで、第2話は終わる。次回、いよいよ試合である。




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