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第2話「黒い水」。皇妃ナキアの新たな呪いが、ユーリの世話係になった少年ティトを乗っ取り、ユーリに牙を剥く。カイルに救われるも、ティトは皇族に手をかけた罪で処刑されかける——ユーリはたった一つの理屈で処刑台に割って入った。そして日本へ帰る唯一の鍵が、ナキアに奪われた「元の服」だと知り、ティトと二人、皇妃の宮へ忍び込む。ティトの決死の献身が胸を打つ、緊迫の一話。




黒い水と、星空の下の再会
ナキアの新たな呪い『黒い水』
紀元前14世紀、ヒッタイト帝国の首都ハットゥーサ。第2話の幕は、皇妃ナキアの不穏な密命から上がる。「黒い水を、カイルの宮へ届けよ」。我が子を皇位に就けるため、邪魔になる皇子たちを呪い殺そうと企むナキアは、その儀式の生贄として、別の時空からユーリを召喚した張本人だ。水を操る魔力を持つ彼女の新たな呪いが、静かにカイルの宮へと忍び寄る。
一方その頃、豪奢な宮の一室で、ユーリは星空を見上げていた。「どうして私が、こんな目に」。見知らぬ古代世界に引きずり込まれ、家族のもとへ帰る術も分からない。心細さに押しつぶされそうな夜だった。
妹エイミにそっくりな、従者の少年
そこへ、夕食を運んできた小さな従者が現れる。その顔を見て、ユーリは思わず息を呑んだ。日本に残してきた妹・エイミに、瓜二つだったのだ。少年は「僕、ティトと言います。カイル様から、ユーリ様のお世話を言いつかりました」と屈託なく名乗る。カイルが女性を連れてきたのは初めてだと、無邪気に喜ぶ姿がいじらしい。
妹の面影を持つこの少年に、ユーリは少しだけ心を許す。そして、かねての疑問を口にした。人ひとりを依り代にして誰かを呪い殺すなんて、本当にできるのか、と。ティトは「力のある神官様になら」と答える。ならば、遠くから連れてこられた者が元の場所に帰るには? 「もう一度、同じ神官様に頼むしかない。使った力は、本人にしか消せないと聞きます」。帰り道の手がかりが、ぽつりと見えた気がした。
一つ多い壺と、豹変したティト
その壺は、一つ多かった
壺が整然と並ぶ部屋で、ティトがふと首を傾げる。「あれ、一つ多いな」。誰かが紛れ込ませた、見覚えのない壺。それこそが、ナキアの放った『黒い水』にほかならない。だがティトは深く気に留めることなく、その夜はそのまま眠りについてしまう。迫りくる災いに気づいているのは、画面のこちら側の視聴者だけ。この“あと一歩”のもどかしさが、後の悲劇をいっそう重くする。
そして夜が更けた頃、壺の黒い水が、ひとりでにティトの中へと入り込んでいく。眠っていたはずの少年の様子が、みるみるおかしくなっていった。
操られて、ユーリに牙を剥く
遠く離れた宮では、ナキアが呪言を唱えていた。「私に、娘の血を捧げよ」「殺せ」。その声に操られるように、豹変したティトがユーリに襲いかかる。「やめて、ティト!」。妹に似たその顔が刃を向けてくる悪夢——絶体絶命のその瞬間、カイルの放った矢が豹変したティトを止め、ユーリは間一髪で難を逃れた。
さらにカイルはティトの腹を強く打ち、体内の黒い水を吐き出させる。ナキアは、我が子可愛さのためなら、無関係な少年を操ってでもユーリを亡き者にしようとする。その執念の深さに、ぞっとさせられるシーンだった。
目覚めの朝と、処刑の宣告
同じ寝台での、赤面の目覚め
やがてユーリが目を覚ますと、すぐ傍らにはカイルの顔があった。同じ寝台で眠っていたのだと気づいた彼女は、真っ赤になって飛び起き、そのまま部屋を飛び出してしまう。「気分はどうだ。首の傷は薬を塗っておいたから、じきに治る」。ぶっきらぼうに気遣うカイルは、ティトがナキアに操られていたこと、そして皇妃が何かを企んでいることを、静かに告げた。
さらにカイルは「男が女をそばに置く意味が、分からないわけでもあるまい。側室の一人くらい、いてもいいだろう」と、ユーリを正式に妃として扱うと言う。「そ、側室……!?」。思わぬ言葉に戸惑うユーリだったが、事態はもっと切迫していた。
皇族に手をかけた罪は、極刑
鐘が鳴り響く。それは、ティトの処刑を告げる合図だった。妃となったユーリに、つまり皇族に手をかけた罪。その報いは、法によって極刑と定められている。「私だって、死なせたくはない。だが、法を曲げるわけにはいかない」。操られていただけだと訴えるユーリに、カイルは「証拠がない」と苦しげに応じるほかなかった。
処刑台の上の、たった一つの理屈
縄をかけられたティトの前へ
いても立ってもいられず、ユーリは処刑場へと走る。そしてまさに、ティトの首へ縄がかけられようとする刹那に割って入った。処刑場に集う人々は、皆一様に頭を垂れている。役人は淡々と告げる。「恐れながら側室様。平民が貴族に剣を振り上げただけで、極刑が法律。平民同士とは、違うのです」。身分が違うというだけで、命の重さまで変わってしまう。ユーリには、それがどうしても呑み込めなかった。
身分は、下の者を守るためにある
「皇族の権力を、私ごとで使ってはダメだ」。そう釘を刺すカイルに、ユーリは真正面から言い返す。「何言ってるの。身分ってのは、上の者が下の者を守るためにあるんじゃないの」。権力があるなら、ここで使わずにいつ使うのか。飾らないまっすぐな言葉に、頭を垂れていた人々が、そして当のカイルが、ハッと顔を上げる。
「なるほど。では、ティトを連れて帰ろう」。ユーリの理屈を受け止めたカイルは、皇子の権限でティトの釈放を宣言する。忠臣キックリに命じて縄を解かせ、ティトは救われた。「貴様のためなら、何でもします」。涙ながらに誓う少年に、ユーリは「ありがとう」と微笑むのだった。
カイルの正体と、帰るための条件
呪いを解けるのは、同じ力を持つ神官だけ
屋敷に戻ったユーリは、ふと漏らす。どうして神官の力は、本人にしか消せないのだろう、と。するとキックリが答えた。「同等の位の力があれば、他の神官でも消せますよ」。そんな神官が、いったいどこに? 「目の前に、いらっしゃいますよ」。ユーリは、ここではじめて知ることになる。「私が神官の位を持っていては、悪いか」。皇子カイルその人こそが、風を操る高位の神官だったのだ。
元の服は、ナキアの手の中
カイルは、ユーリが元の世界へ帰るための条件を語る。ここへ来た時とまったく同じ状況、すなわちハットゥーサにある七つの泉が、すべて満ちること。今の季節なら、明けの明星が東の空に輝くたびに泉は満ちていくという。そしてもう一つ、彼女がこの国に来た時に着ていた、あの服が要る。
ところが調べてみると、その服はすでにナキアが持ち去っていた。「これは罠だ。お前をおびき寄せるための。今はじっと待つしかない」。慎重に構えるカイルに対し、ユーリの気は逸る。その夜、同じ床につくことになり、「随一のプレイボーイの私が、まだ手を出していないなんて知られたくない」とからかうカイルに、ユーリはどぎまぎしっぱなしだった。
服を取り返す夜と、閉ざされた門
二人で忍び込む、皇妃の宮
その夜、ユーリはカイルが寝入った隙を突き、服を取り返しに宮を抜け出す。だが、それをティトが見咎めた。止められるかと思いきや、皇妃の宮の場所を知らないユーリのために、ティトは「じゃあ、僕も行きます」と道案内を買って出る。二人がいないことに気づいたカイルも、慌てて後を追った。
裏門から忍び込んだ、皇妃の宮。しかし待ち構えていた屈強な兵に、ユーリはあえなく捕らわれてしまう。剣が突き立てられる寸前、その兵の背後から、ティトがナイフで斬りかかった。倒れた儀式の水盤が生んだわずかな隙に、ユーリはついに元の服を取り戻し、二人は宮からの脱出を図る。
門の内側からの、『お元気で』
だが逃げる途中、ユーリは再び兵に捕まってしまう。それでもティトは、身を挺してユーリを門の外へと逃がす。自分はまだ、包囲の中に残したまま。そしてティトは、その門を——内側から閉ざした。「命を助けていただいて、ありがとうございました。本当に、嬉しかった。ユーリ様、お元気で」。処刑から救ってくれた礼を告げる、あまりに優しい別れの言葉だった。
門の外へ辿り着いたユーリのもとへ、カイルが駆けつける。だが、固く閉ざされた門の向こうには、ティトが独り取り残されていた。ユーリの悲痛な叫びを残して、第2話は幕を下ろす。操られただけの少年が背負わされた、あまりにも理不尽な運命。その重さが、静かに胸を締めつける回だった。




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