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建武元年の信濃・諏訪。故郷の味を懐かしむ時行のため、逃若党は海へ走り、生魚を内陸へ運べぬ“魚尻線”のタブーを破って鯛を諏訪まで届け、時行を涙させる(その裏で雫は鎌倉を偵察していた)。一方の鎌倉では、尊氏の弟・足利直義が“計算”で民心を掌握する新統治を始動。建武の新政のほころびと、護良親王を捕らえた尊氏=“星狩りの鬼”の野心も描かれ、信濃では小笠原が時行を追い始める。笑いとジーンが同居する、濃密な第二期の幕開けだ。




建武の世と、諏訪の食卓
鎌倉の鯛が忘れられない——時行の郷愁
第二期はナンバリングを継ぎ、通算13話として幕を開ける。舞台は建武元年の信濃・諏訪。頼重のもとで学問や武芸に励む時行は、稲子(いなご)を口にする素朴な暮らしにもすっかり慣れていた。だがある日の会話から、時行は鎌倉で味わった鯛を懐かしんでしまう。
由比ヶ浜で朝に上がった魚が昼には食卓に並ぶ海辺の街・鎌倉。生き作りにした鯛に伊豆のわさびと醤油をかけて頬張る、あのシャキシャキの食感が忘れられないのだ。「また食べたいなぁ」と沈む主君の姿に、逃若党は「自分たちに何かできることはないか」と胸を痛める。冒頭は1期の復習と2期への橋渡しを兼ね、2期から観る人にも親切な構成になっている。
“魚尻線”のタブーを破れ!逃若党の大仕事
そこで雫たちは、時行に内緒で海を目指して馬を走らせる。だが立ちはだかるのが“魚尻線”という壁だ。電車も車もない時代、海の生魚を腐らせず運べる内陸の限界を指し、太平洋側からだと甲府あたりが限界——その先の諏訪までは海魚は届かないとされる。
鯛を釣る場面はもはや戦さながら。空中で脳と動脈を締め、血を抜き、エラと内臓を処理し、布を巻いて氷室の氷を詰める。雫たちは川や道なき道を越え、乱世の夏に不可能に近いミッションをやってのける。仕事の早さと勢いは「クレヨンしんちゃんの大追跡もの」を思わせるほどで、頼重の変顔も飛び出す痛快なパートだ。
涙の鯛と、忍びの偵察
諏訪に届いた鯛、時行の涙
何食わぬ顔で戻った一党は、「少し早いけど夕ご飯を作りました」と時行に膳を出す。レンコン(時行の苦手なもの)でひとしきりからかったのち、差し出されたのは——あの鯛だった。わざわざ海まで行って釣ってきてくれたのだと悟った時行は、思わず涙をこぼして喜ぶ。「なんと礼をしたらいいか」と声を震わせる主君に、逃若党もまた誇らしげだった。
鯛をめぐる一連のくだりは原作にないアニメオリジナルのサイドストーリーとみられ、「笑えるのにジーンとくる」と評判に。派手な戦さではなく“食”を通して主従の絆を描く、この作品らしい温かな一幕だ。
“釣り”の裏で——雫の鎌倉偵察
だが、この遠征にはもう一つの目的があった。雫は道中で鎌倉へと足を延ばし、強行偵察を行っていたのだ。少人数なら一日で突けるが、大軍では道中に築かれた新たな砦に阻まれ、二十倍の時間と多大な犠牲が要る——最短距離での鎌倉攻めは難しい、と雫は報告する。
そして雫は告げる。「鎌倉は恐るべき変貌を遂げていた。奪還の戦には、新たな統治者と精鋭たちが必ず立ちふさがる」。時行は「決戦は次世代同士で派手にやろう。9歳だけど、鎌倉への思いだけは誰にも負けない。必ず取り返してみせる」と、静かに闘志を燃やすのだった。
鎌倉の新統治者・足利直義
“計算”で民心を掴む天才と、関東廂番
ここで描かれる新統治者こそ、尊氏の弟・足利直義である(老練な者たちは京の尊氏のそばに残され、鎌倉は別動)。荒廃した鎌倉に赴任した直義は、街の復興と治安維持を一挙に進め、その手足として足利一門の未来を担う若き精鋭たち——関東廂番を組織した。
「尊氏は魅力で大衆を惹きつけるが、直義は計算で惹きつける。まったく違う手法で、まったく同じ結果を出す」と評される通りだ。服装も自由にさせ、爽やかな風で疲弊した民の心を掴む直義に、鎌倉は熱狂し、足利手ぬぐいまで飛ぶように売れた。史実の人物が続々と登場し、やられ役までイケメン揃いだと話題を呼んだ。
暗殺をも読み切る冷徹
そんな直義を、旧幕への忠義を捨てぬ刺客たちが襲う。だが直義は微動だにしない。合図に打たれた鉦(かね)の音から伏せた増援の位置まで読み切り、あらかじめ掘っておいた堀で押し込むのだ。関東廂番の渋川と岩松が、常識外れの遠距離攻撃で敵を一方的に圧倒する“化け物”ぶりを見せつける。
その間、直義は政務を淡々と片付け続ける。各地の騒乱や訴訟を的確にさばくさまに、周囲は舌を巻く。まだ二十七歳にして天下を動かすその才覚が、「室町幕府の基礎を作った男」の輪郭を早くも浮かび上がらせていた。作画のサボりを指摘する辛口の声もあったが、濃い初回だったことは間違いない。
建武の新政のほころびと、尊氏の野心
二つの長所をいただく——足利の描く新時代
時代の空気も丁寧に語られる。後醍醐天皇による建武の新政は、恩賞の不公平や煩雑で機能しない裁判、さらなる増税に民が急速に失望し、早くもほころび始めていた。足利の老党たちは「帝の新政は理想的だが現実に即さず、旧幕府は現実的だが時代に対応できなかった。我らはその二つの長所だけをいただく」と、新時代の統治像を固めていく。
直義が鎌倉幕府の官僚から長所を学び、そこへ建武の政治で得た教訓を足せば、新たな統治法が完成する——すべては主・尊氏のため。ナレーションが多く図解は控えめだったぶん、「来週はキャラが動く本筋を」との期待の声も上がった。
星狩りの鬼と、時行に迫る影
尊氏の最大の抵抗勢力・護良親王は、謀反の罪をでっち上げられて捕らえられ、弟・直義の待つ鎌倉の牢へ送られる。その護良が尊氏の本性を看破する。「最も安全な改革は“二番目の改革者”になること。最初の改革者に古い世を壊させ、恨みごと倒せば、しがらみなく新世界を描ける——それが尊氏の魂胆だ」と。
内に鬼を飼う“星狩りの鬼”尊氏。その野心が実写を交えた演出でゾクリと描かれ、賛否を呼んだ(「絵で見たかった」との声も)。そして信濃北西部では、守護・小笠原が「諏訪大社に去年入った品格ある小僧は北条一族の子では」と睨み、時行を追い始める。次なる鬼ごっこの気配とともに、濃密な二期がいよいよ動き出す。




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