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第4話「水王級魔術師」。パウロの墓前で最後の弔いを済ませ、ギースたちが街を発つ。「パウロの分も入ってる」と託された転移の迷宮の財宝を受け取り、ルーデウスは家族の日常へ戻っていく。アイシャが育てていた魔物トゥレントの「ビート」がペットに加わり、ギースから貰ったヒュドラの魔石、正式名吸魔石の研究も進んでいく。そして「もう誰も失いたくない」という想いから、ルーデウスはロキシーに水王級魔術ライトニングの教えを請う。長い詠唱を一発で成功させ、ルーデウスは水王級魔術師となった。




パウロの墓前で、旅立つ仲間たち
「息子をかばって死んだんじゃ、本望じゃろうよ」
第4話はパウロの墓前から始まる。集まっているのはギース、タルハンド、エリナリーゼ。「しかしまさか、お前がくたばるなんてな。いまだに実感湧かねえな」というギースに、タルハンドが「息子をかばって死んだんじゃ、本望じゃろうよ」と返す。転移の迷宮でパウロと共に戦った面々による、弔いの締めくくりである。
ゼニスの話にもなる。「家族に囲まれて、ゼニスもきっと幸せじゃろう。頼りになる息子もおることだしの」。そこへ噂の息子本人が、ロキシーと連れ立って現れた。この日はギースたちが街を発つ日である。「先輩の家も落ち着いたようだし、ここらが潮時ってな」「奴への義理立てとしては、ちと長すぎたくらいじゃ」。ヴェラとシェラはとっくに発っていて、彼らが最後だった。
「パウロの分も入ってる」
別れ際、ギースが差し出したのは転移の迷宮の財宝、ルーデウスの取り分である。「いや、多すぎますって」と遠慮する相手に「パウロの分も入ってる」、それに俺たちからのほんの気持ちもな、と続け、「家族も増えて何かと入りようなんだろ?」と押しつける。最後は「家族を大切にな」だった。
湿っぽくならないのがこの一団らしい。エリナリーゼとタルハンドは別れの間際までいつもの応酬を続けており、ルーデウスの「ちょ、二人とも、こんなときまでやめてください」も含めて、いつも通りのまま散っていく。死線を共に越えた仲間との別れを、こういう温度で描くのがこの作品である。
ゼニスの庭いじりと、笑わないルーシー
「まるで親子だ」
家に戻ると、シルフィーは仕事に出た後だった。ここでルーデウスがふと気づく。「そういえば、今の俺って収入ないんだよな。妻が働いて夫が無職ってのは、どうなんだろう?」。タイトルの回収を家庭内でやられると、笑うしかない。
庭では、アイシャの庭いじりをゼニスが手伝っていた。「最初はお母さんも止めてたんだけど、私が庭いじりすると手伝ってくれるの。ゼニス様、私より上手なんだよ」。ゼニスはブエナ村で庭の草木を大切にしていた人である。記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないなら、とルーデウスは見守る側に回る。アイシャがゼニスを「ゼニス様か奥様」と呼ぶのはリーリャの指示によるもので、「母さんのことはお母さんって呼んでもいいんだぜ」と言っても崩れない。それでも、並んだ二人の姿は「まるで親子だ」。
ルーシーの前では、変顔と赤ちゃん言葉で笑わせようと全力である。なかなか笑ってくれない娘に苦心するその背中へ、リーリャが静かに添える。「ルーデウス様の小さな頃を思い出します。旦那様も、よくそうやってルーデウス様を笑わせようと苦心しておられました」。墓前の場面から続けて見ると、父がやっていたことをそのままなぞっている構図で、ここで泣いたという声が多いのも頷ける。
アイシャが育てていたのは、魔物だった
アイシャの部屋で見つかったのは、鉢から触手を揺らす植物、トゥレントである。この世界の魔物の代表格で、言ってみれば某RPGのスライムのような存在。最初は動かなかったのに、シルフィーやアイシャの入浴後の残り湯を与えているうちに動くようになったらしい。
ルーデウスの判断は、処分したほうがいい。大きくなれば人を襲うかもしれない魔物なのだから真っ当である。だがアイシャは「この子、何も悪さしてないよ。私の言うことだって、ちゃんと聞くよ」と粘り、通らないと見るや切り札を抜く。「あのこと、シルフィー姉とロキシー姉に言うから」。地下室の隠し部屋、あの祭壇のことである。「特にロキシー姉は、ずーっと昔のパンツをあんなふうに飾られて、どう思うかな?」
追い詰められたルーデウスが「おお、神よ!」と天を仰いだ瞬間、「私の名前が聞こえましたが」とロキシーが現れる呼吸は完璧というほかない。そしてその神様の裁定は、まさかの飼育許可だった。「トゥレントもきちんと育てれば人に懐きますし、この大きさなら危険なことはないでしょう。ミグルド族は、畑の害鳥除けに飼育していますしね」。かくして我が家のペットにトゥレントが加わった。名前はビート。アイシャの「じゃあ、あのことは黙っておいてあげる」に、ロキシーの「何なんですか?」が刺さる。
吸魔石の研究と、ザノバの大発見
「もう誰も失いたくないから」
先日ギースからもらったヒュドラの魔石は、正式な名を吸魔石と言うらしい。実験の結果わかった効果は、魔力で生成されたものを瞬時に分解するというもの。普通の魔術だけでなく結界魔術も無効化する、幻の魔石である。あの迷宮で実に厄介な相手だったのも道理で、ネットでは今後のキーアイテムになりそうだという声も出ていた。
今日はこれぐらいに、と区切ろうとするルーデウスに、「もう少しだけ続けませんか?」と食い下がるのはロキシーの方である。そんなに急ぐことかと問われて返ってきたのが、「またいつか、家族に危険が迫ることがあるかもしれない。その時のために、今できることをできるだけやっておくべきだと思うんです。もう誰も失いたくないから」。あの迷宮の中にいた人の言葉であり、この回の芯である。
自動人形の中身と、ジュリの人形
吸魔石の実験に遅刻してきたザノバの言い訳は、例によって研究への没頭だった。ただし中身が大きい。自動人形を解体したところ、中心部にあった大きな魔石が、実は表面に魔法陣の刻まれた小さな魔石を、いくつも組み合わせてできていたというのだ。「これは今までの常識を覆す大発見ですぞ」。
ジュリの修行の成果も披露された。完成度の高い、ルイジェルドの人形である。師匠の作品にも引けを取らない出来ではないかとザノバが胸を張り、ルーデウスも「ああ、いい出来だ」と認める。スペルド族名誉回復計画を進めるルーデウスのもとで、弟子の手からルイジェルドの姿が形になった。この人形のことは、心に留めておきたい。喜ぶジュリに「毎日コツコツと修行を続けてきた甲斐があったな」と声をかけ、かつて「焦ることはない。目の前のことをコツコツ一つずつやっていけばいいんだ」と教えた日の記憶が重なる。そのまま「これからうちで晩御飯でもどうだ? ルーシーをみんなにも紹介したかったしな」と食卓へ招く流れも、いまの家の空気をよく表していた。
締めのモノローグが現状を整理する。「魔石の研究もスペルド族名誉回復計画も進んでいる。家族との関係は良好。何もかもが順調だ。そろそろ次のステップに進む頃かもしれない」。
「一回だけでいいんです」から、ライトニングへ
通報されるルーデウスと、勘違いするシルフィー
場面は魔法大学。「いいでしょ? お願いしますって。一回だけ、一回だけでいいんです」「よく考えてみてください。互いに悪い話じゃないはずですよ」と、ルーデウスがロキシーに必死で頼み込んでいる。傍目には完全に事案であり、実際「ルーデウスが女生徒を襲っていると通報が来たんだが」と、生徒会のフィッツ、すなわちシルフィーが駆けつけた。ロキシーの「まだ私が教師だという認識は薄いみたいですし」という苦笑も切ない。
ここからの誤解の転がり方が絶品だ。シルフィーは「いくら結婚したからって無理はよくないよ。女の子には嫌な時もあるんだからね」と諭し、「そりゃあ、ロキシーのほうが上手かもしれないけどさ。僕だっているんだから」と拗ねる。仲間外れにするつもりはないと請け合われて「えっ、じゃあ3人でってこと?」と目を回したところで、ようやく本題が明かされる。「ロキシーに水王級魔術を教えてもらおうと思って、頼んでたんだ」。シルフィーの「えっと、ごめんルディ、なんの話だっけ?」で全部チャラである。ネットでも妄想が捗った人が続出していた。
ブエナ村の記憶と、ライトニング
三人はマツカゼに揺られて郊外へ向かう。いい馬ですねという話から、シルフィーは「アスラ王宮で最上級って呼ばれてる馬は何頭も見たよ」と返し、ロキシーとの間では「カラヴァッジョを覚えていますか」「はい、パウロさんの馬です。懐かしいですね」という思い出話になる。私がルディの家庭教師をしていたときの話です、という説明に、「あのときは、まだシルフィーとも知り合う前だったっけ」と続いた。
そして「そういえば、ここらへんの雰囲気、ちょっとブエナ村に似てるな」。この一言のあたりで、幼いロキシーに魔術を教わった日々や、シルフィーと遊んだ日々の回想が差し込まれる。

ロキシーの実演が始まる。「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ」から始まる長い長い詠唱に、ルーデウスは「おや、これはキュムロニンバスじゃないか。いや、違う」と気づく。雨雲を呼ぶ前半から、後半で雷へと転じる二段構えである。着弾すれば大樹が消し飛ぶ威力で、撃ち終えた本人は「私の魔力では、杖を使っても一度が限界ですので」と肩で息をしていた。
続いてルーデウスが挑み、一発で成功する。「これでルディも水王級魔術師ですね」。一方のシルフィーは失敗し、「ちょっと悔しいな。結局できなかったのは僕だけか」。ロキシーは自分でも失敗することはありますからと慰め、シルフィーも「ルディは一回で成功だもん、やっぱりすごいよ」と称えた。ネットでは詠唱の長さと、シルフィーの詠唱がカットされた無念さが語られている。
夕日の中のロキシーの独白が、この回の着地点である。「最近、自分が夢でも見ているんじゃないかと思うときがあります。私は今でもあの迷宮の中にいて、死ぬ間際に幸せな夢を見ているだけなんじゃないかと」。この半年で結婚もできたし教師にもなれた、と続けて、「シルフィーにとっては邪魔者かもしれませんが、私はこうして3人で馬に乗れていることを好ましく思っています」。シルフィーも「ルディの取り合いになったら、多分僕は勝てないからね」と本音で応じる。ルーデウスは内心で結ぶ。運がいいのは俺だ。言葉にすれば上辺になってしまう。だから、行動で示していこう。彼女たちを、家族を守るために。




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