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第3話「暴君の少女」。ギャンブラーのミサキが罠付きの黒い宝箱を開けて階層内転移の罠にかかる。捜索の途中で立ちはだかったのが賞金首ジャガーノートで、エリーティアが「もし逃げてと言ったら私を残して逃げて」と言い残していた理由もここで明かされる。彼女は狂戦士化すると力を制御できず、だから誰ともパーティーを組まずにいた。アリヒトは「俺のパーティーに入ってくれ」と説得して支援を通し、討伐に持ち込む。仕組んだのはエリーティアに討伐させて戦利品を奪う計画を立てたベルゲンだった。




エリーティアが急ぐ理由
パーティーを解除してまでスズナを鍛える
冒頭でエリーティアがやっているのは、少し変わった育成である。わざとパーティーを解除し、自分が敵を誘導してスズナにとどめを刺させることで、経験値を効率よく取らせていた。だがアリヒトの指摘どおり、その魔物は後衛のスズナも狙ってくる。
「他の魔物を探して戦った方が安全じゃないか」に返ってきたのが「そんな時間はないわ。早くスズナを私と同じくらいの強さにして戻らないと」。アリヒトが「戻るって、白夜旅団にか」と踏み込むと、「あんな人たちのところには」と即座に否定され、「私たちが戻るのは、ミサキのところよ」と本題が出てくる。
ミサキが消えた経緯
ミサキはスズナの親友である。ギャンブラーという職を選んだので運がいいはずだからと、魔物が落としていった宝箱を拾った。だがそれは罠付きの宝箱で、かかったのは階層内転移の罠だった。つまり彼女はこの階のどこかにいる、というのが捜索の前提になる。
ここで動くのが五十嵐京香だ。「私たちもその子を探しましょう」「転移した先で一人で魔物に会ってしまったら、どれだけ怖いか。そう思ったら、とても放っておけないわ」。理由がきれいに一本で、迷いがない。
同時に、不穏な情報も置かれる。他のパーティーは見ていないが、「ここに来てすぐ、誰かに見られているような気がした」。「二階層に来る人を、誰かが監視しているってこと? 一体何のために」。この一言が、終盤の答え合わせにそのまま繋がっていく。
「もし私が逃げてと言ったら、私を残して逃げて」
ソロでついていくと言い張る理由
アリヒトの申し出は、自分の職業の制約から出ている。「俺の職業は後衛だ。しかし同じパーティーじゃないと支援ができないんだ」。だから「今だけでいい、俺たちとパーティーを組んでくれ」と頼む。
エリーティアの返事は半分だけだった。スズナをアリヒトのパーティーに入れる一方、自分は「私はソロでついていく」。理由は「高レベルの私がパーティーにいると、あなたたちの経験値が減っちゃうから」で、少なくとも表向きは筋が通っている。白宮スズナ、職業は巫女という正式な自己紹介が入るのもこの場面だ。
だが本題は、前衛としてよくない部分は何かという問いへの答えの方である。「もし私が逃げてと言ったら、私を残して逃げて。それだけはお願い」。スズナにリターンスクロールを渡してあるから、それを使ってと付け加える。「生活費が足りなくなったら私に言って」「今のところ大丈夫だ。俺は紐体質じゃないしな」「紐? 何それ」という軽口を挟みつつ、条件は飲まれた。
ジャガーノート、そして暴君の少女
現れたのは賞金首ジャガーノート。エリーティアの反応が異様に早い。「こいつがここにいるはずがない。おそらく誰かが私たちになすりつけて、倒させるためにここへ」。「あいつらか」と心当たりまである。
そして「あなたたちはそこにいて」と単身で飛び出し、狂戦士化する。力をコントロールできなくなる姿を見て、アリヒトはようやく理解する。だからパーティーを組ませず、距離を置けと言っていたのだと。「あの名前付きの多くの集団も、一人で全てを背負おうとしていたのか」。サブタイトルの「暴君の少女」が指しているのはここである。
「逃げろと言われて、逃げられるかよ」
置いて逃げろ、と言う側と言われる側
逃げる手段はあった。スズナが持っているリターンスクロールを使えばいい。そうすべきだ、あんな化け物に勝てるわけがない。そこまで自分で並べたうえで出てくるのが「逃げろと言われて、逃げられるかよ」である。
面白いのは、その直後にアリヒト自身が同じことを言う側に回るところだ。「どうしようもなくなったら、俺を置いて逃げろ」。テレジアも京香も当然拒み、「無事に帰れたら何でもします。どうしようもなくなるまで逃げません。ですからここにいさせてください」と押し返される。結局アリヒトは、スクロールをいつでも使えるようにしておくという約束だけを取り付けた。
勝ち筋の立て方も、この作品らしく理屈で組まれている。自分たちはジャガーノートの攻撃を受ければ即死だが、エリーティアだけは回避できる。つまり彼女がいれば攻撃のチャンスを作れる。物理攻撃が無効であっても、全ての攻撃に支援分が乗るなら可能性はある。だからもう一度こう言う。「エリーティア、俺のパーティーに入ってくれ。一時的でいい。このままじゃミサキも助けられない」。
支援が乗った瞬間
パーティーに入った途端、戦況の手触りが変わる。「俺より前にいると、攻撃におまけがつくと思ってくれ」。「なんだか不思議な手応えが。こんなの初めてです」「すごいコントロールね」と、支援を受ける側の実感として描かれるのがいい。
撃破後のエリーティアは「情けないけど、体に力が入らなくて」と立てなくなっている。回復を受けながら口にしたのが「私のこと色々ごめんなさい。わけが分からないわよね。少しだけ待って。必ず後で話すから」。秘密は今回で全部は明かされない。
ミサキは無事だった。「もしかして、すずちゃんが助けてくれたの」「私だけじゃないよ。皆で」。戦利品として残った黒い宝箱については、名前付きの黒い箱は滅多に出ない探索者垂涎の宝だが、不用意に開けず罠の解除ができる箱屋をギルドで紹介してもらうように、と釘を刺されている。ミサキがまさにそれで飛ばされた直後なので、説得力が違う。
黒幕ベルゲンと、迷宮国の正体
ジャガーノートを出したのは誰か
ギルドの調べで全部が繋がる。ジャガーノートを出現させたパーティーは24人の探索者を集めて挑み、壊滅していた。その時の生き残りが、ベルゲンという探索者が率いるパーティーだったという。
つまりミサキをさらってエリーティアを引き出し、討伐させたうえで戦利品を手に入れる計画だった。冒頭の「誰かに見られているような気がした」の正体もこれである。ルイーザの「後のことはギルドにお任せください。ベルゲン様のような方々を裁くのも、この国での我々の仕事ですので」で幕引きとなった。
ついでに世界設定も一気に開く。この迷宮国に国王はいない。建国した一族は1番区から追放されており、統治権を持つのは大神殿の神殿長と、ギルドの指導者である。さらに、この国にある迷宮はすべて世界のどこか別の場所にあるもので、転移するための入り口だけが迷宮国の壁の中に集められている、という話まで出てきた。
2日で4桁、そしてテレジアのこと
報告での行動記録の読み上げが、なかなか止まらない。ワタタマ15体、ファングウォーク23体と積み上げたところに賞金首ジャガーノートの討伐で800ポイント、ミサキの救助で100、犯罪者3名の撃退で90、黒い宝箱の持ち帰りで50。合計は探索者貢献度1649で、8番区の歴代貢献度ランキング2位である。「3桁の貢献度でもすごいな」「2日で4桁まで行ってしまうなんて」という反応が全てを物語っていた。
そのまま全員で食事へ。誰がどこに座るかで京香とルイーザが譲り合い、ミサキが「アリヒトお兄ちゃんっていくつでしたっけ」「やっぱり年上がいいんですか」と遠慮なく踏み込んでくる。アリヒトの「そういう話題は禁止だ」も特に効いていない。
そして乾杯の前に、アリヒトが話を切り出す。「今日この後レイラさんのところに行って、正式にテレジアに仲間になってもらおうと思っています」。続けて口にしたのが「俺はテレジアを人の姿に戻してやりたいんです」で、パーティーの当面の目標がここで言葉になった。




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