この記事の作品:
魔王ルミナスが催す音楽交流祭のため、リムル一行は聖地ルベリオスへと足を運んだ。歴史を感じさせる街並みで手厚い歓待を受けたその夜、リムルはルミナスから静かな語らいの席へと誘われる。そこで告げられたのは、かつて「夜明けの勇者」と讃えられた英雄グランベルの企みだった。栄光と悲劇に彩られたその過去に迫る第88話を振り返る。




聖地ルベリオスへ、歓待の裏で動く影
リムル一行、音楽交流祭の地へ
魔王ルミナス考案の音楽交流祭に招かれ、リムルの一行は聖地ルベリオスへと到着した。テンペストとは趣の異なる、歴史を感じさせる街並み。一行はそれぞれに手厚い歓待を受け、演奏を披露する学団員の子供たちにまで、惜しみないもてなしが振る舞われる。
「我々学団員にまで、このようなもてなしを……」と恐縮する子らに、リムルは笑って返す。「それだけお前たちの演奏を楽しみにしてくれてる証さ」。三日後の演奏会を控え、聖地には和やかで穏やかな時間が流れていた。
ルミナスが明かす、グランベルの企み
その夜、リムルはルミナスから折り入っての語らいへと誘われる。メイド姿で現れてリムルを驚かせようとする茶目っ気を挟みつつ、彼女が切り出したのは不穏な報せだった。
ひと月ほど前、グランベルがグランドマスター・結城神楽坂、すなわちユウキと接触し、何らかの協定を結んだらしい。長年「七王の長」を務めたグランベルは、ルミナス以上にこの国を知り尽くす厄介な相手。ことを起こすとすれば、おそらくこのルベリオスで。ルミナスはそう睨んでいた。
「夜明けの勇者グラン」——英雄の正体
勇者の卵から生まれた、真の勇者
グランベルの正体は、かつて「夜明けの勇者グラン」と讃えられた伝説の英雄だった。ルミナス曰く、聖人や勇者とは肩書きではなく、人間種の進化の果てに「勇者の卵」が孵って成った存在であり、魔物が覚醒して真なる魔王へ至るのに等しいという。
だからこそグランベルは、旧来の魔王たちをも上回るほどに強い。その力は聖騎士ヒナタさえ凌ぐほどで、ルミナスがこの席にヒナタを呼ばなかったのも、それだけ相手が規格外だからにほかならない。
聖女マリアと、約束の地の夢
時は遡り、若き日のグラン。彼にはマリアという伴侶がいた。西と東を一つにまとめ、人類が一丸となって魔王を打倒し、誰もが平穏に暮らせる世界を築く。二人はそんな「約束の地」の夢を分かち合っていた。
当時の西方は今以上に混沌とし、魔王同士さえ敵対する時代。その中でグランは、ルミナスが人との共存を望んでいると見抜き、彼女と盟約を結ぶ。やがて西方は安住の地となり、集落は国となって栄えた。こうしてグランは、勇者「グラン」と、一国の為政者「グランベル」という二つの顔を持つに至る。
崩れた約束、闇へ堕ちた英雄
婚礼の日の陰謀と、マリアの最期
やがて迎えた、息子ロルフの婚礼。花嫁は隣国の姫イザベラ、まさに晴れの舞台だった。だがグランベルは隣国での政務が長引き、式に遅れていた。その隙を突くように、国を我が物にせんとする大臣の陰謀が牙を剥く。
裏切りを知る聖女マリアは、自らが狙われながらも護衛と合流し、グランが駆けつけるまで持ちこたえようとする。花嫁イザベラたちは無事に逃れたが、マリア自身は凶刃に倒れた。「人は弱いものね、グラン。人々の平和な世界のために、皆を正しく導いて。あなたが人類を守るのだ」——その言葉を残し、聖女は息絶える。人間たちの欲が、英雄から最愛の人を奪った瞬間だった。
表舞台を捨て、裏から世界を動かす
マリアを失ったグランベルは、表舞台から姿を消す。以後は裏から国々に働きかけ、西方諸国評議会を誕生させた。東の帝国に対抗すべくドワーフと手を組み、商人を通じて内情を探らせたのも彼だ。伝説的な英雄が、たった一人でそれをずっと続けてきたのである。
そして今、その英雄が再び不穏に動き出した。かつて共にあったマリアベルの死が引き金なのか。ルミナスは訝るが、単なる仇討ちとは思えない。何か別の狙いがある。リムルもまた、「いい加減、あいつとも決着をつける時だ」と、ユウキとの因縁に静かに向き合うのだった。
レオンの思惑と、ユウキの計略
クロエを探す、魔王レオン
一方、動きを見せたのは魔王レオンだった。狙いはやはりクロエ。かつて共にこの世界へ渡ったはずなのに、どこにも見当たらない、行方知れずの少女。「クロエ」と、彼女を探し続けるレオンの姿が描かれる。
レオンの陣営では、原初の悪魔ジョーヌが忽然と姿を消す異変も起きていた。テンペストに子供たちが匿われているという情報が流れる中、レオンは「私とリムルを争わせて利を得ようとする者がいる」と看破しつつも、クロエのために動き出す。
秘宝を狙う影と、グランベルの真意
その情報を流していたのはユウキ側だった。責任は仕入れ先のロッゾ一族に押し付けるつもりで、レオンとリムルを衝突させ、ルベリオスをさらなる混乱に陥れる。そうして狙うのは、ルミナスが封じる秘宝——グランベルが「決戦兵器」とまで断言した代物だ。ユウキはティアら配下に「西で最後の大仕事」を託し、自らもサポートに回るという。
だが黒幕グランベルの真意は、それよりもなお昏い。リムルもレオンも、そしてルミナスさえも討つ。人の欲の犠牲となってなお人類を守護し続けてきた自分から、奪うだけのこんな世界など——「滅んでしまえばよいのだ」。英雄の絶望が静かに滲む中、物語は次回「終息の地ルベリオス」へと続く。




関連作品:


















コメント