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第2話「遺物の主になろうとする者」。巻き上げた仏像に隠されていた麻薬から、遼河はギャラリーを丸ごと警察に売り渡して報奨金一千万円を手にする。軍資金を得た矢先、かつて自宅があった場所に墓が出現。そこにはCIAと海外の発掘団という先客がいたが、遼河は遺物たちの言語「トゥームグリフ」を読んで正面から先を越す。中で待っていたのは金の斧と銀の斧の遺物。だが遼河は用意された試練を蹴り、「服従しないなら破壊する」と脅して屈服させた。そして失業した呉羽昇一味は、ライバルどころかその日のうちに遼河の手駒になる。




五千円の仏像が、ギャラリーを丸ごと沈めた
鑑定額と、荒井の慌てぶりが噛み合わない
第2話は、前回巻き上げた仏像の鑑定から始まる。ところが返ってきた答えは「他の店でも同じです」「五千円もしませんね、捨てた方がいい」という、拍子抜けするものだった。普通ならここで終わる。だが遼河が引っかかったのはそこではない。
「荒井があれだけ慌ててたんだ。安いのに、別物のはずがないんだよな」。値段ではなく、持ち主の反応から中身を疑うという発想である。そして内部から怪しい物質が出てきて、答え合わせが終わる。「そういうことかよ。やっぱりな。古物商に売るような代物じゃなかった」。
美術品を装った麻薬の運び屋。ギャラリーが表の顔でしかなかったことが、この一体で確定した。遼河はためらいなく警察に一報を入れる。
暗証番号を全部知っている通報者
摘発は容赦がなかった。千葉の倉庫から美術品六百点、そのすべてから麻薬が検出される。社長が取り乱したのは押収の規模ではなく、開かないはずの部屋が開いたことの方だった。「保管室も全部開けたですって? 部屋ごとに違う暗証番号にしたのにありえない」。
ありえるのだ。十五年後から来た男には、番号がすべて記憶に入っている。現れた遼河の一言が「どんなに面倒だとしても、暗証番号は定期的に変えないとな」で、続けて「じゃあ、塀の中へ行ってらっしゃい」と見送る。連行される社長の「おのれ剛力めー!」だけが廊下に響いた。その直前、彼女は「会長」への電話で平謝りをしている。
通報の報奨金は一千万円。「無駄遣いせず、必ず貯金しろよ」と釘を刺されて、返事は「心配性だな」である。こうして初期費用を確保した遼河は「明日から本格的に墓を探すとするか」と腰を上げる。
先客はCIAと海外の発掘団、そして「爆破」
自宅の跡地に墓が出た
ところが探すまでもなかった。人だかりの先にあったのは、かつて自分の家が建っていた場所に出現した墓である。「記憶では、ここに俺ん家が。墓ができたのか。運がいいのか悪いのか」。軍資金を手にした翌日に足元から湧いてきたのだから、運は良い方だろう。
すでに先客がいた。「日本政府はまだ墓のことを知らないんですよね」「まもなく爆破が始まります」。現場ではアメリカ側の女と発掘団の男が牽制し合っている。「泥棒するのにご熱心なこと」「俺たち同じ穴の狢だろう。お高く止まんなよ」といった調子で、互いに相手を出し抜く気しかない。
専門家がいない、と遼河は見抜く
それを物陰から眺める遼河の評価は辛辣だった。「ずる賢いCIAと、まぬけな発掘団が、もう嗅ぎつけてきたのか」。そして本題は「爆破? 墓の扱い方を知らないところを見ると、本物の専門家はいないってことだな」。入り口の位置がわからないから壊して入る、という手口そのものが素人の証拠だという読みである。
対する遼河が見つけたのがトゥームグリフだった。遺物たちの言語で、墓のあちこちに自分のことを細かく書き記しているため、読めば入り口から罠の位置まですべてわかる。「なんだよ、幸先がいいな」「カラスのやつめ。ずいぶん親切だな」。外の連中が爆薬を並べている横で、正規の入り口が派手に開く。「墓の入り口が開いたようです」「どういうことよ。入り口が開いたって?」と、現場は騒然となった。
金の斧と銀の斧を、正解を知りながら蹴る
「どっちも俺のじゃないぜ」の先
中で待っていた遺物は金の斧と銀の斧。ヘルメースと欲張りな木こりが原型で、似た話が方々にあるためどこの国の人間でも簡単にクリアできる、易しい試練のはずだった。
遼河の受け答えも最初は模範的だ。「お前が落としたのはどっちだ」に「まいったな。どっちも俺のじゃないぜ」、遺物は「正直な奴だな。ならば、これがお前の物か」と続ける。ここで「それは俺のだ」と答えれば、自分の斧と金銀の斧をまとめて受け取ってクリアである。遼河もそれを知っている。知ったうえで「ちょっとそれが俺のもんか確認してもいいか」と手を出し、試練ごと壊しにかかった。
理由が振るっている。「うるさい。お前らを信用してない。試練をクリアしたからって褒美をくれる保証なんてないからな。それに褒美をもらったら殺人鬼にされるかもしれないしな」。実際にアメリカで、金の斧と銀の斧がその持ち主を操り連続殺人犯に仕立て上げた事件が起きている。遺物の「お前、なぜそれを知ってる」が、未来から来た男には最大の褒め言葉だ。
神話力・支配力・適合力、そして脅迫
ここで遺物を従える三つの力が整理される。神話力は遺物といい関係を築いて協力してもらう能力、支配力はカリスマ性で遺物を支配し命令に従わせる能力、そして適合力は主人と遺物の関係の深さで、音楽家が楽器の遺物と出会えるといった相性のことを指す。
遼河が選んだのは支配力だった。「こんなことで私を手に入れられるとでも思うのか」と突っぱねる相手に、「どのくらい耐えていられるかな」と力ずくで押し込んでいく。決め手は「負けを認めないなら破壊してやるまでだ。俺にできないと思うか」で、とうとう遺物の方が「もうやめろ」と折れた。「手こずらせやがって。おとなしく服従しろよ」。
そして二つ目の墓発掘スキルが活性化する。名前は「卑劣な遺物脅迫者」。「なに」「脅迫者」「くそ、カラスのやつめ。ふざけやがって、俺のことからかってんのかよ」と本人は不服だが、やったことは名前の通りである。残りはあと一つでコンプリートだ。
池は空振り、呉羽昇は子分になった
預言者の指示どおりに投げ入れても、何も出ない
外の発掘団は、預言者から授かった手順で正面から挑んでいた。池を見つけ、「予言通りだな。さあ出てこい遺物よ」と遺物を投げ入れる。童話に忠実な、本来なら正しい作法だ。だが水面は静まり返ったままだった。「なんで反応がないんだ」「預言者が池に遺物を投げ入れろって言ってたのに」。
答えは簡単で、中身はもう遼河が持ち出した後だった。「バカどもね。もう遅いんだよ」。取り乱す相手にアメリカ側が「預言の遺物を使う者がいるようね」と鎌をかけ、「違うよ」「詮索するなよ」と返される。そこへ地震が起き、一同は逃げ出すことになった。
「おとなしく行くか、死ぬほど殴られるか」
一方、ギャラリー壊滅の余波を食らったのが呉羽昇一味である。「社長も捕まって、俺たち完全に失業者じゃないっすか」「これも全部遼河のせいなんだよな」と気勢を上げ、「俺は呉羽昇様だぞ。借りはきっちり返す男、男の中の男だ」と啖呵を切る。その直後に鳴る電話が「何してんだ。出るのが遅いぞ。死にたいのか?」で、仕返しの相手が先に呼び出してきた形になった。
与えられた仕事はマイダス。ラスベガスで開かれる世界最大の秘密オークションで、今月の定期オークションに潜り込み、出品物とジャック・ケイマンという人物を探せという指示だ。大河原の偽名である。「どうやってそこまで行くんだよ」には「それはお前らが何とかしろよ。報酬は弾んでやるから。経費の心配はするな。これはビジネスだ」、締めが「選ぶのはお前たち。おとなしく行くか、死ぬほど殴られるか」。返事は「ありがとうございました」だった。
ラストは通り魔事件のニュースから。「墓の出現前にはこんな事件がたくさん起きてた覚えがある」と現場に向かった遼河は、そこで古墳化現象と、オーラを隠しもせず遺物を持ち歩く男を見つける。肩がぶつかったふりでクリーニング代をせびられ、代わりに相手の身分証を抜き取って「身分証、落としましたね」と差し出す始末だ。その男が受けていた予言が「遺物を奪った日本人が、君の近くにいる」、そして「君は酒に注意しろ」。「あいつが予言に出てきた奴だと」で次回へ続く。




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