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決戦の地に立ったグローイングドーンを待っていたのは、黒潮ソウジが操る三体の完全体だった。駆けつけた沢城キョウは「望み通り地獄に送ってやる」と黄金の力を解き放つが、その先にあったのはデジモンをデリートするという選択。トモロウが掲げたのは、この組にただ一つ伝わる掟だった。そして誰も予想していなかったムラサメモンの究極体進化が、キョウ編の結末を照らす。第41話「黄金の明日」を振り返る。




決戦の地に立ちはだかる三体の完全体
「沢城キョウのファミリーだ」と名乗った先で
決戦の地で黒潮ソウジを見つけ出したトモロウたちは、真正面から名乗りを上げる。「グローイングドーン。沢城キョウのファミリーだ」…返ってきたのは、噛みしめるような一言だった。「ファミリー…なるほど。キョウが変わったのはお前たちのせいか」。ソウジにとってキョウの変化は、自分から獲物を取り上げた出来事でしかない。
「あなたが現れてから、キョウさんがおかしくなったんです」「お前はもう一切関わるな」と食い下がる面々に、ソウジが向けたのは値踏みの視線だった。「お前らが代わりに、この渇きを満たしてくれるのか」…そして三体の完全体が動き出す。集団戦の常識が通じない。ひとりで完全体を三体も同時に操るという異常が、そのまま数の差を無意味にしてしまう。
結果は残酷だった。「全然足りないな。お前らじゃ何も感じない。もう飽きた」…倒し切られる前に飽きられるという負け方が、いちばんこたえる。前回まで積み上げてきたキョウの過去を知っている視聴者ほど、この開幕の突き放し方に息が詰まったはずだ。
「来たなあ、沢城キョウ」黄金が戻ってきた
そこへ現れたのが当の本人である。「来たなあ、沢城キョウ」…「キョウさん、どうしてあんな嘘を」と問いかける仲間に、キョウは短く「あいつが理由なんだろ」と受け流し、ソウジへ向き直る。「警告したはずだ。もう一度俺の前に姿を現したときは容赦しないと」。
ソウジは満足そうに笑った。「ちゃんと取り戻したようだね、黄金のキョウを」…キョウの答えは「ああ。望み通り地獄に送ってやる」。求める側と応える側が、ここでようやく噛み合ってしまう。「楽しませてくれよ。もっとだ。もっと見せろ。俺の渇きを満たしてくれよ」という煽りに、「見せてやる」と返す短さがいい。
ただ、この噛み合い方は喜べるものではない。ソウジが望んでいるのはかつて情け容赦なくデリートしていた頃のキョウであって、シェルターを営む今のキョウではないからだ。「取り戻した」という言葉が褒め言葉として飛んでくること自体が、この回の不穏さそのものだった。
デリートするか、掟を守るか
柔ノ斬・月時雨、豪ノ斬・叢時雨、それでも終わらない戦い
キョウとムラサメモンの戦いぶりは、これまでとまるで違った。下段に構えて相手の攻撃をはじき返す柔ノ斬・月時雨、上段からの一刀両断である豪ノ斬・叢時雨と、剣技を切り替えながら三体を押し返していく。「もっと踏み込め、ムラサメモン」「ああ、分かっている」…三人がかりでも歯が立たなかった相手を、たった一組で完封してみせる。
だが、勝ち切れない。「なぜデリートしない」という問いが投げられ、返ってきたのは絶望的な事実だった。「デリートしない限り、こいつの力で何度でも再生する」…倒しても倒しても、ソウジが送り込む力で立ち上がってくる。ソウジは待ち構えていたように「ああ、もっとゾワゾワさせてくれよ」と喜ぶ。
そしてキョウが口にする。「ムラサメモン、甘い考えは捨てろ」「あいつだけは許すことができない」「すべて終わらせないと。また、あの時みたいに」…前回描かれた二輪草の惨劇が、そのまま彼の判断を縛っている。守るために踏み越える、というもっとも危うい理屈へ手が伸びた瞬間だった。
「教えてくれたのはあんたじゃないか」トモロウが掲げた唯一の掟
そこへ割って入ったのがトモロウである。「デジモンは絶対にデリートしない。それが俺たちグローイングドーンのたった一つの掟だって、教えてくれたのはあんたじゃないか」…この作品でいちばん強い言葉が、いちばん効かない相手に向けて放たれる。返事は「もうやめた」の四文字だった。
「そこまで無理をするんですか」という声にも、キョウは「お前たちは手を引け」と拒む。理由もはっきり告げられる。「黒潮ソウジは目の前の命を簡単に踏み潰す。そういう奴なんだ」…二輪草にあった墓を思い浮かべながら、「あいつが…俺のせいで幸せを奪ってしまった」と続く独白が重い。掟を破ろうとしているのは、掟を作った本人なのだ。
ソウジはその揺らぎを的確に突いてくる。「あの時のお前に戻れってよ」…さらに戦いの最中、彼はグローイングドーン側のデジモンとテイマーのつながりを断ち切り、次々と手中に収めていった。「やめろ、あいつらにこれ以上手を出すな」と叫ぶキョウに、ソウジは「ファミリーだからか」と問い、「そうじゃない」という否定を待たずに切り捨てる。「だから弱いんだよ」。
「ただの器」ではなかったデジモンたち
「なぜ止まる」自力で断ち切られた呪縛
ソウジの結論は「俺を殺したあの日のお前を取り戻せない。全部壊す」だった。命令に従って襲いかかるはずの完全体たちが、しかし途中で足を止める。「なぜ止まる。ただの器が」…操られていたデジモンたちが返した答えが、この回の核心だ。あなたとは、そもそも合わない。
「なんだそれは。理解不能だ」と吐き捨てるソウジに、「わかるかよ、お前なんかに」と言葉が返る。心が分からないと言い張る相手へ、静かな否定も差し込まれた。「分かります。分かろうとせず、目を背けているだけです」…感情がないのではなく、見ないようにしてきただけ。40話で描かれた「渇き」の正体に、初めて外側から名前がつけられる。
焦ったソウジが「お前たち、なぜ動かねえ」と声を荒らげる横で、トモロウが呼びかける。「キョウ、お前が作ったファミリーはそう簡単に壊れない。そうだろう、モナークリザモン」…支配を振り払ったのは外からの救出ではなく、デジモンたち自身の意思だった。ここを他人任せにしなかったのが、この回のいちばん誠実なところだと思う。
仲間たちの言葉と、ソウジが初めて味わった感覚
流れが変わってから、仲間たちの言葉が次々とキョウへ届く。「お前の過去に何があったかなんて俺たちには分からない。やり直せない過去なのかもしれない。でも今のキョウには俺たちがいる」「僕たちはそんな簡単に壊れたりしません」「みんなキョウに育ててもらったんだ。感謝してる」「作るんだろう、デジモンと人間の未来を。だったら前を見ろよ」「俺たちはグローイングドーン」…そして最後に置かれるのが「お前はどうしたいんだ」という問いかけである。
命令でも懇願でもなく、意思を尋ねる。過去に縛られて「終わらせないと」としか言えなくなっていた男に、これほど効く言葉はない。「俺は…」と言いかけたキョウの言葉が、そのまま次の展開へ流れ込んでいく構成も気持ちよかった。
一方で崩れていくのがソウジだった。「なんだよこれ。ゾワゾワじゃねえ。この感じは何なんだよ」「嫌だ、思い出したくない」…渇きを止める快感だけを求めてきた男が、まったく別の何かに触れてしまう。「壊れろ」と繰り返す姿は、強敵の暴走というより、蓋をしてきたものが噴き出すのを必死で押さえ込む姿に見えた。
ムラサメモン、究極体ハバキリモンへ
そして進化が来る。ムラサメモンが究極体ハバキリモンへ。全身を純白の鎧で包み、頭の後ろに光背をいただき、腕は四本に増える。剣士から神へ、という跳ね方が視覚的にはっきりしていて、初見でも格の変化が伝わる姿だった。
名前の由来は、スサノオノミコトがヤマタノオロチを斬ったとされる神剣「天羽々斬」から。視聴者が「スサノオモンの技名も天羽々斬だし、関係者だったりする?」と考察を始めたのも当然の連想で、この作品がデジモンという長いシリーズの上に立っていることを思い出させてくれる。
面白いのは、進化を見たソウジの反応が「すげぇよ。鼻血が止まらねぇよ。最高だ。もう一回あれ」だったことだ。恐怖ではなく歓喜。強さそのものより、自分を揺さぶってくれる何かに餓えている男なのだと、ここで改めて突きつけられる。
「黄金の明日」まとめと考察
殺してくれと乞う男に、キョウが返した「さあ帰ろう」
決着したあと、倒れたソウジが求めたのは、やはりそれだった。「殺せよ、キョウ」…なぜ手を下さないのか、と食い下がる相手に、キョウが返した言葉は「これで終わりだ」、そして仲間へ向けた「さあ帰ろう」だった。掟を破りかけた男が、掟を守る側へ自分の足で戻ってくる。副題の「黄金の明日」は、黄金のキョウが暴れる明日ではなく、グローイングドーンの沢城キョウとして迎える明日のことだったわけだ。
その直後に置かれた引きが不穏だった。戦いを見ていた何者かが「十分に黒く染まったようだ」と言い残して去っていく。ミハルのそばにいた人物だと気づく声も上がるが、誰について言った言葉なのかは明かされない。ソウジなのか、それともこの戦いで一度は掟を越えかけた誰かなのか。キョウ編の締めくくりに、次の物語の種だけがきれいに残された。
今回いちばん効いていたのは、救い方の順番だと思う。まず操られていたデジモンたちが自力で呪縛を断ち切り、次に仲間の言葉がキョウの背中を押し、その結果として究極体への進化が起きる。力が先に来て問題を解決するのではなく、気持ちが先に立ち上がってから力が追いついてくる。エンディングまで特別仕様で、仲間たちのもとへ戻ってくる映像に「戻ってきた」という手応えを感じた人が多かったのも、この順番があったからだろう。
キョウ編はこれで最終話。残るのは、まだ語られていない過去のほうだ。ネットではさっそく「次はキョウと兄貴の過去編では」「天馬家まわりの不鮮明なところも補完してほしい」という期待が飛び交っていた。昏睡状態の兄アスカを救うためにこの組へ加わったトモロウにとって、順番が回ってくるのはむしろこれから。掟をいちばん強く叫んだ少年が、次はどんな明日を選ぶのか。




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