『きみを愛する気はない』第9話「ヤルモの誓い」感想|先に渡されたのは役目

『きみを愛する気はない』第9話「ヤルモの誓い」感想|先に渡されたのは役目 ファンタジー

第九話の副題は「ヤルモの誓い」。公式のSTORYに並ぶ九本のうち、副題に人の名前が入ったのはこの回が初めてで、しかもそれが主役の二人ではない。回想が見せるのは、名前を与えられた次の呼吸で「役目」という言葉を手渡された日と、この家に呼ばれた理由が生まれたときの性別ひとつだったという事実。そして彼が呪いをかけた相手は、当時ずっと一人で笑っていなかった

アニ
第九話、副題は「ヤルモの誓い」でござる!
ラン
副題に名前が入るの、初めてなのね!
キャロ
はい。ここまでの八本は物か状況だけでした。
アニ
今回はヤルモどのの過去がまるごと一話でござる!

副題に人の名前が入ったのは、九話目にして初めて

公式サイトのSTORYに並ぶ副題を頭から見てみたい。第一話「みせかけの結婚」、第二話「……ありがとう」、第三話「カフスボタンとオルゴール」、第四話「微笑みの裏側」、第五話「遠い雨音」、第六話「夜会にひそむ罠」、第七話「思いがけない贈り物」、第八話「誤解と不実」。物か、状況か、誰かの言葉かのどれかで、人の名前はひとつも入っていない。

そこへ第九話「ヤルモの誓い」が来る。九本目で初めて副題に名前が入り、その名前が主役の二人でもエルサの弟でもない。この番組が誰かを名指しするときは、その人を丸ごと一話ぶん引き受けるということらしい。

並べてみると副題の作り方にも癖がある。誰かの声をそのまま置いたのは第二話「……ありがとう」だけで、しかも三点リーダーから始まる。あとは全部が外側から名づけた言い方だ。今回の「誓い」も同じで、本人が誓いと呼んだわけではなく、外から見てそう名づけられている。名前を出したのに、距離の取り方は変えていない。

▼ ネットの反応

第9話「ヤルモの誓い」
ご視聴ありがとうございました✨️

ヤルモ(CV #石川界人)が
ユリウスを意識し続ける理由がわかりましたね…

感想はぜひ「#きみ愛」で教えてください
次回もどうぞお楽しみに!

このあと8/30(土)深夜2時~先行配信
アニメタイムズ|U-NEXT|アニメ放題|dアニメストア

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脚本と絵コンテが、きれいに順番で回っている

各話スタッフを並べると、この回が節目に置かれているのが分かる。脚本は金春智子、森田眞由美、吉村愛の三人が回していて、森田眞由美が担当したのは第三話、第六話、そして第九話。三話おきにきっちり戻ってくる。今回の脚本が森田眞由美であることは、視聴者からも確認の投稿が出ていた。

絵コンテはもっとはっきりしている。第二話から前澤大樹、木下大悟、中川聡、前田基匡の四人が順に並び、第六話からまた同じ順で二周目に入る。第九話は前田基匡で、二周目のちょうど四番目にあたる。演出の清水あきらはここまで名前が出ておらず、この回が初登板になる。

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深夜1時30分~
「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます
第9話

ヤルモは昔の夢を見る。幼いころの悲惨な暮らし、必死に重ねた努力。
しかし常にヤルモの前にいたのがユリウスだった……。

#きみ愛

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名前より先に「役目」が渡された日

回想の最初、伯父はまず名前を与える。今日からお前は、ヤルモ・パルニラと名乗るように。ここまではよくある引き取りの場面だ。ところがそのすぐあとに続く言い方が独特だった。いずれわかることだから話しておこう。自分の役目を知るためにも、その方がいいだろう。

出自を説明する理由が、本人のためではなく役目のためになっている。名前を渡した次の呼吸で役目という言葉が出てきて、以後ヤルモはそこから一歩も動いていない。第六話で父に向かって、ご心配なさらずとも父上の邪魔をするものは私が何とか致します、それが私の役目ですから、と言っていた台詞がある。その語がどこで手渡されたのかが、九話目にしてやっと見える。

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「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます第9話✨
ヤルモは昔の夢を見る✋
幼いころの悲惨な暮らし、伯父に引き取られてから必死に重ねた努力…。
しかし常にヤルモの前にいたのがユリウスだった
やがてユリウスへの思いは憧れめいたものから変わっていき…。

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褒めてもらうために強くなる、という願い方

幼いヤルモの願いも、順番が普通と逆だった。誰よりも強くなりたい、ではなく、誰よりも強くなったら褒めていただけますか、という形で口に出る。目的が自分の達成ではなく相手の承認に置かれている。この一言があるだけで、後年の彼が一位という順位にこだわり続ける理由が説明されてしまう。

呼ばれた理由は「男児だったから」でしかない

伯父の説明が容赦ない。お前の父親は、私の弟だ。町の娘と恋に落ち、子供まで作って駆け落ちしたきり。二人は家を出てまもなく事故で亡くなり、残された子供は行方知れずになっていた。それでも捜索を続けたのは、家に男の跡取りがいなかったからだという。

その理由がはっきり言葉になる。ようやく産んだ子供が女の子だったため、男の後継ぎが必要となった。そして、ようやく見つけた子供が男児だったことから、こうして呼び寄せたわけだ、と続く。ヤルモがこの家にいる理由は、能力でも縁でもなく、生まれたときの性別ひとつだった。

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「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます 9話
ヤルモの過去編。
伯父に引き取られどん底から這い上がったと思いきや、ユリウスの存在により陽の目を浴びず。
ついにはセラフィーナの心まで奪われたとは…
ヤルモ自身は真面目に努力を重ねてたのが報われない。
#きみ愛アニメ

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公式紹介の「兄」が、血の上では従兄だった

この説明は設定の書き換えにもなっている。ヤルモはこれまで伯爵家の長男でセラフィーナの兄として出てきた。ところが今回の話でいくと、伯爵の実子はセラフィーナのほうで、ヤルモは伯爵の弟の子。血の上では兄妹ではなく従兄妹にあたる。

さらに苦いのは順番だ。セラフィーナが女の子として生まれたことが、ヤルモがこの家に呼ばれた理由になっている。妹の存在そのものが自分の採用理由という立ち位置で、そのうえで長男として振る舞い続けてきたわけだ。第六話で彼が妹に、セラフィーナは宝石よりもずっと美しいのに、と声をかけていた場面の色味が変わる。

▼ ネットの反応

アニメ『「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます』
第9話「ヤルモの誓い」あらすじ&先行カット公開!
#財賀アカネ 先生(『いびつな狐のお嫁入り』)から応援イラストや #八尋裕子 さん描き下ろしの上下巻BDジャケット画像も到着!

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呪いをかけられた相手は、当時ずっと笑っていなかった

学校でのヤルモは徹底して二番手に置かれる。新入生代表の挨拶に立つのはユリウスで、順位が出るたびに、さすがユリウスが一位だ、という声が上がる。決定打になるのは成績ではなく、話しかけたときの返事のほうだ。き、君は誰だっけ。

努力しても届かないのではなく、そもそも名前を覚えられていない。憧れがねじれて呪いになる場所がここで、以後ヤルモはユリウスの調査報告書を受け取り続ける人になる。

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#きみ愛 WEB次回予告動画
第9話「ヤルモの誓い」
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当のユリウスは「いつも一人で笑わない静かな子」だった

この回でいちばん効いたのは、ハンネスが図書館の先生に聞きに行く場面だった。返ってきた人物評が、いつも一人で笑わない静かな子だったな。ヤルモが十年近く目標にして、勝てないと苦しみ続けてきた相手は、当時ずっと一人で笑っていなかった。

そのユリウスが現在の場面で口にするのが、笑っていて欲しいだけだ、という一言だ。随分と姉に甘くなりましたね、というハンネスの指摘に、本人はきょとんとしたまま答える。笑わなかった子供が、誰かに笑っていてほしいと言うようになる。ヤルモが追いかけているのは、その変化の前で止まったままの像でしかない。

聞き込みに行った理由がまた良い。ハンネスは、ユリウス様も今僕が通ってる学校の卒業生なんだって、と気づき、参考までに、と当時の様子を尋ねに行く。義理の弟としての興味なので悪意がひとつもなく、それなのに得られた情報がこの回でいちばん深いところを突いている。同じ制服を着た人が同じ学校の話を聞きに行くだけで、十年前の教室が開いてしまう。

全員が誰かを見ていて、いちばん長く見てきた人だけが読み違える

この回は観察の回でもある。ヤルモのもとには最新の調査報告書が届き、最近、慈善活動の一環で子供の家を買い取ったようです、という報告まで上がってくる。返事が、よ、よりによって子供の家か。育ちを知られたくない側にとって、そこは触れられたくない場所だったのだろう。

ハンネスは図書館の先生に義理の兄の過去を聞きに行き、子供たちはエルサの様子を見て、エルサ先生はユリウス様が一番好きなんでしょ、と当ててくる。ユリウス自身も、距離を取られた、目も合わないし、どこか上の空の気がする、と妻の変化に気づいている。

▼ ネットの反応

#きみ愛 第9話視聴です。
契約結婚のはずが何故か日増しに優しく接してくるユリウス。何はともあれエルサにとっては嬉しい限りですね。ところで今回は皆さん「考える人」になってましたね〜笑。ヤルモの策略が気になりますが、ユリウスの出張にエルサが同行できることになって良かった♪
#きみ愛アニメ

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バザーの側は、ちゃんと明るい回になっている

重い回想と並走する現在パートが、きちんと呼吸になっているのも良かった。教会主催のチャリティーバザーにはレベッカも手伝いに入り、たくさんお手伝いしていただいてしまって、と恐縮するエルサに、いいえ、楽しいですからお気になさらないでください、と返す。準備した品物が早々になくなりそうだ、というくらいの盛況で終わる。

子供たちとのやりとりも短く効いている。悪態をついた男の子が、あとで嫌われたくないと不安になり、エルサが、嫌いになんてなりませんよ、優しい子だと知っていますから、と受ける。第七話から続く子どもの家の話が、この回でようやく教師としての場面らしくなった。

見立てが当たっていないのはヤルモだけ

子供の一言も、弟の聞き込みも、夫の観察も、この回ではきちんと当たっている。当たっていないのは、いちばん長く相手を見てきたヤルモの見立てだけだ。名前を知る価値すらない存在として扱われた記憶で相手を測っているので、相手が変わったことが計算に入らない。

バザーの提案も本人ではなくユリウスから出ている。子供の家で寄付金を募るバザーをやってはどうだろうか、そちらの環境も知っていただけますし、と。経費を切り詰めようとしていたエルサに、節約ではなく集める側の案を出す。ヤルモが調査書で追いかけている慈善活動の中身は、こういう思いつきの積み重ねでできている。

「チーズは好きか」の行き先が、ヤルモの仕込んだ土地だった

この回の並べ方がうまいのは終盤だ。地方都市整備計画の会議で、二つの地方は順調だと報告されるなか、一つだけ進みが悪い土地が残る。となるとやはり気になるのはクレーサ地方だな、なぜこんなに進捗が遅れているんだ。結論は、ユリウス、一度視察を頼む。

直後に映るのが、その土地の領主からパルニラ家に届いた礼状だった。おかげで遅れていた道路整備の一部が完了いたしました。よろしければ一度我が領地にお越しください。歓迎いたします。そして末尾に、お約束どおり次期議長選の際は必ずパルニラ伯爵を支持させていただきます。遅れは事故ではなく、票と引き換えに作られていたことになる。

▼ ネットの反応

『「きみを愛する気はない」
と言った次期公爵様が
なぜか溺愛してきます』
第9話!/
久しぶりのリアタイ!/
エルサさん全力待機です!/
カリフラワー♪/
#きみ愛
#きみ愛アニメ

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誓いの言葉と、旅行の誘いが同じ土地を指している

副題の回収も静かだ。伯爵が、根回しをしていた法案をユリウスに止められて忌々しいと吐き捨てると、ヤルモが受ける。彼のことでしたらご心配なく。今に必ず我がパルニラ家を優位に立たせてみせましょう。誓う相手が神でも自分でもなく、育ての父だというところに、この人のすべてがある。

そして最後の場面。バザーを手伝えなかったことを詫び、紅茶を淹れに立ち、妻の様子を気にしたユリウスが切り出すのが、チーズは好きか、だった。一週間の出張に行くことになった、そこはチーズが美味しいそうだ、よかったら俺と一緒に行ってくれないか。誘い文句としては最上級に不器用でいい。

ただしその行き先は、ついさっき票で買われたと分かった土地である。夫婦が旅行に出る話と、伯爵家が票を集める話が、同じ地名で重なって終わる。副題は「ヤルモの誓い」だが、誓いの結果がどこに落ちるのかまで、この回は最後の一言で見せている。

アニ
呼ばれた理由が男児だったから、というのは重いでござる!
キャロ
追いかけていた相手は、当時ずっと笑っていませんでしたね。
ラン
最後の「チーズは好きか」が可愛かったのね!
アニ
その行き先が票で買われた土地というのが効くでござる!

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