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第8話の副題は「カラスの秘密」。ここまでの副題は全部が仕組みか役割の名前で、一個体を名指しした題はこれが初めてだ。ところがその秘密を喋るのは、遼河の首を狙っている側のほうだった。殴りも脅しもせず、知らないんだろ、と一言かぶせただけで全部が出てくる。そして公式のスタッフ欄を並べると、カラスの話をする回だけ同じ布陣が組まれている。復元師を雇った本当の用途も、この回で裏返る。




「カラスの秘密」を喋ったのは、遼河の首を狙っている側だった
第8話の副題は「カラスの秘密」。ここまでの副題を並べると、この題だけ毛色が違うのがすぐ分かる。第1話「終わりから再び」、第2話「遺物の主になろうとする者」、第3話「支配が適性に合う者」、第4話「未来を盗んだ者」、第5話「不老草の主」、第6話「大古墳化」、第7話「遺物の復元」。
全部が仕組みか役割の名前で、特定の誰かを指した題はひとつもない。第8話で初めて、副題が一個体の名前を呼ぶ。しかもその個体は主人公でも敵でもなく、主人公を十五年前へ送った道具のほうだ。
冒頭のギャグが、そのままこの戦いの切り札になる
秘密が出てくるのは海の上だ。その前に、冒頭の一発を覚えておきたい。柳孝太郎を連れ帰りに来た遼河が護衛たちに向けて言うのが、今から死ぬほどの激痛に苦しめられる、激痛が襲う場所は今回もやはり股間だ。言った内容がそのまま起きる遺物で、この回では下品な小ネタとして処理される。
ところが船上で蛇の遺物が出てくると、同じ道具が正面から効く。噛まれた人間が操り人形になると見抜いた遼河の返しが、相手が人間ならむしろ簡単だ、こいつを使えばいい。そして読み上げるのが、遺物に操られる人間は皆、自分の愚かさを嘆いて、力いっぱい頭を床に打ちつけながら、俺に謝罪し、そのまま動かなくなる。人質を取る戦法が、宣言ひとつで丸ごと無効になる。
秘密は、殴らずに煽ったら出てきた
情報の取り方が見どころだった。遼河がお前たちの言うカラス、あいつの正体はなんだと聞くと、返ってくるのは、貴様に教えてやる必要などない。ここで引かずに、なんだ、あんたも知らないのか、期待した俺が馬鹿だったな、と落とす。相手は、何、我を侮辱するのかと乗ってきて、そのまま全部を話してしまう。
第4話の副題が「未来を盗んだ者」で、あのときは偽装デートまで仕込んで予言を書き写させた。今回は餌も罠も要らない。知らないんだろ、と一言かぶせただけで、相手が自分から並べてくれる。締めの、見事かどうか知らないが、情報はもらったよ、が気持ちいい。
語られた中身は、カラスが二度失った話だった
出てきた秘密はこうだ。あやつは捕食の能力で、食した相手の力をそのまま自分のものにできる神クラスじゃった。ある時、カラスが人間と契約を結び、あろうことか、そいつのために我らを裏切ったのじゃ。その結果、仲間たちがカラスに喰われ、あるいは契約者の奴隷にされた。
仕返しの手順も語られる。カラスの契約者を先に押さえて封印に成功し、最後はカラスを監獄に入れて、その契約者も殺した。ここで遼河が内心で結ぶのが、過去に戻る前に入った墓は、カラスが閉じ込められたところなのか、という一行だ。第1話で自分が死にかけた場所の正体が、ここで裏から説明される。
同時に、いま遼河が座っている椅子の由来もはっきりする。カラスと契約した人間は、この連中に殺されている。裏切られて死にかけた人間と、仲間を裏切って封じられた遺物が組んでいて、その席には前任者がいた。公式の紹介文はカラスの遺物に救われてと一行で済ませているが、救った側の履歴はこれだけ長い。
自慢話が、そのまま相手の評価を上げてしまう
語り終えた側は、どうだ、我らの見事な戦略は、と胸を張る。ところが聞いた側の感想が、あんたの話を聞いて、カラスは思ったよりいい奴なのかもと思えてきたよ。仲間を裏切ってでも人間についた、という話を悪口として出したのに、その人間の側にいる相手にとっては保証書にしかならない。
続く脅しも同じ結果になる。カラスの側につけば、我々すべてを敵に回すことになるんじゃぞ。返事が、構わないさ、お前らと仲良くするつもりはないからな。遺物のあいだで遼河の噂が一瞬で広まったという話も出てきて、噂好きなだけだ、と切り返されている。この番組の敵は、だいたい喋りすぎる。
総作画監督が交代するのは、カラスの回だけ
公式サイトの各話ページには、あらすじの下にスタッフ欄がある。第8話は絵コンテがWoo Seung Wook、KIM C.H、Cho Jun Yeongの三人、演出がWoo Seung Wook、Lee Kap Min、Park Hong Keunの三人、総作画監督がHeo Hyung Jun、作画監督が四人。視聴者からも絵コンテ三人、演出三人、作監四人という数え方の投稿が出ていた。
絵コンテの人が、初めて演出も兼ねている
絵コンテ欄を第1話から追うと、Woo Seung Wookの名前は第2話を除く全話に入っている。事実上このシリーズの絵を切り続けている人だ。ところがその人が演出欄にも出るのは、第8話が初めてになる。八本目にして、絵を切った本人が現場側にも名前を残した回ということになる。
第6話と第8話だけが、そっくり同じ布陣
もっと分かりやすいのが総作画監督だ。第1話から第7話までのうち、六本はLee Hyun Joungが担当している。例外は第6話「大古墳化」と、この第8話「カラスの秘密」の二本だけで、どちらもHeo Hyung Jun。しかも作画監督四人の顔ぶれまで、この二本は完全に一致している。
第6話は、大河原の力に反応して他の遺物が目覚めるとカラスが警告し、その正体に話が及んだ回だった。第8話は副題そのものがカラスの秘密。つまり、カラスの話をする回だけ同じチームが組まれている。偶然かもしれないが、二本続けて一致するとさすがに目につく。
公式のキャラクター紹介は、いまも一人しかいない
ついでに気づいたことをひとつ。公式サイトのCHARACTERページに載っているのは、八話が終わった今も剛力遼河ただ一人だ。柳孝太郎が正式に仲間になり、アイリーンへの指導も始まり、キイラ・クラーク将軍の名前まで出たこの回のあとでも、紹介欄は主人公だけで動いていない。仲間が増えていく話なのに、公式の看板はひとりのまま立っている。
復元師を雇った理由は、直すためではなく偽物を作るためだった
公式あらすじは、遺物復元師の柳孝太郎を助けて仲間に加えた、と書く。第7話の副題も「遺物の復元」だった。ところがこの回を最後まで見ると、遼河が復元師を欲しがった本当の用途が別にあることが分かる。
敬語が、三度はがれる
まず仲間になった直後の扱いが雑でいい。この量を三日で復元できるわけがないと抗議する柳に、遼河が返すのが、つべこべ言わずに始めろ、それと団長と呼んで敬語で話しかけろ。効果はすぐ出る。数ヶ月はかか、と言いかけた語尾が、かかりますよ、に着地する。
二度目は賭けの場面だ。復元はこの筆さえあれば誰でもできるなんて甘いもんじゃないんです、僕の年俸をかけて言いますが、団長は絶対に、と胸を張った直後に、おかしいだろ、なんで簡単にできちゃうわけ、と敬語が吹き飛ぶ。三度目は終盤で、大国相手に詐欺を働けと、僕はやりません、抜けます、絶対にやだ。敬語と本音が交互に出るのが、このキャラクターの作りらしい。
「俺じゃダメなんだって」が、この主人公の弱点を言っている
賭けに勝った遼河へ、柳がまっとうな質問をする。そこまでできるなら、僕は必要ないじゃないですか、全部自分でやればいい。返事が、俺じゃダメなんだって。そして筆のほうが騒ぎ出す。なんだ、この凶暴な支配力。いやだ、あっち行け。遺物の側が持ち主を拒んでいる。
説明もそのまま置かれる。お前のように神話力が高くないと、こいつは使いこなせない。第3話の副題が「支配が適性に合う者」で、あの回で遼河は遺物と協力する道ではなく力で従わせる道を選んでいた。選ばなかった側の力が要る道具に当たったとき、彼は自分で覚えるのではなく、その力を持つ人間を雇う。アイリーンへの指導を分担する場面でも、俺からは支配力、と自分の担当をはっきり区切っていた。
口説き文句も未来を知る男らしい。俺は今のお前じゃなく、未来のお前を買ったんだ、頑張れ、必ず腕は上がるはずだ。言われた側は素直に燃え、言った側は内心でまったく単純な奴だと切り捨てる。未来の詐欺王を、その称号がつく前に確保しているわけだ。
依頼の中身が、公式あらすじの一行を裏返す
仲介商人エドワードの依頼は、発掘団に志願して目当ての遺物を見つけ、こっそり奪ってくること。遼河はその場で、依頼人は別にいるだろう、と踏み込み、キイラ・クラーク将軍の名前を引き出す。ここまでは公式あらすじの通りだ。
問題はその先で、将軍に遺物を渡すのかと聞かれた遼河が、贋作を渡すんだよ、と答える。復元師は壊れた遺物を直すために雇われたのではなく、本物から偽物を作らせるために雇われていた。第7話の「遺物の復元」という副題が、一話またいで使い道ごと裏返る形になっている。
抜けますと騒ぐ柳に返るのが、契約書1ページ5項、乙は甲の指示通り行動し、甲の行動に異議を唱えない。そして本人の嘆きが、過去の僕よ、契約書にサインなんて絶対するなよ。過去に戻ってやり直せた男の隣で、戻れない男が過去の自分に呼びかけている。同じ回に置かれると、この一言はギャグの形をした対比になる。
「どう見てもこっちが悪党だ」を、二度言わせている
この回の良心役も柳だ。財布をすった少女を荒縄で縛り上げたところで、僕たちの方が悪党に見える、と漏らす。その少女がメドゥーサの遺物の使用者だと分かって尋問が始まると、やっぱり、どう見てもこっちが悪党だ、ともう一度言う。同じ感想を二度言わせているので、これは冗談ではなく作品側の自己申告だと思っていい。
実際、この回でいちばん割を食っているのはその少女だった。俺たちのことを誰かに話したら耐え難い苦痛を味わうことになる、と口封じをかけられているので、仲間に事情を聞かれても答えられない。なくしたんじゃない、奪われたんだよ、と叫んでも、何もできないくせに問題ばかり起こす、と怒鳴られる。話そうとすると声が止まり、心配される。盗んだ側の子供が、盗まれた側の大人に黙らされて孤立していく。
遼河はそのあいだ、ベントの三分の二以上が墓になっている、島へ渡る橋が壊されて船でしか入れない、ひょっとして船と関係のある遺物なのか、と現地の形から中身を当てにいく。第2話から続く読みの速さは今回も変わらない。ただ、その速さの下で誰かが黙らされていることまで一緒に映すのが、この作品の律儀なところだと思う。




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