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第10話は、塀先生描き下ろしのアニメオリジナル回。美術館では、傷心のかなでにジンランが想いを投げかけ続け、文学と映画を語り合う。楽器店では、あかねとやえかが思い出の曲『茜色の夕日』を一緒に口ずさむ。締めは幻の焼酎「百年の孤独」を囲む寮飲み。全てを分かり合わなくても向き合える——三者三様の価値観のすり合わせを描いた一話である。




美術館で、かなでとジンラン
予防線を、張る人
第10話は、塀先生描き下ろしのアニメオリジナル回。舞台の一つは美術館だ。作品をまっすぐ味わう前に、解説書やインタビューを読み込んでしまうかなで。リヒターやセザンヌ、ゴッホを前にしても、「補助線」と称して幾重にも予防線を張ってしまう真面目な人だ。
他人の見識を頼るあまり、自分の感受性と向き合えていないのではないか——そう静かに揺れるかなでの姿は、いぶきへの想いを手放せずにいる彼女自身の在り方とも重なっていく。
鑑賞のスタイルにキャラクターの生き方を映す、アニオリ回ならではの丁寧な人物描写。美術館という舞台選びからして、この回の企みが効いている。
文学好きどうしの、告白
そんなかなでに、ジンランがまっすぐ迫る。「同じでいい?」と同じお酒を注文し、ラベルに「女の子がゴッホにひまわりを渡す」絵の描かれた信州アブサンを味わいながら、映画や文学の話で盛り上がる。台湾の監督作まで観てきたジンランの姿は、かなでへの興味の表れだった。
知的な話題を通じて距離を詰めていく、二人だけの言葉。文学好きどうしの、これ以上ない告白——傷心の郡上先輩に、ジンランのグイグイ来る想いが刺さっていく。
趣味の深さで惹かれ合う二人の会話が、とにかく心地よい。涙が出るというファンの声も納得の、静かな熱を帯びたやり取りだった。
嵐の海へ、漕ぎ出す勇気
落ち着くのに、怖い
ジンランに惹かれつつも、かなでは臆する。「あなたといると落ち着くし、楽しい。でも、それが少し怖い」。心の中が、嵐の夜のようにザワザワする——いぶきへの想いを失った傷が、まだ癒えていないのだ。
一歩を踏み出せば、また傷つくかもしれない。その怖さに立ちすくむかなでの繊細さが、痛いほど伝わってくる。
海に出ましょう
そんなかなでに、ジンランはゴッホの言葉を差し出す。「海は危険であり、嵐は恐ろしい。それは漁夫がよく知っている。だが、海に出ない理由には少しもなるまい」——「海に出ましょう」と。
罪悪感に沈むかなでの心を、少しずつ塗り替えていくジンランの想い。諦めずに球を投げ続けるその姿が、この回のいちばん静かで熱い見どころだった。
楽器店と、茜色の夕日
あかねの夢と、やえかの想い
もう一つの舞台は、夕陽の差し込む楽器店。ギターに夢中になるあかねと、その様子を複雑な面持ちで見つめるやえか。音楽に懸けるあかねと、それを支えたいやえか——二人の距離が、静かに描かれる。
いつもは言い合ってばかりの二人だが、その根っこには確かな信頼がある。楽器という共通言語が、言葉にしない想いをそっと繋いでいた。
一緒に、歌った歌
店内に流れるのは『茜色の夕日』。あかねが一年生の頃、やえかに教えた思い出の曲だ。あかねの部屋で音楽を聴きながら過ごした日々——その記憶ごと、二人は同じ歌を口ずさむ。
エンディングでは、この曲のイントロがそのまま流れ、志村くんの歌声が夜に沁みる。好きな歌を、一緒に歌える関係。それだけで十分に、二人の絆は伝わってきた。
寮飲みと、フィクサーぼたん
幻の焼酎、百年の孤独
締めくくりは、みんなでの寮飲み。やえかが「みんなで飲んで」と置いていったのは、なんと幻の焼酎「百年の孤独」——ガルシア・マルケスの小説から名を取った一本だった。
ノーベル文学賞の話に、ジャズの名言。「音楽は一度奏でられると空中に消え、二度と取り戻せない」——過ぎゆく時間の愛おしさが、みんなの笑い声とともに卓を包む。
趣味は違っても、向き合う
この回が静かに突きつけるのは、人は全てを分かり合ってから付き合うわけではないということ。アートの趣味が合わなくても、いぶきにまっすぐ向き合うぼたん。それができなかったかなで。対照的な二人の姿が、そっと重ねられる。
さりげなくみんなを繋ぎ、場を回していく“フィクサーぼたん”の采配も見事。誰かと違っていても、向き合う勇気があれば繋がれる——そんな祈りが込められていた。
まとめ——瞬間の心を、味わうアニメ
三者三様の、すり合わせ
かなでとジンラン、あかねとやえか、ぼたんといぶき。第10話が描いたのは、三者三様の価値観のすり合わせだった。全てが噛み合わなくても、それぞれのやり方で相手に近づいていく。
この作品は、時間軸を追う物語というより、その瞬間瞬間の心の動きを、時間が止まったように味わうアニメ。いぶきの故郷が富山・砺波だと明かされる何気ない会話まで、丁寧に世界を編んでいく。
アニオリが照らした、二人
塀先生描き下ろしのこの回は、遊佐あかねと北杜やえかという、描写の少なかった二人の関係にたっぷり光を当てた。「もっと二人の絡みが見たい」というファンの願いを、見事に叶えてくれた回でもある。
作画・演出・アニオリの完成度から、「10話が一番好き」と語る声も多い。穏やかな日常の一つ一つを、これほど愛おしく描けるのかと唸らされる一話だった。




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