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ビデン村の親父モルデアから、ベリルに一通の手紙が届く。用件は毎年恒例、サーベルボアの群れを村人だけで狩る「お祭り」の人手集めだ。夏休みのミュイを誘い、見聞を広めたいヘンブリッツと押しかけクルニを連れて、初めての帰省が始まる。「お前は俺の孫だ」と迎える親父、そして翌日の道場では騎士嫌いの姉弟弟子との思わぬ決闘が勃発。さらに「親父は俺より強い」という衝撃の告白まで、第4話「片田舎のおっさん、帰省する」を振り返る。




恒例行事はサーベルボア狩り…帰省の面々
親父の手紙と、村の「お祭り」
魔術師学院が夏休みに入り、騎士団に専念していたベリルのもとへ、親父モルデアからの手紙が届く。用件は毎年この時期の恒例行事。実家のあるビデン村の周辺にサーベルボアの群れが出るため、人里に来られる前に対処するのだ。イノシシに似たモンスターだが肉はうまく、狩りの後はみんなで食う「まあ、お祭りみたいなもんだよ」。
ここでヘンブリッツの常識が音を立てて崩れる。村の男衆が調査して騎士団なり冒険者なりに討伐を依頼する流れでは、と問えば、返答は「いや、自分たちでやるほうが手っ取り早いし」。絶句する副団長に、アリューシアは涼しい顔で「ヘンブリッツ、ビデン村というのはそういう場所なのです」。道場には門下生もいるし、何より親父がいるからね、というベリルの補足が、後半への静かな伏線になっている。
木剣を持っていきたい…ミュイの変化と押しかけクルニ
親父が会いたがっているからと、ベリルはミュイを帰省に誘う。断られるかと思いきや「ついていくっつってんの?なんか文句ある?」と意外なほどすんなり。しかも「木剣持っていきたいんだけど」と言い出した。道場の木剣ではなく、今使っているやつがいい。重さも、持つところの太さも。「ちょっとずつでも毎日振りたいし」…剣術を好きになってくれている弟子の言葉に、ベリルの顔がほころぶ。
出発の朝には、見聞を広めたいと同行を願い出たヘンブリッツに加え、「ハイッス」と押しかけクルニが登場。休暇を全部くっつけて申請済みという確信犯だ。ここでベリルは先生の顔になる。「事前の相談もなしに押しかけるのは頂けないな。ヘンブリッツ君も上司なんだから、毅然と対応するか、最低限俺に報告があって然るべきでしょう」…そろって頭を下げる騎士団のツートップ。この報連相の説教が、なんともおっさんらしくていい。
馬車の中の身の上話
クルニとヘンブリッツ、騎士を志した理由
道中の馬車は、さながら小さな交流会だ。初対面のミュイに失態をさらしたと畳の上のような謝罪を始めるヘンブリッツに、ミュイは「やめてくれ、見てるこっちまで疲れるし」。一方のクルニはおやつとスコーンで距離を詰めにかかり、「ちゃん付けはやめろ」と言われながらもぐいぐい懐に入っていく。そんなクルニに「なんか騎士っぽくねぇよな」と遠慮のないミュイ。そこから、二人の騎士が志望動機を語り出す。
クルニの原点は憧れ。幼い頃、観光で訪れたバルトレーンで危ない場所に迷い込み、お金を取られそうになったところを巡回の騎士に助けられ、最後にお菓子までもらった。「私もあんな風に人を助けられる、かっこいい騎士になりたい」。ヘンブリッツは、国に仕える役人の父の背中を見て育ち、勉学にのめり込みすぎて体を壊した末、健康のためにと勧められた剣で花開いた口だ。「剣の道はいい。のめり込むほど健康になる」…この理屈が実に彼らしい。「騎士になりたいって思ってなってるだけでもすげえよ」とぽつり漏らしたミュイが、照れて「言うんじゃなかった」と悔やむ流れまで含めて、良い車中だった。
「お前は俺の孫だ」…モルデアとフレンの出迎え
日暮れ前にビデン村へ到着。バルトレーンから出るのが初めてのミュイは「なんかすげえ広い。匂いも全然違う」と目を丸くする。出迎えたのは、「一応こいつの父親だ」ととぼけるモルデアと、連れ合いのフレン。人見知りのミュイが硬い挨拶をすると、モルデアはさらりと言ってのけた。「ベリルと一緒に暮らしてんなら、お前は俺の孫だ。その事実は変わらない」。こういう顔もできたのか、と内心で驚くベリルがおかしい。
かと思えば、クルニに向かって「お前さんがベリルの嫁候補か」と斬り込み、「違うに決まってるだろ」と返されるや「都で暮らして浮ついた話の一つもねえとは。お前に期待した俺がバカだったよ」と息子を嘆く始末。夕食にはフレンの手料理が並び、ちゃん付けを嫌うミュイも、おふくろの「どんどん食べてね」には形無しで「おいしい」。折よく顔を出したのは、とっくに妻子持ちの弟子ランドリド・パトルロック。凄腕と名高い冒険者と騎士団副団長が「知らない方が失礼でしょう」と互いに敬意を示し合う場面も愉快だ。極めつけはモルデアの頼み…「俺のことは是非、爺ちゃんと呼んでくれ」「老い先短い俺の夢を叶えてくれ」。フレンに「変な冗談でミュイを困らせるんじゃないよ」とたしなめられて、初日の夜は更けていく。
翌日の道場、思わぬ決闘
「騎士なんて役立たず」…アデルの怒り
翌日、ベリルとヘンブリッツは道場の稽古を見学へ。クルニはミュイを連れて村の案内に出る。道場の子供たちが「騎士団?すっげえ」と沸く中、一人だけ冷ややかな声が上がった。「騎士団なんて大したことないでしょ」。ベリルとランドリドの弟子アデルだ。彼女の言い分には棘だけでなく実感がある。「父さんの畑がモンスターに荒らされたときも、騎士なんて一人たりとも来なかった」「いつだって助けてくれるのは、冒険者や狩人や先生よ」。
気持ちは分かるがぶつける相手が違う、ととりなすベリルを、ヘンブリッツが制した。「アデル殿の思いは、騎士団員である私が受け止めます」。売り言葉に買い言葉で「じゃあ私と勝負しなさい」と決闘が成立し、気弱な弟のエデルまで「つべこべ言わない」と巻き込まれる。ランドリドも止める気配はなく、ここは任せるかと見守るベリル。帰省翌日にして、思いもよらぬ戦いの勃発である。
怒りの炎を消さず、剣に打ち込め
姉弟の連携は「予想より鋭い打ち込みでした」とヘンブリッツに言わしめたが、複数を相手取るコツをベリルから教わっていた副団長が貫禄の完勝。ベリルはケガをさせない力加減と勝負の締め方を絶賛する。見事だったのはその後だ。「負けたからには非礼をわびるわ。でもいつか絶対に追い越して…」と頭を下げるアデルに、ヘンブリッツは静かに首を振る。
「わびる必要などありません。騎士団がこの国すべての人々を助けられていないのは事実」「今現在、アデル殿が抱く怒りは間違っていない。それは自らを鍛え続ける力の源になりますゆえ」…「怒りの炎を消さず、剣に打ち込んでください。私はいつでも受け止めます」。批判を正面から受け止め、成長の燃料に変えさせる器の大きさ。内心「子供には難しいんじゃないかな、その考え方は」とつぶやくベリルとの温度差も含めて、この副団長の株が爆上がりする一幕だった。
「親父は俺より強い」…道場を譲った理由の謎
その後の型稽古では、攻めの型が5番、受けの型が8番まであるガーデナント道場の体系が披露される。受け流しを重視した独特の足さばきに気づくヘンブリッツが「型はベリル殿が一番お上手なのでは」と水を向けると、返ってきたのは驚きの答えだった。「いや、親父だね。親父は俺より強い。俺が知る最高の剣士だよ」。他流試合だろうが道場破りだろうが常に圧勝。まともに打ち込まれたところすら見たことがなく、ベリル自身も一度も勝てず、いつも軽くあしらわれてきた。「剣士としての俺の到達点…親父は常に俺のはるか先にいた」。そして漏れる疑問…「その親父がなぜ、俺なんかに道場を譲ったんだ」。
核心に触れようとした矢先、「そうだベリル、お前酒買ってこい」「いい酒だぞ。10本ぐらい買ってこい。お前結構な給料もらってんだろ」と親父に追い出され、質問は空振り。一方その頃、ヘンブリッツが「ベリル殿が、モルデア殿には勝てる気がしないと」と直接確かめると、モルデアは「あいつが俺に一度も勝ったことがないってのは事実だ」と認めつつ、「なんならやってみるか…冗談だよ。腰痛持ちのジジイが副団長さんとまともにやりあえるわけねえや」とはぐらかす。最強の親父の実力は、徹底して伏せられたままだ。
「片田舎のおっさん、帰省する」まとめと考察
最強老人の謎と、雄叫びの予感
派手な事件は起きない。それでも退屈とは無縁の、人柄で読ませる回だった。騎士を志した二つの原点、押しかけへの報連相の説教、批判を受け止める副団長の器。武の序列と人望の序列が綺麗に一致していく構成は、この作品の得意技だ。
最大の収穫は、ベリルの自己評価の低さの源流が見えたこと。一度も勝てなかった父親が到達点として常に前にいたなら、あの謙遜癖にも合点がいく。腰痛持ちのジジイを自称しながら実力を一切見せないモルデアは、視聴者の間でも早くも最強老人と話題だ。そして「なぜ俺なんかに道場を譲ったんだ」という問いは、聞きそびれたまま次回へ持ち越し。ヘンブリッツがこの村で見聞きしたものが、いずれ王都でベリルの評判をまた底上げするのだろう。
締めのぼやきは「おふくろの味はありがたい。しかし帰省すると若い頃のように山ほど料理を出されるのは、おっさんの胃袋にはつらい」。次回は「片田舎のおっさん、雄叫びをあげる」…いよいよサーベルボア狩りの本番である。




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