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乾坤一擲の大規模反攻、鉄槌作戦が動き出す。狙いは敵野戦軍の包囲殲滅と、講和交渉でより有利な条件を勝ち取ること。ターニャたちサラマンダー戦闘団は戦車に跨がるタンクデサントで敵中を突破し、嫌々ながらの司令部強襲まで大金星を挙げる。だが完勝の後、最高統帥府の会議で講和はひっくり返り、ルーデルドルフの「いかなる犠牲を払ってでも、我が軍は勝利いたします」が響く。第4話「鉄槌作戦」を振り返る。




乾坤一擲、鉄槌作戦の全貌
参謀本部の朝と、飲めない三条件
幕開けは、作戦発動中の参謀本部。執務室に泊まり込む相棒へ朝飯を持ち込む、ゼートゥーアとルーデルドルフの閑談から始まる。娘は婿を戦争で亡くして実家に戻ったきりだという話に、「今の帝国ではありふれた悲劇か」…この静かな一言が、回全体の通奏低音になる。
上の結論はこうだ。無賠償・無割譲・無条件という条件は飲めない。ならば、マシな条件を勝ち取らねばならない。安全保障を最優先に、緩衝地帯の設定、可能であれば賠償も。そのための切り札が、乾坤一擲の大規模反攻=鉄槌作戦である。講和の席をひっくり返すためではなく、講和の席で強く出るための戦争。この倒錯した理屈で、物語は一気に加速していく。
大河を壁に、機甲の鉄槌で敵をぶち抜く
前線のターニャに開封命令が届く。中身を見るなり「むちゃくちゃだな」。ブリーフィングで語られる作戦の全体像はこうだ。目的は敵野戦軍の包囲殲滅…連邦主軍を壊滅させ、その戦争継続能力を奪う。肝は、敵地後方の大河を巨大な障壁に見立てること。すでに空挺部隊が降下し、数カ所の橋を封鎖。先行した降下猟兵を後続で増強し、敵の退路と補給を締め上げる。
そして機甲戦力を主軸とした「鉄槌」で敵戦区をぶち抜き、後方の降下部隊と合流、敵野戦軍を分割包囲して友軍が徹底的に叩き潰す。「連邦首脳がもう二度と戦争をしたくなくなるほどにな」。サラマンダー戦闘団の役目は中央突破の尖兵だ。「遅れれば降下猟兵の諸君が全滅しかねん。責任は重大だぞ」…戦線整理も補給不足も置き去りの強行軍に、ターニャの胃が痛む。
タンクデサントと、レルゲン戦闘団
魔導師は飛ばずに、戦車で行く
航空優勢は友軍が確保済み。だが敵の防衛網は厳重で、戦闘団規模で敵の間を縫って進めるのかと部下は不安を隠さない。そこでターニャの「小細工」が炸裂する。アーレンス隊の戦車に魔導師が跨がるタンクデサントだ。飛行による魔導反応を抑えれば、連邦軍は上空の魔導師ばかりを警戒するため、突破の成功率は格段に上がる。索敵の視界も良好…理屈は完璧だが、「思った以上にお尻が痛いですね」という感想が全てを物語る。
周囲は敵陣地だらけ。見つかれば装甲のない生身は肉壁同然という緊張の中、敵戦区の間隙を縫う潜行が続く。地を這う魔導師という絵面の新鮮さも含めて、本作らしい合理主義の見せ場だった。
水と弾薬の物々交換…降下猟兵との合流
たどり着いた橋では、3日近い孤立に耐えた降下猟兵たちが待っていた。「戦友よ、よく耐えたな」「本当によく来てくれた」。弾薬が残り少ないと聞けば直ちに手配し、代わりに川の水を所望して「それは君たちが得た獲物だろう。水と弾薬の物々交換といこうじゃないか」。死守した者への敬意をきかせた、ターニャ一流の人心掌握である。後で記念撮影でも、という約束に「カメラ一式の手配はお任せください」と応じる副官も手慣れたものだ。
ここで愉快な種明かしがひとつ。突破成功の報告に飛び交う「レルゲン戦闘団」の名は、サラマンダー戦闘団の秘匿呼称だという。本人が聞いたら頭を抱えそうな命名はさておき、部隊は包囲戦へ移行。「ここからが本番だ。敵の解囲運動をくじくぞ」と、締め付けが始まる。
猟犬の司令部狩りと、消えた講和
「今こそ牛になる時ですね」…嫌々の大金星
参謀本部では「反撃部隊の頭を狩るのが一番早い」と、敵司令部への直撃案が浮上する。どの部隊にそんな余裕が、という問いへの答えがふるっている。「この種の仕事にうってつけの猟犬を、東部で飼い慣らしておるではないか」…かくして追加任務はターニャへ。「相変わらず参謀本部は人使いが荒い」とぼやく中佐は、敵陣の強固さを見るや持ち前の屁理屈を全開にする。見つけた司令部が本物とは限らん、偽装の公算が濃厚だ、つまり罠だ、罠に決まっている。「このまま赤い布へ突進する牛になれと?」…かくして「離脱しながらの捜索撃滅」という名のサボタージュが始まった。
ところが、だ。部下が本物の敵司令部を発見してしまう。「あの馬鹿、散々誤認しておきながら、なぜこんな時だけ!?」と頭を抱えるターニャに、部下は真顔で言う。「中佐殿、今こそ牛になる時ですね」。かくして嫌々の突撃は敵司令部の直撃・撃破という大金星に化け、包囲からの全面脱出は阻止。望める最大限の成果が転がり込んだ。誠実に働かないつもりが、結果だけは常に完璧。この呪いのような有能さが、後の悲劇の伏線になる。
「また勝てた」…元帥号と記念写真
「諸君、我々はやり遂げたぞ」「ああ、また勝てた」。勝利に沸く前線へ、イルドアの観戦武官カランドロが再びやって来る。「連邦もここまで大敗すれば、停戦は時間の問題だろう」と語る大佐に、ターニャは「いずれにせよ、講和が成立するまでは戦争かと」と気を緩めない。記念写真に誘われたカランドロが「勝ったのは帝国だ」と辞退し、代わりにターニャが「もっと自然に笑ってください」と注文を付けられる一幕が微笑ましい。
参謀本部の二人も、「これで元帥号も時間の問題だな」「誉れは同僚と受けるべきだ」「友よ、君はやり遂げたのだ。誇りたまえ」と互いを労い合う。モスコー進撃すら理屈の上では選択肢だが、鉄道網の再建は絶望的で兵站が続かない。何より停戦交渉が優先…戦区のレルゲン大佐からも、停戦合意は時間の問題との報告が届く。一方、大敗した連邦の側では「愛しの妖精さんを諦めろと?」と不穏につぶやく影も。全てが講和へ向かって流れていた、はずだった。
「内乱上等では?」…最高統帥府、講和を蹴る
最高統帥府の緊急会合。読み上げられたイルドア経由の外交合意案は、現時点の軍事境界線で全軍停戦、領有権の移譲なし、非武装地帯の設定、占領地は住民投票で帰属決定という穏当なものだ。軍は「本条件を最良のものと認識し、かつ支持します」と明言する。「将兵の献身があればこそ、このような条件を相手に飲ませられるのですぞ」。
だが文民側が牙をむいた。「国内の世論をご掌握されてないようですね」「賠償を取らない限り、国家財政は破綻するでしょうな。最悪、国家機構まで危うい」。戦場の完勝が、かえって世論の期待値を吊り上げてしまったのだ。議論は紛糾し、ついには「内乱上等では?」という問題発言まで飛び出す。血を流した軍が講和を望み、血を流していない側が戦争の継続を求める。この倒錯の中で、矛先は作戦の担当者ルーデルドルフへ向かう。
「鉄槌作戦」まとめと考察
「勝利いたします」…サンクコストの断崖
「帝国軍はこれ以上の勝利を望み得ぬとお考えですか?」…詰問されたルーデルドルフは「率直に言えば、難しいでしょう」と答えながら、「不可能とは言わないのですね」の一押しに踏みとどまれなかった。「これまで数多の将兵が犠牲を払ってきたのです」「無限の犠牲を前提としたとき、今さらどうして無責任に勝てぬと言いましょうか」「これまでの犠牲を無駄にはできない。ならば、さらなる犠牲も覚悟の上です」。ゼートゥーアの「よせ」「やめろ」「その口をつぐめ、ルーデルドルフ!」という制止もむなしく、宣言は放たれる。「いかなる犠牲を払ってでも、我が軍は…勝利!勝利いたします!」。
第4話「鉄槌作戦」は、戦場の完勝と外交の完敗を一本の線で描き切った回だった。有利な講和のための作戦が成功しすぎた結果、世論は賠償なしの講和を許さなくなり、政治家は世論に流され、講和を望んでいたはずの軍が戦争継続を誓わされる。払った犠牲がさらなる犠牲を正当化していく、教科書のようなサンクコストの罠である。冒頭の「ありふれた悲劇」が、この国ぐるみの引き返せなさの縮図だったと気づいたときの寒気がすごい。
そして皮肉の頂点にいるのが、平穏のために完璧に働くほど戦争を長引かせてしまうターニャだ。連邦に残る「妖精さん」への執着、誇りを取り戻した降下猟兵たち、そして誓いを立ててしまったルーデルドルフ。破滅の予感を色濃く漂わせて、物語は次回へ続く。




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