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高校二年生の新学期。新汰が笑い者にならないよう他人のフリを宣言する黒絵に、ギャルのインフルエンサーらいりーが急接近。姿勢の説教から始まった初めてのリップは、黒絵の一日を少しだけ変えてしまう。そして放課後、らいりーが語り出したのはゴリライリーと呼ばれた日々の記憶だった。第5話「ギャルと口紅」を振り返る。




新学期、他人のフリ
「そんな友達ならいらない」
季節はめぐって高校二年生の新学期。クラス替えを前に「もしクラス離れてもあんま変わんないか。俺と赤石さんは付き合ってる」と浮かれ気味の新汰に対し、黒絵の頭は不安でいっぱいだった。学園一の人気者の彼女が自分だと知られたら、新汰が笑い者になる。友達もいいねも、私のせいで減ってしまう…だから学校では他人のフリをしたい、と切り出すのだ。
新汰の返事が強い。「いいねなんて欲しくないし、そんな友達ならいらない。他人のフリなんてできないよ、俺の彼女なのに」。それでも食い下がる黒絵の折衷案は「せめて友達のフリをしてほしい。わがままでごめん」…対する新汰は「俺はもっとわがままになって欲しいなって思う」と告げて先に歩き出す。わがままに? そんな私でも、自信が欲しいな…この独白が、今回の物語の起点になる。
妹からのお弁当
登校中の黒絵は、新汰の妹から「兄に渡してもらえませんか」とお弁当を託される。いわく「最近彼女できて浮かれてるんですよ。昨日も緊急速報鳴ってても気づかないし。赤石さんのこと考えてたからとか言っちゃって。どんだけ可愛いんですかね、赤石さんって人」…目の前の相手が当人とは知らずに、である。
弁当の受け渡しでは「緊急速報はスルーするなよ。多分また出ると思うから、怪獣」と、二人にしか通じない冗談も飛び出した。クラスは離れてしまったが「昼は一緒に飯食おう」と約束。同じクラスになった真夏は「カップル成立おめでとうございます」「怖いギャルに目をつけられたら、私がミナミ君の代わりにお守りします」と頼もしく、お祝いの席にはぜひハルゴンも呼びたいらしい。当人が目の前にいるのだが。
らいりー、来襲
カースト上位女子に目をつけられる
そんな新しい教室の中心にいたのが、コスメレポで人気のギャルインフルエンサーらいりーだ。目でか、肌ピカピカ、紛れもないカースト上位女子。「あいつ、ミナミくんの彼女なんだって」のざわめきの中、「あんなに目つけられたら終わりだ」と身構える黒絵のもとへ、当のらいりーがまっすぐやって来る。開口一番…「背中曲がってんよ。姿勢悪いとブスに見られるよ。胸張ってこ」。目をつけられた、しかし予想とはまるで違う方向にだった。
初めてのリップ
顔色が優れないと見るや、その場でメイク講座が始まる。スクラブ入りのバームで唇を整え、唇用コンシーラーを塗り、リップは真ん中だけにのせて指で外側へポンポン、仕上げにグロスをちょびっと。「ふぇーい大変身。ポジピース」…そして「私、河野来夢。ライリーって呼んで」と名乗る彼女に、黒絵は「くろたそ」と命名されるのだった。
効果はすぐに現れる。昼、新汰が「なんか朝と雰囲気違うような」と気づき、続けて「かわいい」。真夏の賛辞は「お顔がパァっと華やいで、まるでバイオ怪獣の第一形態みたいですわ」…彼女にとってこの上ない褒め言葉である。「メイクぐらいで変われるわけないだろ、怪獣の私が」と思いつつ、でも、なんだか…と心が動く黒絵。どこで売ってるんだろう、いや私なんかが…と揺れるところへ、らいりーから一緒に買いに行こうと誘いがかかる。
「ゴリライリー」の過去
どうして可愛くなりたいの?
放課後のコスメ売り場。「それに合うチークも探してあげんよ」「チークってなんだ」のギャップに和みつつ、らいりーはふと尋ねる。「くろたそはさ、どうして可愛くなりたいって思ったの」。
黒絵は、ぽつぽつと打ち明ける。小さい頃から病気で、体に出る症状がコンプレックスで、人とうまく関われない。素直になれず、好きな人にも誤解させてしまう。自分に自信が持てたら、もっと好きを伝えられるのに…「今日、ミナミ君がリップを褒めてくれた時、心がフワフワして、何でもできる気がした。自信ってきっと、そんなキラキラな瞬間の積み重ねなのかなって」。怪獣化の体質を「病気」とだけ伝えるのが、今の黒絵の精一杯の心の開き方だ。らいりーは迷わず返す。「大丈夫。くろたそは変われるよ」。
明るさだけが取り柄だった
そして、らいりー自身の話が始まる。昔から「ゴリライリー」とからかわれ、しんどくても持ち前の明るさでゴリラをギャグにして乗り越えてきたこと。中3の時、一目惚れしたクラスメイトがそのギャグに大ウケしてくれて、お笑いコンビみたいになれたこと。「ゴリラでラッキーって初めて思ったわ」…でも、彼には彼女がいた。返ってきたのは「いや、ゴリラはごめんなさい」という言葉だった。
それでも周囲は道化を求め続ける。「つまんないよライリー」「いつものやつやってよ」。積もり積もった感情は「大っ嫌い。人の気持ち想像できないバカも、彼女いるくせに思わせぶりな男も、この顔も、私自身も、大っ嫌いだ」と決壊し、直後に語られるのは、街路樹の茂みに落ちて全治一ヶ月の入院という、あまりに重い顛末である。見舞いに来たクラスメイトの謝罪にも「私の心は凍ったままだった」…「私が一番、私のことを嫌いだった」。
雑誌の付録が人生を変えた
転機は入院中に出会った、人気女優コラボの雑誌の付録のリップ。「ライムちゃん、今日はなんか雰囲気違うね。可愛い」…初めての褒め言葉が、暗闇を突破する何かになった。「メイクの練習中は何度も直すから肌荒れもするし、誰にも褒められない時は不安になる。その度に『大丈夫、自分最強可愛い、ポジピース』って鏡の前で自分を甘やかしてきた。自分のこと好きになれたのは、ほんと最近」。今でもすっぴんは心を許した人にしか見せられない…その打ち明け話ごと、彼女は黒絵を信頼してくれたのだ。
夢もある。「将来、自分のコスメブランドを立ち上げたいの。うちらみたいに自信のない女の子が、自分を変えるきっかけになるようなコスメ作りたい」。黒絵の「叶えられるよ、らいりーさんなら」に続く「怪獣も可愛くなれるようなやつ作ってくれ」には思わずひやりとするが、「いや、それぐらい半端ないコスメを作ってほしいなって」のリカバリーに、らいりーはこう返す。「いや、作るわ。ゴリラも怪獣もみんな可愛くしてあげんよ」。本人も知らぬまま、最高の答えだった。
「ギャルと口紅」まとめと考察
どんな自分が好きかは、自分で決める
帰宅した黒絵に、母の凛子は「あんまりクロたんに似合ってないんじゃないの? ママは素直のクロたんが好きだな」とからかい半分。黒絵の返しがこの回のすべてだ。「どんな自分が好きかは自分で決める」…他人のフリから始まった一日の終わりに、この台詞へたどり着く構成が見事である。
ネットで注目されたのが、らいりーのバナナモチーフのイヤリング。ゴリラとからかわれた過去を乗り越えた証では、と複数の視聴者が指摘している。サブタイトル「ギャルと口紅」の元ネタは特撮「マイティジャック」第5話「メスと口紅」だという指摘もあり、怪獣サブタイのパロディ路線は今回も健在だ。「てっきり嫌な奴かと思ったらめっちゃ良い奴」と、らいりー(CV白石晴香)の株は放送直後から爆上がりで、「5話いちばんすきな話になるかも」の声も上がった。
次回への引きは奥多摩の校外学習。「自由時間とか一緒にいられるのかな」「持っていこうかな。ミナミ君は喜んでくれたもんな、多分」とリップを見つめる黒絵が既に可愛い。コンプレックスとの向き合い方は人それぞれでも、「キラキラな瞬間の積み重ね」が自信になるのはみんな同じ…ギャグと特撮パロの奥に、まっすぐな芯が通った名エピソードだった。




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