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アリスシステムを世に広げるため、マジルミエがついにエンジニア採用に乗り出す。求人インタビューを任されたカナは、「すごい良い会社なのに説明しづらい」と言葉に詰まり、用意された無難な決まり文句に「最初からもう一度お話しさせてください」と食い下がる。その甲斐あって集まったのは、なぜか即戦力の魔法少女2人。そして肝心のエンジニア探しは、一同を京都へと連れていく。第5話「いつまでも新人気分じゃいられない」を振り返る。




エンジニア採用、始動
ボーイズトークの正体
開幕は、社内で盛り上がる男性陣の会話から。「それで二子山はどんな子がいいんだ」「無難に素直な子とか、話してて楽しくて明るくて」「相談してくれた方が絶対いいよね」「やはりホウレンソウは重要か」…ランチから戻ったカナと越谷は、これを完全に恋バナだと思って固まる。「入りましょうよ」「いや、面白いからまだ聞いてよ」…しかも二子山の要望がどんどん厳しくなるのがおかしい。「ソフト開発者としてMG言語は一通りマスターしててほしいですよね」「魔法陣はどの種類も作れて当然っていうか」「常識ですよね」…「そんなこと思ってたの、二子山さん」と目を丸くする二人の前で、重本が締める。「よし、二子山の要望はわかった。エンジニア採用に関しては、この方向性でいこう」。恋愛談義ではなく、望ましい人物像のヒアリングだったのだ。
「俺は基本前には出ない」
驚くカナに、重本が構想を明かす。増員して三人体制になるのかと問われれば、「いや、俺は基本前には出ない。魔装剣は例外に過ぎん。必要なのは上級のエンジニアだ」。そして本題がこれだ。「アリスシステムが注目され始めた今、一般に浸透させるためシステム改善も必要だ。手始めはエンジニアの募集だが、来年には魔法少女も増員する」…越谷の「かなちにも後輩か」「あと半年もすりゃ二年目だもんな」という何気ない一言が、カナの背筋を伸ばす。「私も先輩になるんだ。いつまでも新人気分じゃいられない」…副題そのままの独白が、この回の出発点になる。
求人インタビューという難題
募集広告は「お見合いの釣り書き」
そこで重本がカナに振ったのが、募集広告のためのインタビューだった。「社内の魔法少女にも取材したいそうだ。一番フレッシュな新人として、桜木の意見を載せた方がいいだろう」…そう言い残して社長は外出、翠川は営業へ、越谷まで「ここは一人で行ってくっから。インタビューしっかりな」と現場へ消えていく。逃げ足の速さが見事である。やってきた求人サイトの担当者は、そもそもの心構えから説く。「募集広告は、言うなればお見合いの釣り書きです」「経歴、趣味、得意、アピールポイント。応募する方を不安にさせず、応募したくなる記事にしましょう」。
ところが最初の質問「上司や先輩について」で、早くもカナの脳内が渋滞する。浮かぶのはリボンとフリル…毎日違うドレスをまとう社長の姿ばかり。「あれ、すごい良い会社なのに説明しづらい」。ようやく絞り出したのが「…人たちです」で、担当者が「つまり人当たりが良く、優しく丁寧に仕事を教えてくれる、的なニュアンスですかね」と美しくまとめてくれる。カナの内心は正直だ。「印象はいいかな…うちじゃない、よその会社に人当たりが良い会社みたいな感じだけど」。それでも「社長が毎日違うドレス着てます」よりは応募したくなる、という判断はまったく正しい。
「最初からもう一度お話しさせてください」
決定打は次の質問だった。「大手ですと数ヶ月の研修やオンザジョブトレーニングがありますが、マジルミエさんはいかがですか」…オンザジョブ。カナの記憶に蘇るのは、いきなり現場に放り込まれたあの日々である。「すぐに現場だったし、あっという間に今になったし」…そのまま話しても伝わらないと口ごもった彼女に、担当者が助け舟を出す。「手厚いサポートとアットホームな雰囲気で成長していける現場、みたいな感じでいきましょうか」。求人票でおなじみの、あの無難な一文だ。
その瞬間、カナの中で重本の言葉が響く。「新人を信じなくてベンチャーは名乗れん」。そして彼女は頭を下げた。「すみません。最初からもう一度お話しさせてください」…後から越谷に語った理由が、この回でいちばん胸に残る。「変に取り繕うんじゃなくて、入ってくる人たちのことをもっと信じることにしました。ぱっと見は変わっててもいい会社って、わかるように」。取り繕えば楽に人は集まる。それをしないと決めたのは、自分自身が「変わった会社」に信じてもらって育った側だからだ。ちなみに越谷が同時刻にしていた仕事は「楽勝楽勝、クレーン車救出しただけ」…「クレーン車でじゃなくて、クレーン車を一人で?」という突っ込みで、この人の規格外さも忘れずに処理されている。
思いがけない即戦力と、難航する採用
「魔法少女もいりませんか」
公開された募集広告は、思わぬ形で跳ねた。「あの動画の会社だ」「なんだこれ、真ん中の人やばくね」…社長の見た目が話題を呼び、応募が続々と届く。もっとも重本は浮かれない。「選考は数ヶ月かけるつもりだ」「採用は今後のアリスシステムに大きく影響する。一瞬話題になったに過ぎないベンチャーとして終わるか、業界の常識を塗り替える会社になるか。勝負は来年以降だろう」…この長い目線が、この社長の凄みである。
そして公式あらすじにいう「思いがけない人材」が現れる。エンジニア募集のはずなのに、売り込んできたのは経験者の魔法少女2人。「エンジニア募集してるんですよね。魔法少女もいりませんか」「来月からいかがですか?」「エンジニアとしても多少はいけますわ」…片や副所長の要職にありながらの転職で、送り出す上司も「バレバレだよ。もしかして副所長だからとか気にしてる? もったいないよ。言ってくれば?」と背中を押していた。しかも去り際に置いていったのが完全な引き継ぎマニュアルと後任の採用完了という完璧さである。ネットでも「槇野さんはあるかなとは思ってましたが、赤坂さんは予想外すぎました」と驚きが並んでいた。
ぐいぐい学びに来る、新しい先輩たち
入社後の二人が、また容赦ない。「すみません、桜木先輩。大きな魔力バッテリーどこですか?」と質問が飛んでくるかと思えば、「これ作ったので良ければ使ってください。定期購入のチェックリストです」と成果物まで置いていく。「でもいいんですか? 私、すぐ追い越しちゃいますよ」「最先端の環境で学ぶためにここに来たんです。目指すからには上行きます」「私たちはそれなりの覚悟で来てるんですよ」…そして極めつけが「そういうわけですから、ぐいぐい学びに行きますわよ、桜木先輩。覚悟してくださいね」。年下で経験も浅い「先輩」を、ベテランが本気で立てて本気で追い抜きにくる。カナも「A型怪異への有効対処法について変化はありました? あとこれ、追加の質問群です」と食らいつき、「いい着眼点ですわ」と返される関係になった。出勤要請が入れば「やった、来た来た」「即時出勤可能ですわ」と即応で、越谷も「ベテランはいるに越したことはねえよ。チームですぐ動けるしな」と満足げ。エンジニアを募集していたはずが、なぜか魔法少女が充実してしまった。
三ヶ月かけて、やっと一名
一方の本命はというと、こちらは難航していた。「エンジニア採用、難航してるんですか? もう三ヶ月ですよね」…重本が徹夜で潰していたのは、応募者全員のポートフォリオの魔法陣生成時間、実績のコード検証、魔道具への実装シミュレートと調整幅の検討という気の遠くなる作業である。「やっと一名、会いたい人材が決まったぞ」…あの応募数から、たった一人。そして続けて飛び出したのが「その件なんだが、皆で京都に行くぞ」だった。京都の学校から講演依頼があり、目当ての人材も京都在住。講演ついでに面談ができる、という算段である。「社員旅行」と沸く社内に、翠川が「臨時予算を計上します」と即応するのがマジルミエらしい。
「いつまでも新人気分じゃいられない」まとめと考察
京都、そして塔ノ森神社の28代目
京都行きには、もう一つの目的が用意されていた。「京都なら魔法少女発祥の神社も見られるしな」…重本いわく、そこには魔法による最古の怪異討伐伝承が残されており、記録と最古の魔法神話は代々の巫女が管理しているという。「この巫女が、今の魔法少女の源流ってことですよね?」…有名なのは巫女が五つの頭の狼を倒したくだりだが、それは長い記録のほんの一部に過ぎず、だからこそ当代の巫女から直接話を聞きたい、というのが社長の狙いだ。一晩で「京都と魔法少女の歴史ノート」を、その前の三日間で「趣味嗜好別・京都の旅のしおり」を作ってきた社員がいるあたり、この会社の熱量はやはりどうかしている。
面接相手は教魔大…京都魔法大学の学生で、魔法技術工学の名門校の出身者は魔法研究の世界に数多いという。名は闇森響。ところが越谷が学内で聞き込みをかけると、評判が芳しくない。「もうずっと見かけへんけど、学校来てへんのとちゃうかな」「なんやずっとパソコンいじってて、変なやつやなあと思ったけど」「掲示板でよう名前見る子やな」…「案外面倒なやつっぽいなあ」「本当に面接できるのかしら?」と不安が募る。それでも越谷の判断が良かった。「社長ちゃんがあんだけ苦労して見つけた候補だ。変な印象を植え付けるのもなあ。今んとこは黙っとくか」…人を先入観で値踏みしない、この会社の流儀である。
そして幕切れが見事だった。訪ねた塔ノ森神社で迎えてくれたのは、「28代目巫女の塔ノ森サカヱです。今風に言えば魔法少女です」と名乗る女性。散らかっているのは、ちょうど神社の結界のメンテナンスを頼んでいるからだという。「そういう業者さんがいるんですね」「いいえ、うちの幼馴染で腕のええ子がおって、友達価格でやってくれはるんです」…そして続く一言が、「よかったら挨拶していかれます? 闇森さんとこの響ちゃん言うんですけど」。大学では影も踏めなかった当の本人が、神社の奥で当たり前のように魔法陣の面倒を見ていたのだ。取り繕わないと決めたカナの会社と、学校に来ない天才。二人の顔合わせは次回に持ち越しである。西の言葉が一気に増えて空気が変わった後半も含め、物語がはっきり次の段へ進んだ回だった。




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