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公式副題は第8話「一人前になる場所は選べるんや」(※1)。第7話の闇森響は「すごいって言われるたびに、みんな僕のこと嫌いになるんや」と言う子どもだった。この回で二子山がぶつけるのも「君はすごい人です」なのに、今回だけは、そこで会話が終わらない。そして終盤、その言葉を闇森自身が引用して自分を動かす。




「すごい」が、初めて会話の終わりにならなかった
第7話で、同じ言葉は三回とも会話を打ち切っていた
前回の闇森響は、子どものころの回想で「そのすごいって、あんま僕好きとちゃう」と言っていた。理由が「すごいって言われるたびに、みんな僕のこと嫌いになるんや」で、続くのが「大人もみんなそうや。最初はすごい言うけど、だんだんみんなに合わせ言うてくる」だった。
実際、あの回では同じ型が三度くり返される。球技で圧勝したときの「ええよ、ずるでも」、神社の宮司の「いやいや、わしには分からんわ。頼んだで、響くん」、そして第6話でカナが言った「着眼点はすごくいいと思うけど、普通ここまでできないよ」。三回とも、闇森が中身を説明しはじめた瞬間に会話が終わっている。
今回は、何がすごいのかを本人より先に言われる
この回で闇森は、通信がつながったあともむしろ慎重なほうだった。マジルミエ側から「弊社の魔法少女で試してください」と申し出が出ると、止めに回るのが闇森で、返すのが「いや、それヤバいっすよ」である。
理由も並べる。ずっと坊ちゃんと付き合ってきたサカヱなら望みはあるが、「アウトプットが見えねえ魔法少女に繋ぐのは」両方にとって危ない、と言いかけたところで遮られた。そこへ二子山が「闇森くん、君はすごい人です」と切り込む。
闇森は「そんなことどうでも」と払おうとするが、続きが具体的だった。「怪異を調整してUSBに移し替えようなんて、まず思いつきません」、「思いついたところで、そこまでの技量も熱意もないでしょう」、「でも闇森くんは考えた。そしてやり遂げた」。説明を待たずに、何がすごいのかを相手のほうが先に言っている。
そして「だから」が付いてくる
そのうえで来るのが「僕は君みたいなすごい人なら、安心して仕事を任せられます」、「それは僕だけでなく、弊社の魔法少女も同じ気持ちのはずです。だから信頼していま」だ。褒めるための「すごい」ではなく、任せるための「すごい」になっている。
最後まで言い切る前に「心配すんなニコ。万一の時は物理で結界破って助けてやっからよ」と横から入り、闇森の返事が「ありがとうございます。でもきっと大丈夫です」になる。この一連を、あとで「技術者同士の会話ですよ」とだけ説明しているのがいい。
同じ腕が、内と外の両方から名指しされる
第7話では、内側の人間が癖で見抜いた
前回、結界の異常に気づいた場面の言い方は「結界に不自然な歪みが加えられてる」「闇森くんのじゃない」だった。作った本人の癖を知っている人間が内側にいたから、他人の手だと即断できている。
この回でも、こじ開けられた結界を見て「見たこともない言語で、結界に上書きされてる」と確認される。闇森の仕事は、壊されたときにだけ他人の言葉で語られてきた。
この回では、外の男が同じことをする
結界の外で眺めている男は、突破口を見て「重本君じゃないな」「コードのクセが違う」と言い当てる。そのうえで「重本君とこのエンジニアか」と当てて、「もったいない」「なんであんな会社入ったんだろう」「うちに来ればいいのに」と続けた。
つまりこの回、闇森の腕は味方からも敵からも、同じ日に名指しで評価されている。しかも外の男のほうは、評価の直後にそのまま引き抜きの言葉になる。「すごい」と言われても会話が終わらない日が、二度続けて来たわけだ。
片方は数え、片方は数えられている
この男は前回も「あれ? 魔法少女、あと二人いるじゃん。計算狂うな」と数えていた。この回でも「発生から45分」と時間を測っている。境内の側が魔力の残りを数えているのと、数え方の向きがちょうど逆だ。
なお、この男の名前とキャストは、前回この男が姿を見せるより前、8月9日の公式ニュースで「新キャラクター&キャスト発表!謎の男・真尾 笑を演じるのは白井悠介さん」という見出しとともに公表されている(※2)。同じ公式サイトのキャストコメントで白井悠介が挙げている印象が「いーーーーーーーーっつも何か食べてる」で(※3)、この回の反応にも、そこを拾ったものがある。
反対されることを、この回で二度やる
提案した本人が、最初に危険を全部並べる
魔力が尽きかけた場面で闇森が出すのが「この結界は魔法少女の魔力を吸収する上書きがされています」、「二人の魔力はもって10分です」という数字だった。そのうえで「だけどワンチャン、こいつから魔力を補給できるかも」と切り出す。
確認が入る。「念のため伺いますが、怪異からの魔力供給は普通ではありませんわよね」。答えが「ええ。技術かじってる人間なら基本反対しますね」で、さらに「それどころかさらに強大化、今槇野さんの魔法で保護されている人々にも被害が及ぶ可能性がある」と自分で足す。第6話で「合わねえ職場なら、事前に断んのが責任ってもんっしょ」と言った男の、同じ順番だ。
坊ちゃんを外に出したときも、反対されていた
ここで明かされるのが「坊は祠に封印されていたのを俺が具現化してやったんです。そん時もえぐいくらい反対されました」という過去である。
反対の理屈も具体的だ。「毎年毎年、神事のために巫女が一週間も二週間も寝込んでしまう」、「サカヱはまだ素質があるからええけど、この先同じような力のある巫女が出てくるとは限らへん」、「神事はもう終わりにして、怪異は納品してしもた方がええ」。第6話でサカヱが言った「うちも退治してしまうのは絶対嫌やった」の裏に、神社の内側にも神事をやめる案があったことが、ここで初めて出てくる。
二度とも、押し切ったのは同じ形の言葉
そのとき押し切ったのがサカヱの「響ちゃんはすごいんや。絶対なんとかしてくれる」「やろう」「大丈夫や」だった。闇森のまとめが「でも信じてくれる人のおかげでできたんす」である。
そして続けて、この回の二子山の言葉をそのまま引く。「君みたいなすごい人なら安心して仕事を任せられます」、「俺のこと信頼して任せてくれた。だから絶対やります。できます」。「すごい」を嫌っていた男が、その言葉を自分の根拠として引用している。第7話から一話で、同じ単語の役割が入れ替わった。
頭を下げたのが一人だけだった
「どうか協力してください」への返事
危険を全部言い終えたあと、闇森が付け足すのが「できる限り負荷が少なくなるようベストは尽くします。どうか協力してください」だ。
返ってくるのが「なんであなただけ頭下げるのよ」で、続くのが「一緒に働く仲間に上下はございませんわ」。第6話で「あなた、この仕事向いてないわよ」と言い切った相手も、怪異のUSBの管理体制に難色を示していた相手も、この場では同じ側に立っている。
最先端の答えが「直接触れてください」だった
段取りは「坊の具現化と同じ手順でいきます」から始まり、「内包エネルギーを数式に換算してくれ」と指示が出る。そのあとが、この回でいちばん意外な一行だった。
「魔力は坊から直で貰ってください」、「直接触れてください。原始的な方法だけど一番確実です」。第6話でこの男の仕事は「古代の魔法陣のアナログ技術を現代の納品形式に変換した」と評されていた。今度は逆に、現代の現場を古いやり方へ戻している。
そして仕事が受け渡される
交代の合図も言葉で置かれている。「闇森さん、あなたの仕事は完璧だったわ」、「ここからは私たちの仕事よ」、「信じて見ていてください」。
信じてもらった側が、そのまま信じる側に回る。この回の題材が信頼だというのは公式のあらすじにも書いてあるが(※1)、実際には信じる側と信じられる側が入れ替わりつづけるのがいい。
打ち合わせしかしていない二人が、動きで噛み合う
復帰の前に、状態の確認から入る
戦線に戻る前のやりとりが「変身の強制解除による反動はありますか」→「ございません」、「お御足の具合は」→「絶好調です」である。そのうえで「では展開魔法の最終確認を」「出力設定変更しますか」「設定同期完了」と進む。
公式のあらすじはこの二人を「息の合った連携と即興戦術で強大化した怪異に立ち向かう」と書いている(※1)。打ち合わせの細かさと、即興という言葉が同居しているのがこの回の戦い方だ。
外から見ている側が、そこに驚く
戦いの最中に入る声が「もう打ち合わせしかしてねえのに、動きの中で互いの役割を理解している」だった。
この二人がマジルミエで働きはじめたのは第5話で、しかも来た経路が違う。片方は別の会社からの出向、もう片方は前職を辞めての転職だ。一緒に実戦を重ねた期間はほとんどない。それでも噛み合うのは、打ち合わせが細かいからで、闇森の「ベストは尽くします」と同じ質のものが、ここでも効いている。
片づいたあとに、味方も怪異だと確認される
終わったあとの検討で出るのが「結界の変質とその後の自動修復、そもそもの発生状況も不自然でした」、「今回の怪異は自然のものではなく、明らかに人の手が介入しています」という結論だ。
それを受けた反応が「余興で怪異出す奴がいんのかよ。ゾッとしねえな」で、そこへ「坊ちゃんも怪異ですよ」と差し込まれ、返事が「ああね」の一言だけだった。人の手が入った怪異という点では、攻めてきた側と御祭神が同じ棚に入る。そのあと「誰が何の目的で」と続き、「その件なら、俺から説明する」で場面が切り替わる。
まとめ──一人前になる場所は選べる
闇森は、いったん後ろへ下がる
片づいたあと、闇森が言い出すのが「俺な、今の就活先全部辞退しよう思う」である。理由が「こんなんじゃ坊も心配やし、結界も見直さなあかんしな」で、そのあとに本音が出る。
「今回よう分かったわ。俺、全然一人前と違う」、「坊のことも、サカヱのことも守れへんかった」、「こんな半人前やと、会社で働けへんよ」。回のあいだじゅう任されつづけた人間が、終わってみると自分を半人前と数えている。
サカヱが返すのは「納得しとる?」だった
サカヱの返しが「ほんまにそう思っとる?」、続けて「納得しとる?」である。理由も添えられていて、「だってひびきちゃんはあの会社さんと働いて楽しかったんやろ。見たらわかるわ」。
観念した闇森が挙げるのが「エンジニアは天才やった。聞きたいことぎょうさんある」、そして「魔法少女にも厳しいこと言われたけど、もっともやし、技術は確かやし」。第6話で「向いてないわよ」と言われたことを、この回では「もっともやし」で受け取り直している。それでも「迷惑かけたないんや」「俺みたいな半人前がいったら、あの人たちの足、引っ張ってまう」と渋る。
副題は、第7話の独白への返事になっている
そこでサカヱが言うのが「最初から一人前の人間なんておらんのやで。うちかてそうやし」、「一人にならん場所見つけたんやろ。飛び込んできたらええやんか」、そして「一人前になる場所は選べるんや」だ。締めが「そいで一人前の男前になってまたここに戻ってきたらええやんか」で、闇森の返しが「な、なに言うとんねん。俺はもう男前やろが」だった。
第7話で闇森が応募の理由として置いた独白は「俺が一人にならない世界を、サカヱに頼りすぎないように」だった。同じ回でサカヱは「最初の大人になる」と言って隣に留まる側だったのに、この回では「そこから出て行っていい」と言う側に回っている。副題が本人の口から出るのは、そのぶん重い。ちなみにこの場面で闇森が言うのが「とにかく、ささぽよはしっかり休んで」で、この呼び方は放送前から公式のキャストコメントに書かれていた(※3)。
最後に差し込まれるのが「闇森くん、いいですか? 今回の件で社長から話があります」である。第6話で重本が言った「面接は予定どおり行う。結論はそのあとでもいいだろう」の、そのあとが来る。なお第9話は、8月29日が別番組の放送のため9月5日に延びると公式が告知している(※4)。
出典
※1 TVアニメ『株式会社マジルミエ』第2期 公式サイト STORY 第8話「一人前になる場所は選べるんや」公式 第8話
※2 同 NEWS「新キャラクター&キャスト発表!謎の男・真尾 笑を演じるのは白井悠介さん」公式 NEWS
※3 同 CHARACTER(闇森響・塔ノ森サカヱの紹介とキャストコメント)公式 CHARACTER
※4 同 NEWS「次回第9話放送日のお知らせ」公式 NEWS




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