公式副題は第8話「夜海トワ Descent」。第4話の「夜海トワ Origin」と、同じ人物名で英単語だけを替えた組になっている(※1)。トワがこの回でやることは、第4話で本人がすでに口にしていた段取りそのままだ。そして決別の場面で、シイナは二度「そうじゃなくて」と言い、二度とも続きを言えない。回の締めで名前を読み上げられるのは容疑者だけになる。




第4話でトワが口にした段取りが、この回でそのまま実行される
副題に名前が入る回と、入らない回
公式サイトの各話ページに並ぶ副題は八本ある(※1)。「久瀬シイナ Origin」「国連調査機関EXCEEDS/魔人狩り」「久瀬シイナと夜海トワ」「夜海トワ Origin」「遭遇」「蔵木エイジと篠宮マナ/陽光」「第四管区地下鉄道・追跡駆除戦」、そして第8話が「夜海トワ Descent」である。
人名が入っているのは五本。そのうちシイナの名前は三本目を最後に副題から消え、トワの名前は三度出てくる。さらに、同じ人物名にアルファベットの一語が付く組は第4話と第8話の二本だけで、Origin の相手として Descent が置かれている。公式のあらすじも「『国連の魔人』と『魔人狩り』として出会ってしまった」と、二人を立場の名前で呼んでいる(※1)。
第4話で本人が言っていたこと
第4話でトワは仲間に向かって「そろそろいいよ。ここから先は私一人でいい」と言い、「みんなの魔人能力だって、私がいつでも消してあげられる」と続けていた。第8話でトワがするのは、その二つをそのまま実行することだ。四人の能力を順に取り上げ、一人で出ていく。
取り上げる場面の言い方も柔らかい。「ユズの力借りていくよ」「アオイもごめんね」で、「二人とも無事?」と駆けつけた側に返るのが「ただ能力を貸してもらっただけ」だ。借りる、という言葉で通されているが、返す予定は語られない。
独白まで第4話から続いている
第4話の締めでトワは「やるべきことを終えたら生きていようと思わない」「私がいなくなれば、あの子たちも普通に生きていこうと思うはずだから」と独白していた。
第8話で仲間に告げるのは「私はもともと一人だったから、最後まで一人でいい」「恨んでいいし忘れていいよ、私のことなんて」。言い方が違うだけで、四話前の独白と同じ内容である。この回で新しく決まったことは、実は一つも無い。決まっていたことが実行されただけで、副題に置かれた Descent は、そのぶん静かに進む。
トワが取り上げようとした炎は、シイナにとって妹の形見だった
取り上げる側には、取り上げる理由がある
トワの言い分はこうだ。「炎の魔人の力はすごく危険なの」「私が知ってる炎の魔人は自分の能力を制御できなくて、暴走する自爆兵器として空港テロに使われた」「数え切れないほどの人を道連れにして」。そのうえで「その力を私に渡して」「少し痛いかもしれないけど、私の能力で魔人の力を奪い、シイナの中から危険な力を消せるから」と手を伸ばす。
この空港は第4話で描かれている。トワを引き取った夫婦が死んだ場所だ。第8話でも本人が「私を家族って言ってくれたのに」「焼き殺された父さんと母さんのためにも」と口にしている。トワにとって炎は、家族を焼いた力そのものである。
断る側にも、断る理由がある
シイナの答えは「ごめん、それはできない」。理由は「私のこの力は大切な子から送ってもらったものだから」だ。能力を吸われている最中にもう一度「私の大切な子が最後にくれた贈り物なんだよ」と言っている。
シイナも「知ってるよ」「私だって魔人に人生を狂わされた」「妹を殺された」と返している。家族を奪われた者どうしが、片方の家族が残したものをめぐって向かい合う形だ。どちらの理屈にも穴が無いので、話が進むほど噛み合わなくなる。
隠していないのに、信じてもらえない
力の出どころを問われたシイナは、隠さずに答えている。「薬なんて使ってないし、事故で魔人になってからEXCEEDSにスカウトされたの」「私、離島暮らしの一般女子高生だったんだから」。公式のあらすじでも第1話は「離島で高校に通いながら」と書き出され、第2話でEXCEEDSにスカウトされる順に並んでいる(※1)。シイナは経歴を丸ごと差し出している。
それでも通らない。仲間の一人からはこう言われる。「私、難しい話は分かんないけど」「君さ、国連で働いてるくらいだから普通に生きてこられた幸せな人なんでしょ」「幸せな人の自分勝手な正論とか、私は聞きたくないし」。直前に「妹を殺された」と言ったばかりの相手に、それが言われている。シイナはここで言い返さない。
シイナは二度「そうじゃなくて」と言い、二度とも続きを言えない
一度目
トワの決めつけはこうだ。「シイナ、その炎の力ね、本当にすごく危険だし、シイナが誰かに利用されてたら嫌だから、取り除いてあげたい。私はそう思ってるけど」「シイナは私より、国連の人たちとか能力をくれた人の方が大事で、その人たちのことを信じる」。
シイナの返しは「それは違うんだよ」「そうじゃなくて」で切れる。言いかけている間も力は吸われ続けていて、続きが出てこない。
二度目
続けてトワが言うのが「そうだよね。私と君は偶然出会って少し話すようになっただけ」「ただそれだけの関係だもんね」。シイナはまた「そうじゃない」「そうじゃなくて」としか言えない。
第3話で二人は「私、久瀬シイナ」「トワだよ。夜海トワ」と名乗り合っている。その関係が「ただそれだけの関係」に切り下げられて、否定が間に合わない。別れ際の一言は「少しの間だったけど、私は楽しかったよ」「さよなら」で、楽しかった、が過去形になっている。
言葉は効かない、と先に宣告されている
シイナが差し出したのは言葉だった。「私はここでトワを逮捕なんてしないし、今回の事件の犯人なんてありえないって証言もする」。返ってくるのが「ダメだよ。言葉じゃ何も変えられない」「権力者とか情報操作できる連中に悪人にされたらそれで終わり」だ。
魔人狩りの側からも「申し訳ありませんが、国連にもどんな組織にも従うつもりはありません」「私たちは魔人狩りをやめないから」と線が引かれる。シイナが持っている手札は最初から一枚で、その一枚を先に無効だと言われている。
罪状が一日で入れ替わり、トワの誤解があとから形だけ正しくなる
名指しの中身が変わっている
第7話の速報でトワにかけられた容疑は「かねてより魔人狩りと称して犯罪者への死刑を行っていた」だった。第8話のニュースが並べるのは「一般人への暴行や施設の破壊、窃盗行為といった犯罪」である。
第3話の魔人狩りは「私らは好きで魔人になったわけじゃないんだ。人間を食ったりなんかしない」と線を引き、囚われていた人たちを解放していた集団だ。一日で、被害者の側が犯罪者から一般人に差し替わっている。報道はさらに、公安の特殊犯罪対策課が侵略種の対策を行う国連部隊EXCEEDSにも協力を要請し、容疑者の情報を共有して一刻も早い逮捕を目指す、と続ける。
総督が謝る
指揮所では総督に説明が求められる。返ってくるのは抗議ではなく謝罪だ。「今回は警察の発表とマスコミの暴走や」「以前、魔人犯罪への捜査協力は惜しまない言うたんは事実やけど、それをこないな最悪のタイミングで使われるとは」「私の不覚や。申し訳ない」。第7話で指揮所は「警察には情報を共有しています」と言っていて、その共有が使われた形になる。
続く相談も言い直しが入る。「現場の私たちとしては、警察より先に魔人狩りさんたちを捕まえなきゃいけないよね」に返るのが「せやな」「保護せんとあかんし」「衝突にでもなったら警察の皆さんが危ない」だ。捕まえる、と言った一往復のうちに保護へ置き換わっている。「警察の動きもおかしい気がしますね。調べてみましょうか」「お願い」というやりとりもある。
誤解が、次の場面で形だけ現実になる
トワの決めつけは「国連の人たちのほうが大事」だった。その直後、指揮所でシイナに向けられるのがこの依頼である。「こういう話をするのは心苦しいですが、友達として知り得た情報、話せる範囲で共有していただいても」。シイナの返事は「はい」だ。
シイナの気持ちは何も変わっていない。変わったのは、シイナが立っている場所のほうだ。言われた通りの人間になったのではなく、言われた通りに見える位置へ組織が動かしている。本人が漏らすのは「なんか話がすれ違った感じで、傷つけちゃったから」だけである。
蔵木の見立ては当たっているのに、本人は外れたと思っている
発表の裏側
ラボ側の会話で、報道の出どころが説明される。「警察上層部にも、お前の薬のお得意先はいるからな」「引退間際の警察エリートの功績としては美味しいんだろうな」。返るのが「大人は醜いね」だ。
第7話で指揮所は、侵略種をわざわざ使う理由を「私たちか、誰かへのメッセージ」と読んでいた。第8話でその読みに宛先が付く。公式のあらすじは第7話を「地下鉄を舞台にしたこの事件は、蔵木がトワを確保するための計画だった」と書いている(※1)。「俺が送ったメッセージは届いてるだろうし、聞いてるはずだよ」「まあ楽しみに待ってろ。すぐに出てこなくてもまた別の手を打つから」。
人物評は正確だった
トワが出てくるかを問われた蔵木の答えが「調べた限り、こいつは頭は悪くないが感情的で、仲間を切り捨てられないタイプだ」。そして実際にトワは出頭する。理由は本人が言っている。「私が行かなきゃ、しおりたちにも手配をかける。社会に戻れなくする。そういう脅迫でもある」。仲間を切り捨てられないから出たのだから、見立ては当たっている。
ところが出頭のニュースを見た反応が「自首してくる確率は低いと踏んでたが、思ったより頭が悪かったか」だ。自分の読み通りに動いた相手を、読み違えたと評している。トワの側は「薬も拘束も私には効かない」「効いたふりもできる」と分かって行っていて、捕まることは目的ではなく移動手段である。
二人は同じ移動を望んでいる
トワの計画を言い当てたのは仲間の一人だ。「今回のテロも報道も、蔵木や篠宮の差し金」「トワさんが捕まれば、篠宮のところに送られる可能性が高い」「篠宮の元にたどり着いて、そこで始末しようと思ってる」「違いますか」。トワは「そうだね」と認め、「ずっと居場所を探してた相手なんだから、向こうが呼んでくれてるなら望むところだよ」「篠宮を殺して、魔人化薬の開発と流通を止めてくる」と続ける。
ラボ側も「ラボに移送して色々調べたいんだけど」と待っている。連れて行かれることを、送る側と送られる側の両方が望んでいる。そのうえで終盤に飛ぶ指示が「下に警察からの迎えを寄越させてる」「夜海と会うまでは人間のフリをして普通にしとくんだぞ」で、人間のふりをした誰かが、警察の迎えでトワのところへ送り込まれる。
まとめ──フルネームで呼ばれるのは容疑者だけで、残りは人数と年代になる
置いていかれる側の言い分
仲間の四人は最後まで食い下がっている。「私たちは少なくとも、トワさんの足手まといではないつもりでいます」「行くならみんなで一緒にです」。「アオとユズにも能力を戻してあげて、5人で行こうよ」「一緒ならきっと」と重ね、「みんながちゃんと揃ってればさ、何があっても誰が相手でも、私たちがトワちゃんを守るから」まで言う。
それでもトワは「二人の力も借りていくね」で締めてしまう。残された四人が突き当たるのが「能力がなくなってる今、私たちただの一般人だよ」「警察に侵入できないし、普通の警官にだって勝てないかも」という現実だ。
それでも、という言い方だけが残る
言い合いの中身は打開策ではない。「それでもトワちゃんを見捨てるなんて、私は嫌だよ。絶対に嫌だ」「トワちゃんは私たちの命と心の恩人だよ」に対して、「私だって嫌に決まってんじゃん」「でも、どうしていいか分かんないって言ってるんだよ」が返る。
そこへ自責が重なる。「ごめん、ごめんなさい。私がもっと早く篠宮の居場所を見つけられてたら」「ユズが謝ることじゃないでしょ」「私たちがもっと強くて、もっとトワさんの力になれてたら」「二人とも泣かないでよ」。能力を取り上げられた四人がまずすることは、それぞれ自分の足りなさを数えることだった。
名前が読まれる人と、読まれない人
出頭の速報はフルネームで読み上げる。「本日指名手配された大規模テロ事件の容疑者、夜海トワが第四管区の警察署に出頭、緊急逮捕されました」「夜海は特別管理施設へと送致され、そこで取り調べが行われるとのことです」。
回の最後に流れるのがこれだ。「国連調査機関の発表によりますと、先ほど犯人の仲間とされる人物を緊急逮捕したとのことです」「逮捕した4名のうち3名は10代の少女、もう一人も20代の女性」。四人は前半で「魔人狩りが複数人なのは周知の事実なのに、ニュースで流れるのはトワさんの情報だけ」「なのに私たちの情報は何も発表されていない」と言っていた。発表はされた。名前だけが無い。
しかも「逮捕」と発表しているのは、数場面前に「保護せんとあかんし」と言っていた側である。公式の各話振り返り動画では、この四人のうち二人が語り手に立てられている。第5話が「相沢シオリ(CV.千春)」、第7話が「喜多森ユーナ(CV.小林愛香)」で、どちらもフルネームで告知されている(※2)。公式の告知ではフルネームで各話を語る人たちが、劇中では人数と年代でしか数えられていない。
出典
※1 完全新作TVアニメーション「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」公式サイト STORY(各話の副題一覧・#08 あらすじ)公式 STORY
※2 同 NEWS「各話を約2分でおさらい!振り返り動画公開決定!(#07更新)」(各話のナレーター)公式 NEWS























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