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第21話「先鋒戦」は、24連装ロシアンルーレットの回だ。見どころは確率ではない。イカサマを封じるためのディーラーの手続きが、そのまま弾の位置を読む窓になる。そのうえでアキヤマは最善手を相手にわざと教えて、相手の弾の位置を選ばせる。フクナガの引き金も度胸ではない。ナオが「役に立てなかった」と落ち込んだ一発が、実は最重要のデータだったことまで含めて追う。




パスが倍々で積み上がる、逃げ場のあるルール
24の弾倉に、両チームが3発ずつ入れる
敗者復活戦の先鋒戦は、24連装ロシアンルーレットだ。宣告が「今日はゲーム上、死を意味します」「死の代償として、相手チームに5000万を支払うことになります」で、金額はチップ50枚にあたる。
装填は「双方のプレイヤーは、お好きな穴に3発ずつ弾を装填します」で、合計6発。位置は用紙に記入し、装填は別室で行う。思わず「一発じゃないのか」と漏れるとおり、ロシアンルーレットという言葉から想像するものより、弾がはるかに多い。24分の6は4分の1で、6連装に1発を入れる形よりも当たりが濃い。
パス料が1枚から倍々で増えていく
このゲームには逃げ道がある。「どうしても撃ちたくなければパスもできますよ」で、代わりに場へチップを置く。最初は1枚だが、「次に私がまたパスする場合はチップ4枚ってことですか」「その通り」「次のパスは8枚」「その次は16枚」と倍々で膨らんでいく。
場に積まれたチップは、相手が撃って発砲した側の負けになったときにまとめて動く。つまり逃げれば逃げるほど、相手が引いた引き金の価値が上がる。撃たせたい側にとっては、相手のパスがそのまま報酬の積み上げになるという設計だ。
5回連続で逃げると、ディーラーが引く
逃げ続けることも許されていない。「5回連続パスがコールされたら流れです」「場のチップはディーラーに流れ、代わりにディーラーが引き金を引きます」と決まっている。両者が降り続けたときだけ、机の向こう側が撃つ。
勝敗の決め方も独特で、「勝敗は発砲させた数で決まります」「ゲームは6発目が発砲した時点で終了」「つまり4対0で勝敗が確定していても、6発目が発砲されるまで続くということです」だ。決着がついてからも、残りの弾を全部撃ち切るまで席を立てない。この一行が、後半でじわじわ効いてくる。
代役に立たされたナオが、被弾する
「私じゃなくてもいいよね」
模擬ゲームの呼び出しに、フクナガは「あのさ、ルール説明のためだったら、私じゃなくてもいいよね」と応じ、「じゃあナオ、あんたが代わりにやんな」と押しつける。相手側の受け取り方が「模擬ゲームで手の内を晒したくないという配慮か」「噂通り抜け目がない」で、この時点では回避としか見えていない。
代わりに立ったナオは、いきなり「うっ、撃つんですか」とためらい、「チップ1枚で済むならパスします」を選ぶ。「おい、練習なのに怖がるな」と言われるほど腰が引けているが、この慎重さがゲームを長引かせ、結果としてサンプル数を稼ぐことになる。
「発砲する確率は23分の6」
二巡目、ナオは自分の入れた位置を思い出そうとして詰まる。「シャッフルしたらどこが何番だかわからない」「でもよく見れば何か手がかりが」「全然わからない」と一人で堂々巡りをしたうえで、腹をくくって「撃ちます」と言う。
根拠は「発砲する確率は23分の6」「可能性で言えば空の方が高いはずよね」で、判断そのものは正しい。それでも結果は「残念、弾に当たってしまいました」だ。確率的に正しい選択が外れるところを、模擬ゲームでわざわざ見せている。この回のゲームが確率の勝負ではないと、最初に宣言しているに等しい。
「私何一つ役に立てなかった」の答え
終わったあとのナオは「ごめんなさいフクナガさん」「私何も見つけられなくて」と謝り、返ってくるのが「いいよ別に」「正直あんたには何も期待してなかったから」だ。落ち込んだ本人の言葉が「私何一つ役に立てなかった」になる。
そこへアキヤマが「そんなことないぜ」「今のゲーム無駄じゃなかった」「安心しろ」「十分すぎるほど手がかりは得た」「このゲーム必ず勝てる」と入る。第20話で「言ったろ、絶対勝つって」「お前のことは必ず守る」「信じろ」と言った直後の回で、守るという言葉の中身が、ナオの失敗をそのまま材料に変えることだったと分かる。
フェアにするための配慮が、そのまま窓になっている
目の前でシャッフルし、自然に止まるのを待つ
ディーラーの手続きは徹底している。「このゲーム始まるとディーラーは両プレイヤーの目の前でシャッフルをする」「自然停止するのを待ってセットされる」「またディーラーは弾丸の位置を覗かれないような持ち方でシャッフルする」だ。説明の場でも「私の作為が入らないよう、弾倉が自然に止まるのを待ってセットします」と明言されている。
ナオの受け取り方は素直で、「ゲームをフェアにするための配慮ですよね」だ。そこへ返るのが「ところがだ、これらの行為が結果的にこのゲームをアンフェアにしている」で、この一行がこの回の背骨になっている。
6発入っているせいで、重心がずれる
根拠は音だった。「気づかなかったかい、弾倉をシャッフルしているときの音」「よく聞くと一定のスピードではなく少し歪んだ音を立てていた」「なぜか」「6発もの弾が入っているせいで弾倉の重心がずれてしまっているのさ」。
重い側は下に来る。さらに「拳銃には戻り防止のストッパーがかかっているため、多少惰性で回りすぎた位置で止まることを考えると」という補正まで入り、結論は「最初の6発に弾が入っている可能性は極めて低い」だ。イカサマを封じるために人の手を抜いた結果、物理が代わりに位置を決めてしまっている。
模擬ゲームの結果が、その裏取りだった
仮説を確信に変えたのが「それを確信したのが模擬ゲームの結果」「発砲した弾の位置を図にすると」という一連だ。さらに「俺は模擬ゲームの後、拳銃をこっそり拝借して自分でシャッフルしてみた」「もちろん弾の位置はそのままで」と続き、「なんとさっきとたった一つずれただけの位置で回転は止まった」「明らかに偏るのさ、この拳銃は」で締まる。
つまりナオが撃って被弾した一発が、偏りを図に落とすためのデータそのものだった。「私何一つ役に立てなかった」の直後に「十分すぎるほど手がかりは得た」が置かれていた理由が、ここで回収される。本人が失敗だと思っている行為が、いちばん高い情報を出しているという組み方は、この作品が繰り返してきた形でもある。
最善手を、相手に教えてから使う
「3連続で弾を込めるのさ」は、表向きの最善手
アキヤマがまず示すのは、誰でも納得できる正攻法だ。「11、12、13ってな具合に3連続で弾を込めるのさ」「一発目が出たら次はとりあえずパスする」「次が空ならさっきの弾は相手プレイヤーが込めたもの」「弾が入っていたらさっきの弾は自分が込めたもの」という判別法で、自分の込めた2発目3発目で被弾しなくなる。
ナオは素直に「すごい、最善の方法ですねこれ」と感心し、そのうえで当然の心配をする。相手も同じことに気づいているのではないか、という疑問だ。ここで返ってくる答えが、この回でいちばん怖い。
「いいんだよそれで」「むしろその方がこっちは戦いやすい」
返事は「いいんだよそれで」「むしろその方がこっちは戦いやすい」だ。理屈は重心の話とつながっている。「このゲームでの最善は3つ続けて弾を込めること」「仮にそれを両方のチームがやっていたとする」「すると偶然に真反対に弾を込めない限り、必ず重心が偏る格好になる」。
つまり相手が最善手を指してくれたほうが、偏りは大きくなって読みやすくなる。普通の勝負では相手の上達は不利にしかならないが、この盤面だけは逆になる。だから相手に隠す必要がない。むしろ、知っていてもらわないと困る。
「なぜなら」「俺が教えたから」
相手が本当にそうしているのか、という確認に対する答えが「いや、しているさ、間違いない」「なぜなら」「俺が教えたから」だ。手口は「模擬ゲームが終わった時、連中に聞こえるようにほのめかしたのさ」で、独り言のふりをして「あれ、これって弾の位置3つ連続にすればいいじゃん」「おっといけない」とやってみせた。
結果は「明らかに連中、俺の言葉に反応していた」。相手の弾の位置を、相手に自分で選ばせる形で決めているわけだ。驚くナオへの返しが「これはライアーゲームだぜ、このくらいしなくてどうする」で、ここまでが下準備で、本番はまだ一発も撃たれていない。
まとめ|フクナガの度胸は、度胸ではなかった
「流れ」の一歩手前で撃つ
本番でフクナガはパスを重ね、ディーラーに「フクナガさん、次パスすると流れになりますがどうなさいますか」と確認される。答えは「もちろんパス」だったが、そこから「いや」「撃とう」と言い直す。結果は不発で、積み上がった場のチップをまとめて取る。
ナオの「すごい」に、アキヤマは「度胸なんかじゃない」と即答し、「言ったろ、このゲームにはもう一つつけ入る隙があるって」と続ける。公式のあらすじが「フクナガが見せた度胸とは別物だった」と書いているのは、この一行のことだ。西軍側の見立ても「はったりだ」「弾が空だったのもまぐれ」から始まり、連続で外れるうちに「まさかこいつ本当に弾の位置が分かっているのか」へ傾いていく。
アイライナーで、相手に自力で見つけさせる
終盤、追い込まれた西軍は作戦タイム中に拳銃を見直し、「この黒い汚れは、よく見るとこの汚れ、3つ並びで2カ所ついている」と気づく。そこから「そうだ、弾丸の火薬だ」「弾丸を込めるとき火薬が漏れて、セットした位置の横に汚れとしてついたんだ」と組み立て、「わかったぞ」に至る。
種明かしが「これ、このアイライナーの先をちょこちょこっとこうすると」で、汚れは作り物だった。決め手は仕込みそのものより解説のほうにある。「ほら、冷静ならこんなの見破られてもおかしくない」「ところがやつは冷静だよ、これ」と言いかけて「冷静じゃなかった」「追い込まれていた」と言い直し、「そんな心理状態のときに3つ並びの汚れ」「やつは簡単に因果関係があると思い込んでしまったのさ」で締める。
同じ手が、二度別の人の手で決まっている
整理すると、この回で決まった手はどちらも同じ形をしている。アキヤマは最善手を教えることで、相手に弾の位置を選ばせた。フクナガは偽の汚れを置くことで、相手に手がかりを見つけさせた。どちらも自分から突きつけてはいない。相手が自分で見つけたと思っている情報だけが、相手を動かしている。
それでも終わらないのが、この作品の型だ。「これでとりあえず先鋒戦は勝利」と息をついた直後、ナオが「大変なことに気づいてしまいました」「私たち今」と言いかけたところで第21話は切れる。副題の「先鋒戦」は三戦のうちの一つ目で、勝ちが決まったはずの盤面から次回が始まることになる。




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