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アリンナ防衛戦は大勝利、なのにラストはユーリ死亡という落差に殴られる第4話。馬は戦車を牽くものという時代に、アスランと駆けた偶然の逆転劇が「イシュタルの化身」の噂を生む一方、ティトの姉である三姉妹はナキアの偽の使いに騙され、白い水でユーリを毒殺してしまいます。しかしその白い水こそが二重底の罠で…。カイルの本音と謎の白髪の男まで、密度の濃い30分を整理します。




赤い河と、ティトの三姉妹
タイトル回収、マラシャンティアの赤い河
アリンナへの道中、ユーリの目に飛び込んできたのは赤く染まった大河。カイルが教えてくれる。「あの川はマラシャンティアだ。周りの土が溶け込んで、いつも赤い色をしている」。かつてヒッタイトはこの川の内側に住んでいて、帝国領が広がった今も「マラシャンティアの内側こそが、我々本来の天地」なのだという。作品名の「赤い河」がここで回収される、第4話にして満を持しての場面だ。アリンナの町は、その川のそばにある。
そしてユーリの胸には重いものがある。ティトには姉が3人いる。「ティトは私のせいで殺された。お姉さんたちに、どんな顔をすれば」。この後ろめたさが、今話の悲劇の入り口になっていく。
長女ハディと、双子のリュイとシャラ
アリンナで出迎えたのは、ハッティ族の族長タロスの娘たち。長女のハディ、双子の妹リュイとシャラの三姉妹だ。武器を取らせればそこらの男に引けを取らないという武闘派で、表向きは「お会いするのを楽しみにしておりました」と丁寧に頭を下げる。だが二人きりになると本音が漏れる。側室というからどんな美人かと思えば、まるで子供みたいじゃない。そして、「ティトを殺した代償は、その命で払ってもらうわよ」。姉たちは、ユーリこそが弟の仇だと吹き込まれていたのだ。
前線へ出るカイルは、よりによってその三姉妹にユーリを預ける。「三姉妹なら、王妃の手先に後れは取るまい」という判断が、狙ってくる相手を用心棒に据えるという最悪の采配になっているのが皮肉すぎる。ユーリ本人も「ティトのことも話したいし」と残ることを選び、悲劇の舞台は静かに整っていく。
初陣、イシュタルの化身
馬は戦車を牽くもの、という時代
城壁から戦況を見つめるユーリの素朴な疑問が、実は今話最大の伏線だった。「馬に乗ってる人は、いないんだね」。返ってきた答えは「おかしなことをおっしゃる。馬は戦車を牽くものと決まってるじゃないですか」。紀元前14世紀、騎乗という発想自体が存在しない時代なのだ。折しも戦場のカイルは、カシュガごときが相手なのに押され気味。「何か情報でも漏れてたのかしら」「それって、王妃が裏で…」という会話が、ナキアの影を匂わせる。
そこへ現れるのがズワだ。「どけどけ! 俺の前にいる奴は、敵でも味方でも蹴散らすぞ」と暴れ回り、ユーリを見つけるや「王妃が誘い出してくれたんだな。今度こそ首はもらうぞ」と迫る。実はこれも三姉妹の仕込みで、「ズワの前にユーリを引き出せば、ティトの敵を取ってくれるでしょう」という筋書きだった。弟を本当に殺した男を、弟の仇討ちの道具に使ってしまっている。この誤解の残酷さが効いてくる。
アスランと駆けた、偶然の大逆転
戦車で追い立てられ、逃げた先は崖。「馬鹿ね、走って戦車から逃げられると」という嘲笑の中、ユーリは咄嗟に近くの馬へ飛び乗り、鞍も手綱もないまま駆け出した。必死の逃走が戦場を横切った結果、カシュガの陣形が崩壊する。カイルも目を疑う。「戦闘に馬だと? こんな戦法は初めてだ。だが確かに、戦車よりずっと機動力も突破力もある。この機を逃すな。一気にカシュガを叩き潰せ!」。
かくして防衛戦はまさかの大逆転。「さっきまで押されてたのに、あの娘と馬一頭で逆転しちゃうなんて」と姉たちも唖然とするしかない。混戦の中でユーリが双子の一人を助けていたことも、後の「で、でも、あの子は私を助けてくれたよ」という台詞で分かる。手綱も鞍もない裸馬を乗りこなす体幹には視聴者からツッコミも飛んでいたが、この無茶こそが90年代少女漫画の醍醐味である。
「イシュタルの化身」の噂と、アスラン献上
戦後、街はユーリの話題で持ちきりになる。「防衛戦の勝敗を一瞬にして決めてしまった。街中ユーリ様の噂で持ちきりですよ。イシュタルの化身かもしれないって」。サブタイトルの回収だ。本人は「やめてよ。私は必死に逃げてただけなのに」と大慌てで、カイルが以前ユーリをイシュタルと掲げたのも「ただの成り行きでしょ?」と迫る。内心で「確かにあの時は成り行きで言ったのだが」と苦笑いするカイルが良い。嘘から出た伝説が、本物になっていく転換点である。
さらに街の有力者から、活躍を称えてあの馬が献上される。名はアスラン。少々気が荒いが、ユーリとは相性が良いらしい。カイルは女性でも目立たず身につけられる小型の短剣も用意させる。だが当のユーリは「もう、馬とか剣とかどうでもいいのに。それよりティトのお姉さんたち、今どこかな。まだティトのこと、話せてない」。この誠実さが、かえって最悪のタイミングを引き寄せてしまう。
白い水、そして最悪の夜
黒い布の男が渡した白い水
一方の三姉妹は「あの状況でユーリを殺し損なうなんて」と焦っていた。命を助けられた双子の一人は「で、でも、あの子は私を助けてくれたよ」と揺れるが、「そうだけど、あいつはティトを殺したのよ」と決意は変わらない。とはいえカイルの剣の腕は三人がかりでも敵わない。そこへ黒い布をかぶった人物がすっと現れて囁くのだ。「そういうことなら、この白い水を使うといい。殺したい相手の口に垂らせば、一瞬で終わる」。あまりに都合よく差し出される毒。裏で糸を引く者の存在が透けて見える。
その夜、カイルはユーリに「この国に残るつもりなら、いい加減、私と一緒の寝室を使うのに慣れろよ。ここにいる限り、事実はどうあれ、お前は私の側室ということになってるのだから」と告げる。ユーリの内心が切ない。「どうせ私は偽物の側室。私がこの人を好きかも、なんて気のせい。意識することなんてない」。恋の自覚が芽生え始めた、まさにその夜に事件は起きる。
偽りの死と、カイルの本音
寝所に押し入った三姉妹は「死刑は覚悟の上。それでも私たちは、弟を殺した者を許しておけません」と剣を向ける。ユーリはカイルを止め、自分の口で説明を始めた。「まず言いたいのは、ごめんなさい。本当にごめんなさい。謝って済むことじゃないけど」。だが王妃に命を狙われた経緯を語りかけたところで、双子が叫ぶ。「嘘つき! 私たちはカイル殿下の使いから、ティトはあんたの手にかかって死んだと聞いたんだ!」。そして「謝りたいなら、ティトに直接言いなさい。冥界の神ネルガルのもとでね」と、白い水がユーリの口に注がれてしまう。
カイルの証明は一歩遅かった。「ユーリの言ったことは本当だ! ズワの腕には、ティトを殺して奪ったチョーカーがある! それに、私は使いなど送っていない!」。胸が焼けると苦しむユーリに医者は告げる。「手遅れです。呼吸も脈も止まって…お亡くなりでございます」。ユーリ、死亡。三姉妹は打ちひしがれ、キックリは「バカヤロー! ユーリ様は、ティトが命を懸けて守った方なんだぞ!」と慟哭する。
憔悴したカイルが漏らす本音が、今話いちばんの感情の山だった。「こんなことになるなら、あの時、無理にでもユーリを返してやるんだった」と悔いた直後、それすら打ち消す。「違うんだ、キックリ。本当は、ずっとそばに置いておきたいと願ったんだ。私はあの時、ユーリを返したくなかった」。側室は建前と言い続けてきた男の、初めての告白である。取り調べでは、姉たちをそそのかした使いは常に黒い布をかぶっていたと判明。キックリは王妃の側近ウルヒの名を挙げるが、カイルは「顔を見ていない以上、決めつけるわけにはいかない」と踏みとどまる。
そこへ急報。大神殿からユーリの遺体が盗まれた。神殿には非常時の抜け道があり、管理する神官は王妃。カイルは気づく。「王妃のたくらみは、ただユーリを殺すことではない。儀式のいけにえとして、ユーリの首を落とすことだ。ならば、毒殺など無意味なはず…まさか…」。果たして運ばれるユーリは、荷の上で目を覚ます。賊の口から真相が語られる。「ただの毒ではなく、仮死状態にできる白い水を使った」。首を斬るのは儀式に則ってハットゥーサに帰ってから。「今は、逃げなきゃ」と這い出したユーリの前に、剣を提げた白髪の男が現れて幕。「カイル殿下が初めてお迎えになったという側室か」。何者なのか、次回が待ち遠しい。
「イシュタルの化身」まとめと考察
二重底だったナキアの罠
第4話「イシュタルの化身」は、伝説の誕生と偽りの死を一気に描く大忙しの回だった。改めて整理すると、ナキアの罠は二重底である。ティトの姉たちに偽の使いを送って復讐心を焚きつけ、殺意が固まったところへ仮死の毒である白い水を渡す。姉たちには殺したという罪を、周囲には死んだという事実を残し、本命は「遺体」を回収して儀式のいけにえとして首を落とすこと。戦場でズワまで動かしていたことを考えれば、何重にも保険をかけた執念の設計だ。三姉妹もまた、駒として使い捨てられた被害者である。
一方で、成り行きの嘘だった「イシュタル」が、裸馬の逆転劇によって民の信仰へ変わり始めたのが今話の光の側だ。騎乗の概念がない時代だからこそ、ユーリの無我夢中は奇跡に見える。そして「ユーリを返したくなかった」というカイルの本音と、「好きかも、なんて気のせい」というユーリの揺れが、最悪の形ですれ違ったまま次回へ。三姉妹の脇の甘さに総ツッコミが入るのもご愛嬌として、白髪の男の正体を含め、続きが気になる引きの強さだった。




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