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大勢の女奴隷をはべらせているという噂の新領主エルダン。だが会う前にアルナーの魂鑑定が出した答えは強い青だった。正体は憧れのディアスに一目会いたかっただけの半亜人で、悪評は大切な人たちを守るための目くらまし。友好が結ばれたその夜、イルク村に新月の襲撃者たちが忍び寄る。第4話「辺境領主様とお隣の領主」を振り返る。




お隣の領主、エルダン・カスデクス
会う前に出ていた答え、魂鑑定は「強い青」
「女の奴隷を大勢はべらせてるって話だ。そんな奴はイルク村に近づけられない」…前回の引きどおり、ディアスは警戒全開で面会に臨む。だが村外れに現れた一行を前に、アルナーの魂鑑定は先に答えを出していた。「あの樽のような腹の男は強い青だな。ディアスほどではないが相当に強い」「周囲の者たちも赤はいない」…つまり、敵意を持つ者は一人もいない。
当の新領主は開口一番こうだ。「僕はただ、憧れのディアス殿に一目会いたかっただけであるの。僕の名前はエルダン・カスデクス。エルダンって呼んでほしいの」「悪いことは絶対しないから怒らないでほしいの」…独特の語尾で恐縮しきりの、噂とは似ても似つかない人物である。ディアスも前回カマロッツに取った失礼な態度を素直に詫び、会談は妙に低姿勢な空気で始まった。
かくれんぼと「嫁だぞ」
エルダンの耳と鼻は本物だった。隠形魔法で気配を消して控えていたアルナーを「そこのお嬢さん、とってもかくれんぼがお上手なの。でも僕は耳と鼻がいいから分かっちゃうの」とあっさり看破。しかも「ディアス殿と一緒の、優しいいい匂いであるの」と続けるのだから隅に置けない。ディアスが「私の婚約…」と紹介しかけると、アルナーが被せる。「嫁だ。嫁だぞ」。
「亜人という言葉は初めて聞いた」という鬼人族のアルナーに、エルダンは獣人や魚人のような人間に近い種族の総称だと丁寧に説明。さらにアルナーが「私たちの間にまだ子供はいないが、ディアスは亜人と思われる孤児を二人育てているぞ」と明かすと、エルダンの目に涙が浮かび…その体に異変が起きる。
半亜人エルダンと、内乱の真相
嬉しさのあまり、象の姿に
突如苦しみだしたエルダンの正体を、カマロッツが明かす。エルダン様は亜人と人間との間に生まれた半亜人…どちらの姿にもなれるが、変化の際は体に大きな負担がかかり、常に体調が不安定。だからこそ奥様方の献身的な世話が欠かせないのだという。象を思わせる姿に変わったエルダンは「さっきは嬉しさのあまり高揚して、つい姿を変えてしまったの。申し訳ないの」と、あくまで低姿勢である。
「大切な人たちを守るためだったの」
内乱の真相も語られる。先代領主エンカースの長男は父親そっくりの醜悪な性格で、わが子を疎んじたエンカースは、象人族の奴隷に産ませた聡明な美男子…エルダンを「この子こそ我が子」と寵愛した。だがエルダンは5歳のとき、実の母が奴隷として扱われていることを知る。以来、亜人奴隷推進派の父に悟られぬよう母と交流を重ね、密かに亜人の保護活動を続けてきたのだ。
奥様方は皆、エルダンに救われた元奴隷で、その理想に心酔して進んで世話をしている…つまり「女奴隷をはべらせている」という悪評は、父を欺くために自ら流した目くらましだった。やがて真の目的を知ったエンカースは激怒し、エルダンと母、領内の亜人の皆殺しを宣言。エルダンは守るために兵を挙げ、苦戦の末にエンカース一派を討ち取った。これが内乱の真相である。「大切な人たちを守るためとは、そういうことだったのか」…ディアスの警戒は、ここで完全に解けた。
同盟成立、そして新月の襲撃
演劇になっていた英雄譚と、友好の約束
エルダンの憧れの出どころも愉快だ。両親の遺言を大切にし、弱きを助け、万の敵を薙ぎ払い、横暴な貴族を鉄拳で改心させる…そんなディアスの武勇伝は、志願兵募集のための演劇として王都で上演され、貴族の横槍で公演中止になった後も口づてで広まっているという。当人は「初耳なんだが」「おそらく大部分が創作された物語だな」と苦笑い。それでも「会ってみて評判以上の人物だと確信したの」と言われれば悪い気はしない。アルナーに至っては「当然だ。私の夫だからな」と胸を張る。
「助け合って、亜人と人間が一緒に笑顔で暮らせる世界を。それが僕の夢なの」というエルダンに、ディアスは「その夢に賛同しよう。私の村ではすでに人間と亜人が共に平和に暮らしているんだ」と応え、こちらからも友好を申し出た。実務面でもエルダンは有能で、領民募集の告知協力に加え、「もっと食べ物の備蓄がないと大変だと思うの。冬の訪れは遠いようで近いの」という助言を残していく。
夜更かし反乱と、ディアスの教育方針
帰宅すると、留守番の双子は暴れ疲れて夢の中。すぐ帰ると言ったのに遅くなったディアスに、殴るわ蹴るわ、あげく「ディアスが嘘ついたから今日は夜更かしするだもん」の反乱だったらしい。一言も叱らなかったことを問うアルナーに、ディアスはこう答える。「約束を破ったのは私だし、まず謝りたかったんだ。家族になったばかりの子供が、わがままを言ったり暴れたりして大人を試すのはよくあることだから、今は受け入れようと思う。明日も続くようなら、しっかり叱るつもりだよ」…元傭兵の大男が語る、驚くほどまっとうな子育て論である。
新月の襲撃者たち
そこへ、アルナーが侵入者を感知する。結構な数、エルダンたちが帰ったのとは別方角、しかもこんな時間…「私も行くぞ。今夜は新月だ。何の頼りもなしに連中を見つけるのは不可能だろ。ならば私の魔法は欠かせないはずだ。留守番はクラウスにやらせたらいい」(遠くで「誰かに呼ばれた気が」とクラウス)。
襲撃者は、何者かが大枚をはたいて雇った傭兵団だった。雇い主は「真っ昼間に正面から行って勝てる相手じゃねえ」と新月の奇襲を指示し、報酬は「エルダンは銀貨100枚。ディアスを殺したら成功報酬で金貨10枚」…狙いは二人の領主である。だが闇の中、アルナーの光の矢が正確無比に傭兵を射抜いていく。「なんでこっちの居場所が分かるんだ」と混乱する敵陣へ、大斧のディアスが突入すれば勝負は決まり。「こいつが…金貨100枚でも割に合わねえ」の悲鳴が全てを物語る。雇い主の男は「成り上がりの平民の分際で」「この恨みを晴らすまで絶対に諦めねえからな」と吐き捨て、正体を明かさぬまま闇へ逃げ去った。
「辺境領主様とお隣の領主」まとめと考察
どうして、言葉を交わそうと思ったのか
捕えた傭兵たちへの処分は追放のみ。「甘すぎるんじゃないか」というアルナーに、ディアスは「こちらの被害はなかったし、幸い死んだ者もいない。反省してくれればそれでいい。懲りずに領内で悪さをするようなら、その時は手加減しない」と領主の顔で答える。傭兵の「俺らは傭兵で盗賊じゃないんだけどな」「何か言ったか」「いえ何でもありません」のやり取りが地味に笑える。押収した武器はアルナーいわく立派な収穫で、草原では鉄は貴重品…溶かせば道具に化けるため、盗賊狩りは族長の報奨金も出る稼げる仕事なのだそうだ。
白眉はアルナーの独白だろう。盗賊狩りを夢見ていた彼女は、ディアスの乗る馬車を感知したとき「ついに盗賊が来てくれたか」と心を弾ませ、残された男を見つけて魂鑑定をしたら強い青で困惑し…「いっそ盗賊だったことにして、殺して斧と鎧を奪うか、なんてことも一瞬考えたよ」と物騒な本音まで白状する。それでも「どうして私は、ディアスと言葉を交わそうとしたのだろうな」…理由の分からないあの一歩が、今の生活の全ての始まりだった。先を歩くアルナーを「置いていかないでくれ」と追うディアスの、彼女が闇を照らしてくれるおかげで前に進めるという独白が、新月の夜にきれいに重なる幕引きである。
ネットではエルダンが「可愛い」「めっちゃええ奴」と早くも愛される一方、傭兵の雇い主は公式サイトのキャラクター紹介にもいない謎の存在との指摘も。ラストの「アルナーの頬へのキスとその後の照れ顔」を推す声も上がっていた。悪評の正体は優しさ、本当の敵は闇の中…お隣付き合いの始まりとともに、不穏の種もまかれた第4話だった。




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