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京都帝大の学徒、押江愛之助が「二十世紀はリーベの時代だ」と名乗りを上げる。目当ては目録の五番、両思いかどうかが分かるという電気縁結びだった。帽子をかぶせられた組から次々と両思いの判定が出るなか、喜八は帽子の電線が切れていることに気づく。壊れた機械だと分かってなお、愛之助はそれを使わせてくれと頼んだ。その裏にあった理由と、すずの返事、そしてケイトが最後まで口にしなかったことまでを追う。




「小生の名は押江愛之助」
電池を作る少年と、覗いていた男
開幕は甘いものの話である。すずとケイトが、それぞれ相手のためにおやつを買ってきていた。「ケイトが食べたいかと思って」「うちもすずが食べたいやろって」。稲子の「二人とも同じこと考えてたんですね」に、ケイトが「言うてこんな食べきれんわ」と返す。この何でもないやりとりが、最後にもう一度効いてくる。
場面は作業場へ。喜八が組んでいたのは電池だった。「電池とは電気を取り出せる池なんだ」と切り出し、蒸留器で硫黄を燃やすところから銅と亜鉛の使い道まで説明しようとするが、稲子とケイトの返事は「いいです」。「電気が持ち運べるようになるんだぞ」「すごいことなんだぞ」と食い下がる姿がすでにおかしい。
ここで学校の話になる。学校をやめた理由を問われた喜八の答えが「兄ちゃんがいないし、勉強なんて意味ないと思ったんだよ」。軽く流されるが、この一言が後半の回想へまっすぐつながっている。
そこへ「変なのが中の様子を伺ってたぞ」と怪しい影が引きずり出される。名乗りが振るっていた。「小生の名は押江愛之助。京都帝大の学徒である」。しかも五年浪人しているという。彼が繰り返す「リーベ」とは何かと問われての答えが「それは大切な人を思う情熱的な心」「小生は信じている。二十世紀はリーベの時代だと」だった。
五番、電気縁結び
愛之助が目をつけたのは、目録の五番だった。「これは五番、電気縁結び。意中の相手と両思いか分かる」。帽子を二人でかぶってハンドルを回す仕組みで、喜八自身は「ちゃんと動くのか怪しいんだよ」「なんか裏書きが適当だったんだよなぁ」と乗り気でない。稲子の「信じましょうよ」に「出たな信じたがり」と返すのが、この二人の定位置である。
愛之助が語る恋の始まりが良い。「あれはこの春のことだ。小生は下駄の鼻緒が切れて途方に暮れていたのだ」。そこを助けてくれたのがすずで、新しい下駄をくれた。本人はそれを西洋の物語になぞらえて「おしん物語のように」と言い、ケイトに「それはシンデレラやな」と直される。
リーベの定義も一段と大きくなる。「人間にとって至高で究極的で最も純粋な思い、それがリーベ」。そして「小生がお慕いする原島すずさんに、この熱いリーベを伝えるためだ」と、機械の貸与を頼み込んだ。
喜八が渋る理由も、愛之助が押す理由も、どちらも筋が通っているのがいい。作り手は自分の作ったものを信じきれず、使い手のほうが結果を欲しがっている。
帽子をかぶった人たち
三添洋輔と、鱒淵伊蔵
最初の被験者は、自分から志願したわけではなかった。「あのいまいましい小僧から電気目録を取り戻さなければ」と乗り込んできた三添洋輔と、その秘書の鱒淵伊蔵である。愛之助は事情など一切構わず帽子をかぶせ、ハンドルを回した。結果は両思い。「三添さんと鱒淵さん」という判定に、場が凍る。
直後の鱒淵の様子がおかしくなる。「今日は帰りましょう。お体の調子が良くないようです」「あなたのことは私が一番よく知っているんだ。だからおとなしく」と主人に詰め寄り、我に返って「私は何を」と青ざめた。「機械ごときで平常心を失うとは」と自分を戒めながら、「幼い頃から洋輔様を見守ってきた、私のこの方への思いを」と続く。
そこから短い回想が入る。「本日より洋輔様のお世話をさせていただきます。鱒淵伊蔵と申します」。幼い洋輔に「手袋を外してはいかがですか?」と尋ねると、返ってきたのが「母親がダメだって言うんだ。僕が悪い病気にかからないようにって」。洋輔がいつも手袋をしている理由が、ここで初めて明かされた。
洋輔のほうも、この回で少し態度を変える。喜八が目録を一つ実現していたことを知り、「小汚くて生意気でも、君の弟ということなのか?」とつぶやいて、「少し様子を見てやる」と引き下がった。取り戻しに来たはずが、泳がせる判断に切り替わっている。
規子と健吾、婚約より前の話
次の被験者は「すでにリーベが通じ合っている二人」ということで、規子と健吾に白羽の矢が立った。婚約者なら確実だろう、という理屈である。百川家に上がった健吾の「俺この家にいい思い出ないんだよな」に、稲子が「今日はお父さんいませんから」と返すやりとりが軽くて良い。
結果は文句なしの判定だった。ところが感電した側の口が滑る。「俺は婚約する前から規子さんを」。婚約が先で情が後だと思われていた二人の順序が、ここでひっくり返った。
我に返った健吾に、規子が静かに向き直る。「稲子、これはどういうこと?」から始まって、「話を聞かせてもらえるかしら?」まで、笑いながら逃げ道がふさがれていく流れがうまい。
この時点では、まだ誰も機械を疑っていない。むしろ次々と当たっているように見えるからこそ、実験を止める理由がなくなっていくのがこの回の運びである。
壊れていた機械
蔵の匂いと、ケイトの足踏み
騒ぎから離れて、稲子は蔵にいた。「お姉ちゃんに怒られました」「うちは何でいつもこうなんでしょう?」。探しに来た喜八が「いい匂いだな」と言い、「稲子が閉じ込められた蔵とは違う匂いだな」と続ける。
稲子の答えが、この作品の芯にいつも触れてくる。「昔からいつも蔵へお母さんに会いに来る度に、そばで嗅いでいたんです」「今でもお父さんに叱られる度に来ています」。喜八の返しは「稲子は昔からドジだったんだな」で、慰めにはならないが、そばにはいる。
そこへ愛之助が「二人とも! 何をしている? もう行くぞ!」と踏み込んでくる。先の実験でも両思いが確認された、だから電気縁結びの能力は証明された、もう実験は必要ない、すずとリーベを確かめる時が来たのだ、という理屈だった。喜八の「そうかなぁ」だけが、正しく疑っている。
ここでケイトの足が止まる。稲子が「いよいよ押江さんとすずちゃんとの番ですね!」「どう返事するんでしょうね。ドキドキします」と弾む横で、ケイトは「すずがな…もしリーベ見つけてしもたら…」と言葉を切り、「すず、うち一人で迎えに行くわ」と言って出ていった。
迎えに行った先でも、ケイトは一度言い淀む。「来てほしいとこあって。でも、忙しいんだったら別に」。すずの「大丈夫」を聞いて「そっか」と返すまでの間が、この回でいちばん長い。連れて行かないという選択肢が、たしかに一瞬あった。
帽子の電線が切れていた
そのあいだに、喜八が原因にたどり着く。「分かったぞ。帽子の電線が切れてたんだよ」。試した人が急に仲良くなっていたのは、恋の証明ではなく故障の作用だった。
仕組みまで説明される。片方の帽子の電線が切れているせいで帽子全体に電気が流れ、かぶった側は感電して気分が高揚し、暴走する。鱒淵の豹変も、健吾の口の滑りも、そこから来ていたことになる。
喜八は「とにかく一旦戻って修理しよう」と言うが、愛之助が止めた。「待ってくれ! このまま使わせてもらえないか!」。壊れていると知ったうえで、直すなと頼んだのである。
「勇気が欲しかったんだって」
すずの前に立った愛之助が名乗る。「先日あなたのおかげで一命を取り留めた押江愛之助である」「一生の願いだ。この機械を試してもらえないだろうか」。喜八と稲子は慌てて割って入り、機械が壊れていること、かぶった側は感電して暴走することを明かした。稲子の「ダメですよ、いくら押江さんのためでも」は、すずが変になってしまうことへの心配である。
ところが、そこで話が反転する。感電するのは愛之助の側だった。しかも狙い通りだという。理由がこの回の答えになっている。壊れた機械でリーベを伝える勇気が欲しかった、というのである。
結果は玉砕だった。すずの返事は「ごめんなさい」。そして機械の判定のほうは、両思いと出ていた。稲子が「両思いは出てたんですけどね」と漏らすと、喜八が「だから壊れてるって言っただろ」と切り捨てる。
測れていないものが両思いと言い、測れていないと知っている本人が振られる。副題の「愛の証明」は、機械が何ひとつ証明できなかったという意味でもある。それでも愛之助は、証明の代わりに勇気だけを機械から受け取っていった。
「愛の証明」まとめと考察
清六の言葉と、あんぱんの約束
最後に、稲子が根本のことを聞く。「喜八さんはどうしてその機械を目録に書いたんですか」。答えは回想で示された。幼い喜八が書いた五番の説明を読んだ清六が笑い、喜八が「兄ちゃんの結婚相手を見つける機械」と答える。
清六の返しがいい。「ったく余計なお世話だ。だがいい発想だな」「電気によって見えない人の思いが分かる時代はきっと来る」。そのうえで「でもまあこんなものなくても俺はモテるけどね」と茶化し、好きな人はいるのかと食い下がる弟に「うるせえ。この機械はお前にはまだ早いな」で逃げる。
現在に戻り、喜八が「今回は失敗だったけどな」とこぼす。稲子の答えが締めになっている。「そんなことありません。結果はどうあれ、いろんな人たちの思いの形が見えたじゃないですか」「きっと見えない人の心も、電気の力で分かる日が来ますよ」。機械は壊れていたが、壊れた機械が引っ張り出した思いは全部本物だった、という受け取り方である。
そして本当の最後は、ケイトとすずに戻る。ケイトが「なあすず、リーベってどういうもんか知っとる?」と聞き、すずが「知らない」と答える。そこでケイトはあんぱんの話に切り替えてしまう。明日買ってくる、すずは買ったらあかん、楽しみにしてる。冒頭でお互いのために菓子を買っていた二人が、同じ形のまま終わる。
この回で機械にかけられた人たちは、洋輔と鱒淵、規子と健吾、そして愛之助とすず。三組とも、機械が壊れていようがいまいが関係のないところで答えが出ていた。鱒淵は幼い頃から仕えると決めており、健吾は婚約より前から想っており、愛之助は振られた。
そのなかで、ただ一人だけ機械にかけられなかったのがケイトである。言い淀んでも結局すずを連れてきて、最後まで自分のリーベには触れなかった。電気で人の心が見通せるのかという問いに対して、この回は「見通せる」でも「見通せない」でもなく、見通されなかった人を最後に置いて終わった。次回、この距離がどう動くのかを見たい。




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