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聖アローズ戦がついに決着した。超全力を解き放った弾子と、それを正面から受け止める平子。至近距離での投げ合いは「もっと君を近くで感じたいんだ」という平子の言葉のとおりに加速し、二人はそのままコートに倒れ伏す。勝ったのは聖アローズで、球川闘球部の復活は認められなかった。ところが試合のあとに現れたのが、「私らが正当な球川闘球部だ」と名乗る二人の少女だった。




「そのすごいの、僕にちょうだい」
バックフリップショットと、腰で止めた平子
第5話は、前回の続きからいきなり動き出す。超全力を解き放った弾子を前に、平子が漏らしたのが「これは素晴らしい。やっとその気になってくれたんだね」だった。ずっと待っていた相手が、ようやく本気になった、という顔である。
そのうえで平子が求めたのが「さあ弾子くん、そのすごいの、僕にちょうだい」。応えるように飛んだのがバックフリップショットで、平子はそれを体で止めてみせた。
受けきったというより、受け止めることそのものを楽しんでいる。試合を成立させるために耐えるのではなく、相手の全力を浴びたいから前に出るという発想で動いているのが、この時点ではっきりする。
勝ち負けの話をしているのに、会話は完全に告白のそれになっている。ここのちぐはぐさが、この作品の一番おかしくて一番熱いところだと思う。
「もっと君を近くで感じたいんだ」
平子はさらに距離を詰めてくる。「弾子くん、もっと君を近くで感じたいんだ」。球川側からは「そんな距離で投げ合いなんてできるわけが」という声が上がるが、平子は「もっともっとだ弾子くん」と要求を上げていく。
こうして始まったのが、至近距離での投げ合いだった。「近距離での凄まじいクイックドッジだ」と実況が追いつかなくなり、平子は「いいよ弾子くん。最高の試合だ」と笑う。
ネットの反応でも、この至近距離の応酬に触れる声がとにかく多かった。ドッジボールという競技の常識でいえば、避ける余地の無い距離まで詰めるのは自殺行為に近い。それを二人とも当たり前のようにやっている。
外野からの「そんな距離で投げ合いなんてできるわけが」という一言が、この場面の異常さをきちんと言語化してくれているのが効いている。見ている側の常識を、味方の口から先に言わせておく作りだ。
二人のパパが見ていた景色
「きっとパパたちも、こんな気持ちだったに違いない」
投げ合いの最中、平子の口から出たのが「きっとパパたちも、こんな気持ちだったに違いない」だった。ここで重なるのが、父である二階堂大河の言葉である。
「お前の永遠のライバル、一撃弾子くんだ」。幼い平子に刷り込まれたその一言が、今この距離で報われている。平子が続けたのは「僕は君に勝つ」だった。
公式のあらすじも、この激突をかつての弾平と大河を彷彿とさせるものだと書いている。父たちの再戦は決着がつかないまま終わったので、その続きを娘同士がやっている構図になる。
平子の弾子への執着は、これまでどちらかといえば重たいものとして描かれてきた。それが今回だけは、純粋に「同じ景色を見られる相手がいる喜び」に変換されている。
倒れ伏した二人と、聖アローズの勝利
球川側では珍子が「弾子ちゃんは根性では負けない。決して」と言い切っていた。「平子が押しているぞ」という声に対して、譲らない。
決着は「じゃあな弾子」という平子の言葉から動いた。次で決めようとしている相手に、弾子の側も「望むところだ」と応じる。
結果は、二人そろってコートに倒れ伏すという幕切れだった。力尽きたところで、互いの健闘を讃え合う。試合の勝ち負けとしては聖アローズに軍配が上がり、球川闘球部は校長から課された条件を満たせなかった。
負けたのに敗北感で終わらない締め方になっているのは、最後の一投までどちらも一歩も引かなかったからだと思う。勝った側にも「勝った」という顔が無いのが、この決着のいちばん良いところだった。
復活は叶わず、それでも折れない
校長の条件と、アツシとワタルの転向
校長の言葉は容赦がない。「聖アローズとの試合に勝たないと、闘球部の復活は認めません」。条件は条件として、そのまま突きつけられる。
それでも球川側は折れなかった。「一度や二度負けたからってへこたれてなんかいられません」「私たちの闘球部は始まったばっかりなのよ」。
ところが人数のほうが崩れる。臨時の助っ人だったアツシとワタルが「分かったんですよ。僕たちじゃ足手まといになるだけだって」と切り出し、球川闘球部の応援団に回ると言い出した。「そうだ、全力で応援団」と本人たちは晴れやかである。
「まあ臨時の助っ人ということでもあったし、無理じいするわけにもいかないわ」と送り出したものの、これで人数は足りなくなる。「足りなくなったんなら探しゃあいい。二人くらいすぐに見つかるさ」と強がってはみせるが、あてはない。
負けた直後に人が減るという、いちばんきつい流れをきちんと通しているのが誠実だった。実力差を思い知った側が自分から身を引くという理由づけなので、誰も悪者にならないのも良い。
「私らが正当な球川闘球部だ」
勧誘の方法を相談しはじめたところで、「球川闘球部伝統の」という言葉が出かかる。それが最後まで言われることはなかった。
遮ったのは、突然現れた二人の少女である。「私らが正当な球川闘球部だ。偽物のお前らを倒しに来た」。名乗ったのは副キャプテンの火浦颯美と、キャプテンの三笠はこだった。
二人は「私らは校長のお墨付きだ。偽物はこのグラウンドから去りなさい」と言い放つ。実際、その裏には校長本人の依頼があった。「闘球は危険なスポーツです。公式な闘球部であるあなたたちが、それを分からせてあげてください」「格の違いを見せつけられれば、あの子たちも少しは考え直すでしょう」。
これに二人が返したのが「分かりました。完膚なきまでに思い知らせて差し上げます」「公式は私らだ。偽物なんかぶっ倒してやるぜ」。校長の「頼もしいですね」で場面が切れる。
ここまでだと完全に新しい敵の登場に見える。第5話の面白いところは、この構図が数分後にきれいにひっくり返ることだ。
入部テストと、揃った7人
「ドッジボールはガキの遊びではない」
二人が出した選択肢は二つだった。「偽物は偽物らしく立ち去るか、それとも、私たちの正式な入部テストを受けてみるか」。
球川側の反応が良い。「あっちは認められてるってんだし、入部すれば私らもお墨付きだ」と考えたうえで、「でもそれだと私たちの闘球部じゃなくなっちゃうんじゃない?」と迷い、最後に出た結論が「入部するふりして、あちらの部を乗っ取っちゃいましょう」だった。相手を敵として倒す発想が最初から無い。
テストは容赦がなかった。「まずは一人失格ね。颯美の死角からのボールを取れるわけないわ」と、いきなり一人が落とされる。それを取り返されると空気が変わり、「今、私が闘球のすごさを分からせてやる」「あなたたちごときの球、全て受け止める」「さあ、五人同時に本気で投げてきなさい」。
五人が同時に投げた球を、先輩は正面から受け止めてみせた。「これくらいの覚悟はできているわ。ドッジボールは遊びじゃないんだから」に続いて飛んだのが、「ドッジボールはガキの遊びではない。ドッジボール、すなわち闘球。これこそ史上最強の格闘球技だ」という宣言である。
この一言に球川側が反応する。「パパもそう言っていたわ」。三笠、火浦という名字から、二人の素性に思い当たった瞬間だった。
パパたちに託された夢と、裏スーパードッジ大会
二人の目的は、はじめから偽物を潰すことではなかった。「ついに動く時が来たな、はこ」「ええ、パパたちに託された夢を、今こそ実現させるのよ」。回想で父から告げられていたのは「名門、球川闘球部を頼んだぞ、はこ」という言葉だった。
種明かしはこうである。父の会社からの莫大な寄付金で、校長に公式の闘球部を認めさせた。そのうえで「弾子さんたちがこっちに入部すれば、校長もあの子たちを認めざるを得なくなるわ」。つまり最初から迎え入れる算段だった。
それでもテストはやる。「実力が本当に偽物だったら意味がないからな」「名門の名にかけて手加減するわけにはいかないわね」という理屈で、ここは筋を通している。
結果は合格だった。「あなたたち5人は、見事私たちの期待に応えてくれた。よって、正式な闘球部への入部を認めます」。これで7人が揃う。「わざわざ乗っ取る必要なくなりますね」という一言で、球川側の乗っ取り計画も自然に消えた。
そして最後に、この先の目標が示される。名門の復活とは全国最強になることで、そのためには大会で優勝するしかない。だがスーパードッジ大会は危険すぎるとして禁止されている。そこで出てきたのが「あるんだよ、地下には。日本一デンジャラスなスポーツ大会がな」だった。
全国の化け物が集結する、その名も裏スーパードッジ大会。「全国のレベルは、恐ろしいわよ」という忠告に、弾子が返したのは「そんなの関係ない。どんな相手だろうと」である。締めとしてこれ以上ないほど弾子らしい。
「因縁の決着!進め球川闘球部!」まとめと考察
第5話にして最終回のような回だった
今回のサブタイトルは「因縁の決着!進め球川闘球部!」。覚醒、因縁、魂の激突、永遠のライバルの成立と、要素だけ並べると完全に物語の最終盤である。
ところが、ここまでやってまだ最初の練習試合が終わっただけという事実がすごい。しかも試合には負けている。普通なら物語の終盤に置く熱量を、第5話で全部出してしまっている。
ネットの反応でも、弾子が平子を「変態だけどすごい」と真正面から評した場面が話題になっていた。侮辱ではなく最上級の褒め言葉として機能しているのが、この二人の関係の面白さだと思う。
そして構成として上手いのが、負けた直後に人が減り、そこへ新しい二人が現れて結局7人が揃うという流れだ。敗北から補充までを一話で完結させて、次の目標まで提示している。走り続けるための組み立てになっている。
次に見るところ
まず、三笠はこと火浦颯美の実力がまだ全部は出ていない。入部テストで見せたのは颯美の死角からの球と、五人分を受け止めるという守りだけで、本気の攻めは一度も見ていない。
次に、二人の父である三笠と火浦高志が弾平と同じ球川闘球部にいたという設定。おまけコーナーでは、弾平たちが在籍していた頃の球川闘球部が県下でも一二を争う実力だったこと、校庭の像が全国制覇の記念であること、弾平が結構な問題児だったこと、火浦高志が球川四天王のリーダー格で県内でも五本の指に入る速球の持ち主だったことが語られていた。
四天王のほかにも伝説と呼ばれる選手がいたという話も出ている。親世代の名前が具体的に増えていくということは、この先も父たちの因縁を下敷きにした対戦が用意されているのだと思う。
そして裏スーパードッジ大会である。地下で行われる日本一危険な大会という設定が出た以上、次からは学校同士の練習試合の枠を完全に外れる。「全国の化け物」がどう出てくるかが、いちばんの見どころになる。




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