この記事の作品:
思い出の場所で、シオンと龍成が向かい合う。かつて特訓をサボり合った二人に残るのは、「801T」=八百長の符号という他愛ない思い出。冷たく刃を向ける龍成へ、シオンは「あの時のお前の言葉が、俺の道標となった」と本心をぶつけていく。一方、戦う理由を見いだせない十勇士に、シオンが持ちかけた提案は「DSTの手伝い」。そして幕切れには、インメイを背後から貫く龍成という衝撃が待っていた。第16話「コウボウ」を振り返る。




思い出の場所と、801Tの符号
「ピンチの時はこれを掲げる」…801Tはサボり同盟の符号
幕開けは回想から。「妖邪が消滅して30年」と言われていた頃、まだ候補生だったシオンと龍成の特訓の日々だ。「限界を越えても立ち上がれ」と檄が飛ぶ猛特訓に、仮病の演技で医務室へ逃げ込む始末。挙げ句、ピンチの時に掲げる「801T」=八百長の符号まで二人で決めていた。「サムライトルーパーなんて時代遅れ」とうそぶいていたのは、ほかならぬ若き日のシオンである。
このゆるいサボり同盟の記憶が、本話の芯になる。シオンが十勇士に持ちかける提案も、龍成への説得も、すべてはこの回想から地続きだ。何気ない小ネタに見えて、「八百長」という符号の読みまで仕込まれた芸の細かさに、視聴後の考察も盛り上がった。
「これが答えだ」…冷たい刃と、変わらない目
現在。シオンは結界の外へ出て、龍成とふたりきりで向かい合う。この結界は天導界の力を拒むもので、内側からなら行き来できるらしい。「懐かしいだろ、ここ」と語りかけ、「何を考えてる」と本心を問うシオンに、龍成の返答は「知りたければ教えてやろう。これが答えだ」。振るわれる刃が、そのまま今の二人の距離だった。
武装ギアのGPSを頼りに仲間が駆けつけると、龍成は「ここで蹴りをつけるつもりはない。覇皇帝を奪えなければ意味がない」と引き上げていく。「情に訴えれば気持ちも揺らぐと思ったが、読みが甘かった」と肩を落とすシオンは、それでも「あいつの目は前と何も変わっちゃいねえ」と信を曲げない。よぎるのは「人間は悪くねえ生き物だな。お前のおかげでそう思えた」という昔日のやり取りだ。一方、天導界へ戻った龍成を「私は君の教育係でもある」とたしなめたインメイは、「君のことは信頼している。その証として、私の真の目的を話そう」とささやく。この信頼が、のちに痛烈な形で回収されることになる。
戦う理由が見つからない十勇士へ
合同訓練は空回り、シオンの提案は「DSTの手伝い」
一方サスケは、凱の中にネヅたち苗字組が今も生き続けていることを知り、凱たちに力を貸すと心を決める。とはいえ始まった合同訓練は空回り。「力を貸すとは言ったが、手を組むつもりはない」「お前たちは仲間を殺した。簡単に割り切れるほど、あいつらとの関係はやわじゃねえ」と十勇士側の遺恨は深く、トルーパーの側にも奪われた命への怒りがある。ヒーローに憧れるヤマトが「怒りや憎しみじゃヒーローになれねえ」と説けば、「こっちはそれが原動力だったんだ」と返される始末だ。
そこでシオンが持ちかけたのが、「訓練には参加しなくていい。ただし条件がある」…DSTの手伝いだった。狙いは、戦う意味を知ってもらうこと。かつて真田教官の前で「サムライトルーパーなんて時代遅れ」と言い放った自分が、宣伝活動のヒーローショーに担ぎ出されて戦う意味を知った。「あいつらも変わりたい気持ちはあるはずだ。俺がそうだったように」。正論で説くのではなく、実体験に裏打ちされた回り道を用意するあたりが、いかにもシオンらしい。
まさかのヒーロー扱いと、修学旅行の約束
避難誘導に駆り出された十勇士を待っていたのは、思いがけない歓迎だった。「僕も戦うよ」とお守りを差し出す少年。「みんなのために戦ってくれてありがとう」と頭を下げる人々に、写真をねだる声。「参ったね。まさかのヒーロー扱いだよ」「俺たちが元妖邪だって知ったら、腰を抜かすんじゃないか」と戸惑う姿には、守られる側の顔を初めて知った者の照れがにじむ。
夜にはシオンが「この戦いが終わったら、修学旅行にでも行くか」と言い出す。こんなことにならなければ普通の学校生活を送れていたはずの面々に、せめて学生らしい行事を味わわせてやりたいのだという。温泉、旅館の豪華な食事、締めは枕投げ。「やれば分かる!激熱だ!」と盛り上がった矢先、警報が鳴り響いた。東京に張った結界が破られたのだ。楽しい約束ほど不吉に響くのはお約束とはいえ、心臓に悪い。
早められた決戦と、覇皇帝の真実
予定より早い開戦、天導兵の正体は人間
結界が破れるのは明日のはずだった。それをインメイが力を加えて早めたのだ。押し寄せる天導兵を前に、十勇士は避難する人々を背に応戦する。だが戦いの中で突きつけられるのは、天導兵にされているのは人間だという事実。「自分たちが人間だと分かるのか?勝った途端に、情でも湧いたか?」という敵の嘲りが、逆に彼らの変化を照らし出す。「俺の怒りや憎しみは、どこへいったんだ」という戸惑いの声は、怒りを原動力にしてきた十勇士が、戦う理由を掴み直す瞬間でもあった。
深手を負った「若」こと凱のもとへ駆けつけた十勇士は、「天業を唱えたインメイを倒せば、彼らの術も解けるはず」という見立てを受けて戦場を引き受け、トルーパーをインメイのもとへ送り出す。合同訓練では見えなかった信頼の芽が、実戦の中で自然に育っていくのがいい。
「あの時のお前の言葉が、俺の道標となった」…シオン、龍成を打ち破る
インメイは「ここは君に任せよう」と龍成を残して姿を消す。立ちはだかる龍成へ、シオンの言葉が熱を帯びていく。「お前は天導兵にされた人を見てもなんとも思わないのか」「正義がどうとか大義がどうとか、そんな偉そうな理由で戦ってきたわけじゃねえだろ」。みんなのささやかな幸せを守るために戦いたい…「あの時のお前の言葉が、俺の道標となった」。その理想を語ったのは、ほかならぬかつての龍成自身だったのだ。
「目の前で苦しんでる誰かに手を差し伸べる。たったそれだけのために俺たちは戦ってきたんじゃねえのか」「そんなお前の背中を見てここに立ってるんだ」。畳みかける説得の果てに、シオンは龍成を打ち破ってみせた。「こうなることを予測していたのか?」というどよめきに、「いや、ただシオンを信じただけだ」と返す声。この回のシオンは、間違いなく主役だった。
奪われた勾玉と鏡、そして「終わるのは貴様の方だ」
戦いのさなか、姿を消していたインメイが勾玉と鏡を手に戻ってくる。DSTが三種の神器の守りを固めようとした矢先、「君たちのアジトにお邪魔してきたんだ」。守り手を「適正年齢を遥かに超えたサムライトルーパーでは、荷が重かったようだ」と嘲る言い草に、真田教官の身を案じた視聴者も多いはずだ。
さらに明かされる真実が重い。覇皇帝はもともと呪われた鎧で、人間の生命力を吸収して真の覇皇帝へと近づく。「仲間思いの君たちなら、出し惜しみせずに覇皇帝を見せてくれると信じていたよ」…つまり、凱に覇皇帝で戦わせること自体がインメイの仕込みだった。実は天導界の方針は、他の大陸の神々の意向で「奪還」から「破壊」へ転じていたはずで、「そもそも覇皇帝を壊せとの命令のはず」と四獣士の側にも疑念が芽生える。真の覇皇帝の完成に必要な覇王の盾を隠し持っているという情報までささやかれ、天導界の内側が軋み始めた。
そして幕切れ。「その漆黒の覇皇帝に耐えられるのは私だけ」「サムライトルーパーよ、これで終わり」と勝ち誇るインメイに、返ってきたのは「終わるのは貴様の方だ」。その背を貫いたのは、あれほど信頼を寄せられていた龍成だった。洗脳ではなく、自我を保ったままの一撃。その真意はまだ、誰にも分からない。
「コウボウ」まとめと考察
取り戻した戦う理由と、残された謎
第16話は、「何のために戦うのか」の一点で全員を貫いた構成だった。サボり魔だった過去をさらして回り道の処方箋を書くシオン。怒りと憎しみの代わりに、守られる側の顔を知った十勇士。そして、かつての自分の理想を突きつけられる龍成。801Tの符号という笑いから始めて、同じ思い出を最後の説得の武器へ変える運びが鮮やかで、コメディとバトルの配合も心地よい。
最大の謎は、龍成の一撃の意味だ。洗脳ではなく自我を保っていた以上、天導界に身を置いたまま機をうかがっていた可能性が高い。インメイが「信頼の証」として明かした真の目的こそが、その刃を招いたのかもしれない。ただし、これでインメイ退場と決めつけるのは早計だろうという声もある。漆黒の覇皇帝、覇王の盾、奪われた勾玉と鏡、そして「破壊」へ転じた天導界上層の命令と、盤面は一気に動いた。
羅真我を倒して3ヶ月、物語は中盤戦へ。「この戦いが終わったら、修学旅行にでも行くか」の約束が、ただの前振りで終わらないことを祈りつつ、龍成の帰る場所がまだ残っていると信じたい。




関連作品:

















コメント