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汗を拭いてもらおうと呼んだ試供品のロボットが、突如として主に襲いかかる。同種の事件が相次ぎ、公安9課が押収した8体の電脳には血で書かれたSOSが潜んでいた。製造元・阪華精機の闇に、バトーとトグサの凸凹コンビが迫っていく。行き着いた先にあったのは、密輸された子供たちを使い捨てるゴーストダビングの現場。V8の悲鳴とヘドロの底まで一気に駆け抜けた、原作屈指の事件簿の顛末を振り返る。




狂った試供品ロボットと、血で書かれたSOS
汗拭きロボットの凶行、九課は「ガラクタ集め」へ
幕開けは、とある大佐の私邸。汗を拭いてもらおうと呼びつけた試供品のロボット、通称トムリが、突如として牙をむく。間一髪で取り押さえられ、「それほど汗拭きが嫌だったのか」と軽口も飛ぶが、同種の襲撃事件はすでに各地で相次いでいた。
出動した公安9課の面々は、同型ロボットの回収作業に駆り出される。「イカレロボットの回収なんぞ警察の仕事だぞ」とぼやくバトーが「先輩にクソ仕事を回したりはしなかったぜ」と絡めば、トグサは「今どき年功序列なんて流行らないよ」と涼しい顔。現場では警察との縄張りの小競り合いまで起き、「死体には人権がなく、機械には擁護団体か」という皮肉も漏れる。草薙は標的を阪華精機のトムリだけと割り切り、県警本部へ向かった。初回から続く九課の騒がしさが、今回も心地いい。
「捨てられるからです」…県警で聞いたロボット反乱の正体
県警本部を訪ねた九課は、まずロボット企業の売り込みと間違われて、けんもほろろの応対を受ける。誤解が解けて話を聞けば、ロボット関連の事件は99パーセントが事故扱い。本来の専門は社会病理学だという担当者は、「ロボットたちは自ら故障することによって、人間を攻撃する許可を作り出すんです」と不穏な分析を口にする。
件数が増える原因を問われた答えが重い。「捨てられるからです。いらなくなってね」。モデルチェンジのたびに愛玩用も工業用も次々と廃棄され、野生化する個体も後を絶たない。「ロボットたちは使い捨てをやめてほしいだけなんです」という訴えは、安物のSFめいて聞こえるのに、どこか笑えない。草薙はバトーに阪華精機行きを指示し、捜査はいよいよ製造元へと踏み込んでいく。
荒巻の旧恩と、阪華精機の「後始末」
「私の隊にロボットはいません」…大佐の趣味と血のSOS
冒頭で襲われた大佐は、荒巻の旧知の人物。戦時中は旧調査部を仕切ったキレ者で、荒巻をして「彼がいなければ今のわしもなかったろう」と言わしめる恩人だ。私邸を訪ねれば、女性型ロボットを集める趣味を隠しもせず、同行した草薙まで「作品」と呼んで「白い血の匂いがしてきそうだぞ」と品定めする始末。荒巻は「私の隊にロボットはいません」と静かに返し、テロの線は消えたとして身辺警護の解除を告げた。恩人が相手でも一切ぶれない荒巻の据わり方が、早くも頼もしい。
それでも捜査は続行だという。理由は、押収した8体のトムリの電脳に残されていた血で書かれたSOS。もちろん人為的なもので、犯人は誰かにこのSOSを見せるため、増え続けるロボット事故に紛れて8体を狂わせたことになる。「SOSを知るのは警察と犯人だけ」という荒巻に、草薙は「阪華精機の出荷検査官も知ってたはずよ」と切り返す。「独走するな」「しないわよ」のやり取りを残し、火種の在り処は製造元へと絞られていった。
特別な顧客23名と、検査部長の「後始末」
一方の阪華精機では、社長が先手を打っていた。呼び出された検査部長は薬で自白を強いられ、見本品のトムリ23機すべてに狂うよう仕込み、SOSを刷り込んだことを白状させられる。特製のトムリが配られた先は、特別な顧客23名。狂って処理された機体を除き14機は回収済みだが、残る2機の持ち主とは連絡が取れない。「ソフトが生きた状態で分析にかかるのが望ましくない」という社長の言い分そのものが、後ろ暗さを物語っている。
そして社長は「客の一人が犯人を欲しがってる」と、検査部長の身柄をあっさり差し出した。「さあ後始末だ」の一言で人一人を切り捨てる冷たさに、この会社の体質が透けて見える。
凸凹コンビの初仕事と、ゴーストダビングの闇
死神を見たトグサ、フチコマの初出動
張り込みの車中でも、バトーとトグサの先輩後輩論争は続く。「身分制とどこが違う」と食い下がるトグサに、バトーは「猿でも礼節くらいわきまえてるぜ」と譲らない。「よせよ、刑事の頃を思い出す」なんて言っていた矢先、胸に検査部長のカードを下げた男の姿が目に入り、直後に凶行が起きる。バトーは単独で犯人を追い、「ワンマンすぎるぜ、元レンジャー」とぼやくトグサは車で監視役に回された。
追跡の末に犯人を取り押さえる瞬間、トグサの頭の中には女房と娘の顔がいっぱいに広がっていた。すかさずバトーが割って入り、「そいつは女房でも娘でもねえ。死神ってやつだ」。部隊で唯一の妻帯者であるトグサの家族を使った電脳攻撃を、先輩がきっちり払いのけた格好だ。しかもバトーが追いつけない場面を見越して、草薙はフチコマまで配備済み。口では突き放し合いながら、要所は必ず支え合う。このチームの距離感がたまらない。
報復の構図と、SOSを書いた子供たち
締め上げられた犯人が吐いたのは、意外な構図だった。男はヤクザ者で、組長もまたトムリに襲われており、その報復として検査部長を手にかけたのだという。しかもそのトムリは、阪華精機が特別な客だけに配った特注品。組長は子供を密輸して阪華精機に流し込み、ヤクのルートにも絡む「特別な客」の一人だった。
そして草薙がたどり着いたのは、劣化したゴーストの大量複写と引き換えにオリジナルが死ぬため、禁止されたはずの装置。ゴーストダビングだ。密輸された子供たちは薬物で半ばロボット化され、ゴーストを製品に写し取られて使い捨てられていた。トムリを狂わせ、SOSを書いたのはこの子供たち。仲間が計画を立て、検査部長がプログラムを走らせてくれたのだと、あどけない声が明かす。
だがそのSOSは、要人襲撃1件、殺人2件、傷害12件という現実の被害を生んでもいた。「お前たちがやらせたんだ。分かってんのか」と突きつけるバトーに、返ってきたのは「だって、先に私たちに悪いことしたの、外の人たちだもの」。責める言葉のほうが宙に浮いてしまうこの一言が、今回いちばん重い台詞だと思う。
V8の悲鳴とヘドロの底、そして法廷へ
逃げた社長の車を、九課が追う。「子供の密輸にヤクがらみとくりゃ当然だろうぜ」と読みは港へ。当の車内では、社長がドクターに「医師は3日で補充できるが、このロボットはそうはいかん」と降車を迫っていて、どこまでも人よりロボットが上等らしい。やがてバトーの「V8の音が消えたぜ」のつぶやきとともに、包囲は一気に縮まる。
追い詰められた社長は、会社名義の船を目指した埠頭で、車ごとヘドロの海へ。深さ5メートルとも噂される泥の底に、箱型のジェイムスン型サイボーグが沈んでいく。「2時間くらいは生きてんだろ」「ドブさらいは警察にやらせようぜ」と九課は突き放し、あとには「社長」と呼ぶ声だけがむなしく響いた。救いのない事件の幕切れが悪党の情けない姿というのが、また効いている。
仕上げは荒巻だ。阪華精機が情報部系の旧訓練センター跡地にあり、移転当時の部長があの大佐だったこと、出どころも使途も不明の巨額の資金操作があったことを突きつける。「まず金と女を調べろ。そう教えてくださった」と、恩人の教えで恩人を追い詰める皮肉。「子は親に、ロボットは人に似る。君もいずれ私のようになる」という捨て台詞に、荒巻は「では法廷で」とだけ返した。
「ROBOT RONDO」まとめと考察
使い捨ての時代に響いた、子供たちのSOS
第4話「ROBOT RONDO」は、後に押井守監督が『イノセンス』へと膨らませた原作エピソードの映像化。同じ事件を、こちらは公安9課の騒がしい捜査劇として一気に駆け抜けた。子供たちのゴーストを商品にする阪華精機の闇と、泥に沈む社長の情けなさ。その落差が、陰惨な話を不思議と後味の悪くない群像劇に変えている。
効いているのは、序盤に置かれた社会病理学の見立てだ。「捨てられるからです」。使い捨てられるロボットの反乱という構図は、そのまま、密輸されて使い捨てられた子供たちの反乱として回収される。死体には人権がなく、機械には擁護団体が付く時代に、誰にも擁護されない子供たちが選んだ唯一の声が、血で書いたSOSだった。80年代の原作が2026年の世相を言い当てていると評されるのも頷ける、見事な二重写しである。
バトーとトグサの凸凹コンビの結成、死神からのフォロー、フチコマの先回り配備と、チームものとしての面白さも本格始動した。締めは、有休を願い出た草薙に荒巻が返した「明日からイギリスのSASで2ヶ月間訓練受けてこい」の無情な一言。人間には立ち止まって考える時間が必要だと語った口でこれである。鍛え直された少佐が暴れる次回以降に期待したい。




















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