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生まれたときからずっと一緒だった由良葵と茜。その葵が「もっと瑞佳と練習したい」と言い出したことで、茜は「お姉ちゃんの裏切り者」と飛び出してしまう。同じ頃、偵察に出た瑞佳が聞きつけたのは、逃げた象フランソワに謝礼金が出るという話。山の中で鉢合わせた二人と一頭の夜が、こじれた姉妹の距離をほどいていく。第5話「居場所なんか、どこにもない」を振り返る。




すれ違う双子と、割り込んだ天才
「一緒にいられればそれでいい」の限界
冒頭は短い回想から始まる。「あの子たちは双子の姉妹なんです。なんとか一緒にいられるように取り計らってはもらえないでしょうか」…行き場を失った幼い姉妹が、離ればなれになる寸前だったことが分かる。「ご飯のおかわりは一杯までね」と食卓に迎えられ、差し出されたのがジャグリングのクラブだった。「私が受けるからこっちに投げてみない?」「あなたたち、サーカスに興味ある?」…由良姉妹がひまわりにいる理由は、芸への憧れより先に「二人で一緒にいられる場所」だったのだ。この数十秒があるだけで、このあとの茜の必死さが全部腑に落ちる。
そして現在。練習場では瑞佳が葵に「言い訳はいいですから、もう一度最初からです」と容赦のない指導を飛ばしていた。そこへ来た茜が「何してんのよ。お姉ちゃんから離れなさいよ」と割って入る。葵が瑞佳に謝れば「瑞佳なんかに謝らないでよ」と噛みつくのだが、返ってきたのは「私が教えてって頼んだの」「もうすぐ終わるから待ってて。お願い」…妹ではなく、あの奔放な新入りを選んだ姉の言葉である。
「お姉ちゃんの裏切り者!」
続く姉妹の会話が、この回の火種になる。「私、もっと瑞佳と練習したい」「なんで? お姉ちゃんには私がいるでしょ」「今は瑞佳の力が必要」「私じゃダメってこと?」「少し教えてもらっただけで上達できた。私、もっと上手くなりたい」…対する茜の答えは、「そんなのどうでもいい。一緒にいられればそれでいいじゃない」。かつては葵も同じ気持ちだったはずで、だからこそ「ちょっと前まではそうだったでしょ」と食い下がる。それでも姉は「でも、それだけじゃもうダメなの」と言ってしまった。「お姉ちゃんの裏切り者!」…理由を一つも聞かないまま、茜は飛び出していく。ネットで「人は言葉が足りないとすれ違う」と評された通りの、見ていて痛いすれ違いだった。
逃げた象と、謝礼金の匂い
置いて行かれる桜翔と、三度の「瑞佳は大丈夫」
そもそも瑞佳が葵を指導していたのは、前回こしらえた借金の返済のためである。「一回50円じゃ一生返済できません」「単価上げてください」と直訴する彼女にマリアが授けた金策が、名付けて「瑞佳の密着指導大作戦」…一回1時間50円で天才の指導が受けられるという触れ込みだ。真っ先に食いついた桜翔が「すぐ戻るから絶対どこにも行かないでね」と貯金箱を取りに走るのだが、その間に瑞佳は「マリアさん、何か仕事をください、何でもいいです」と別口の稼ぎに乗り換えていた。「この近くに動物を使うサーカス団がいまして、技術が盗めるかもしれないから偵察行っていいですか」…早口で許可をもぎ取り、忍び込んだ先がラフレシアサーカスである。
そこで聞いたのが団長の名演説だ。「私とてフランソワのことが心配で心配で、今すぐにでも探しに行きたい。ですが慣れない山中での捜索はとても危険です」「ですのでここは私が必ず連れ戻してみせます」…そして続く一言が「謝礼金も用意しました」。瑞佳の目がその四文字しか映していない。一方のひまわりでは、帰らない茜を全員で捜しに出る騒ぎになっていた。「バラバラで探しては危険だ。まとまって山に入ろう」…ここで炸裂するのが今回の名物である。「瑞佳も帰ってない」「瑞佳は大丈夫だ」。以降、心配される流れになるたび「瑞佳も大丈夫だもん」「瑞佳は大丈夫」と三度も切って捨てられる。ネットでも「心配されていないの噴いた。それも複数回」と大受けだった。日頃の行いである。
「くらえ水鉄砲」
先に象を見つけたのは茜だった。暗がりで鉢合わせ、その体に残る傷を見て「ひどい飼い主だね」「痛くない?」と手を伸ばす。神様へのお供え物を食べようとするのを「取っちゃダメ」と止めながら、自分も空腹のまま夜を待つ。そこへ現れた瑞佳の第一声が「分け前をください」…「その象にかかってる謝礼金の話ですよ。だから茜さんも探してたんでしょ」。ここで茜が爆発する。「あんたと一緒にするな」「お金のためにこの子をひどい飼い主に引き渡すっての? この子は絶対渡せない」。そして飛んだ号令が「くらえ水鉄砲」…フランソワの鼻から放たれる水を、そのまま瑞佳に浴びせるのである。「大丈夫大丈夫、これくらい」「もう一回!」…ネットが「水鉄砲とかポケモン?」と沸いたのも納得の絵面だった。
夜の山で交わした本音
さらっと明かされた、大きすぎる情報
動けなくなった二人は、腹を空かせたまま向かい合う。「お腹すきましたね」と言った瑞佳が、どこからともなくお供え物を取り出してみせた。「手癖悪いわね、それお供え物でしょ」「いえいえ、ほらまだこんなにありますよ」「ど、どういうこと」…種明かしは「手品。伊万里ちゃんに教わりました」である。さらりと流されたこの一言、実はかなり大きい。これまでの瑞佳は自分の才能だけで押し通してきた子だ。その彼女が団の誰かに頭を下げて教わり、持ち芸を増やしている。ネットでも「めっちゃ大きい情報だと思う」「芸を向上させる意欲を持ちサーカス団に馴染んできているという変化」と指摘されていた。ついでに、フランソワと言葉を交わせてしまう茜に瑞佳が「本当に喋れるんですね」と驚く場面もあり、この妹にも只者でない一面があることが分かる。
葵が黙っていた理由
帰ろうと促されても茜は首を振る。「帰らない」「あんたのせいでしょ。あんたのせいでお姉ちゃんが変わっちゃったんじゃない」「私、何かしました?」「しまくりよ」…八つ当たりを正面から受け止めた瑞佳は、しかしここで核心を差し出した。「茜さん、それ違いますよ。この際だから話しちゃいますね」。葵が指導を頼んできた理由は、こうだったのだ。「私の方が下手だから、茜の足を引っ張ってる」「前は気にしなかった。一緒にいられればそれだけでよかったから。でも、みんなどんどん上手くなって、団が変わり始めてて」「茜は上手だから今のままでもみんなについていける。でも私はダメ」…そして「上手くなりたいんですね」と確かめる瑞佳への答えが、「茜と一緒にいたいから」。姉は離れようとしていたのではない。離れないために必死だったのである。「私、お姉ちゃんにひどいこと言っちゃったの」とうつむく茜に、「明日きちんと謝りましょう。ね」と返す瑞佳が、今回はやけに頼もしい。
一回50円の密着指導
もっとも、いい話のままでは終わらないのがこの子である。「私も茜さんの思いに寄り添いたい。応援したい」…からの「そんなあなたに紹介するのが鶴巻瑞佳の密着指導大作戦。今なら一回たったの50円」。商魂たくましいにも程がある。それでも言っていることは正しい。「葵さんの上手くなりたいって気持ちは本物。このままじゃ茜さん、置いていかれますよ」「だから茜さんも頑張らなくちゃです。一緒にいるために」…「やる」と応じた茜が、直後に「やっぱりムカつく」と付け加えるのが実に良い。ちなみに指導の中身は「48、49、はい50」と数えるだけで、「これただのスクワット」と突っ込まれていた。体幹を鍛えろというのは、たぶん本当に正しい助言である。
「居場所なんか、どこにもない」まとめと考察
曲がっていない檻と、不発の夢オチ
翌朝、猟銃を持った捜索隊が象を取り囲む。「何か起こる前にあの凶暴な象を撃ってください」「何言ってんだ、子供がいるんだぞ」…茜が「撃てるもんなら撃ってみなさいよ」と啖呵を切れば、団長は「さあお前たち、やっておしまい」と往年の悪の女ボスそのままの号令(ネットいわく、あの三悪の親玉へのリスペクト)。そこへ駆けつけたマリアの推理が痛快だった。檻を破って逃げた凶暴な象だという主張に、「別に曲がってなかったわよ、檻」。さらに「随分と飼育環境が悪いように見えたけど」と重ね、「経営状態が悪いんじゃないかしら。脱走を装って象を逃がし、鉄砲でズドンで保険金を手に入れるってとこ」と読み切ってみせる。瑞佳の「仲間をお金に換算。人間失格ですね」に、間髪入れず「あんたが言うな」が飛ぶのが今回一番の笑いどころ。後日、警察に話したら本当に保険金目当てだったというオチまで付いた。
そして姉妹の和解である。「私を独りにしないで」という葵に、茜は「ごめん。ひどいこと言ってごめんなさい」。「でも私に内緒はやめて」「うん、でも茜をびっくりさせたくて」…黙っていたのは、上達した姿で驚かせたかったから。ここまで来ると、副題の「居場所なんか、どこにもない」が二重に効いてくる。虐げられて逃げるしかなかったフランソワと、姉の隣という居場所を失いかけた茜。その一人と一頭が山の中で出会ってしまったことが、この回の全部だったのだと思う。
締めは、団に引き取られた象と、不発に終わった夢オチだ。山での一件を語る瑞佳は「夢ね、疲れてんじゃないの」「何だか漫画みたいですね」「うちみたいな貧乏サーカス団に象なんて」と誰にも信じてもらえない…のだが、その日の食卓のおかずはじゃがいもだけ。「あの子がものすごく食べるってのが頭になくて」…象はしっかり実在しているし、餌代という新たな金策の種も実在する。桜翔にだけは手厚く心配され、ほかの全員には雑に扱われる瑞佳の立ち位置も含めて、笑いと苦さの配合が絶妙な一話だった。フランソワと茜の相棒ぶりが次にどう化けるのか、楽しみに待ちたい。




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