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自分だけの縄張りを探すため、白猫のシロタエがついに森を飛び出した。旅先の林で出会ったのは、完全に気配を消して無茶な狩りをする孤児院の少女ガリー。彼女の作るスープに胃袋をつかまれたシロタエは、下手すぎる狩りを手伝い、やがて猫の魔法まで教え始める。ところが当のガリーは「めんどくさい」と及び腰で…立場が逆転していく師弟の第5話「白猫と少女」を振り返る。




「森の外へ」根負けさせた白猫
耳にタコができるまでの「ダメだ」
「絶対にダメだ」から始まる第5話。白猫のシロタエが羽のおじちゃんこと猫竜にせがんでいるのは、森の外へ出る許可である。目当ては森の近くの人間の国ではなく、「まだどんな猫も見たことがない場所」…そこで自分だけの縄張りを持ちたいのだという。猫竜は当然渋る。人間やクマのほかにさまざまな魔獣がいる、ここから東にある山脈には、と危険を並べ始めたところで、シロタエは「もう耳にタコができるくらい聞いたよ」。それでも「ダメだ」。ここで引かないのがこの子の偉いところで、「やっぱり森を出る最大の難関は羽のおじちゃんだよな。でも諦めないぞ。どれだけかかっても説得してみせるぞ」と腹をくくる。以降は「おじちゃん」「ダメだ」「お願いだよ」「ダメだ」の押し問答が延々と続き、ついに猫竜が折れた。「お前には負けた」…第3話で子猫たちを「好きなように生き、好きなように暮らせ」と送り出したはずの本人が、いざ我が子となるとこれである。
条件は「印をつけさせてもらう」
ただし条件付きだ。「お前の位置が分かるよう、印をつけさせてもらう。それでもいいか」…許可を出した直後にこれなのだから、過保護もここに極まる。ネットでも「あの頑固なおじちゃんが折れた…! でもやっぱり過保護なのね」と早速愛でられていた。晴れて草原へ出たシロタエだが、道中の食事は「ネズミばっかりだったから飽きちゃった」らしく、鳥やリス、果物にも期待しながら「さて、一番効率よく狩りをするには」と獲物を探し始める。効率にこだわるこの性分が、このあと出会う少女への説教魂に火をつけることになるとは、本人もまだ知らない。
気配を消す少女と、出会いのスープ
「ニャンコが喋った」
そこで彼が見つけたのが、木の上の人影だった。「あの子? でも全く気配を感じなかったぞ」…驚いたことに、その少女は完全に気配を消していたのだ。感心したのも束の間、彼女はとんでもない高さから獲物めがけて飛び降り、自分もあちこち擦りむいてしまう。「君、めちゃくちゃするね。怪我してるじゃない」と思わず声をかければ、返ってきたのは「ニャンコが喋った。頭、強く打ちすぎたかな」。「そんなことないと思うよ、オイラ喋ってるし」「そっか、ニャンコって喋るんだ」…この作品ではおなじみのやり取りだが、二言で受け入れてしまう少女の適応力もなかなかである。
彼女の名はガリー。親はおらず孤児で、狩りの仕方は誰にも教わらず独学だという。「一羽じゃ足りないなぁ。みんなにお肉食べさせなきゃ」…一緒に暮らしているのは子供が6人と先生が1人。難しいことを独学でやってのける、それも家族のために。そう理解したシロタエは「オイラが狩りを手伝ってあげるよ。ここで会ったのも何かの縁だからね」と申し出る。「狩りなんてできるの? ニャンコなのに?」「ニャンコだからさ。猫っていうのはすごく狩りが得意なんだよ」…そして「羽のおじちゃんが森の外に出るのを許可してくれるくらいの実力はあるんだよね。まあ、クマに会ったら逃げちゃうけど。でもいつかはあの英雄みたいにクマを倒せると」。第3話でクマを狩ってしまった伝説の子猫たちが、後輩の憧れとしてちゃんと語り継がれているのが嬉しい。
孤児院の食卓と、薄味のスープ
獲物を手際よく下処理しながら、ガリーは言う。「今日のうちならスープにして全部食べられる」。スープという言葉にシロタエが反応する。街に住む猫から勧められた覚えがあるらしい。「うちでご飯食べて行かない?」の誘いに二つ返事で乗って、そのまま孤児院へ。子供たちに囲まれて頭も背中も尻尾も撫でられ放題になりながら、「この子たちは子供、オイラは大人。子供の相手をするのは成熟した猫の務めだ」と強がる姿がおかしい。
出迎えた司祭は、ガリーが毎回怪我をして帰ることをきつく諭す。「そういったことは慎んでくださいと、お願いしたはずなのですが」。「全然怪我とかしてませんし」ととぼける彼女の横で、シロタエがあっさり「嘘だよ。鼻の頭すりむいてたじゃない」…出会って半日での密告である。それでも司祭は「彼女の作るスープは美味しいですよ。ぜひ召し上がっていってください」と客人を歓迎してくれた。そして食卓に着けば、シロタエ用に薄味のものが取り分けてあった。初対面の猫にまで気を回すこの子の優しさが、この一皿に全部出ている。食前のお祈りで律儀に前脚を揃えるシロタエと、「やっぱりねえねえのスープは最高だよね」という子供たちの声。この回でいちばん温かい食卓だった。
逗留、そして猫の魔法
司祭の夜話と、月が陰った理由
夜、司祭の部屋に招かれてのお話。彼を「ケットシーさん」と呼ぶこの司祭、実は元冒険者で、「もちろん、あなた方の森にも」行ったことがあるという。新しい縄張りを探しているという話には「しかし山は危険ですよ。越えるとなれば大仕事。迂回する道もあります」と現実的な助言が返る。それでもシロタエは「でもそれじゃ、山の中にあるかもしれない縄張りを見逃しちゃう」と譲らない。ならばと司祭が勧めたのが、「ではしばらくここに逗留されてはどうでしょう」だった。ガリーの作るスープも気に入ったようだし、子供たちも喜びます、と。渡りに船である。もっとも当人の内心はというと、「スープを毎日食べたら森のクマとも戦えそう」に続けて、「それもあるけど、問題はあの子の狩りだ。下手すぎる」…すっかり保護者の顔になっているのが可笑しい。
そして「今一瞬、月が陰りましたね」。空を見上げたシロタエには、その正体に心当たりがあった。「羽のおじちゃんって、すっごい過保護なんだよね」「大丈夫だよ、おじちゃん。ここの人たち、いい人間だから」…居場所の分かる印をつけただけでは足りず、わざわざ様子を見に来ていたわけだ。呆れながらも、ちゃんと空へ向けて報告してあげるあたりが、この子の育ちの良さである。
手習い塾と、小さなギルド
翌日は手習い塾の日。「今日は大きい数の引き算をやってみよう」と子供たちが机に向かう横で、ガリーは「私はもう全部習ったからいいの」と出かける支度をする。行き先は冒険者ギルド。「すぐにできる仕事を受けてお金をもらうんだよ」…君の狩りじゃ何も獲れないじゃん、というシロタエの遠慮のない突っ込みに、「植物や木の実の採取の仕事だってあるんだから」と胸を張る。なぜ冒険者にそんな簡単なことを頼むのか、と重ねて聞けば、「草原や森に生えてる植物だよ。あのあたりは人間にとっては危険だから、身を守る力のある人だけが行けるの」。なるほど、と納得しかけたところで飛び出すのが「私、魔法が使えるから」である。教えたのは司祭で、彼女に魔法の素質があると見抜いたのも司祭だという。
ならばなぜ狩りで魔法を使わないのか。答えは「爆炎の魔法しか覚えてないからね」…ここで初めて、彼女の不器用な狩りの理由が腑に落ちる。ちなみに到着したギルドを見たシロタエの第一声は「わあ、ちっちゃい」。「ギルドってもっと大きい建物で、人がたくさん出入りしてるもんでしょ」「それは王都のギルド」…しかも「中に入ってから言わないでよ、そんなこと」と釘を刺されるあたり、この二人の遠慮のなさは既に友達のそれだ。受付では「今日は塾の日かい」と顔なじみの扱いで、「みんなもっと朝早く来てるの」と朝寝坊をたしなめられるのも微笑ましい。
爆炎二十連射と「猫の魔法」
採取の仕事は根気がいる。目当ての草は薬の材料で、根から葉まで全部使うため、傷つけると価値がなくなってしまう。「魔法使えばいいじゃない」「言ったでしょ、爆炎の魔法しか使えないの」…確かに、これでは使いどころがない。そこへ現れたのが魔獣のハサミイナゴ。「飛び出してきたらオイラが押さえてあげるから、魔法で手伝ってよ」「任せて。唯一使える魔法見せてあげるから」…放たれた爆炎はすさまじく、本人いわく「これくらいなら連発できるよ。二十連射くらい」。おまけに「どうしても消し飛ばしちゃうから、必要な部位も粉みじんなんだよね」ときた。威力が強すぎて素材が残らないという、なんとも贅沢な悩みである。
これを見たシロタエの見立てが的確だった。「魔法の力が弱くて困るというのは聞いたことあるけど、この子は力が強すぎて困る。なのに爆炎の魔法しか使えないなんて」。そこで飛び出したのが「ねえ、オイラが猫の魔法教えてあげようか?」の一言だ。ガリーは目を丸くする。「でも猫の魔法って言ったら、王都の王様とか偉い人が習えるやつでしょ? 私に習っていいの?」「別にいいんじゃない?」…森の猫が見込んだ人間に魔法を授けるのは、この作品では友情が始まる合図である。第4話で黒猫が王子に魔法と戦い方を教えたように、ここでも小さな師弟が生まれた瞬間だった。
「白猫と少女」まとめと考察
熱血師匠の誕生と、猫竜が認めたもの
翌日には効果てきめん。「ヤッホー! ギルドの仕事も狩りもすごく楽になった! ありがとうね、シロニャンコ」と喜ぶガリーに、シロタエは「うむ、苦しゅうない」と得意満面…なのだが、話はここから妙な方向へ転がる。もっと本腰を入れて教えようという話になった途端、ガリーが「いいよ、めんどくさいし」と及び腰になったのだ。ここから始まる師匠の猛烈な口説きがおかしい。「魔法が使えるようになったら便利でしょ?」「狩りだってうまくなるかも。そしたら毎日スープにお肉が入れられるかも!」「今日だって魔法使った方が早かったでしょ! 自分でいろいろできるようになったら便利だと思わない!?」…押し切られたガリーが「じゃあ、家事の合間にでも良ければ」と折れると、返ってきたのは「君を一流の魔法使いにしてみせる」。「あぁ、便利そうな魔法をいくつか教えてくれるだけでいいんだけどなぁ」という本音との温度差がたまらない。ネットでも「ガリーにやる気がなさすぎてシロタエにやる気出たのがちょっぴり面白かった」「シロタエがすっかり熱血キャラに」と、この逆転が大いに受けていた。
そして今回いちばん静かに効いてくるのが、遠くから見守っていた猫竜のひとりごとだ。「その場所から移動する気配がないと思ったら、人間の友人か。知らない土地で縄張りを見つけると言っていたのに」…続く言葉が、「人間の中には思っていたより多く、我らの信頼を勝ち得るものがいるのかもしれん」である。人間を極端に嫌い、人間のもとへ行った猫たちを「わざわざ危険の中に飛び込んでいるようなもの」と案じ続けてきた、あの猫竜が、だ。子らに願うのは幸せな猫生ではなく「満足する生を歩むこと」…その願いの通りに歩き出した教え子を見て、送り出した側の人間観までゆっくりと変わり始めている。締めのナレーションは「彼はこの後も少女の傍らに寄り添い、やがて無二の友人同士となっていく。でもそれは、まだ少し先のお話」。毎回この一文で、一匹分の生涯を預けられたような気持ちになる。
出演はガリー役に種﨑敦美さん、シロタエ役に和泉風花さん。孤児院の子供たちも星河希さんや奥井ゆうこさんらが演じており、「にゃんこのしっぽはギュッと握ってはいけませんよ」という出演報告まで含めて微笑ましい。ネットでは爆炎の魔法があの爆裂魔法を思わせるという声や、作中に映った地図から王都との位置関係を推理する声もあり、世界の広がりを感じさせる回でもあった。それにしても、この調子だと森のおじちゃんはまた月を陰らせに来るに違いない。過保護な視線ごと、この二人の行く先を見守りたい。




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