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ヴァンパイアがついに王宮へ届いた。侵入経路は銀の盆に仕込まれた転移魔法陣で、運び込んだのは侍女のロアーナだった。ロックはルッチラの幻術で第八位階に化けて敵から情報を吐かせ、そのまま拠点へ乗り込んで第六位階を討つ。そして10年ぶりに三人が揃い、ハイロードの本拠地へ。退路を断たれた先で、エリックとゴランが口にしたのが「ここは俺たちに任せて先に行け」だった。




王宮に開いた転移魔法陣
「魅了と眷属化」と、獣人族の申し出
第5話は作戦会議から始まる。ヴァンパイア相手にいちばん厄介なのは魅了と眷属化で、「さっきまで仲間だった者に、逆に襲われることになるんだからな」という一点に尽きる。
だからエリックは「精神異常耐性が高い私やゴランならばともかく、一般の兵士や冒険者を駆り出すわけにはいかない」と言い、シアに詫びる。シアの返しは「戦闘は奴らの魅了も眷属化も効かない、我々獣人族に任せてほしいであります」だった。
ルッチラも参加を申し出るが、ゲルベルガ様のそばを離れるわけにはいかない。ロックは「ルッチラはセルリスと一緒にゲルベルガ様を」と割り振る。
戦力の話をしているようで、実際は「誰を戦場に出さないか」を決めている会議になっている。魅了という能力の設定が、そのまま人選の理屈として機能しているのが気持ちいい。
銀の盆に仕込まれていたもの
その会議の最中に、王宮が襲われる。駆けつけたロックが「よくやったセルリス。あとは俺に任せろ」と引き取り、「魅了は効かない」と言い放って敵を圧殺した。球体の中を超高圧・超高温・超高密度に変える魔法で、「塵となれ」の一言で終わる。
シャルロットとマリーは無事だった。エリックが礼を言うのに対して返ってきたのが「いや、二人を守ったのは紛れもなくセルリスだ」である。
問題はここからだった。ロックが目を付けたのは、その場にあった銀の盆である。「この銀の盆は最初からここにあったのか」と聞かれたセルリスの答えは「お菓子を入れて持ってきたの」。盆に描かれていたのは転移魔法陣だった。
王宮には厳重な防御と結界がある。だが「転移魔法陣を王宮内で書くのは難しい。だが完成した転移魔法陣を持ち込むことくらいならできる」。つまり運び込んだ侍女のロアーナがヴァンパイアの眷属だったということになる。
結界の抜け方が力業ではなく持ち込みだった、という種明かしが上手い。しかも読者にも視聴者にも「お菓子の盆」としてしか見えていなかったところに答えが置いてある。
第八位階に化けて、第六位階を討つ
幻術で聞き出した二つの情報
魔法陣から敵が現れると、ロックはルッチラの幻術を使って第八位階に化けた。第3話で写し取った術式が、ここで効いてくる。
平伏した相手に「こんなところで何をしている。私の邪魔をするつもりか」と圧をかけ、先に来ていた三人が消えた理由を「私に無礼を働いた罪で処罰した」と押し切ってしまう。ロードの階級は数字が若いほうが上、という設定がここで説明される。
そのまま引き出したのが二つの情報だった。ひとつは「第六位階様には人間の眷属が多くおり、王宮内にも多数侵入しております」。もうひとつは、この魔法陣で第六位階のもとへ行ける、ということ。
聞き出し終えたロックの一言が「それが分かれば、もうお前たちはいい」。丁寧に情報を吐いた相手への処理が早すぎて、思わず笑ってしまう場面だった。
「Fランク冒険者のロックだ」
ロックは単身で魔法陣に飛び込む。セルリスとシアにはロアーナの確保を、エリックには王女たちの避難を、ゴランにはゲルベルガ様の護衛を割り振り、「俺が入ったらこの魔法陣は壊しておいてくれ」と言い残す形だった。
乗り込んだ先の第六位階は、味方ごと攻撃してくる相手だった。「味方ごと撃つとは、さすが外道の親玉だな」「化け物め」に対して、ロックの返しは「お前にだけは言われたくねえ」。
相手の剣を「いい剣だな。くれよ」と欲しがるあたりも余裕である。何者だと問われて名乗ったのが「Fランク冒険者のロックだ」だった。
第六位階は最後まで口を割らない。「答えが得られるとは思っておるまい」と言い、「われらが王に殺されるその日まで、短い命を楽しむがいい」と言い残して消える。負けた側が捨て台詞で格を保つ書き方になっていて、ハイロードの不気味さがちゃんと残った。
10年ぶりの三人
城内で5人が灰になり、30人が意識を失った
戦いのあと、状況が整理される。拠点のヴァンパイアは残らず始末されたが、近くの村はすでに全滅していた。「もっと早く奴らの計画に気づけていれば」という悔いに対して、ゴランは「その責があるとすればギルドマスターの俺だ」と引き受け、丁重に弔うと言う。
城のほうにも変化があった。城内で5人が灰になり、30人が急に意識を失った。ロックがロードを倒したことで、眷属は灰になり、魅了されていた者は意識を失ったということである。
シアいわく「魅了でよかったでありますよ。眷属化さえされていなければ、まだ治療が可能であります」。助かる線が残ったのはいいが、これだけの数が入り込んでいた以上、王宮はゲルベルガ様にとって安全とは言えない。
倒した結果が敵の数ではなく「城内で何人が倒れたか」で示されるのが良かった。勝った側の被害として結果が出てくるので、ハイロードを叩かないと終わらないという結論に自然につながっている。
「戦士ゴランの代わりはいねえってわけだ」
ロックの結論は「俺はハイロードを倒しに行く」。元凶を叩くのが一番確実だという判断で、失敗は許されない。
ここで面白いのが、エリックとゴランの理屈である。国王とギルドマスターが前線に出るのはおかしい、という当たり前の反論に対して、エリックは「国王は万が一の時は弟が継ぐ。だが当代の勇者はこの俺しかいない」と返し、ゴランも「ギルドマスターの代わりもいるが、戦士ゴランの代わりはいねえってわけだ」と続けた。
肩書きを守る側ではなく、肩書きを捨てて個人として名乗り直す形になっているのがいい。二人とも、10年前に置いてきたものを取りに行っている。
これを見たシアの反応が「まさか、まさかこの目で見る日が来るなんて。伝説のパーティーの復活であります」だった。視聴者の気持ちを代弁する役として、この回のシアはずっと良い働きをしている。
「城のことは私たちに任せて」
足手まといと言われたセルリスと、譲られた大剣
同行を願い出たセルリスに、ゴランは容赦がなかった。「ダメだ」「はっきり言って足手まといだ。これ以上言わせるな」。父としてではなく戦士としての線引きである。
そこへロックが口を挟む。「ゴラン、お前の剣、一本セルリスに譲ったらどうだ」。理由は「セルリスの戦い方はお前そっくりだし、腕力もある。ならリーチのある大剣の方が合ってるんじゃないのか」。
そのうえでロックはセルリスに役目を与える。「セルリスには王女たちを守ってほしい」「城内にまだ他のロードの手の者が残っている可能性もあるな」「俺の弟子ならできるだろ」。
セルリス本人も「ロックさんにうまく乗せられたかもって思ったけど、そういうわけでもなさそうね」と気づいている。乗せられていることを分かったうえで受けるという描き方なので、単なるおだてになっていない。
幻術と大剣で守る王宮
残ったセルリスとルッチラは、実際に襲撃を受ける。「その鶏をよこせ、小僧」と迫る相手に、セルリスは「ラックさんが一番弟子、Fランク戦士セルリス・モートン」と名乗って立ちはだかった。
戦いの最中に思い出されるのがロックの教えである。「魅了を使ってくる敵に勝つ方法は、まず先制攻撃で相手に魅了を使う隙を与えないこと。そして爪の先ほどでいい、敵より先に切っ先を届かせる」。教わったことをそのまま実行して勝つ流れになっている。
ルッチラの幻術も冴えていて、セルリスが「相変わらずすごい幻術ね」と漏らすほどだった。ゲルベルガ様には「少し窮屈ですが我慢してくださいね。俺が守りますので」と声をかけている。
そして出てくるのが、この回でいちばん効いた一言である。ロック、父、エリックに向かって、セルリスが「城のことは私たちに任せて」と言い切った。作品タイトルの言葉を、今度は守る側の少女が使っている。
「ここは俺たちに任せて先に行け」
獣人族の捜索と、シアに渡された剣
拠点は、王国からこれほど近い距離にあった。「見くびられたものだ」と言いつつ、山地の中から居場所を突き止めるのは骨が折れる。そこへ現れたのが獣人族の族長だった。
シアからの連絡を受け、獣人族が総出で捜索してハイロードの拠点を突き止めていた。数が多くて攻めきれないと詫びる族長に、エリックは「いや十分だ。あとは我らがハイロードを討つ」と応じ、周囲のヴァンパイアを引きつける役を頼む。
時間帯の設定も効いている。日没に向かう今の時間なら、ヴァンパイアの力は本来のものではない。ゴランの言い方だと「お目覚め直後で寝ぼけてるってわけだな」。
そしてロックがシアに渡したのが、第六位階から奪った剣だった。魔神王の剣と打ち合っても折れなかった業物で、呪いの有無も鑑定魔法で確認済みだという。シアの返しは「ロックさんの背中は任せてほしいであります」。
退路を断たれた先で言われた言葉
拠点には隠蔽魔法がかかっていた。解除した先が「地獄の入り口」で、ロックはスリープクラウドで眷属化した人間とレッサーをまとめて無力化してしまう。残るはアークとロードだけになった。
ゴランの「少しは俺の分も残してくれればいいものを」という不満に対して、エリックが「この程度、国王様の腕を煩わせるほどの相手じゃねえって」と流すやり取りが軽くて良い。シアが「伝説の勇者パーティー」「圧倒的であります」と目を丸くしている。
ところが最奥に近づいたところで、後ろから20から30近いロードが湧いた。退路を断たれた形である。日没が完全に来れば敵の魔力はさらに上がるので、時間はロック側の味方をしない。
ロックは「こいつが30体以上だぞ。いくらなんでも無茶だ」と止めようとする。それに対する二人の答えが、この回の到達点だった。「俺たちはお前に返しきれない借りがある。ずっとお前にこの言葉を言いたかった」「ここは俺たちに任せて先に行け」。ロックの返事は「ここは任せた」だけである。
「10年たって先に行けと言われた」まとめと考察
タイトルが反転した回
今回のサブタイトルは「10年たって先に行けと言われた」。作品タイトルの「ここは俺に任せて先に行け」を、10年後に言われる側として受け取る回だった、という宣言になっている。
しかも今回、その言葉は二度出てくる。ひとつはエリックとゴランの「ここは俺たちに任せて先に行け」。もうひとつが、王宮に残ったセルリスの「城のことは私たちに任せて」である。
片方は10年越しの借りを返す言葉で、もう片方は弟子が初めて背中を預かる言葉だ。同じ台詞が、返済と継承という別々の意味で置かれているのが、この回の構成のいちばん良いところだと思う。
エリックとゴランが理屈を「国王だから」「ギルドマスターだから」ではなく「勇者は俺しかいない」「戦士ゴランの代わりはいない」に置き換えたのも、同じ発想の延長にある。肩書きを外したところで、10年前の三人に戻っている。
次に見るところ
まず、ハイロード本人である。攻撃性の防御壁を張っており、目で追えない速さで動く。ロックが「言っとくが、俺に魅了は効かねえぞ」と釘を刺したうえで、「まずは左腕もらったぜ」と一撃を入れたところで第5話は終わる。
気になるのは、その戦いの場でシアが「ここからははっきり見えないでありますが、もしかしたら」と口ごもった何かだ。ハイロードのそばに、まだ名前の付いていないものがある。
もうひとつは王宮の守りである。ゲルベルガ様のそばからロックが離れている状態で、しかも城内には眷属や魅了された者が大量に入り込んでいた。ネットの反応でも、城の守りが薄いのではという声とセルリスの負担を心配する声が並んでいた。
敵の本拠地を叩きに行っているあいだに、手薄になった城が狙われる。この形はどう考えても何か起きる。セルリスに大剣を持たせておいた意味が、次回以降に効いてくるのだと思う。















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