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公式副題は第44話「最強の男」(※1)。カイトが決着を申し込む理由は、勝ちたいからではなかった。回想で出てくる約束の中身が「最強の座を誰にも譲るな」で、それを破ったのはキョウのほうだからである。そして公式サイトのパートナー紹介を端から開くと、究極体のタブが立っているのはこの二人の相棒だけだった。




決着を申し込んだ側の時間が、止まったままだった
回の入口は、トモロウの救出のはずだった
公式のあらすじはこう始まる。「トモロウの救出を急ぐキョウ達の前に現れたのは、決着をつけに来たカイトだった」(※1)。つまりこの回で起きる戦いは、救出の途中に横から差し込まれたものである。
キョウの側は「俺たちはファミリーのところへ行かなきゃならない」と言い、用件が別にあることを最初に伝えている。さらに「何の目的で五行星はトモロウさんのお兄さんを」と、事情そのものを問う声も出る。
それに対するカイトの返しが「そんな戯言、どうでもいいだろ」で、続くのが「俺はてめえとの決着をつけに来たんだ」だ。相手の事情を聞いたうえで、関係ないと切っている。
「なぜ戦わなければならないんだ」に、理由は返ってこない
戦う前に一度、キョウが「どうしてもやらなければならないのか」と確かめる。返ってくるのは「愚問だな」の一言だけである。
戦いが始まってからも「なぜ戦わなければならないんだ」という問いが出る。そこで返るのが「忘れたのか、あの約束を」だ。理由が説明されるのではなく、思い出せと言われている。この回でカイトが差し出す根拠は、最後までこの一点しかない。
止まっているのは、勝てなかった側の時間
戦いの最中に出てくるのが「あの時から、俺の時間は止まったままだ」、そして「進めなきゃなんねえんだよ」という言い方だった。強くなりたいのではなく、動き出したい。それが理由として置かれている。
第43話のラストでカイトがキョウを呼び出したときの言い方も「あの日の続きをしようじゃないか」で、新しく始めるのではなく続きだった。この回の副題「最強の男」は、勝った男の呼び名ではない。
約束の中身は「勝て」ではなく「負けるな」だった
回想に出てくるのは、勝ち負けの記録のほう
回想でカイトが口にするのが「今まで負けたことがねえ俺が、初めて負けたのがてめえだった」、続けて「てめえに勝つために、俺はさらに強くなった」である。負けた事実そのものより、そこから何をしたかのほうを先に言っている。
第43話の回想では、この二人が「おい、キョウ。今月何体倒した」と、月ごとに数を競い合う関係として描かれていた。勝ち負けを数えることが日常だった相手同士である。
約束は、自分にではなく相手に課された
そのうえで出てくるのがこの回の芯だ。「だから、それまで誰にも負けるなよ」、「最強の座を誰にも譲るな」、「約束しろ」。そして「分かった」と返事がある。
よく見ると、この約束はカイトが自分に課したものではない。自分が強くなるという誓いではなく、相手に「その座に居続けろ」と求める形になっている。追いかける側が、追いかけられる側の位置を固定しようとしたわけだ。
その約束は、第43話ですでに破られていた
第43話の回想でキョウが叫ぶのが「五行星をやめる」だった。見逃してほしいデジモンのために、自分の側から座を降りている。そのときカイトが吐き捨てたのが「てめえはもう燃やす価値もねえ」である。
つまりこの回の対決は、勝負の再戦ではない。約束を破った相手に、もう一度その位置へ立てと言いに来た回だ。だから戦いの最中に出るのが「出せよ、最強の力」で、「てめえが最強である限り、俺も強くなる」という理屈になる。
敵のデジモンが、公式では「パートナー」の欄に入っていない
マコトの相手は、第43話で土の星に就いた男
分断されたあと、マコトが向き合うのが岸和田である(※1)。岸和田は第42話で王会長の前に現れて器を差し出し、第43話で土の星として五行星に着席したばかりの男だ。
その岸和田が差し向けてくるのがゴグマモンで、公式のデジモン紹介では巨大な身体を持つ鉱石型とされ、腕のクリスタルで敵をすり潰す「ジャイアントグレイター」と、クリスタルの先端から光のエネルギーを放つ「カース・リフレクション」が挙げられている(※2)。どちらも劇中で名前が呼ばれる。
解析が出したのは、この男は相棒ではないという結論
マコトのスカージキロプモンには「トライアンギュレーションスキャン」という解析技があり(※3)、この回でもその名で使われている。そこから出るのが、ゴグマモンのe-パルスがオーバーロードしている、という判定だった。
続けて出るのが、あの男はゴグマモンのパートナーではない、という指摘である。デジモンにe-パルスを無理やり注ぎ込んで暴走させる手口は、この作品ではすでに一度描かれている。そして第42話で岸和田自身が王会長へ言っていたのが「黒潮ソウジの手を経て、すでに準備は整っております」だった。手口の出どころは、二話前に本人の口から明かされている。
公式サイトの置き場所が、そのまま台詞と一致する
放送当日の公式ニュースには、二つの更新が並んでいる。「キャラクター五行星にアポロモンを追加」と、「キャラクターデジモンにゴグマモン、キメラモン、プヨモンを追加」だ(※4)。
同じ日に足された四体のうち、五行星の枠に入ったのはアポロモンだけで、ゴグマモンは各話ごとのデジモン一覧のほうへ置かれている。岸和田は土の星に就いているのに、そのデジモンはパートナーとして登録されていない。マコトが解析で言い当てたことを、公式サイトの棚の分け方が先に示していた形になる。
想いの重さを比べる喧嘩になる
ホノカの動機は、公式紹介文に先に書いてある
レーナの相手はホノカだ(※1)。公式の紹介文は「水の星、深淵のホノカ。カイトに心酔している」で、好きなものの欄にもカイト様が並んでいる(※5)。
劇中でも「五行星としてカイト様のおそばに居続けるためには、任務もこなさないと」と、戦う理由をそのまま口にする。相手を倒したいのではなく、そばに居たいから任務をこなすという順番だ。
持ち出されるのは、少し前の回で全部見せられた過去
ホノカがレーナを煽るのに使うのが、キョウの昔の話である。「そんな過去を取り繕ってるような男、やめといた方がいいじゃないですか」。これに対してレーナが返すのが「取り繕ってなんかない。過去を受け入れてる」、そして「そんなキョウと一緒にいるって決めたんだ」だ。
第40話はキョウの過去をまるごと描く回で、第41話はその決着だった。視聴者が中身を全部見せられた直後に、それを知らない相手が「取り繕っている」と決めつけてくる。レーナの怒り方が早いのは、そのためでもある。
技の撃ち合いが、そのまま量の比べ合いになる
ホノカのマリンキメラモンの必殺技は、公式の説明では全身を高速回転させて大渦を発生させる「ポセイドンボルテックス」だ(※5)。劇中でもその名前で放たれる。
そこに乗せられる言葉が「これに比べたら、あんたのキョウへの想いなんて大したことないっての」で、レーナの返しが「残念、レーナの想いも特大なの」だった。技の威力の話が、そのまま想いの量の話になっている。
そして返し方が逆回転で渦を相殺するという形になる。打ち勝つのではなく、同じだけの回転を逆向きに当てて消す。そのあと出るのが「カイトのことが心配なら、さっさと行けば」と「私は、キョウが勝つって信じてるけどね」で、勝負の最中にいながら、自分の勝ち負けの話をまったくしていない。
究極体の欄が付いているのは、この二人だけ
公式サイトの登録が、この回の構図と同じ形をしている
公式のキャラクターページは、パートナーデジモンを進化段階ごとのタブで並べている。カイトのフレアモンには完全体と究極体の二つがあり(※5)、キョウのムラサメモンにも成熟期・完全体・究極体が揃っている(※6)。
一方、同じ回で全力を出す二人はそうなっていない。レーナのプリスティモンは幼年期から完全体のベアキャットモンまで(※7)、マコトのキロプモンも完全体のスカージキロプモンまでで欄が終わる(※3)。五行星のホノカに至っては、マリンキメラモンの完全体一つだけだ(※8)。四人が全力で戦う回なのに、欄が最後まで伸びているのは二人しかいない。
ためしに、公開されているパートナーのページを端から開いてみた。トモロウのゲッコーモンは完全体のモナークリザモンまで、五行星のローズのライラモンも、ゲンジョウのゴクウモンも完全体一つだけ、アスカのヘリオスボアモンも完全体で止まっている。公式サイト全体で、究極体のタブが立っているのはアポロモンとハバキリモンの二つしかない。この回で並んだのは、そういう二体だった。
二つの欄が埋まった日は、三週間ずれている
公式ニュースをさかのぼると、ハバキリモンが追加されたのは第41話の直後で、アポロモンが追加されたのは第44話の当日だった(※4)。
同じ「究極体」という欄が、三週間の間を空けて片方ずつ埋まっている。先に埋まったほうは黒潮ソウジとの決着で出た力で、あとから埋まったほうはその相手ともう一度並ぶために出た力だ。サイトの更新履歴が、そのまま二人の距離の縮まり方になっている。
片方は太陽で揃い、片方は剣で揃う
アポロモンの技は、公式の説明で三つ挙げられている。背中の火炎球から灼熱の太陽球を放つ「ソルブラスター」、一撃必殺の拳「フォイボス・ブロウ」、両手の光玉から灼熱の矢を連射する「アロー・オブ・アポロ」だ(※5)。名前がどれも太陽に寄せてある。
対するハバキリモンは、七支剣「布都斯魂剣」を扱い、そこにオーラを収束させて放つのが「羽々斬」、刀身を七つに分けて全方位から切りつけるのが「麁正」とされている(※6)。こちらは剣で揃っている。この回では、布都斯魂剣の名も麁正も、劇中で声に出して呼ばれる。
面白いのは、公式のスペック欄だ。アポロモンもハバキリモンも、タイプはどちらも神人型で、分かれているのは属性だけ(アポロモンがワクチン、ハバキリモンがウイルス)である(※5・※6)。同じ形をしていて、立っている側だけが違う。
まとめ──最強の座は、返すためのものだった
決着のあとに残るのは、強弱の話ではない
勝敗がついたあと、置かれるのが「これで、借りは返した」という一言だ。勝った負けたではなく、貸し借りの言葉で締められている。
続くのが、ヘリオスボアモンのことを上に報告しなかっただろう、というやりとりで、返ってくるのは「気まぐれだ」だけである。見逃した側は、それを恩として認めない。第43話の回想でキョウが見逃してくれと頼んだときと、見逃す側が同じである。
「燃やす価値もねえ」が、もう一度置かれる
終盤には「あの時」という言葉に続けて、「てめえはもう燃やす価値もねえ」がもう一度聞こえる。第43話の回想で、カイトがキョウに投げた一言だ。
燃やす価値がないと切り捨てた相手のところへ、自分から決着をつけに来たのがこの回である。価値がないと言ったのも、価値を認め直したのも同じ人物で、その間に空いた時間が「止まったままだ」の中身だった。
回そのものは、まだ途中で終わる
決着の場をあとにするときに出るのが「俺は行く」だ。決着はついたが、トモロウの救出という本題は片づいていない。この回は、あくまで横から差し込まれた一戦だった。
そう考えると、副題の「最強の男」が誰を指すのかは一つに決まらない。座に居続けろと言われた側と、居続けろと言った側。約束を交わした時点で、二人はどちらも一人では最強になれなくなっている。公式サイトで究極体の欄が二つしかないのは、たぶんそういうことだ。
出典
※1 東映アニメーション「DIGIMON BEATBREAK」公式サイト 第44話「最強の男」(あらすじ)公式 第44話
※2 同 CHARACTER/DIGIMON ゴグマモン公式 ゴグマモン
※3 同 CHARACTER 久遠寺マコト / キロプモン公式 マコト
※4 同 NEWS(キャラクター追加の履歴)公式 NEWS
※5 同 CHARACTER 忽那カイト / フレアモン公式 カイト
※6 同 CHARACTER 沢城キョウ / ムラサメモン公式 キョウ
※7 同 CHARACTER 咲夜レーナ / プリスティモン公式 レーナ
※8 同 CHARACTER 沙海ホノカ / マリンキメラモン公式 ホノカ




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