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スマホ購入のため都心で待ち合わせた隼人と春希。初めての化粧と気合いの入った服に隼人は胸を高鳴らせ、機種は春希とおそろいに。カラオケ店では春希の仕掛けを店員の絶妙な一言が阻む。だがドラマ『10年の孤独』の撮影現場で主演女優田倉真央の名前を聞いた瞬間、春希の表情が凍りつく。帰り道の「僕ね、あの家に一人で住んでいるんだ」という告白は、土砂降りの夜の「帰るな、泊まってけ」につながっていく。




待ち合わせから「おそろいスマホ」まで
初めての化粧と、隠したナンパ
待ち合わせ場所の駅は「おいおい迷路かよここ」と言いたくなる広さで、隼人は開幕から遅刻気味。その間、気合い十分の春希はナンパに絡まれていた。「なんだよ、本当に男連れなのかよ」と捨て台詞を残して男たちが去った後も、春希はそのことを隼人に告げない。後から思えば、相手を不安にさせないための隠し事で、この子の健気さが滲む場面だ。
合流した春希は「おやおや、もしかして僕に照れてる?」と余裕ぶるが、聞けば化粧は「初めてだけど頑張ってみた」。隼人が「とてもかわいい。すごく似合ってる」と真正面から返すと、素直に「ありがとう」と受け取った。冒頭数分で二人の距離感の温度を一気に上げてくる、たいへん良い立ち上がりである。
おそろいの機種と、スカートの苦労と、巨大100均
肝心のスマホは、結局春希とおそろいの機種に落ち着いた。「姫ちゃんと同じでもよかったんじゃ」という春希に、隼人は「姫子は妹だぞ、なんか気まずい」。一人っ子の春希は「僕にはよくわからない感覚だな」と首をかしげるが、おそろいを選んだ事実だけが静かに残るのがにくい演出だ。
道中の春希は慣れないスカートに苦戦中。「丈がですね、短いのです」「太もものあたりがスースーします」「体勢を気をつけないと見えちゃうんだよね」と訴えた挙げ句、「僕だけこんな思いをするなんて不公平と思わない? ハヤトも着よう」と迫り、昨日自分をプロデュースした姫子の気持ちがちょっと分かってしまう始末。「おい、やめろ。目がマジだぞ」という隼人の悲鳴がおかしい。
新しいスマホの検索デビューで向かった先は、田舎の月野瀬にはなかった巨大100均。大興奮で乗り込んだのに「迷いすぎて何も買えなかった」オチまで含めて、「村尾のばあちゃんのとこに駄菓子買いに行って、結局決められなくてさ」「迷った時はだいたいラムネとアイス!」と、幼い日の月野瀬の思い出につながっていく。こういう回想の挟み方が、この作品は本当に丁寧だ。
カラオケ店の攻防と、「僕たちは僕たち」
ハニトーと、店員に阻まれた仕掛け
昼を回って入ったのは、月野瀬では「集会場とかバスの中でやるイメージ」だったカラオケ店。個室で気が緩んだ春希は「さっきまで気を張っていた反動でして」とだらけた姿を晒し、「俺には丸見えだぞ」と苦笑される。そこから空気が変わる。「もしかしてドキッてしちゃった?」と迫る春希に、隼人は姫子を見るのと同じ感覚に気づいてドキッとしたと、何とも家族寄りの答え。不満げな春希は「僕、これでも結構モテるんだよ?」と顔を寄せていき、「どう? ハヤト…」と迫ったその瞬間。
「こちら、完熟バナナメープルシロップ・プリン・ハニートーストになりまーす!」。店員の完璧なタイミングで場は強制リセット。しかも去り際に「ここはそういう場所じゃないので、お控えくださいね!」と釘まで刺され、春希は真っ赤になって撃沈した。その後は巨大ハニトーの取り合いでじゃれ合い、「食べ過ぎた…」「ほんとバカだね」と笑い合う。「初めてのカラオケ屋だったのに、なんも歌わなかったな」「まあ、次の機会ってことで」「そうだね、次ね!」と、次の約束がさらりと生まれた。
「僕たちって、一体なんだろう」
ふと春希が切り出す。「ハヤトってさ、男の子なんだよね」「僕たちってその、一体なんだろうって思って。ハヤトはハヤトで、僕は僕で」。幼馴染で、親友で、でも男女で。この関係の名前を探す問いに、隼人は「難しいな。それでもまあ、俺たちは俺たちだろ」と返し、春希も「僕たちは僕たち」と笑う。答えの保留がそのまま心地よさになっている、シリーズの核心みたいなやり取りだ。
『10年の孤独』と、一人きりの家
田倉真央の名前に、凍りつく春希
街角の人だかりの正体は、人気ドラマ『10年の孤独』のロケ現場だった。野次馬からは主演女優・田倉真央の若さを称える声や、私生活の噂話まで聞こえてくる。その名前を耳にした瞬間、はしゃいでいた春希の表情が固まった。隼人が「ハルキ?」と何度呼んでも反応がなく、ようやく出た言葉は「これ、線路沿いに歩いて行ったら家に帰れるかな」。
理由を問い詰めず、「どうだろう。行ってみるか」とだけ返して並んで歩き出す隼人がいい。詮索しない優しさは、事情を抱えた相手への最良の距離感だ。視聴者の間でも「深くは訊かずとも寄り添ってくれる隼人は優しい」と評判だった。
「僕ね、あの家に一人で住んでいるんだ」
線路沿いの帰り道、春希は隼人の手を取って「ハヤトはさ、いつも強引だよね」「ゴツゴツして大きいね」とつぶやく。「畑仕事をよく手伝ってたからな」「でも僕の方が大きかったのにな。初めて出会った時もこうだった」。サブタイトル「小さな手のひら、大きな背中」が指すのは、この7年で入れ替わった二人の大きさのことだろう。
そして春希は、一つだけ、と前置きして打ち明ける。「僕ね、あの家に一人で住んでいるんだ」「いい子で待ってるんだけどな」「なんてね」。誰を待っているのかは語られない。冗談めかした「なんてね」の軽さが、かえって重い。第3話で冷蔵庫の中身に言葉を失った隼人にとって、この告白が決定打になったのは間違いない。
「小さな手のひら、大きな背中」まとめと考察
土砂降りの「泊まってけ」と、朝のいたずら
霧島家に寄った春希は、夕飯まで姫子の勉強を見る。「そこのYは4を代入すれば」「その4はどこから出てきたの?」という天才肌のフィーリング指導に姫子はぐったり。だが帰り際、外は土砂降り。走って帰ろうとする春希に、隼人は「待て。帰るな、泊まってけ」と言い切る。「エロいことされちゃうやつ?」と茶化す春希に理由を重ねた末、出てきた本音がこれだ。「今日のハルキは、あの家に帰したくないんだ」。一人きりの家を知った上でのこの台詞、隼人の不器用な優しさが全部詰まっている。
お風呂上がりの春希は隼人のシャツ姿。姫子に借りようとしたら「胸がきついと言ってしまったら、無言でハヤトのシャツを投げつけられてしまって」という経緯で、姫子はすっかりご立腹だ。夜、春希は「僕たちってもうあの頃のままじゃないんだよね」とこぼし、隼人は「ハルキに何があったかは知らない。だけどそばに寄り添うことくらいはできるから」と答える。焦ることはない、俺たちずっと友達だから、と心の中で結ぶ隼人。だが春希は眠る隼人に「これは仕返しなんだからね」と、こっそりいたずらを仕掛けていた。
翌朝の学校。首元の跡を指摘された隼人は「ああ、虫刺されだろ」とまるで無自覚で、当の春希は教室で「桐島君も見ますか? 幼馴染の写真なんです」と姫子との買い物写真を見せびらかす清楚モード。内緒の跡と涼しい顔のギャップに、「っと、やりすぎちゃったかも」と舌を出す。攻めの春希で締める、ドキドキ満点の幕引きだった。
考察、「友達」の名の下で天秤は傾いていく
今話は、春希の攻めと隼人の鈍さという定番の構図の裏で、二人の非対称をくっきり描いた回だ。春希は化粧も服も「可愛いと思ってほしい」方向へ全力で、キス未遂までいく。一方の隼人は大切にしながらも、姫子と同じ感覚と言ってしまうほど家族寄りの視線で、締めの言葉も「ずっと友達だから」。タイトル通り、友情と恋の天秤はまだ「友達」に傾いたままで、この温度差こそが作品の面白さになっている。
そしてもう一つの軸が田倉真央だ。7年前に月野瀬を離れてから、春希の家で何があったのか。一人きりの家、「いい子で待ってるんだけどな」という言葉、そして人気女優の名前への過剰な反応。視聴者の間では春希の母親ではないかという推測が飛び交っているが、本編ではまだ明かされていない。「いつか7年の空白が埋められたら言ってくれる」と待つ構えの隼人とともに、続きを見守りたい。


























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