この記事の作品:
結婚式からハネムーン、そして修羅場へ。第4話はカロリーナとエドワードがついに夫婦になるお祝い回かと思いきや、旅先はまさかのマリッサの実家、キッシンジャー伯爵邸。乱入してきた姉マリエルの悪意に、カロリーナの啖呵とマリッサの平手打ちが炸裂します。ラストには明日の魔力検査という不穏な引きも。シンデレラになれなかった侍女が救われるまでを追いかけます。




いよいよ迎えた結婚式
「新婦だけ一人で入場させるなんて」
冒頭は結婚式の打ち合わせから。マリッサが読み上げるスケジュールは、10時からエドワードと式の打ち合わせ、その後ウェディングドレスの試着という慌ただしさだ。式の流れはほぼ通常どおりだが、一つだけ大きな欠席がある。カロリーナの父レイモンド公爵は、第3話の毒殺未遂騒動の直後ということもあり、式に参列できないのだ。
「では、新婦の入場は私一人で」と受け入れかけたカロリーナに、エドワードは「新郎新婦の入場は私と君の二人でやる」と即答する。「俺は君を寂しく一人で入場させるつもりはない」「新婦だけ一人で入場させて、自分は父親と一緒にだなんて、俺が耐えられないんだ」。父の不在という欠落を、当たり前の顔で塞いでみせる旦那ぶり。野蛮で残酷という噂に苦しんできた男の、この不器用な優しさが刺さる。
帝国全土に中継された誓い
ドレスの試着には皇后ヴァネッサが立ち会い、ウエストの詰めから胸元のリボン、肩のレースの生地まで自ら指示を飛ばす。「カロリーナの肌の美しさが引き立つように」という注文からは、嫁いできた娘をどう見せるかを本気で考えてくれているのが伝わってくる。
迎えた当日。花嫁姿を見たエドワードは「綺麗だ。他の奴に見せるのがもったいないくらい」と言い切るが、カロリーナ本人はお世辞だと受け取ってしまうのがもどかしい。式の様子は魔道具を介して帝国全土に中継されるとあって緊張は最高潮。そこを「今まで一生懸命に努力されてきたんです。きっと成功しますよ」と支えるのがマリッサだ。
誓いの言葉、指輪の交換、そして初めてのキス。「ここにお父様がいないことだけが心残り」という独白を挟みつつ、式は無事に幕を下ろした。新居はエメラルド宮殿。費用を尋ねたカロリーナに「おそらく小国一つは買える値段かと」と真顔で返すマリッサも良い味を出している。エンディングのキャスト欄が「カロリーナ・ルビー・マルティネス」に変わっていた粋な演出は、視聴者の間でも話題になっていた。
ハネムーン先はマリッサの実家
嵐のように決まった新婚旅行
式の直後、エドワードが切り出したのは「3日後の早朝、俺たちはハネムーンに向かうことになった」という報告だった。母である皇后ヴァネッサに、ハネムーンはどうするつもりかと詰め寄られ、テオドールが大急ぎでスケジュールを調整したという。「新郎新婦がハネムーンにも行かないなんて、世間体が悪いですからね」と言い添えるテオドールの仕事の速さよ。
行き先は、涼しい気候で過ごしやすく、烈火の不死鳥団にも深い理解を示してくれているキッシンジャー伯爵の邸宅に1週間。移動はテオドールの高度な転移魔法で一瞬だ。嵐のように去っていく二人を見送ったところで、マリッサがぽつり。「まさか私の実家が、ハネムーン先になるとは」。キッシンジャー伯爵はマリッサの父だったのだ。この偶然が、後半の騒動の呼び水になる。
「シンデレラ」と悲しそうな目
実家に滞在する上に準備まで任せきりになることを気にしたカロリーナは、お礼がしたいとマリッサの好きなものを尋ねる。返ってきた答えは、本を読むこと。中でも「シンデレラ」。童話の題名を口にした瞬間のマリッサの目を、カロリーナは「なんて悲しそうな目」と見逃さなかった。礼などのお気遣いは無用にと引かれてしまい、この時点では理由が分からない。
到着したキッシンジャー伯爵邸は、早朝の景色が絶景と評判の美しい屋敷。出迎えた伯爵も柔らかい物腰の紳士で、歓迎ムードは満点だ。それなのに、久しぶりに父へ会えたはずのマリッサの表情はずっと晴れない。公式アカウントがあえて「……シンデレラ」とだけ投稿した意味が、後半で重くのしかかってくる。
乱入した姉マリエルと積年の確執
テオドールが明かした婚約の裏側
エドワードがテオドールとの打ち合わせに出たあと、庭を散策するカロリーナは、護衛のオーウェンにマリッサの元気がない理由を尋ねる。姉のマリエル嬢と不仲らしい、と聞いたところで屋敷が騒がしくなった。乗り込んできたのは当のマリエル本人。「マリッサとテオドール様がここにいるんでしょ。さっさと会わせなさい」。キッシンジャー伯爵は「お前になど会わせるつもりはない」と娘を部屋に閉じ込め、明朝には妻の元へ帰すと平謝りする。
テオドールの説明で構図が見えてくる。マリエルはテオドールの元婚約者だった。平民のいる騎士団には物を売りたがらない貴族が多い中、豊富な資材を烈火の不死鳥団へ安定供給してもらうための契約だったという。定価の2倍で買い取る条件を持ちかけたところ、伯爵側が娘との結婚を望み、半額での納入と契約の無期限適用を条件に婚約が成立。「仕事人間のテオドール様らしい婚約理由だわ」というカロリーナの内心に全面同意である。
ところがマリエルの執着は凄まじく、連日押しかけられて仕事に支障が出る始末。あまりに非常識な行動が目に余り、テオドールは婚約を破棄して妹のマリッサに婚約を申し出た。つまり二人は現在、婚約者同士なのだ。もともと妹につらく当たっていたマリエルの態度はこれで決定的に悪化した。「これは完全に私の落ち度です」と悔いるテオドールの表情が重い。
姉たちに憎まれ、家を出たマリッサ
マリッサの口から語られる過去は重い。回想では、姉が「あら、ごめんなさい。手が滑っちゃったわ」とわざとらしく彼女を汚し、「帝国で一、二を争う美貌が台無しじゃない」と嘲笑う。長女の姉も、次女のマリエルも、マリッサの顔を心底憎んでいた。美しさへの嫉妬が、そのまま家族の悪意に変わっていたのだ。
破談と新たな婚約が父から告げられた日、マリエルは「このアバズレが」とマリッサへ食ってかかった。マリッサは両親に頼み込んで家を出て、侍女になる。「実家を離れ、侍女になったのは私の意思です。不満はありません」と静かに語る彼女に、カロリーナは内心で叫ぶ。「そんなの嘘よ」。血の繋がった家族から悪意を向けられる苦しみは、自分がいちばんよく知っている。距離を置いても、家族という因縁は茨のように絡みついてくる。前話のオーウェンに続く境遇の重なりは、視聴者からもすぐに指摘されていた。
「今度は私があなたを」、そして平手打ち
事件は「森の西部で魔物の目撃情報」という報せから動き出す。エドワードとテオドールが現場へ向かい、オーウェンたちがカロリーナを避難させた先に、いるはずのないマリエルが現れた。魔物の情報はマリエルが流した嘘。本当はエドワードだけを引き離すつもりだったという誤算の告白までご丁寧に添えて、マリッサに婚約の辞退を迫る。
いつも冷静なマリッサが震えている。それを見たカロリーナはオーウェンを下がらせ、自ら前へ出る。「私はマルコシアスに来てから、ずっとあなたに支えられてきた。だから今度は、私があなたを」。そして啖呵が炸裂する。自分の欲求のために騎士団へ嘘の情報を流し、エドワードとテオドールに迷惑をかけたこと。父である伯爵すら手を焼く日頃の行い。「そんなあなたに、ふさわしい云々などと言う権利はないと思いますが」。強く前に出ることが苦手なはずの人が、従者のために言い切ったのだ。
逆上したマリエルは「小国から来た落ちこぼれのくせに」「お飾りの妻のくせに」と、今度はカロリーナ本人への侮辱に切り替える。その瞬間、マリッサの平手打ちが飛んだ。「いい加減にしていただけませんか。皇子妃に、私が尊敬する主人に、これほど無礼な態度を取るなど」。普段は寡黙な侍女の一撃に、胸がすく思いをした視聴者は多いはずだ。
駆け戻ったエドワードは「カロリーナを侮辱するやつは断固として許さん」と激怒し、その発言が王族への侮辱罪にあたると突きつける。テオドールも「あなたとの婚約を破棄して正解でした」「こんな礼儀知らずが私の妻になるなど、想像するだけでヘドが出ます」と完全に切り捨てた。後日、キッシンジャー伯爵はマリエルを修道院へ送る。罪に問われる前に身柄を引き取るという、父としての精いっぱいの親心だった。
騒動のあと、なぜ一従者に過ぎない自分をかばったのかと尋ねるマリッサに、カロリーナは答える。「私、知っているの。助けてくれる誰かがいない苦しみを」「だから私がその誰かになって、少しでもマリッサを助けたかったの」。マリッサは打ち明ける。母と姉たちに虐げられながら王子様の救いを待つシンデレラに憧れていたこと。「でも私に救いはなく、シンデレラになれなかった」こと。そして「今日、やっとその辛さから救い出された気がします」と。序盤の「悲しそうな目」がここで回収される、今話いちばんの名場面だった。
「赤い瞳とルビー」まとめと考察
無自覚の力が明るみに出る前夜
第4話「赤い瞳とルビー」は、結婚式というお祝いの器に、マリッサ救済の物語を丸ごと収めた回だった。第3話のオーウェンに続き、家族に虐げられた者へカロリーナが手を差し伸べる構図が2話連続で反復されたことになる。姉フローラに憎まれて育った当事者だからこそ、「私がその誰かになる」という宣言に重みが宿るのだ。
サブタイトルの「ルビー」は、誓いの言葉とキャスト欄が示したとおり、カロリーナが「ルビー・マルティネス」の姓を得たことに掛かっているのだろう。赤い瞳が誰を指すのかは本編で明言されないが、赤い宝石の名を冠する一族に彼女が正式に迎え入れられた回、と読めば据わりがいい。
そして不穏な幕引きが2連発。セレスティアでは、聖女試験の二次を明日に控えたフローラが瓶の中の泥水すら浄化できずに苛立ち、カロリーナの出国と同時期に始まった魔力の低下と王国の災厄を前に「認めたくはないけど、これはやはり」と真実に指をかけた。一方マルコシアスでは、16歳で受けるはずだった魔力検査の再検査が明日に決定。次回サブタイトルは「秘められた神聖力」。垂れ流されてきた力が、いよいよ数字と形になって現れそうだ。「明日の魔力検査、楽しみですね」というマリッサの一言が、これほど不穏に聞こえる作品も珍しい。




関連作品:
















コメント