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クラスの人気者・小鳥遊綾姫が鳴神流星に急接近する。だが彼女の正体は、別世界から力ごと戻ってきた帰還勇者リターナーだった。決着のあとに流星が下したのは「彼女はもう血の味を覚えてしまった」という裁定。一方でネクタイの弁償からはプロポーズ級の贈り物が飛び出し、六道さくらによるカップルセラピーまで緊急開催される。第4話「許されざる者」を振り返る。




別世界の扉を開けている奴がいる
「なんかあの子、前はもっと暗かったよね」
第4話はクラスの噂話から始まる。話題の中心にいるのは小鳥遊綾姫だ。「みんなに好かれてて」…そこまでは普通の人気者の話なのだが、続く言葉がおかしい。「なんかあの子、前はもっと暗かったよね」「3組にも同じ部活の子がいるからね、よく聞くのよ」「クラスで浮いてたというか、馴染めてない感じだったのね」「それがいつの間にかクラスの人気者」…そして誰かがぽつりと漏らす。「雰囲気も変わったし、不思議なのよね」。
その本人が、鳴神流星に接触してくる。「先生は私のこと、どう思いますか」…そして距離を詰めながら告げるのだ。「私の目を見て」。目を合わせろという要求が、ただの好意でないことは画面の空気で分かる。他の生徒に変化を尋ねられても返事は「特には」「他はいたって普通だと思うけど」…つまり変わったのは性格と雰囲気だけ、という証言が積み上がっていく。
帰還勇者、リターナー
そこへ魔導士組織オズから流星に情報が渡る。「一応言っておく。正体不明の魔物の発生の件だが、我々の調査では、別世界への扉を開けている奴がいる」…そして探している相手の名が出る。「私たちが探している奴は、帰還勇者、リターナーだ」。
説明はこう続く。「リターナーって?」「異世界に召喚された人は、すごい力を得て勇者になるそうだ」「すごい力?」「いわゆるチートってやつだな」「そんな奴が力を得たまま、この世界に戻ってきたのがリターナーだ」…荒唐無稽だと言いかけた側に返ってきたのが「別次元から邪悪な魔法少女が攻めてきたことだってあるんだ」「剣と魔法の異世界だと信じるさ」で、思わず「マジかよ」。この作品らしい、設定説明とツッコミが同時に走る場面である。そして「そんなことがあったなら、ある日突然性格が変わったように見えるかもな」という一言が、冒頭の噂話とかちりと噛み合う。
仕掛けは不発に終わる。「なるほど、魅了のチート能力か。残念だけど、俺に魅了は効かないよ」…流星は種明かしまでしてやる。「鑑定スキルで害はないと近づいてきたんだろうな。少しだけ詰めが甘かったようだな」「小鳥遊綾姫、君がリターナーか」。綾姫の側にも言い分はあった。「何度鑑定しても一般人と出る」…そして自分で答えに行き着く。「鑑定対策に、一般人を手駒として動かしてるってことかしら?」。鑑定という便利な力が、そのまま盲点になっていたわけだ。
「彼女はもう血の味を覚えてしまった」
経験値と、いじめてきた連中への殺意
「君の目的は何なんだ」と問われた綾姫の答えは、意外なほど素直だった。「私はただ、あの世界に戻りたいだけ」「私は世界に選ばれた勇者なの」。勇者として魔王を殺す、と続けかけたところで水を差される。「すまん、魔王は今ここにいる」…宿敵探しの旅が、本人の申告一発で終わってしまうのがおかしい。
だが彼女の理屈は笑えないものだった。「知らないの? より強い人間を殺すと、経験値がたくさんもらえるのよ」「あの世界に戻るためには、より強力な魔法を使う必要があるの」…標的として名指しされたのは「あの魔女たちも、あの花織とかいう偽勇者も」。そのうえで、彼女はもう一つ付け加える。「でも、私をいじめてた奴らと、見て見ぬふりをしていたクラスの連中も、ちゃんと最後に殺すけどね」。
ここで、冒頭の噂話の意味が反転する。暗くて、浮いていて、馴染めていなかった生徒。その子がある日から人気者になった。周りは「不思議なのよね」で済ませていたが、本人にとっては力を手に入れて立場が入れ替わっただけの話だったのだ。「楽しいか?」という問いに返った「最高の気分」が、この回でいちばん冷たい台詞だと思う。
帰還勇者殺人事件、全員犯人
そのわりに決着は一瞬だった。前回のラストであれだけ大物の気配を漂わせていた相手が、Aパートのうちに片づいてしまう。しかも後始末が刑事ドラマの現場検証仕立てで、「たしか、小鳥遊君が俺を殺そうとしたところに、二人が駆けつけてくれて」…と再現が始まり、誰の一撃が決め手だったのか判然としないまま「これが事件の真相なんだ」で締められる。全員犯人という身も蓋もない結論に、視聴者からも笑い声が上がっていた。「騒ぎになってるけど大丈夫かしら」「オズに任せとき」「丸投げかよ」…この温度差も込みで、この作品はシリアスを長引かせない。
ただし、後始末の会話だけは重い。「その世界は、彼女にとって魅力的だったのかしら」…返ってきた見立てはこうだ。「人知を超えた力を突然得たことで、抑圧されていたものが解放されたんだろう」。そして肝心の問いが投げられる。「でも、あれで本当に良かったの? 彼女を異世界に送ることだってできたんじゃ」。
流星の答えが、副題を背負っている。「それは無理だ。彼女はもう血の味を覚えてしまったからな」…望みどおり異世界へ帰しても、そこで彼女は殺し続ける。だから戻せない。これは、かつて自分が同じ場所に立っていた者にしか出せない判定である。ギャグとして処理されたはずの一件が、最後の一行で急に据わりが悪くなる。この回の作りは、そういう置き方の連続だった。
ネクタイの弁償と、プロポーズ級の贈り物
「プレゼントじゃなくて弁償だから」
Bパートは一転して日常回になる。ミーティアの悩みは実にささやかだ。「昨日、流星のネクタイ切っちゃったのよね」「代わりは買ったけど、いつ渡そう」…そして手元の包みを見て固まる。「なんかこれ、プレゼントみたいじゃない」。
友人たちの助言は容赦がない。「普通に渡せばいいじゃん」「変なことすれば、それこそ誤解されるわよ」「花織くんは誤解されたいのだろう」…本人は必死に否定する。「そういうものじゃなくて」「プレゼントじゃなくて弁償だから」「気まずいんだよね」。「そこは素直に謝れ」で話が終わりかけると、今度は「そういう場合、プレゼントされるとしたら何が欲しい?」という脱線が始まり、「金」「土地」といった夢のない答えが並ぶ。この一連の脱力感が心地いい。
同じ頃、流星の側にも余計な知識が吹き込まれている。「鳴神先生、知ってました? 女子高生がプレゼントされて嬉しいアイテム1位は、高価なアクセサリーだそうですよ」「ネット情報なので半信半疑ですが」…当の本人が「あの、何の話ですか?」と置いてけぼりにされているのも含めて、後の展開への丁寧な仕込みになっている。
名前を呼べば現れる
受け渡しは、拍子抜けするほどあっさり済んだ。「はい、これ」「昨日ナイフでやっちゃったから」…返ってきたのは「ありがとう。気を遣わせたな」。散々悩んだ側が損をした形である。
問題はその後だ。「じゃあ、これは俺から」…差し出されたものを見て、ミーティアが完全に固まる。慌てて補足が入った。「落ち着け。武器だよ」「武器を格納してある指輪だ」「お前が使ってた聖剣と同じものだ」「名前を呼べば現れる」。理由も現実的だった。「地下鉄のイーターは殴って倒したし、昨日の勇者戦はナイフだったし、武器がないのは何かと不便だろ」…第3話の巨大イーター戦と、この回のAパートを両方踏まえた贈り物なのである。
公式のあらすじがこの場面を「もはやプロポーズ級」と書いているのが、いかにもこの作品らしい。渡した側は完全に実用品のつもりで、しかも直前に「女子高生が喜ぶのは高価なアクセサリー」と吹き込まれているものだから、選んだ形だけが妙に意味ありげになっている。魔王と勇者の関係に、いちばん似合わない小道具が紛れ込んだ瞬間だった。
カップルセラピー緊急開催
そして騒動の総仕上げが、六道さくらによるカップルセラピーである。「カップルじゃないです」「カップルじゃないよ」と揃って否定する二人に、さくらは静かな圧をかけてくる。「いろいろ噂になってますよ。先生と付き合っている生徒がいると」「私も応援のスタンスですが、ここは学校。堂々とはダメですよ」。
反論の余地は最初から潰されていた。「寄せられた声を読みますね」…読み上げられるのは「下の名前を呼び捨て」「熱い目線で見つめてる」「恋人のような」といった目撃情報の山である。挙げ句、直球の質問が飛ぶ。「鳴神先生は、花織さんをどう思ってるの?」…返ってきた答えが「めんどくせえ女だなって思ってます」で、当然その場は荒れる。ミーティアの方も「やっぱり殺せばよかったかなって」と物騒なことを言い出し、最後は「でも、お互いだよ!」で丸く収まらない収まり方をする。
圧巻なのは、二人の因縁を現代に置き換えて説明するくだりだ。「もともと地元が一緒でして」「そしてこの学校でばったり、という感じで」…では、なぜ殺す殺さないの話になるのか。「少し長くなるのですが」と前置きして語られたのが、これである。「私が春日町に大型スーパーを建てて、商店街にとどめを刺した、みたいな話でして」…そこに花織さん一家もいた、と。ところが弁明が続く。「でも実は、町を救うためだったんです」「市長は私腹を肥やすために町を売り飛ばし、産業廃棄物処理場という名のゴミ捨て場にしようとしていたんです」。
この比喩の裏で、回想として流星の来歴が明かされていく。死者の軍勢を率いて帝国を滅ぼした魔王。その正体は、たった一人の魔術師だった。そして世界はその力を危険視し、新たな戦争が起きた…。「家族を奪った人。でも、町を救った人。それが鳴神先生なのです」という締めくくりは、比喩のまま聞けば商店街の話であり、そのまま聞けば魔王の話である。ふざけた口調の裏で、この回はさらりと重い設定を通していった。
「許されざる者」まとめと考察
「お前だけが、俺を解放してくれる唯一の存在だった」
騒ぎのあと、六道さくらが下した見立てが的確だった。「先生は花織さんへの罪悪感、花織さんは割り切れない複雑な気持ち」…笑いの体裁を借りながら、二人の関係の芯を一行で言い当てている。そのうえで現実的な忠告まで置いていく。「でも、ここは学校で、しかも女子校よ。そんなつもりがなくても噂は広がるし、かなり面倒な問題になったりするから、気をつけてね」…カウンセラーとして完全に仕事をしている。ネット上でも「関係進展に協力してくれそうな重要人物」と評されていたが、この回に限って言えば、彼女は暴走を煽る側ではなく止める側に回っていた。
帰り道の会話が、この回の結論である。「でも、私はまだ許してないからね」…そう突きつけられた流星の返事が「許さなくていい。俺はお前を利用したんだ」だった。そして初めて、魔王だった側の内側が語られる。「帝国を滅ぼした後に残ったのは、永遠に続く死の痛みと終わらぬ戦いだった」「俺はお前を待っていた。魔王を倒すのは勇者だからな」「お前だけが、俺を解放してくれる唯一の存在だった。感謝しているんだ」。
倒された側が、倒した側に礼を言う。第1話から続いてきた「魔王と勇者がなぜか同じ学校にいる」という笑いの構図は、この告白で足場が入れ替わった。ミーティアの返しもいい。「私が家に初めて来た時、どう思った?」「めんどくせえなって」…カップルセラピーで公開処刑された台詞が、ここでは全く違う響きになる。同じ言葉を二度置いて、二度目で意味を変える。うまい作りだと思う。そして「俺は魔王だった。だが今は…」と言いさして、答えは口に出されない。
重い話にしないのがこの作品の流儀で、締めは軽い。「こんなことに巻き込まれて、いいの?」「これが平和ってことなのよね?」「ポジティブだな、お前」「勇者だからね」…友人たちが「友人のピンチだからね」「友情パワー」と乱入してきて、また誤解が増える。そのうえで流星が漏らす「こんな日常も悪くない」が、この回のいちばん素直な一行だった。締めのCパートは懺悔室仕立てのミニコーナーで、持ち込まれた告白が「小鳥遊戦で、接触時にエナジードレインでレベルをこっそり吸っていました。だから余裕でした」…あの瞬殺の裏側がこれである。昭和のバラエティを知る世代が一斉に反応していたのも納得の作りだった。
最後に副題について。「許されざる者」が誰を指すのかは、一つに絞れないようになっている。血の味を覚えてしまい、異世界へ帰すことすら許されなくなった綾姫。それが素直な読み方だ。だが同じ回で、ミーティアははっきりと「私はまだ許してないからね」と言い、流星は「許さなくていい」と答えている。許されないまま隣にいることを選んだ二人もまた、この題の内側にいる。綾姫が力で立場を変えようとして砕けたのに対し、この二人は許し合わないまま日常を続けている。同じ「許されざる者」でも、行き先がまるで違うという対比が、この回の設計なのだろう。異世界の因縁は片づいていないのに、次に来るのが学園ドラマの空気だというのが、いかにもこの作品らしい。




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