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第16話でシオンが龍成を斬った、あの一撃が峰打ちだったと明かされる回だった。龍成は天導界に見張られながら、「俺の狙いは、インメイだ」という一点だけを伝えてきていた。ところが覇業の盾を巡る密告の応酬はそのまま裏返され、インメイは勾玉を取り込んで霊獣になる。そして最後に、石田紫音が退場する。




あの一撃は、峰打ちだった
「俺にしか分からないサインを出してきたから」
第17話は、前回の決着から間を置かずに始まる。「その漆黒の覇皇帝に耐えられるのは私だけ」と言い切ったインメイを、龍成が背後から貫くところからだ。
驚いたのは周りのほうだった。「なんで龍さんがインメイを」「全然思考が追いつかねえ」という声に、シオンが「龍成は俺たちの敵じゃなかったってことだ」と答える。「知ってたのか?」と聞かれてからの種明かしが効いた。
「さっきの攻撃も、龍成が俺にしか分からないサインを出してきたから、峰打ちで倒したんだ」。第16話でシオンが龍成を斬った、あの決着そのものが芝居だったことになる。「騙して悪かった」という一言まで付いてくる。
サインの中身は明かされない。ただ、第16話でこの二人が候補生時代から共有していた符号を思えば、何を掲げたのかはだいたい想像がつく。あの小ネタが伏線だったという作りが上手い。
天導界に見張られながら
龍成の側の事情も明かされる。「俺は天導界に見張られている」「奴らは話の内容までは把握していない」。だから伝えられるのは一点だけで、それが「俺の狙いは、インメイだ」だった。
「だったら、俺たちと協力すればいいだろ」と言われても乗らない。「まだインメイの本当の目的が分からない」「下手に動けば」と、むしろ味方に付くほうが危険だという判断である。
敵として振る舞い続けるほうが情報に近づける、という理屈が徹底している。その代償として、味方から本気で斬られることまで引き受けていた。
第16話を見た時点では、龍成の言い分は最後まで通じなかったように見えた。その印象を一話まるごと使ってひっくり返してくるので、前回を見ている側ほど効く。
インメイという異分子
霊獣になれない四獣士
インメイとガイメイの会話が、後の展開を全部仕込んでいる。「君はあの方のことをどこまで知っている」と切り出されたガイメイは「竜に変えられたことぐらいしか知らん」と答え、インメイは「真実を知っているのは私だけのようだな」と満足する。
ガイメイの反発が具体的だった。「霊獣にもなれない貴様が四獣士を名乗ってるだけでも、こっちは胸くそ悪いんだ」。四人のうちインメイだけが霊獣になれない、という設定がここで示される。
返す言葉が「君はつくづく哀れだな」「いずれ私は真の覇皇帝を手に入れて偉大なる目的を果たす」「せいぜいその時まで私にすがるがいい」だった。見下されている側が見下し返している。
この時点では、ガイメイの嫌悪もインメイの余裕も、ただの内輪もめに見える。それが後半でそっくり利用されるので、二度目に見ると印象が変わる場面だと思う。
「私が最も信頼できるものに預けた」
逃げたインメイを龍成が追い、二人だけの会話になる。「なぜ忠誠を誓ったふりをした」に対する「お前の野望を阻止するためだ」で、龍成はもう隠さない。
それでもインメイは「君のことは信頼している」と言い、「その証として私の真の目的を話そう」「私は覇業の盾を手に入れた」と明かす。羅真我が持ち去ったはずのものを、隠し場所ごと暴いたのだという。
「真の覇皇帝があれば、神になったも同然の力を得る」。では盾はどこか、と聞かれた答えが「私が最も信頼できるものに預けた」だった。
龍成の読みが速い。「お前が信頼できるもの。それはお前自身だ」と言い当て、とぼけられても「とぼけるな」と押し切る。ここまでは、完全に龍成が勝っていた。
密告の応酬と、裏返された盤面
龍成の仕掛け
龍成はそのまま天導界の上位者サグメへ報告する。「インメイが謀反を企ててます」「狙いは真の覇皇帝」、そして「覇業の盾を見つけ、自らの居室に隠しています」。
インメイに向き直っての一言が痛快だった。「今頃、サグメ様が貴様の居室で覇業の盾を探しているはずだ」。しかも通信手段まで種明かしする。
大地が勾玉に交わることで天導界との交信が可能になり、この会話もすべてサグメの耳に届いているという仕掛けである。つまり、インメイが自分の口で盾を手に入れたと認めた時点で、証言は取れていた。
ここまでの段取りが気持ちいいほど整っている。監視されている立場を逆手に取って、自白を上へ流すところまで一本道だった。
盾が出てきたのは、龍成の居室だった
ところが報告が返ってくる。「あなたの忠告に従ってインメイの居室を探しました。しかし、何も見つかりませんでした」。インメイは「すべてはこの龍成の謀り。どうか惑わされないでください」と被せてきた。
そして箱を掲げたのはガイメイだった。羅真我が持ち去ったはずの覇業の盾で、見つかった場所を問われて答えたのが「龍成の居室」である。
ガイメイの説明が、また噛み合ってしまう。「私はこの龍成をずっと怪しんでいたんだ」「彼は真の覇皇帝を奪って、自ら神になろうとしているに違いないと」。疑っていた側の証言なので、誰も疑わない。
シメイの「まだ知らを切る気? 覇業の盾が見つかってるのよ」で流れは決まり、サグメの「あなたを反逆者と見なします」が下る。仕掛けた側が反逆者にされる十数秒の逆転が、この回の白眉だった。
インメイの覚醒
「操りやすいガイメイこそ、私が最も信頼する人物」
種明かしは本人の口から出る。「ガイメイに暗示をかけたのだよ」「操りやすいガイメイこそ、私が最も信頼する人物だったというわけだ」。そして「私を毛嫌いしている彼が私の罪を晴らせば、皆も信じるしかない」。
見つかった盾についても「偽物だよ」と言い切る。「羅真我に掘り起こされるまで、ずっと祠で眠っていたなら、誰も気づくまい」という理屈で、本物のありかは結局明かされない。
先ほどの「私が最も信頼できるものに預けた」も、自分自身のことだと読ませておいてガイメイのことだったと読み替えられる。同じ一言で二度騙してくるのが厄介だ。
反逆者と断じられた龍成にとっては最悪の形である。証拠も証人も相手が用意したもので、こちらの手札は先に全部見せてしまっていた。
虎の霊獣と、羅真我の登場
追い詰められたインメイが取った手が勾玉を自分の体に取り込むことだった。「私の進化を見てるといい」から始まり、霊獣になれなかったはずの四獣士が、虎の霊獣になる。
勾玉を体内に封じたことで「もう天導界に我々の声は届かない」という状態にもなった。先ほどまで通信路として使われていたものを、そのまま塞いでしまう手際である。
そこへ現れたのが羅真我だった。「よう、インメイ。俺が見えるか」と声をかけ、「お前は四獣士で唯一、霊獣に化けられなかったはずだ」と過去を突く。
返ってきた説明が重い。「天啓を授かったのだよ。貴様と戦った時にな」。同じ光を浴びて、羅真我は身を滅ぼし、インメイは覚醒した。そして「あの時私は、全てを知ったのだ」と続く。この一言だけが今回の宿題として残った。
勾玉を抑えるための代償
「あいつ死ぬ気だぞ」
戦況は一方的だった。覇皇帝を出そうとしても「また奴の勾玉の力で」と止められ、「覇皇帝は危険だ」という判断が先に立つ。インメイの側は「覇皇帝を出さぬ貴様らなど虫けら同然」と余裕を崩さない。
突破口は龍成が出した。「勾玉の力を抑え込めれば、インメイは力尽きる」。ただし、その方法には条件があった。
勾玉の力を抑えるには、命が要る。それに気づいた誰かが「あいつ死ぬ気だぞ」と叫び、「は? 死ぬってどういうことだ」と場が止まる。
龍成が黙っていたことを責める言葉が「大事なことはいつも伏せやがって」だった。第16話から続く、この人の説明の足りなさが、ここでは命の話になっている。
「お前にばっかカッコつけさせるかよ」
先に動いたのはシオンだった。「ふざけるな。お前にばっかカッコつけさせるかよ」、そして「いいか、よく見てろ」と奥義を放つ。「全て、くれてやる」。
倒れたシオンが最後に明かしたのが、二人の間にあった借りだった。「ずっと引け目を感じてた。俺の身代わりになって毒をくらったお前に」「これでチャラだ」。第16話で描かれた同期の関係に、まだ語られていなかった一枚が挟まっていたことになる。
もう一つ、意味の分からない言葉も残していく。「お前じゃなきゃ、真の覇皇帝は完成しない」。「どういう意味だ」と聞き返されても「説明してる暇はねえ」で終わってしまう。
誰に向けた言葉なのかも含めて、今回はここで切られる。退場する側が最大の情報を持ったまま去るという、いちばん厄介な残し方だった。
紫音の退場
人の形を保ったまま
この作品は今まで、倒れた者を傀儡として片付けたり、光になって消したりしてきた。今回が違うのは、石田紫音が人の形を保ったまま逝くところだ。
不思議な力で元に戻る、という逃げ道が最初から用意されていない。妖邪でも天導兵でもない、ただの人間として倒れるので、取り返しのつかなさが直接残る。
「みんなのささやかな幸せを守るために」という言葉がここで戻ってくるのも効いた。第16話ではシオンの道標として語られたものが、今回は最後の理由になっている。
「これでいい」という短い納得の仕方が、いちばんこたえた。戦う理由を探し続けた人が、最後は理由の側から迎えに来られている。
「約束したろ。修学旅行」
残された会話が容赦ない。「本当に平気なのか」に「ああ」と返し、「約束したろ。修学旅行。いい宿があるんだ」と続けて、そのまま「倒してこい」と送り出す。
受け取った側の返しが「大丈夫だ。さっき見せてもらった」だった。奥義なんて使えないだろうと止められての一言で、倒れた本人から技を受け継いだことが分かる。
そして決着の後に来るのが、いちばん見ていられない場面である。「行くんだろ、修学旅行」「遊園地で遊んで、温泉に入って、枕投げってやつ、するんじゃねえのかよ」。
極めつけが「また下手な芝居しやがって」だった。峰打ちの芝居からこの回が始まったことを思うと、この呼びかけ方は残酷すぎる。「起きろって」「なんで何も言わねえんだよ」まで続いて、今回は終わる。
「センコウ」まとめと考察
小ネタが全部、伏線だった
今回のサブタイトルは「センコウ」。石田紫音の二つ名である閃光を指しているのは間違いないと思う。退場回のタイトルに本人の名を置くという、直球の付け方だった。
構成として上手いのは、第16話の軽い場面が全部効いてくるところだ。候補生時代の符号は峰打ちの合図になり、冗談のように出た修学旅行の提案は最後の呼びかけになった。
笑いながら置かれたものほど、後で効くように作ってある。前回を見た時点では「ゆるい回だった」と思っていた分だけ、余計に刺さる。
その意味で、この二話は最初から一組だったのだと思う。第16話が仕込みで、第17話が回収である。
残された宿題
片付いていないものが多い。まず本物の覇業の盾だ。見つかったものは偽物だと本人が認めており、ありかは誰も知らない。
次に「あの時私は、全てを知ったのだ」である。インメイが光を浴びて得たという知識の中身が、まだ一切出ていない。四獣士の中で一人だけ霊獣になれなかった理由とも、つながっている可能性がある。
そして「お前じゃなきゃ、真の覇皇帝は完成しない」。誰に向けた言葉かも、どういう意味かも保留されたままである。今回いちばん危険な台詞は、これだと思う。
龍成の立場も宙に浮いたままだ。天導界からは反逆者と断じられ、戻る場所がなくなった状態で、倒れた相手の技だけを預かっている。
鎧を受け継ぐという形をこの作品がやってくるとは思っていなかった。戻ってきた回と失う回が同じ一話に入っているので、次回がどう始まるのか読めない。




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