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『鎧真伝サムライトルーパー』第20話は、第19話の到達点がそのまま値札に変わるところから始まる。橋を落としたのは誰で、何のためだったのか。そして第19話が引きに使ったサグメの頼みが、「私のために死んで」という一行で明かされる。中盤には紫音を失った直後の回想が挟まり、自己犠牲という言葉を嫌っていた側の答えが置かれる。同じ「命を投げ出す」が、正反対の動機で二度並ぶ回だ。




橋を壊した理由、奥義を極めたことがそのまま狙われる理由になる
第19話は、一行が分断されたところで終わっていた。ガイメイを倒した直後に橋が落ち、「それより気になるのは、なぜ橋が壊れたのか」「誰かの思惑が絡んでいる」という一言が置かれる。そして呼びかけへの返しが「久しぶりだな、ガキども」だった。第20話はその続きから入る。
凱の身体は、もう取り戻されている
公式のあらすじが記すとおり、凱の身体は再び羅真我に奪われている。十勇士側は「どうやって若の体を」と驚き、仲間が守っているはずだと言い返す。返ってくるのが「今頃二度目の死の恐怖を味わっているはずだ」という一言だった。
第15話で羅真我を体内に取り込んだまま帰ってきた凱は、その後も声だけを聞き続けてきた。第16話・第19話と積み上げてきた共存が、断りもなく主導権の交代に切り替わっている。味方の陣営にいた人物が、そのまま最大の敵として立っているという形だ。
第19話の到達点が、第20話の値札になる
「あなたが橋を壊したのですか」と問われて、答えは隠されない。覇皇帝と対になる盾を手に入れるには、奥義を極めた者の魂を鏡に沈める必要があるのだという。だから奥義を体得した者を一箇所に集めて始末したい。
十勇士側の察しは早い。「なるほど」「奥義を体得した我々をここで始末しようというわけですか」。第19話でようやく届いた到達点が、第20話では標的の条件そのものになっている。
第19話の訓練は、勝つための積み上げとして描かれていた。「妖邪から人間になったと思ったら、今度はヒーローになれとか言われて」「俺たちの歩んできた道は間違っていたのかもな」という夜を越えて、「間違ってなかったんだ」の一言とともに奥義が出た。その肯定が、一話またいで値札に変わる。
同じ一つの盾に、三方から手が伸びている
第16話で示された天導界の狙いは、覇皇帝と盾を揃えて真の覇皇帝を作ることだった。第17話では、その盾を隠し持っている疑いが四獣士の内側に向いていた。
ところがこの回では、羅真我の側が同じ盾を取りに動いている。敵の陣営が二つあるのではなく、一つの目的物に三方から手が伸びている。誰と誰が味方なのかという線が、この回でさらに引き直される。
サブタイトルは人名であり、同じ音の別の言葉でもある
第19話の終盤、サグメはシメイに「あなたは私に忠誠を誓えますか」と尋ねていた。「もちろんです」「私はサグメ様を愛しています」「いつでもこの命を差し出す覚悟はできています」と答えたシメイに、「あなたを見込んで、お願いがあります」と切り出したところで回は終わっている。第20話は、その頼みの中身を二段構えで見せる。
先に幻滅する材料を渡してから頼む
一段目は打ち明け話だ。人間から生気を奪っているのは神が自身の力を取り戻すためだと明かしたうえで、「幻滅しましたか」と問う。隠したまま命じてもよかったはずのことを、わざわざ先に開示している。
シメイの答えが「真実を打ち明けてくださったということは、この身にも力になれることがあるのですね」だった。そこへ「あなたの体を天導界に捧げてもらえませんか?」が置かれる。
断る材料を渡したうえで受けさせるので、これは命令ではなく取引の形をとっている。第19話で「私はサグメ様を愛しています」と言い切った側が、その言葉のとおりに使われる。
「私のために死んで」
二段目は直接的だ。「あなたを見込んで、お願いがあります」「何でしょう?」「私のために死んで」。第19話が引きに使った台詞の続きが、これ以上ないほど短い一行だった。
返答が「私は全身全霊を持って使命を全うする」である。サブタイトルの「シメイ」は四獣士の名前だが、この回で繰り返し口にされるのは同じ音の別の言葉だ。人名と役目が同じ音で重なっているのがこの回の題名の作りになっている。
相手を弱らせる技が、そのまま自分を削る技になっている
現在の戦いで、頼みの中身が形になる。手足の痺れに気づいた相手へ返るのが「これは私の体内に毒を巡らせて、至高の毒を作り出す」「いわば諸刃の剣」だ。
第19話の「いつでもこの命を差し出す覚悟はできています」は、忠誠の表明ではなく戦い方の設計だったことになる。勝っても負けても死ぬ技を、この回のために用意していた。
だから十勇士側の観察が刺さる。「さっきまでの威勢はどうして?」「何を焦っているのですか?」「いつもならこんな力技でなく、もっと周到に立ち回るはず」。取り逃がしの雑さまで並べられて、返しが「さすがだな」「時間がないんだ」だった。
焦りの理由が、次の脅威の予告になっている
続けて明かされるのが「もうすぐ新たな勢力が生まれる」「お前たちも知っている四獣士だ」である。破壊の神の光を浴びたことで、インメイの封印されていた記憶がよみがえったのだという。
そして「サグメでさえも止められない暴走が始まる」と続く。第17話でガイメイに暗示をかけ、第18話から盾を隠し持っている疑いを持たれてきた人物が、いよいよ管理の外に出る。この回で急いでいたのは天導界の側であり、急がせていたのは味方だった人物である。
自己犠牲を嫌っていた側が出した答え、武蔵と凱の回想
この回には、現在の戦いから離れた回想が長めに挟まる。時期は紫音を失った直後だ。当時の流れの中では描かれなかった葛藤が、ここでまとめて補われる。
補充の話から降りる話へ
「また一人いなくなっちまった」「次は誰がくたばるんだろうね」という軽口を「やめろ」と止めるところから始まる。話はすぐ穴埋めの相談になり、龍成に埋めてもらうしかないという案が出る。返しが「俺は納得できねえ」「一人いなくなったから、じゃあ他の誰か」「そんな単純な話じゃねえだろ」だった。
その流れで武蔵が降りる。「僕はもう戦いたくない」「いくら戦っても平和になるどころか、どんどん状況はひどくなって」「しかも今度は神の使いが相手って」。そして「いまだに死ぬのが怖いんだ」「僕はきっと一生かかってもヒーローなんてなれない」「もう嫌なんだ」。
「戦わなくていい」と言った側の白状
そこで凱が武蔵を逃がそうとする。「こいつを安全な場所に避難させてくれ」「お前の言う通りだ」「相手があれじゃ勝てる見込みはほとんどねえ」「戦わなくていい」。説得ではなく、正しさを認めたうえでの解放だ。
そのうえで白状が続く。「今は戦うのが怖え」「これ以上仲間を失いたくねえんだ」「自分が死ぬより仲間が犠牲になることの方がよっぽどつれえ」「だからお前には生きていてほしいんだ」「すまなかった」「お前たちにつらい思いをさせてしまった」。
第19話では「覇皇帝は神の威力だ」「この鎧、人間が使いこなせる代物ではない」と、資格ごと否定された人物である。その口から出るのが強がりでも決意でもなく、怖いという申告だ。解放の申し出が、実は本人の弱音とセットになっているのがこの場面の作りになっている。
「きっと自分に失望したくないだけなんです」
返しがこの回の芯になる。「ずるいですよ」「今さらそんなこと言うなんて」から始まり、武蔵は自分の言葉で自己犠牲を分解していく。
前半は拒否だ。「昔から自己犠牲って言葉が嫌いでした」「誰かのためにどうなってもいいとか、欺瞞にしか聞こえなかった」。ところが後半で裏返る。「でもそうじゃなかった」「きっと自分に失望したくないだけなんです」「やるだけやったって思いたかったんです」。
命を張る理由を、他人のためではなく自分のためだと言い直している。誰かのために死ぬのではなく、逃げた自分に耐えられないから残る。だから「戦わなくていい」という許可は、武蔵にとって助けにならない。許可を出す側が想定していた理由と、本人が抱えていた理由が違っていた。
「ただいま」で閉じて、美談にしない
決心の言葉は短い。「戦うよ」「自分に失望したくないから」。返しが「お前がそう言うと思ったよ」で、そこから「ただいま」「おかえり」と続いて回想は閉じる。
最後に置かれるのが「本当はカッコつけたかっただけなんだと思う」「バカだよね」だ。立派な決意として飾らずに終わらせる。自己犠牲の話を美談にしないまま現在へ戻すので、直後の戦いの見え方が変わってくる。
まとめ、同じ「命を投げ出す」が正反対の動機で並ぶ
この回で二度起きることは、起きる前に人間界の側で名指しされている。
「それが怖いんです」という予告
人間界では違和感から調査が進む。妖邪兵に倒された人は傀儡となって他の人間を襲い、それが増幅して東京が壊滅状態に陥った。ところが天導兵に倒された人々は急速に干からびるだけだ。「確かに妙だな」という引っかかりから、犠牲者が生贄であることと、生気が搾取されていることが判明する。
その後に置かれる会話が効いている。「危なっかしい部下を持つといろいろ大変でしょ?」「本当、生意気な奴らで」と軽口が続いた末に出るのが、「あの子たちは自分の命を投げ打つことに躊躇しない」「それが怖いんです」だ。天導界の目的を突き止めた場面の直後に、味方の側の危うさが置かれている。
他人のために投げ出す側
一つ目がシメイだ。倒れる間際にサグメを呼び、「お役に立てて幸せでした」と言い残す。至高の毒も、体を捧げる承諾も、全部が誰かのためになされている。
そして死んだ直後、その魂は横から奪われる。「なんでお前が!」「これが欲しくてね」。捧げた先に届かないという結末まで含めて、この投げ出し方は報われない。第19話で忠誠を誓わせた側にも、誓った側にも、想定外の一手が入る。
自分に失望しないために投げ出す側
二つ目がサスケだ。凱が不在で覇皇帝が出せないという場面で、自分から申し出る。「俺に奥義を放て」「覇皇帝を出す」。「全員の奥義の力を受け止めるんだぞ」「そんな賭けは」と止められても、返しは「いいからやれ!」だった。
理由が、回想と同じ言葉になっている。「俺ならどうなっても構わない」「あいつらに笑われたくねえんだよ!」「それに自分に失望したくねえからよ」。第1クールでは敵として現れ、第16話で力を貸すと決め、第19話で服を贈られた側が、ここで武蔵の言葉をそのまま使う。
シメイは他人のために投げ出し、サスケは自分に失望しないために投げ出す。同じ「命を投げ打つことに躊躇しない」でも、向いている方向が正反対だ。そして正反対でありながら、どちらも周りには止められない。
幕、命が数え上げられていく
終盤、インメイは「私と羅真我の目的は同じ」と明かし、サスケを羅真我のいる場所へ送り込む。「次に会う時がおそらく、最後の戦いになるだろう」「楽しみにしてるよ」。敵に案内されて到着するという入り方が、この回の後味を悪くしている。
羅真我の側では数え上げが進んでいる。「これだ」「4つの命が集まった」「あとはお前だ、サスケ」。魂を鏡に沈めるという冒頭の説明が、そのまま進行状況として提示される。橋が落ちた理由の説明が、二十分後には残数の報告に変わっている。
締めは倒れた仲間へのやりとりだ。「何くたばってんだよ」「なんで逃げなかった?」と悪態をついたうえで、「そこで見てろ」「今度は俺がカッコつける番だ」と続く。回想の最後に置かれた「本当はカッコつけたかっただけなんだと思う」が、別の人物の口から返ってくる形になっている。
この回は、命の投げ出し方を並べて見せる回だった。役目のために差し出す者、逃げなかった結果ぼろぼろになる者、そして自分に失望したくないという理由を選ぶ者。いちばんかっこ悪い理由を選んだ側に幕を渡しているところに、この作品がヒーローという言葉に出した答えが表れている。




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