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寮のメンバーで芝桜の花見に出かけた日、主人公・上伊那ぼたん(浪人して二十歳、工学部一年)は、いつも一人で飲む寮長・砺波いぶきを見つける。分けてもらった一杯のハイボールが、ぼたんの生まれて初めてのお酒だった。その夜、二人は部屋でワインを酌み交わし、いぶきは「人とお酒を飲むと初めてのことばかりだ」とつぶやく。第1話は、お酒がほどく距離と、酔いから芽生える百合を静かに描き出す。



一人飲みの寮長と、初めてのお酒
芝桜の日、消えた寮長
寮のメンバーで芝桜の花見へ出かけた日。にぎやかな一年生たちの輪から、寮長・砺波いぶきの姿が消える。単独行動の多いいぶきを、後輩たちは半ば呆れながら見送るが、新入生の上伊那ぼたんだけは「道に迷っているかもしれないから」と、彼女を探しに向かう。
見つけたいぶきは、一人でお酒を傾けていた。実はいぶきは人前でお酒を飲むのが苦手で、飲んでいる姿を見られるのを嫌う。ぼたんはそんな寮長に、静かに歩み寄っていく。
騒がしいお祭りの空気から、そっと外れた場所にいぶきを置く導入がうまい。「一人でいたい人」に、押しつけがましくなく寄り添うぼたんの距離感で、二人の関係が始まる。
分けてもらった、一杯のハイボール
ぼたんは浪人を経て、この春ようやく二十歳になったばかり。お酒は好きそうだと思いつつ、一度も飲んだことがない。美味しそうに飲むいぶきを見て、「私もそれを飲んでみたい」と、飲みかけのハイボールを分けてもらう。
一つのグラスを二人で回す、生まれて初めての一杯。「間接キスだね」とからかいながら、ぼたんは大人の飲み物の味を知る。お酒の味を知ることは、その人の人となりを知ることでもあった。
初めてのお酒を、憧れの先輩と一つのグラスで分け合う。たったそれだけの出来事を、丁寧な芝居ときらめく画で特別な瞬間に仕立てる第1話らしい名場面だ。
砺波いぶきと、上伊那ぼたん
しゃっくり癖と、一人飲みのこだわり
いぶきがお酒を人前で飲まないのには理由がある。酔うと立派なしゃっくりが出てしまうのだ。「失礼だし恥ずかしいから」と、彼女は長いあいだ一人飲みを貫いてきた。
「一人の方が楽だし気兼ねもしない」。そう言い聞かせてきたいぶきにとって、誰かと飲むという選択肢は、そもそも視界の外にあった。その頑なさが、逆に彼女の不器用な優しさを匂わせる。
酒豪でクールに見える寮長の、可愛らしい弱点。しゃっくり一つで人を遠ざけてきた不器用さが分かると、この後の変化がいっそう沁みてくる。
上伊那ぼたんの、魔性の一面
素直で気配りのできる後輩——というのが、ぼたんの第一印象。だが、お酒が少し回った彼女は、するりと大胆になる。「私たちお揃いですね」「さっきの“いいな”は、寮長がいいなって意味ですよ」と、まっすぐな言葉でいぶきを甘やかに追い詰めていく。
極めつけは「私、寮長の舌が欲しいな」。同じお酒をもっと美味しく味わいたいから、という理屈なのに、言われたいぶきの方が照れてしまう。視聴者が「魔性の女っぷり」と評した所以である。
あざとさではなく、天然の距離の詰め方でぐいぐい来るのがぼたんの怖さだ。手玉に取られる側のいぶきの反応がいちいち初々しく、二人のパワーバランスが早くも楽しい。
二人で飲む、初めての夜
お茶のはずが、ワインの誘い
後日、ぼたんはいぶきを自室に招く。名目は「美味しいお菓子でお茶しましょう」。散らかった部屋を慌てて片付け、洋服はクローゼットへ押し込む——その手際に、彼女がいかにこの時間を楽しみにしていたかがにじむ。
ところがいぶきが手にしていたのは、お茶ではなく初心者でも飲みやすいワイン。炭酸も入っていない、複雑すぎない一本を選んでの再訪だった。「お茶しましょうって言ったんですけど」と苦笑しつつ、ぼたんは笑顔でグラスを受け取る。
お茶に呼ばれてワインを持ってくる寮長、という小さなすれ違いが微笑ましい。相手に合わせて銘柄を選ぶいぶきの気遣いが、一人飲みでは決して生まれなかったものだと分かる。
乾杯と、いぶきのモノローグ
「とりあえずお疲れ」。二つのグラスを合わせる、久しぶりの乾杯。ぼたんは「美味しい」を繰り返しては語彙をなくし、いぶきもまた同じように言葉に詰まる。二人で飲むと、美味しいという気持ちすら初めてのように新しい。
「人とお酒を飲むと、初めてのことばかりだ」。一つのコップでシェアしたハイボールから、二つのグラスで乾杯するワインへ。ずっと一人で飲んできたいぶきの世界が、ぼたんによって静かに書き換えられていく。
派手な事件は何も起きない。それでも、いぶきの独白一つで胸を掴まれてしまう。お酒を“誰かと分け合うもの”へと更新していく過程が、この作品のいちばんの美点だ。
もう一人の、飲み相手
郡上かなで先輩の部屋で
夜、課題に手こずるぼたんに声をかけたのは、寮の先輩・郡上かなで。修士一年の大学院生で、頭がよく面倒見がいい。タバコを吸う姿を「女優さんみたい」と評され、「面白いね」と笑う、ちょっと大人びた先輩だ。
課題を手伝ってもらったぼたんは、そのまま郡上の部屋へ。映画の話に花を咲かせるうち、棚に並ぶお酒に目がとまる。それらはすべて、いぶきが預けているお酒だった。
ぼたんといぶきの物語かと思いきや、そこに郡上という先輩が差し込まれる。寮という場所に、いくつもの“お酒でつながった関係”が眠っていることを予感させる運びが巧い。
いぶきの酒と、鏡合わせのやりとり
郡上は、いぶきの数少ない“一緒に飲む相手”らしい。「いぶきはしゃっくり癖のせいで、私以外とは飲まないだろうし」——そんな言葉の端に、先輩なりのいぶきへの親しみがのぞく。
それを聞いたぼたんは、昼間いぶきに向けた自分の口説き文句を、今度はいたずらっぽく郡上へ返してみせる。誰かとお酒を分け合う気持ちが、ぼたんの中でもう芽生えていることが、この鏡合わせで伝わってくる。
お酒をめぐる好意が、一対一で完結せずゆるやかに広がっていく。誰と誰が、どんなお酒で結ばれているのか——その相関を想像させる締めくくりが心地よい。
まとめ——酔へる姿は、百合の花
お酒が縮める、心の距離
第1話が描いたのは、お酒を通して人と人の距離が縮まっていく瞬間だった。一つのグラスを分け合い、乾杯し、相手の好みに合わせて銘柄を選ぶ。その一つ一つが、一人飲みだったいぶきには“初めて”の体験になっていく。
ぼたんの無邪気で少し魔性な距離の詰め方が、いぶきの頑なさを優しくほどく。タイトルの通り、酔いにほころぶ二人の姿は、たしかに一輪の百合の花のようだった。
百合とお酒、今後への期待
お酒の美味しさも、酔いから生まれる甘い空気も、飲まない人には少し縁遠く映るかもしれない。それでも、キャラクターの可愛さと丁寧な芝居は、お酒に不慣れな視聴者の心にも十分届く。
百合とお酒が組み合わさって、何も起きないはずがない。寮生たちとの新しい出会いを重ねながら、ぼたんがどんなお酒と誰に出会っていくのか。静かな期待とともに、この物語は幕を開けた。




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