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日向の誕生日会に招かれたダラさんは、「家は住人の領域であり結界」と講義しつつも薫に押し切られ、脚を生やして三十木谷家へ。まさかの来客・美和さんを前に、ヤマダさんの嘘が滑らかに決まる。一方この回の裏面は苛烈だ。腕と足を落とされた妹御子の悲劇が屋跨斑誕生の入り口として描かれ、母の千夜がセーラー服姿で禁足地の神と問答した過去も明かされる。第五怪「山守の系譜」を振り返る。




決して近づいてはならない…過去編の火蓋
姉御子の「よしなに」…腕と足を落とされた妹御子
冒頭からいきなり過去編、それも最深部だ。怒りのまま暴れるヤマタギマダラの半身を、姉御子と妹御子が鎮めるところから始まる。消耗が激しく儀式に不備が出かねないため「再封印は改めて明朝、姉と行います」と告げる妹御子へ、姉御子は「お前が何かやらかしたのではありませんか」と濡れ衣を着せた。散々苦しめられてきた村人たちの憎悪は、たちまち妹御子へ向かう。
そして姉御子は言い放つ。「では皆様、よしなに」。煽られ、血と狂気に飲まれた村人たちは、術が使えぬよう妹御子の腕を落とし、逃げられぬよう足を落とした…。「決して近づいてはならない。見れば祟り、汚せば祟る。いにしえより、その名をヤマタギマダラと呼ばれていた」という語りが、この凄惨さを土台に響いてくる。ネットの「クソ姉の所業」という怒りには全面同意しかない。
「お姉さま、助けて」…そして、身をこしらえる声
過去編は中盤にも続く。血に狂った村人たちに追われ、絶望した妹御子は、せめて汚される前にと自ら命を絶とうとする。そこへ現れた姉御子は「かわいそうな妹。死に物狂いで半身を倒したというのに、守っていた村の者の手でこのような無惨な姿に」と嘆いてみせ、あろうことか自分で煽った村人たちまで口封じに手に掛け、妹の仇討ちを装った。残された妹御子の最期の言葉は「許さない…この恨み」。
そして、四肢を断たれたその身に、誰のものとも明かされない声が落ちる。「待っておれ。その身はちゃんとこしらえてやる」。屋跨斑誕生の物語はここで幕…ネットでも「怨霊誕生秘話の最後まで行って欲しいが途中まで」ともどかしがる声が上がっていた。六本の腕に大蛇の身体、そして「ダラさんの正体はあの妹御子ではないか」という受け止め。温厚な土地神の来歴に、いよいよ手が届きかけている。
家は結界…お誕生日会と思いもよらぬ来客
招待講義と、脚バージョンのダラさん
一転して、現代はどこまでも呑気だ。「昼間は家族みんな留守にしてるので、ダラさんも参加してください」という誕生日会のお誘いに、ダラさんは「そこ座れ」と講義で応戦する。いわく、家というのは住人の明確な領域であり、霊的に確立した一番身近な結界。異界の者が強引に押し入る方法もあるが、その場の生き物に被害が出る。ゆえに今回は正規の入り方…つまり住人の許可を得るしかない。ただし家に入れば異界に身を置けず、姿を消せなくなるのが難点だ。「本当いうこと聞かねえなこいつ」というぼやきの時点で、押し切られる未来が見えている。
翌日、「入ってもよいか?」ときちんと許可を取って敷居をまたぐダラさん。一歩踏み入れた途端に室内が異界の狭間へ上塗りされ、それを「妙だな」と感じ取った日向が「立派なものじゃ」と褒められる。そして目を引くのが下半身である。「部屋に入るにはオロチの形状は邪魔じゃろうからな」…まさかの脚バージョンだ。ネットでも話題をさらった衝撃(?)のお姿である。
美和さん乱入、「誕生日はあの嵐の日」
そこへ思いもよらぬ来客、近所の美和さんがプレゼント持参でやってくる。「ダラさん、うで! うで!」「だめじゃ、腕が間に合わぬ」の大慌てを経て、初対面の挨拶は「ヤマ、ヤマダさんです」。ゲームで知り合って住所が近くて…とスラスラ出てくる嘘に、姉弟の方が感心する始末だ。
話題が誕生日に及ぶと、この回の芯が顔を出す。わしの時代に誕生日を祝う風習はなかった、と言いつつダラさんが選んだ答えは、名も思い出せぬ人であった頃でも、自我なきヤマタギマダラでもなく、「今のわし…こやつらがダラさんと呼ぶものが生まれた日」。すなわち「ちょうど初めて私たちが知り合った、あの嵐の日ですよ」。歳は26、美和さんと同い年でテンションが上がるオチまで完璧だ。極めつけは日向への祝儀。小袋の中身はわしの舌から切り出した肉片で、体液を含ませれば「わしが飲んだ」と扱われる…ありがたいが原材料が重い。後日「もしもしダラさん、神隠し一丁」という雑すぎる注文で早速役立つのだから、実用性は折り紙付きである。
千夜の過去…セーラー服の問答
禁足地に入った日と、土下座
物語の背骨はこちらだ。「なあ千夜、日向と薫に変わりはないか」…兵吾から、二人が屋跨斑のことをしつこく聞いてくると聞かされた千夜は、静かに昔を思い返す。かつて友人の恋人が、肝試しで柵を越えて山に入った後、両手足の原因不明の激痛で入院した。置き忘れた鞄を取ってきてほしいと泣きつかれ、お役目の手伝いで柵周辺を管理していた千夜は、禁足地へ足を踏み入れてしまう。
セーラー服にジャージ姿の少女は、山の主と出くわすや迷わず土下座した。「三十木谷千夜と申します」。「見覚えがあるな。この地を世話する家の者だな」…そして神は告げる。「こたびは、お前に免じよう」。友人たちの不始末は、山守の家の娘に免じて赦された。両手足を苛む祟りが、腕と足を落とされた妹御子の姿と重なる構図に、背筋が冷える。
「あなたはまるで、守っておられるよう」…気に入ったぞ、千夜
二年後、先代から少々早いがと役目を継ぐことになった千夜。「もしも鈴の音が聞こえたら、何もかも捨てて帰りなさい」という教えとともに山へ通う彼女は、やがて核心にたどり着く。この祠からにじみ出る狂気と呪いは、あなた様から感じる気配とはほど遠い。手足を失い死に至る祟りを引き起こす祠から、立ち入る者を払っている…「あなたはまるで、私たちを守っておられるよう」。
神は目を細めた。「こうまで感じ取れた者は数えるほど。中でもわしに問答など。気に入ったぞ、千夜とやら」。そして呪いの代償として語られるのが、未だ眠る大蛇の首、それを封じる祠の腕、そしてお役目に縛られたわしの魂の話…あの過去編である。祠の「腕」の意味が、冒頭の凄惨な場面と一本の線で繋がる瞬間だ。後年、「うちは三十木谷日向。こっちは弟の薫ゆうねん」と名乗る子らに「もしやお前の子らか、千夜」と目を細める場面まで含めて、まさに山守の系譜。現在の千夜が兵吾に返す「あの子たちにはちゃんとお山の教えは伝えていますから」という一言が、静かに重い。
キャッシュで返す…蚤の市と刈り込みダラさん
現代パートのもう一本は、まさかの経済活動だ。「いい加減、子供のお前らに負担をかけ続けるのも悪いと思ってな。キャッシュで返す方向で行こうと思う」。神秘性はどこへやら、もともとは根付だという手仕事に飾り紐を通す小物づくりは本格的で、寺前の蚤の市への出店が決まる。変装のため、床まで届く髪は日向がバッサリ。「いつも薫の頭やってるからかな」と手つきも慣れたもので、ネットでは「刈り込みダラさん」がかっこいいと大好評だった。
見逃せないのが髪の設定だ。わしの一部は7日で妖力を失い消滅する…ただし、何らかの目的を持って使った場合は別で、新たなものになる。「ただでさえ髪は念がこもりやすい。妙なことがあったらすぐに持ってくるように」。せっせと髪を集める姉弟に、美容代を浮かせて供物に回すなと苦言を呈しつつ、「と言うても聞きはせぬよな」と諦めるダラさんが実に保護者である。
「山守の系譜」まとめと考察
蚤の市の再会と、とぼけ合う二人
そして当日、着込んだ変装のヤマダさんの前に現れたのは、よりによって千夜だった。「いつもうちの日向と薫がお世話になっております。母の千夜と申します」。「あら、どこかでお会いしたことがありましたっけ」「いいえ、いえまさかそんな」…「私が尊敬、そう、尊敬している方と少し似ておられる気がしたもので」。気づいていて確かめ、はぐらかされてすっと引く。この大人のとぼけ合いが絶品で、「よかったら今度うちにも寄ってくださいね」への内心「もう何度か寄っておるのじゃ」で吹き出した。
商売の方は、田舎の蚤の市には目立ちすぎる売り子効果もあって見事完売。そして回収された髪は、薫のもとで新たな役目を得たとナレーションが締める。7日で消えるはずの髪も「使えば新たなものになる」…あの前振りの回収であり、次回以降への仕込みでもあるのだろう。
第五怪「山守の系譜」は、タイトル通り三十木谷家と山の神の縁を描き切った回だった。腕と足を落とされた妹御子、両手足を苛む祟り、祠に納められた「腕」。過去と現在が同じ模様を描きながら、日向と薫という次の系譜へ繋がっていく。コメディの裏に無慈悲な過去を編み込む年輪のような語り口は今期屈指で、「寒暖差で風邪引きそう」というネットの声がすべてを言い当てている。姉御子の因果応報を待ちつつ、次回も楽しみだ。




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